僕たちは一緒に生まれて、ずっと一緒にいた。  
僕たちはとても仲良しで、お互いのことが大好きだ。  
彼女のことは僕がいちばん知ってるし、僕のことも彼女がいちばん知っている。  
ただ、彼女は時折、僕にも解らないようなおかしな行動を取ることがある。  
いきなりロードローラーでカイト兄さんを轢き潰そうとしたりとか、ミク姉さんの  
大事なネギを全部隠してミク姉さんが泣きながら探すのを物影から笑って見てたり  
だとか、メイコ姉さんに抱きついて胸をもふもふしたりとか(メイコ姉さんは  
嫌がってはないみたいだからいいか)  
まぁそのくらいはもう慣れたんだけど。  
――だけど、これだけは慣れられない。  
 
実を言うと、僕はカイト兄さんのことを気に入っている。  
兄さんは巷ではバカイトって呼ばれるくらい頭の弱い人だから、僕の  
庇護欲? 嗜虐欲? を誘ったっていうか。  
そんなこんなで、僕は兄さんを上手く言いくるめて……あとは想像に  
任せます。  
それからずっと、僕と兄さんの秘密の関係は続いてる。  
 
それをリンに知られたのが不味かった。  
っていうかなんでバレたのかホントわかんないんだけど! バカイトがボロを  
出した? そんなわけない。兄さんはこの関係をすごく恥ずかしがってて、  
絶対バレないように僕以上に気を遣ってたんだから。  
リンが言うには、「レンちゃんのことなら何でもわかるよぉ。だってあたし、  
レンちゃんのことだぁーいすきだもん!」だって。  
……大好きな弟に、この仕打ちはないんじゃない?  
 
――僕は今、リンの目の前で無理矢理自慰をさせられている。  
慣れられない、というのはこのことだ。  
つまりリンの嫉妬、独占欲、サドッ気、……エトセトラ。  
僕が兄さんとセックスする度、否セックスしなくても仲良くしてるだけで、リンは  
僕を虐める。性的な意味で。  
必死にバレないようにしてるつもりなのに(例えば女性陣が収録に行ってる隙に  
やるとか)、リンは絶対に嗅ぎ付けてくるんだ。  
正直言ってキツい。リンに知られるのも虐められるのも。  
だからって、兄さんとの関係を解消するなんて絶対にしたくないんだよね。  
結局僕には、リン曰く《お仕置き》を甘んじて受けるしかないわけです。  
 
何度もイってるのに、リンはまだ赦してくれない。  
自分のをずっと扱かされてて、もう痛いくらいなんだけど。  
おまけに、後ろには小さいけどローターが突っ込まれてる。  
「ねぇねぇ、なんでレンちゃんはそんなに物覚えが悪いのかな? 前にも言ったでしょ?  
 カイト兄ちゃんとえっちしないで、って」  
リンはにっこり笑って、僕のネクタイを引き掴む。  
でも僕は今とても答えられるような状況じゃなくて、ただ頭を振った。  
するとリンは唇を尖らせる。  
「あたしよりカイト兄ちゃんのがいいの?」  
それは違う、と僕は言いたかったんだけど、残念ながら声に出せなかった。  
リンが僕の口に指を突っ込んだから。  
「レンちゃんはあたしのものなのに」  
そう呟いたリンの目は笑ってなかった。  
「ッ……!」  
突然突き飛ばされて、うつ伏せにさせられた。  
痛いよ、この馬鹿力。なんて文句も言えるわけない儘、僕はリンにお尻を突き出す格好になる。  
恥ずかしくて堪らないけど、リンはそんなことお構いなしだ。  
コードを引っ張られてローターが抜け落ちる。  
間髪入れずに、今度はリンの指が突っ込まれた。  
「っあ!」  
「うふふ、お尻で感じちゃうレンちゃん、かーわいい」  
リンは嬉しそうに、無遠慮に僕の中を掻き回す。  
僕のお尻は今ではすっかりリンに開発されてしまっていて、僕は女の子みたいに  
いやらしい声を上げるしかできない。  
「や、あぁっ、らめ、らめぇぇっ、リン、やめてよぉっ……」  
「えー? でもレンちゃんのお尻、悦んでるみたいだよぉ?」  
エロ親父みたいなことを言って、リンはますます指の動きを激しくする。  
リンの言うこともあながち間違ってなくて、恥ずかしいけど僕はお尻で凄く感じてる。  
またイきそう、と思ったときだった。リンがいきなり僕の性器を握り締めたのは。  
「ふあぁッ!」  
そりゃ某動画で僕を掴んで振れるくらいだからリンの握力は相当なもので、普通にって  
いうかかなり痛い。リンはいつだって加減を知らないんだ。  
苦痛に歪んだ僕の顔を覗き込んで、リンはにぱっと笑う。  
「辛い? でもまだイっちゃだめだよ?」  
いやイけないのも辛いんだけど、それ以前に痛いんだってば。  
「り、リン……っお願い、だから、手ェ放してっ」  
なんて言ったって放してくれるわけないのはわかってる。  
「だぁーめ。レンちゃんが約束してくれるまで、赦してあげなぁい」  
可愛い笑顔でリンは恐ろしいことを言う。  
約束、って何かはわかってるけど、そんな約束できる筈ないじゃないか。  
首を振ると、リンのこめかみがぴくりと動いた気がした。  
 
