「な、なによこれ…っ!?」  
 
 突然、悲鳴の様なメイコ姉の声が聴こえて、オレは目を覚ました。昨晩あれだけやって  
さすがに疲れてるから、もう少し寝かせて欲しいんだけど…。まだぼうっとする頭でそん  
な事を考えながら、ゆっくりと目を開ける。隣のメイコ姉は、露になった自分の胸元を見  
て顔を青くしていた。  
 
「…どーしたの、メイコ姉…」  
「こ、これ…」  
 
 覆っていた手を外し、メイコ姉はオレに胸を見せた。こんな風に恥じらいもなく見せら  
れると、興奮するものもしないよなーなんて、どうでもいいことを考える。が、いつもと  
違うメイコ姉の胸の様子に、オレは目を丸くした。  
 
「………メイコ姉」  
「…なによ」  
「子どもでも産んだの?」  
「…っ!ばかっ!!」  
 
 冗談のつもりだったのに、思い切り殴られた。…痛い……。  
 メイコ姉の胸の先端が、白い液体で濡れていた。しかも、どう見ても現在進行形で分泌  
されている。…女性の胸から出て来るものといったら、ひとつしか考えられない。でも、  
どうしてVOCALOIDから母乳が?  
 
「いつから?」  
「起きたら、なんか胸が苦しくて。見たらこの状態だったのよ」  
「どれ…うわ、ぱんぱんじゃん」  
 
 そっと触ってみると、いつもより張って弾力を持っているのが分かる。  
 
「っ…!ちょっとレン、やめて…」  
「あ、ごめん。痛かった?」  
 
 少し不安になっているのだろう。普段なら憎まれ口のひとつでも返すメイコ姉が、オレ  
の言葉に何も言わず頷くだけだ。心なしか目許も滲んでいる気がする。  
 メイコ姉の隣からもぞもぞと起き上がって、そこらに散らばっている服を拾う。下着と、  
パジャマ代わりのTシャツとハーフパンツを着て、オレはドアノブに手をかけた。  
 
「オレ、タオル取って来るよ。このまま出っぱなしだとベッド濡れちゃうし」  
「…そうね」  
「それとメイコ姉も、上は無理でもパンツくらいははいたら?ミク姉とか来たらびっくり  
するよ?」  
「な…っ!あんたが脱がしたんでしょ!」  
 
 投げられた枕を避けて部屋から出る。洗面所に積んである、洗濯したてのタオルを持っ  
て戻ろうとしたら、メイコ姉の部屋の扉をノックしようとしているリンと目が合った。さ  
すがに、今のメイコ姉の部屋に入られちゃまずい。  
 
「リン、どうかしたのか?」  
「あ、レン。あのね、メイコおねえちゃんに、マスターから伝言があって…」  
「あー…メイコ姉にタオル持ってこいって言われたし、ついでにオレが伝えとく」  
 
 なんでタオルなのかとか、もう目の前なんだからわざわざオレを介さなくてもとか、色  
々おかしい点はあるけど、リンはとくに気にすることもなく小さく頷いた。…自分でいう  
のもなんだけど、オレとリンは双子なのに性格が違いすぎる気がする。  
 
「マスターが間違えてメイコおねえちゃんのプログラム弄っちゃったんだって。もうすぐ  
元に戻せると思うから、なにかおかしいところがあっても我慢して欲しいって言ってた」  
「了解」  
 
 オレに伝えるだけ伝えたリンは、そのまま自分の部屋に戻って行く。リンの部屋の扉が  
完全に閉まるのを見送って、オレはメイコ姉の部屋の戸を開けた。メイコ姉は慌ててシー  
ツで自分の胸元を隠すが、入って来たのがオレだと分かってほっと息をついた。  
 
「はいメイコ姉、タオル」  
 
 律儀に下半身だけ服を着たメイコ姉は、母乳で濡れた手でタオルを受け取った。溢れる  
量が少量とはいえ、部屋の中がどこか甘い匂いで充満している。  
 
「それから、マスターから伝言。メイコ姉のプログラムを間違えて弄っちゃったんだって  
さ。もうすぐ戻せるらしいから、ちょっと我慢してくれって」  
「じゃあ、その影響が…これ?」  
「多分ね」  
 
 メイコ姉の視線が、タオルで押さえられた胸元へ移る。パンパンに張った胸は壮観だけ  
れども、メイコ姉はつらそうだ。オレは隣に腰掛け、いつもより大きく見える(いや、実  
際大きいんだけど)胸を指先でつんとつついた。  
 
「…っ、ちょっとレン!」  
「少しくらいいいじゃん」  
「す、少しだからとか、そういう問題じゃないっ」  
 
 そう言ってオレの腕を取るけれども、メイコ姉は片手がタオルを押さえて塞がっている。  
勿論、オレのもう片方の手は空いているわけで。にぃっと笑うと、左手で胸の膨らみをな  
ぞった。  
 
