「はい、トリート」
ぽい、とてのひらに差し出されたチョコレートとメイコ姉を見比べて、オレはぽか
んと口を開けた。
10月31日。日本ではテーマパークとデパートくらいしか浸透していないけれど、
今日はハロウィンだ。密かにリンとその準備をしていたオレは、身体に適度に包帯を
巻き付け、メイコ姉の部屋の扉を開けるなり決まり文句の「トリックオアトリート!」
と叫んだわけだが。
その結果がこれである。
「…なんだ、用意してたの?」
「あんたたちはこっそり準備してたみたいだけど、そわそわしてたら丸分かり。さっ
きリンも来たしね」
オレと同じチョコレートを受け取ったリンは、喜んでそれを受け取って去っていっ
たらしい。
「…ちぇ」
「残念でしたー」
けらけらと笑うメイコ姉をジト目で見上げる。悔しいのは驚かしたかったというの
もあるけど、もうひとつ。大手を振ってメイコ姉にイタズラできるなんて、今日くら
いしかないというのに。てのなかには、チョコレート。
まぁ、手はもうひとつあるから、いいかな。
「…じゃあ大人しくトリートを頂いとく」
「そうしてちょうだい」
「てなわけで、いただきまーす」
チョコレートの包みをほどくのを、メイコ姉は暢気に見ていた。その腰に腕を回し、
ぐい、と引っ張る。驚いて開かれた口の中にチョコレートを放り込み、そのまま自分
の唇で塞いだ。
「…んんっ!」
口内の温度で溶け出したチョコレートを追うように舌を動かす。チョコレートを見
つけても、唇は離さず。唸る声を聞きながら、内側をぐるりとなぞった。メイコ姉の
身体がびくりと震える。
漸くオレの口に収まったチョコレートは、既に小さくなっていた。
「…ば、あ、な…っ!」
「まだ、全部終わったわけじゃないよ、メイコ姉」
「チョコレートあげたでしょ!?」
「だから、『treat』を受け取ろうと思って」
くす、と笑うとメイコ姉の顔色が変わった。
「トリックオアトリート」は通常「おかしをくれなきゃいたずらするぞ!」と訳さ
れることが多い。だが、『treat』の本来の意味は、おかしなんかではなく『もてなし』
だ。…それならば、ちゃんともてなして貰わないと、ね。
腰に回した手は、次第にメイコ姉の背中を辿る。キスをしながら、服の上から下着
のホックを外した。
「…っ!ちょ、レン…!やめなさいってばっ!」
「だから、いただきますって言ったじゃん。メイコ姉を」
「そんなの知るかー!」
何度もキスが繰り返される。甘い、チョコレート味の口付け。言葉の割に抵抗は少
なくて、オレは内心ほくそ笑んだ。服の中に手を突っ込んで、下着の締め付けから解
放された胸をやわやわと揉む。指先が先端を掠り、メイコ姉は小さく声を上げた。
「ふぁ…」
「メイコ姉って、本当乳首が弱いよねー」
「ば、ばか…!」
ぽかん、とオレを叩く拳に威力なんてない。受け入れる気がないわけじゃないのに、
恥ずかしいからせめてもの抵抗なんだろう。思わずくすっと声を漏らして笑うと、睨
まれてしまった。
胸全体を揉み上げながら、固くなり出した頂を弄るのも忘れない。くりくりと捏ね
るだけで、メイコ姉の声は艶を帯びてくる。弄っていた方の乳首だけ、服の上から分
かるくらい勃ち上がっていた。
「あ、あぁっ…んんっ」
「かたっぽだけってのもエロいけど、こっちが可哀想だね」
「やぁんっ!」
まだ弄ってない方の乳首に、服越しにちゅっと口付けた。びくん、と身体が跳ねる。
ちゅ、ちゅ、と音を立てて吸い付きながら、片手をスカートの中に差し入れた。脚の
付け根の中心は、じんわりと湿っていた。
「ぁあんっ、れ、レンやめ…っ」
「ふぅん、本当にやめてもいいの?」
ぴた、と動きを止める。メイコ姉は驚いたように…傷ついたようにオレを見た。
「メイコ姉がやめてって言ったんだよ」
身体に抱きついたまま。だけど、その手は刺激を与えない。勃ち上がった乳首も、
濡れた下着も、薄く上気した肌も、全部そのままだ。メイコ姉は顔を真っ赤にして
オレを睨む。暫く赤い顔のままうんうんと唸っていたが、そのうちにオレの手を取
りベッドへと向かった。
「メイコ姉?」
わざと、何も分かっていないかのように問い掛ける。ベッドに音を立てて座った
メイコ姉は、オレの手を持ったまま俯いて呟いた。
「……うそ」
「なにが?」
「やめてっていうの、うそに決まってるじゃない。ばか」
きゅ、とオレの手を握る手に力がこもる。オレより年上で、普段は弱い所をひた
