閉じられた扉の前で息を飲み込んだ。  
 ここは、がっくんの部屋。いつもだったらまだがっくんは寝ていないだろうけど、  
ここのところずっと忙しかったからどうだか分からない。だから、部屋に行くのもず  
っと我慢していた。リンがいると、きっとゆっくりと寝られないと思って。  
 でも、今日のレコーディングから帰って来たがっくんが、明日は1日休みだって言  
ってたから。  
 意を決して、がっくんの部屋の扉をノックした。  
 
「…誰だ?」  
 
 まだ、起きてた。  
 
「リンです。入っても、いい?」  
 
 ほっと胸を撫で下ろしながら、扉越しに名乗る。返事が来る前に、ゆっくりと扉が  
開いた。きっとそろそろ寝るはずだったんだろう、いつもよりも低い位置でひとつに  
髪をまとめたがっくんが、驚いたように見る。  
 
「リン?どうかしたのか?」  
「…あ、あのね…」  
 
 ぎゅう、と枕を抱きしめる。  
 がっくんとなんだかずっと離ればなれみたいで寂しかった、なんて言ったら、小さ  
い子みたいって笑われちゃうんだろうか。なかなか言い出せないリンの気持ちを悟っ  
たのか、がっくんは少しだけ笑って部屋に入れてくれた。よく考えれば、枕を抱えて  
いる時点でがっくんにはバレバレだったんだと思う。  
 ぽつん、と部屋の真ん中で立ちすくんでいるしかないリンを余所に、がっくんはベ  
ッドに入って寝る準備を始めた。何度見ても、がっくんとベッドってなんだか似合わ  
ない気がする。  
 
「がっくん…?」  
「リン、おいで」  
 
 ベッドの上に横たわり脚だけ布団に入ったがっくんは、笑ったまま手招きをする。  
なんだか嬉しくて泣きそうになるのをおさえながら、がっくんの隣で横になった。ふ  
わりと身体に布団がかけられる。おふとんよりも、すぐ隣のがっくんの体温のがあた  
たかい。  
 
「がっくんには、なんでも分かっちゃうんだね」  
「リン?」  
「リンね、1週間がっくんとこうして一緒に寝られなくて、寂しかったんだ」  
 
 別に、毎日一緒に寝ていたわけでもない。けど、がっくんは1日中レコーディング  
でいなくて、夜も甘えることができなくてすっごく寂しかった。がっくんの邪魔にな  
ることをするのはやめようって決めてたのに、自分の中での約束を破りたくなるくら  
い、寂しかった。  
 
「でも、がっくん、いいの?」  
「何がだ?」  
「がっくん、疲れてるでしょ?リンがいたら、ゆっくり寝られないよね?」  
 
 じっとがっくんを見る。がっくんは笑っているけど、やっぱり疲れているのが分か  
る。がっくんの手がリンの頭をゆっくりと撫でた。その手がすごく気持ちいい。  
 
「そんなに、気にするな」  
「がっくん?」  
「私も、リンと一緒にいられなくて寂しかったから、同じだ」  
 
 がっくんの言葉が胸の中に染みていく。がっくんもリンも同じだったんだって思っ  
たら、胸がいっぱいで涙が出てきた。  
 
「…リン?」  
「泣いて、ないもん」  
 
 誤魔化そうと、がっくんの胸に顔を押し当てる。溢れて来る涙が、がっくんの浴衣  
にじわじわと染みていくのが分かる。がっくんは困ったように笑って、優しく抱きし  
めてくれた。  
 
「………がっくん」  
「どうした、リン?」  
「ちゅ、ってして?」  
 
 がっくんも疲れてるって分かってたし、ただ一緒に寝るだけって思ってた。でもこ  
うやって抱きしめられると、頭がぼーっとしてがっくんともっといちゃいちゃしたい  
って思ってしまう。強く抱きしめて欲しいとか、キスして欲しいとか、…えっちした  
いとか、たくさん。  
 がっくんは少し驚いたように目を丸くしていたけど、頬をそっと撫でて唇にキスを  
くれた。  
 
「…えへへ」  
 
 今度は自分からがっくんにキスをする。ちょっと恥ずかしくてすぐに離れたら、が  
っくんに強く抱きしめられた。ほっぺたが、がっくんの胸に当たる。がっくんのにお  
いが強くなる。胸がどきどきして、ぎゅーってする。ちらっとがっくんを見たら、い  
つもみたいに優しく笑っていた。  
 こんなこと言ったら、リン、嫌われちゃうかもしれないけど。でも。  
 
「……が、がっくん」  
 
 リンの身体にまわしてくれた腕を少しひっぱって、じっと見つめる。がっくんは不  
思議そうに目を丸くして、リンを見ていた。こんな風になってるのは、きっとリンだ  
けなんだろう。がっくんにはしたない子だって思われるかもしれないって考えたら、  
怖くて続きが言えなかった。  
 
