いにしえより、尽きぬ論争がある。
その争いは実に烈しく未だ勝者が無く、然るに敗者も無い。
人はこう呼ぶ。
【カップリング論争】
東に初音ミク。西に鏡音リン。南にMAIKOで北に鏡音レン。
中央にはガクブルと青ざめた神威がくぽ。
相睨み、火花を散らし、1刻を越えた争いが此処にも勃発。
鏡音リンが吠えた。
「だぁかぁら!『夢みることり』見たでしょ?お互い引き立てあうの!!ロリコンが何よ?光源氏計画だもん!!ポリンだよぅ」
MEIKOはすかさず反論した。
「ふん、『Cradle Of Destiny』を見なさいよ。この格好良さと色気はあんた達には無理よ?メイポでしょ」
初音ミクは鼻で笑う。
「はっ!ハイパーアイドル、初音ミク様を横に置いてカップリングが成立すると訳無いでしょう?みくぽよ」
鏡音レンは冷ややかに受け流す。
「男ボカロは腐な方々にどう取り入るかが一番なんだよ!ノーマル?その上18禁?生意気!!バナナスだ、バナナス」
ゲリラ豪雨的言葉の礫の中心でがくぽは耐えた。
ボカロとして生を受けた以上回避不可。ひたすらに耐えた。
例え、視界の端に映るマスターとKAITOがのんきにお茶してようと。
はぐつくあんパンががくぽの好きな薄皮のであろうと。
「ちょっと前までお前があっちだったが、時代は終わったなぁ」
「そうですねぇ、終わっちゃいましたねぇ」
などと生温い視線を向けてこようと。
「がっくぅん!どう思う?」
名を呼ばれ、そらした意識を現実へと戻される。
「教えて欲しいの?」
コッチに話が向けられた。
「がくぽの口から聞きたいなぁ?」
ヤバイ。
「なぁ、がくっぽいど」
話をごまかそうものなら
「「「「誰が1番?」」」」
フルボッコ…
がくぽは本格的にガクブルした。8つ眼がマジ過ぎる。
極限の中、不意に聞こえたKAITOの声。
「ま、モテルのは良い事ですよ」
ぶつっ!
がくぽの中で何かがキレた。
「KAITOが好きだー!!!!」
腹の底からシャウトしたがくぽ。
時がとまる。
先ず反応したのはリンだった。
「何よ…」
おっきな瞳にみるみる涙が溜る。
「リンのがにいにいの事、好きだもん」
MEIKOは腕組みする。
「私とKAITOの仲は公式。後から来たのが入る余地、無いの」
ミクは好戦的にネギを構えた。
「あら?ミクと歌ってる時1番楽しそうよ」
レンは一歩退いた。
「うわぁ、別のスイッチ入ったよ」
「おにいちゃん!!!」
ミクはKAITOに詰め寄る。
「おにいちゃんってどんな人がタイプなの?!」
KAITOは先ずキョトンとした。
「答えなさい、KAITOが好きなのは誰?」
愛らしく目をパチクリする。
「にいにい、教えてよぉ」
そして全力の笑顔で言い切った。
「僕ねぇ、アイスくれる人が1番好き☆かな?」
言い切りやがった。
いにしえより論争があり。
勝者はまだいない。