隠しにしようとするメイコ姉が、あまりにも可愛くて。オレはそのままメイコ姉の
身体を抱きしめた。
「しかたないなぁ、メイコ姉は」
これじゃあ、どっちが『もてなし』されているかわかんないな、なんて。そう思
いながら、メイコ姉をベッドに押し倒した。頬を撫でながら、甘いキス。もう片方
の手は太腿を一度撫で、スカートごと下着をおろしていく。さっきのような抵抗も
なく、寧ろメイコ姉は腰を上げて協力してくれた。
「ふぁ、ぁあん…」
くちゅ、と秘裂に指を這わせる。素直に漏れる吐息はひどく甘い。頬、首筋、腹、
と一度ずつキスをして、オレはメイコ姉の脚の付け根を覗き込んだ。すっかり濡れ
そぼったそこは、さらなる刺激を求めて震えている。
「ぐちょぐちょ」
「な、なに言うのよばか…ひゃぁああんっ!」
開ききったそこを唇で覆い舌をねじ入れると、メイコ姉は面白いくらい反応を示
した。同時に奥から愛液が溢れて来る。とろりと舌に絡む蜜を舐めとりながら、思
い切り吸い付いた。びくびく、とメイコ姉の身体が震え、嬌声が上がる。
「あぁっ、やぁあっ、…ああああんっ!」
鼻先がぷっくりと主張する陰核を掠め、メイコ姉は弓なりに身体を反らした。軽
く、達したようだ。ゆるゆるとベッドに崩れ落ちるのと同時に、ひくつく秘裂から
愛液がとろとろと零れる。
…そろそろ、いいかな。オレも、限界だし。
はぁはぁと息をする度に上下する胸元のチャックを下ろしてやる。下着のホック
は既に外してあったため、勃ち上がった乳首が零れた。淡く色づく胸元に口付けて、
紅い印を残す。
下半身に包帯、巻いておかなくてよかった。なんて、こうなること期待して上に
しか巻かなかったんだっけ。そんなことを考えながらオレは自分の下穿きを寛がせ、
いきり立った自身を濡れた秘裂に宛てがった。
「挿入るよ」
メイコ姉がとろんとした目で頷く。ぐっと腰を押し進めると、メイコ姉のそこは
なんの抵抗もなくオレのものを飲み込んだ。
「ああ、ふああああっ」
「…っ!」
とろとろのそこは、オレを受け入れて締めつける。もっと奥へ誘うように、やわ
やわとオレを刺激する。いつも、こうだ。メイコ姉の中は、挿入るだけで果ててし
まいそうになる。射精感を堪えて歯を噛み締めながら、オレは漸く一番奥へと辿り
着いた。
「は…っ、メイコ姉、エロすぎ…」
「な…!え、エロいのは、どっちよばか…っ!」
なんか「ばか」ばっか言われてる気がするのは、気のせいじゃないんだろうなぁ。
苦笑して、メイコ姉の唇にキスを落とす。そのせいで身体がずれ、応えるようにメ
イコ姉のなかが動いた。…さっきのチョコレートよりも、メイコ姉のがもっと甘い。
絶対。
ゆっくりと腰を動かし始める。少し引いて戻し、また少し引いて戻し。それに合
わせて、メイコ姉はあ、あ、と小さく喘いだ。そのうちに弱いところに当たったよ
うで、分かり易くびくんっと身体が反応する。
「あぁんっ!」
「メイコ姉はここ弱いよね」
「や、あぁあん…っ!」
弱いところを的確にぐりぐりと抉ると、オレの肩に回されていたメイコ姉の両手
に力が入った。服と巻き付けた包帯の上からメイコ姉の爪が食い込む。その痛みす
ら、いとおしい。
動きはやがて、深い抽送へと変わる。脚を持ち上げて、さらに奥へ。結合部から
するぐちゃぐちゃという淫音が、オレとメイコ姉の興奮を高める。動きに合わせて
揺れるメイコ姉の胸の先端を甘噛みした。
「ひゃあああっ!」
「…っ、キツ、すぎ…!」
きゅううと収縮する膣内。必死にオレにしがみつくメイコ姉の目は、どこを見て
いるのかすら分からない。きっと、限界が近いのだろう。それは、オレも同じだ。
「や、だめ、ああっ、レンッ、も、だめぇ…あああああっ!」
「…くっ!」
一際高い声と同時に、内壁が搾り取るように締めつける。ギリギリのオレがそれ
に耐えきれるわけもなく、誘われるまま全てを吐き出した。
「…はぁ…メイコ姉…?」
身体を動かすと、メイコ姉の中から萎えたオレのものと、愛液と精液が混じり合
った白濁が流れ出る。その感覚さえ今のメイコ姉には刺激になるようだ。ぴくん、
と身体が震えた。
浅い息を繰り返すメイコ姉は、口をきくのも億劫なようで目だけで応える。オレ
は僅かに笑って、その目許に口付けた。
「確かに『treat』頂きました。ごちそうサマ」
「……ばか」
実際に『もてなし』たのはオレの方かもしれないけど、十分楽しんだのは一緒な
のでまぁいいか。汗ばんだメイコ姉の頬を撫で、惹かれるように唇を重ねた。
END