「あ、あの…あのね…その…」  
 
 もじもじしていたら、がっくんは何かを悟ったようにリンの頬を撫でた。こつりと  
額が当たる。それを合図に目を閉じると、がっくんの唇がリンの唇に重なった。さっ  
きみたいなキスじゃなくて、おとなの口付け。がっくんの舌がリンの口の中に入って  
くる。最初はいつ息していいのか分からなくてちょっと苦しかったけど、今は平気。  
というか、リンはこのキス、好き。気持ちよくて頭がぼーってなっちゃって、がっく  
んのことしか考えられなくなっちゃうけど。  
 
「……はぁ…」  
 
 唇が離れると、がっくんとリンの間につぅっと糸ができてそのうちに切れた。リン  
はがっくんの首に腕をまわす。もっとさっきみたいなキスして欲しい。がっくんのこ  
とだけ考えていたい。  
 また同じように唇が重なる。リンはがっくんのキスだけで精一杯だけど、がっくん  
は違うみたい。頬に添えた手とは別の手が、パジャマの裾から入って脇腹をするっと  
撫でる。そのまま上にあがってきて、あんまりおっきくないリンの胸をてのひらで包  
み込んだ。  
 
「…んっ……」  
 
 ふにふにと、がっくんの手がリンの胸を揉む。全体を包み込んだり、優しく撫でる  
ようにしたり、さきっぽだけきゅっと摘んだり。がっくんが何かするたびに、いつも  
よくわからない感覚が背中をのぼってくる。わかるのは、がっくんに触られているだ  
けですごく気持ちがよくって、お腹のあたりがもぞもぞするってことだけ。  
 
「…が、くん…」  
 
 胸も気持ちいいけど、下も触って欲しくてがっくんの浴衣の裾を軽くひっぱる。が  
っくんは額にちゅっとキスしてリンの肩を抱き、体制を変えた。丁度、リンががっく  
んに押し倒されたみたいになる。そして胸を触っていない方の手でパジャマのズボン  
を膝のあたりまで下ろす。下着の上から、がっくんの指が触れた。  
 
「ふぁっ…」  
 
 まだ直接触ったわけじゃないのに、くちゅと音がした。恥ずかしい。リンは、えっ  
ちな子なのかもしれない。  
 泣きそうになってがっくんを見る。目が合うと笑って、唇に軽くキスしてくれる。  
 
「がっくん、好き」  
「ああ、リン。私もリンが好きだ」  
 
 その言葉に安心して、リンも笑う。もう一回、キスをした。  
 
「…ぁあんっ!」  
 
 がっくんの指が下着をずらして直接リンのところに触れた。びくんって身体に電流  
が走るみたい。なんでがっくんの指はこんなに気持ちがいいんだろう。毎回不思議に  
思うけど、すぐに頭が真っ白になって考えられなくなっちゃう。  
 
「あ、あ…やぁあん…っ!」  
 
 がっくんの指が動くたび、お腹の奥がじんとしてえっちな液が出てくる。最初はく  
ちゅくちゅって小さな音だったのに、だんだんと大きくなっていく。それを恥ずかし  
いって思う余裕なんかない。気持ちよくって、それどころじゃない。  
 
「はぁ、あんっ…が、がっくん…っ!」  
 
 くぷっと音がしてがっくんの指がリンのなかに入ってきた。自分が壊れちゃいそう  
で、必死にがっくんにしがみつく。リンのなかをかきまわしながら、一番気持ちいい  
突起もぐりっと潰される。もう、だめ…!  
 
「や、あ、ぁあああんっ!!」  
 
 頭の中が真っ白になる。身体中にぴんって力が入って、そのうちにゆるゆると抜け  
ていった。リンのなかからがっくんの指が抜ける。一緒にたくさんのえっちな液もこ  
ぼれていくのが分かって、ちょっと恥ずかしい。はぁはぁと荒れる息を落ち着けるよ  
うに深呼吸しながら、指に絡んだリンの液を舐めとるがっくんを見つめた。  
 がっくんの指も気持ちいい。でも、リンはもっと気持ちいいことをもう知ってる。  
これだけじゃ、足りないんだもん。  
 がっくんもリンと同じようで…というかがっくんはリンを気持ちよくしてくれただ  
けだから足りないのは当たり前だと思うけど…べちゃべちゃになってしまったリンの  
下着を、膝にひっかかっていたパジャマのズボンごと脱がしてくれた。浴衣の前をく  
つろがせて、リンに覆いかぶさる。  
 
「リン、挿れるぞ」  
「ま、待って、がっくん」  
 
 まだ少しぼーっとする身体を起こして、がっくんに抱きついた。がっくんと今日え  
っちしたいって思ったときから、決めていたこと。  
 
「今日は、リンがするの」  
 
 恥ずかしいから耳元で囁くと、がっくんは驚いた顔をしてリンを見た。  
 だってがっくんは、そんなそぶり全然見せないけど、ぜったいぜったい疲れてる。  
えっちしたいっていうのも、リンが言い出したんだもん。…言葉には、恥ずかしくっ  
て言えなかったけど。だから、今日はリンがするって決めてたの。  
 
「だがリン…」  
「いいの、リンがしたいの。だからがっくんはじっとしててね」  
「…無理だけはするのではないぞ」  
 
 ちょっと困ったように笑って、がっくんは身体を離した。あぐらをかいてベッドの  
上に座る。最初は寝転がってもらおうと思ってたんだけど、それだとがっくんをぎゅ  
ってできないから言うのをやめた。  
 
