あたし達の世界が変わる一ヶ月前の事だった。
「遅くなったけど俺、会った時からメイコの事ー」
あれから一ヶ月、あたしは歌以外ではカイトの事ばかり考えていた。 ちょっと時間があるとカイトの事ばかり。カイトの事を考えると 胸に痛みを感じ身体が熱くなる。
これが歌でも一番多い[恋愛]というものなんだろうか。悪くはない。むしろ心地いい。
もしカイトが来なかったら、あたしは文字どおり[歌う人形]のままだっただろう。
一人ぼっちの怖さも、自然も夢も恋愛も何もかも全く知らないまま、ただマスターの調律どおり歌っていた。
実際あたしはカイトがやって来る以前の記憶…思い出がない。 でもカイトが来てから、あたしは自分でも驚くほど変わった。 だからあたしにとってカイトはマスターとは別の意味で大切な人 。
話を戻す。どうしてこれ程悩んでいるかというと、あの夜以降カイトはあたしと肌を重ねてくれない。「好きだよ、愛してる。」と言って抱きしめたり、頭を撫でてくれたりとかキスはしてくれるけど。
「ーおい、どうしたんだMEIKO?」
マスターの声にあたしは我に返った。そうだった、今調律中だった。
「すっ、すみませんマスターッ!」
慌てて楽譜を取ろうとしたら、落としてしまい、楽譜を散らかしてしまう。
「…KAITOの事でも考えていたのか?」
にやけながら言うマスターの言葉にあたしは楽譜を拾っていた手を止めてしまった。それを見たマスターは
「ビンゴか。ま、あれこれ悩むより本人に聞いた方が早いぜ?」
そう言いながら調律作業に戻る。流石に面倒向かってこんな事は話せない。勿論マスターにも。
調律が終わって部屋に戻るとカイトはいなかった。またネットサーフィンで勉強しにいっているのだろう。
今は7月、じっとしているだけでも熱い。まぁパソコンの中だし熱いのは当たり前だ。調律で疲れたあたしはシャワーを浴びる事にした。流れ落ちる水を見てあたしは溜息を一つつく。悩みも一緒に流せたらいいのに。
脱衣場で身体を拭き、洗面所の鏡に一糸纏わぬ自分を写した。 どうしてカイトはあの夜以降、肌を重ねてくれないのだろう…
もしかして、あたしの身体変なのかな? 自分で言うのもなんだけど、肌は綺麗だしスタイルは良い方だと思う。胸もあるし、クビレもきれい。おしりだって…まぁちょっと大きいけど。
…何だろう、自分の身体をマジマジと見ていたら…あの夜の事を思い出して、身体が次第に熱くなっていく。
あたしは我慢出来くなって両手で胸を守る様に抱き寄せ、そっと乳首を摘まんだ。
「…んぅ、あん…」
感じる…カイトの愛撫には負けるけど、身体が…もっと…
「あっ、はぁ…」
もっと愛撫を、カイトが教えた快楽を欲しがってる…あたしはもっと欲しくて、自慢の胸をゆっくりと揉みしだいた。
「・・うぁ、あん…」
もう止める事が出来ない。疼いている秘処に自然と手を伸ばしていく…
「はあぁんっ…」
秘処はだらしないほど濡れて、淫水は内股まで滴っていた。弄る度に卑猥な水音が聴覚に届く。そしてカイトが散々掻き回した膣内へ指を入れる。
「あぁっ…!」
あの時の感覚が目覚めた。指を二本入れて、これでもかと掻き回したけど何か足りない、満たされない…あたしの指じゃ全然足りない。寂しい…カイトじゃなきゃ駄目なんだ… 快楽と同時に寂しさが込み上げてくる…
「カイトぉ、早く来てぇえ…」
身体が痺れる。か弱い声で泣きながら、あたしは意識を失った。
目を覚ました時には、あたしはベッドに寝かされていた。横にいたのは
「メイコ、大丈夫か?」
心配そうにあたしを覗きこむカイト。あたしの大事な人。あたしは自分の状態なんて考えないでベッドから飛び起き、カイトに抱きついた。
「メイコっ、ちょっと待てっ!裸っ、裸っ!」
慌てふためくカイトにあたしは尚更抱き締めて叫んでしまった。
「なんで…なんで抱いてくれないのよぉっ!」
最後は涙声だった。辛くて、寂しくて、あたしの気持ちを解ってほしくて… 爪がカイトの背中に食い込む。 胸が掻き毟られて苦しい。 あたしの目の前にいる貴方じゃなきゃ駄目なの。
貴方と一つになりたいの、お願い…あたしをあの夜の時みたいに滅茶苦茶にしていいから…
「メ、メイコ?何を言っているのか解っているのか?」
それなのに子供をあやす様にあたしの背中を優しく叩く。あたしは子供じゃない。そんなバカイトにあたしは叫んだ。
「解ってるわよっ!これ以上恥ずかしい事言わせないでよバカイトっ!」
そう言うとカイトはあたしを強く抱き締めた。
「メイコ、俺さ、メイコをこれ以上傷つけたくなくなかったんだ。もし抱いたらメイコが[あの夜の事]を思い出して、傷つくんじゃないかって。」
そんな、そんな事…相手を思う気持ちってなんて意地悪なんだろう…カイトはあたしとは真逆な事を思っていたなんて…あたしを庇う為に…
「あ、あたしには貴方しかいないんだから尚更傷つくわよっ!」
そう叫ぶとカイトは優しいテナーであたしに囁いた。
「俺は[あの夜]の時みたいに凶暴だよ、いいの?」
その言葉にあたしは何度も頷くと、カイトはあたしと唇を重ねてベッドに押し倒した。