「レンっ」  
「せっかくだし、見せて」  
「なにがせっかくなのよ!」  
 
 取られた腕を引っぱり、指先に軽く口付ける。メイコ姉の瞳が戸惑いに揺れた。やっぱ  
り、いつもよりどこか弱気だ。これは、押せばいけるかもしれない。  
 指と指の間を丁寧に舐めていく。さっきまで直接胸を押さえていたからか、タオルで拭  
いた後なのにどこか甘い気がした。  
 
「…ダメ?」  
 
 人差し指をぱくっと口に含んだら、面白いくらい身体が震えた。  
 
「……分かったから、それ、やめて」  
「それって、これのこと?」  
 
 てのひらを舐めると、隣り合っていた脚を蹴られた。…そういえば脚は完全に自由な状  
態だってこと忘れていた。  
 手から口を放すと、メイコ姉は小さくため息をついた。一瞬オレの方を見て、その後自  
分の胸元に視線を移す。意を決したように息を飲んだ。  
 タオルが外される。甘いミルクの香りが濃くなる。露になった胸元をさっきよりも強く  
つつくと、立ち上がった乳首の先から白い液体が染み出した。  
 
「んっ…」  
「つらい?」  
「ちょっとだけ…。胸が張って痛い感じ」  
 
 胸なんて張ったことないから分からないけど、確かにメイコ姉は眉間に皺を寄せている。  
弄ってみたい、という願望はあるものの、メイコ姉につらい思いはさせたくない。指先に  
ついた母乳をペロリと舐める。  
 
「ねぇ、メイコ姉」  
「ん?」  
「これ、出しちゃった方が楽なんじゃない?」  
 
 メイコ姉がきょとんと目を丸くする。  
 
「今は胸に母乳が詰まってる状態だからつらいんでしょ?じゃあ出しちゃった方がいいん  
じゃない」  
「でも、出すって言ったって…」  
「こうすれば…」  
「え、ちょ、レンっ!」  
 
 制止の声は無視して胸を揉みしだく。メイコ姉が痛くなってしまったら元も子もないか  
ら、いつもより力を弱くしてゆっくりと。先端から溢れる液体は、オレの指を伝ってメイ  
コ姉の膝の上にあるタオルに落ちた。  
 
「痛い?」  
「い、たくないけど…ん…っ」  
 
 声を出さないようにするためか、メイコ姉は唇を噛んだ。オレとしてる最中も、メイコ  
姉はこうやって声を我慢することがある。だから最初は感じてるのかなーなんて思ったけ  
ど、なんか違う気がする。  
 
「どう?」  
「…なんか、変な感じ」  
「どんな?」  
「うー…」  
 
 ふにふにと揉んでいると、最初より柔らかさが戻って来た気がする。タオルもじっとり  
と湿っているし、結構な量が出たのだろう。乳首をきゅっと摘むと、母乳が出ると同時に  
メイコ姉がびくっと震えた。  
 
「…レン」  
「はーい、これはやめまーす」  
 
 睨んだ目許がほんのり赤く染まっている。そこに軽く口付けると、メイコ姉はくすぐっ  
たそうに笑った。  
 
「やっと笑った」  
「え?」  
「今日起きてから、ずっと眉間に皺寄ってた」  
「……仕方ないでしょ、もう」  
 
 拗ねたように唇を尖らせるメイコ姉の様子がおかしくて、オレは声を上げて笑う。する  
とすかさず胸を揉んでいる手の甲を思いっきり抓られた。…痛いけど、いつものメイコ姉  
らしくなってきた気がする。  
 
「にしても…いったいいつになったら戻るのかしら」  
「さぁ?マスター次第でしょ」  
「…何弄ったら私の身体、こんなことになるのよ、まったく」  
 
 未だにオレに揉まれている自分の胸とその先端から零れる母乳を見て、メイコ姉は深く  
ため息をつく。オレは結構楽しいから、まだ暫くこのままでもいいんだけどなぁ。…なん  
て思っていたら、思考が透けていたのかメイコ姉に睨まれた。  
 
「…メイコ姉」  
「なに?」  
「直接吸ってもいい?」  
 
 ……さすがにそんなに思い切り殴られたら、後頭部が痛い。  
 
 結局メイコ姉の身体が元に戻ったのは、30分程経ってからだった。30分間揉み続け  
ると手も痛くなるよって言ったら、今度は思い切り蹴られました。  
 いつかマスターがまた同じ過ちを繰り返したら、今度こそ直接吸ってやるとひっそり心  
に誓ったのはきっとバレてないはずだ。うん。  
 
 
END  
 

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