「いく、よ」  
 
 がっくんの身体をまたいでゆっくりと腰を下ろしていく。がっくんの先っぽがリン  
の入り口に触れて、ぐちゅって音がした。思わずびくっと反応してしまう。  
 
「ぁんっ」  
 
 それでも身体を動かさないように堪える。がっくんの両手がリンの腰を支えてくれ  
た。心配そうに見るがっくんのおでこにちゅってキスをする。さらに腰を下ろす。ず  
ぶずぶって、リンのそこがなんの抵抗もなくがっくんを飲み込んでいく。  
 
「…ん、あ、あ、…ぁあんッ!!」  
 
 こつんって一番奥にぶつかった音が聴こえたような気がした。最後まで入ったみた  
いだ。ゆっくり息を吐いて足の間を覗くと、まるでリンががっくんを食べちゃってる  
みたいに見えた。  
 
「がっくん、ぜんぶ、はいったよ」  
「ああ」  
「リンのなか、きもち、いい?」  
「…ああ。温かくて、気持ちがよい」  
 
 そう笑って、おでこに張り付いた髪の毛をぬぐってくれる。リンも同じように、が  
っくんの髪を撫でた。  
 なんとか入ったけど、まだおしまいじゃない。だって、リンも、きっとがっくんも、  
これじゃあ足りない。  
 
「がっくん、うごく、ね」  
「平気か?」  
「うん、たぶんだいじょうぶ。だから、がっくん、は、うごいちゃだめ、だよ」  
 
 ぜんぶ、ぜんぶリンがするの。  
 ゆるゆると身体を動かす。前後に動くだけで、リンのなかのがっくんの位置がずれ  
る。でも、まだ、足りない。少しだけ腰を上げて、すとんって下ろす。くりかえすた  
びに、ぐちゅぐちゅってなかが擦れる。もっと、もっと。気持ちいい場所をえぐって  
欲しくて、がっくんに抱きついてキスをした。  
 
「…ん、ぁん」  
 
 この体制、好き。だって、いつもリンより高い位置にあるがっくんの顔が、同じ高  
さにあるから。腰を動かしながら、むさぼるようにキスをする。がっくんがパジャマ  
のボタンをはずして胸を揉む。  
 
「や、ん、やぁあん…っ!」  
 
 リンがぜんぶするって言いたいのに、がっくんは言わせてくれない。ゆっくりだっ  
たはずの腰の動きがだんだんはやくなっていく。自分の意志で動かしているはずなの  
に、まるでリンの身体じゃないみたい。  
 
「ぁあ、ふぁ、ああんっ!」  
 
 ぬちゅ、ぬちゅっていうえっちな音。がっくんとリンの肌がぶつかる音。ベッドが  
ふたりの体重でぎしぎしっていってる音。それから、リンの声とがっくんの吐息。ぜ  
んぶが混ざって、頭がぼーっとしてくる。いつのまにか、動いちゃだめって言ったが  
っくんが下から突き上げて、リンの気持ちいいところをえぐる。  
 
「あ、ぁあ、や、ぁあん、あんっ」  
 
 さっきよりももっと高いところへのぼっていく感覚。景色が白くかすんできて、わ  
かるのはリンのなかのがっくんだけ。たしかめるように、なんどもなんどもがっくん  
を呼ぶ。  
 
「あ、あぁんっ、が、っくん…!すき、す、き…っ!ぁあああああっ!」  
「リンっ、リン………っ…!」  
 
 頭の中が真っ白になって、ぎゅうってリンのなかががっくんを締めつける。それと  
ほぼ同時に、がっくんのがリンの一番奥でどくんどくんって出ているのがなんとなく  
分かった。身体の力が全部抜けて、がっくんに倒れ込む。優しく撫でてくれるてのひ  
らが、ここちよかった。  
 
 目を覚ました時には、もう昼過ぎだった。重い瞼をあけると、がっくんが微笑んで  
髪を撫でてくれている。なんだか恥ずかしくっておふとんを口許までひっぱった。  
 
「おはよう」  
「…おはよう、がっくん」  
 
 朝の…もう昼だけど、こうやってふたりでごろごろしてる時間も好き。今日はがっ  
くんもリンもオフだから、時間を気にせずにごろごろできる。ひさしぶりの、こんな  
時間。  
 
「昨日の麻婆茄子、美味しかった?」  
「ああ。美味であったぞ」  
「えへへ、それならよかったぁ。リン、また作ってあげるね」  
「楽しみにしている」  
 
 よし、もっとお料理上手になるよう頑張らなきゃ。小さくガッツポーズをすると、  
がっくんと目が合う。すぐににこって笑ってくれて、嬉しい。  
 
「がっくん、だぁいすき!」  
 
 その言葉に応えるように、がっくんがぎゅって抱きしめてくれる。  
 きっときっと、ぜったいに変わらないリンの気持ち。がっくんの腕の中がいちばん  
幸せだなぁ、なんて思った。  
 
 
END  
 

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