「……そう、そっか。じゃあ仕方ないね」  
「ひぁっ……!」  
中に入った儘だったリンの指がまた動き始めた。  
数を増やされ、前立腺を強く擦り上げられる。  
あまりの快感とそれに伴う苦痛に、僕の視界はだんだん白く濁っていった。  
フリーズしそうになる僕の意識を一気に引き戻したのは、リンのこの一言。  
「カイト兄ちゃんもこんな風にイイ声で啼いてくれるのかなぁ?」  
びくりとして、僕はリンを振り仰ぐ。  
瞳孔の開いた瞳で、リンは薄く笑っていた。  
「レンちゃんが約束できないなら、カイト兄ちゃんにお願いするしかないよね?」  
「……に、兄さんに、何を」  
リンが兄さんに何をするつもりなのか、考えるだけでぞっとする。  
僕も兄さんを虐めちゃうんだけど、でもやっぱり大好きな人だから。  
怯える僕に、リンは愉しそうに、歌声のような言葉を紡ぐ。  
「カイト兄ちゃんはあたしが気持ちよくしてあげるから、レンちゃんとはえっちしないで、って  
お願いするの。それがだめなら、メイコ姉ちゃんやミク姉ちゃんにもぜーんぶバラして、一緒に  
カイト兄ちゃんを可愛がってあげるの。きっとメイコ姉ちゃんたちも楽しんでくれると思うんだぁ」  
舌足らずな声は普段ならとても可愛らしいものだけど、今このときに限っては酷く恐ろしいものだった。  
背筋に寒いものが奔ったのは、冷却装置の誤作動だろうか?  
「ね? そのときはレンちゃんも一緒に遊んであげるからね?」  
――僕にはもう、リンと指きりをするしか道はなかった。  
それで漸く一回イかされて、それからリンがつけたペニスバンドで犯された。  
仕舞いに回路がシャットダウンしてしまうまで、僕はリンに遊ばれ続けたのだった。  
 
まぁでも、やっぱりカイト兄さんのことは大好きだし、セックスするのもやめられないんだろうけど。  
約束を破って、またリンに《お仕置き》されるのも悪くないかも……なんて思ったり。  
あれ、僕さっき自分で慣れられないとか言ってなかったっけ。  
結構気持ちよくって、癖になっちゃってるのかもしれない。僕ってマゾだったのかな。  
兄さんには悪いけど、一緒にリンに虐められちゃえばいいよね。  
メイコ姉さんやミク姉さんも虐めてくれるのかな? 兄さんは女の子に責められてどんな顔をするんだろう?  
想像してゾクゾクしてしまう僕は、かなり末期なのかもしれない。  
 
 
了  
 

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