リンが熱を出した──という表現が正しいのかどうかは分からない。ボーカロイドであ  
る彼女に至っては、「オーバーヒートした」と言った方がより適切だろうか。いずれにせ  
よ、リンの体温が昨夜から平熱を3度以上も上回り、ベッドから起き上がれない状態であ  
るのは確かだった。取扱説明書によれば、急激な気温の変化や歌唱システムの酷使など、  
様々な条件が重なったときに稀にこのような事態に陥ることがあるらしい。それは人間で  
いうところの「風邪」に酷似した症状だった。  
 がくぽはリンが横になったベッドの枕元にあぐらをかき、腕を組んでじっと彼女の様子  
を見守っていた。昨夜からずっとこの調子である。彼がその場を離れようとすると、眠っ  
ているのだとばかり思っていたリンが薄く目を開き、「どこ行くの?」と力なく訊ねてく  
るせいだ。この場合の「どこ行くの?」は「行かないで」と同義だった。  
 そういうわけで、がくぽは彼女の傍を離れられず、昨夜からこうしてリンの看病を続け  
ているのである。  
「がっくん」  
 ふいに名前を呼ばれて目をやると、それまで眠っていたリンがいつのまにか目を覚まし、  
こちらを見ていた。  
「目が覚めたか」  
「うん」  
「具合はどうだ」  
「頭がぼうっとする気がする」  
「だるいか?」  
「よくわかんない」  
「吐き気は?」」  
「わかんない」  
 まだ熱に浮かされているのか、リンの返事はてんで的を射ない。がくぽは軽く息を吐い  
て、すくっと立ち上がった。リンの額に乗せた氷嚢を取り替えるためだ。  
 ベッドの傍を離れようとすると、着物の袖を引っ張られた。内心またかと思いつつ、が  
くぽは振り返る。すると案の定、心細そうな顔をしたリンと目が合った。  
「がっくん、どこ行くの……?」  
「新しい氷嚢を持ってくる」  
 がくぽはリンの額の上に乗せてあったそれをひょいと取り上げた。  
「もう完全に溶けてしまっているだろう。これでは意味がない」  
 がくぽの袖を掴んだリンの手にぎゅっと力が入った。  
「やだ。ここにいて」  
「すぐ戻る」  
「氷なんか、なくていい。熱、もう下がったもん」  
「その割に顔が赤いぞ」  
「熱のせいじゃないよ」  
「ならば何のせいだ」  
「がっくんのせい」  
 リンはどうあっても離してはくれないが、彼女の様子を見ているととても熱が下がった  
ようには見えない。がくぽは床に膝を突いて身を屈め、リンの額に自分の額を押し当てた。  
リンがぎゅっと目を閉じた。  
「やはりまだ熱い」  
 小さく口にすると、閉じられていた瞳がすぐ目の前でゆっくりと開いた。二つの碧い瞳  
は、熱のせいかしっとりと潤んでいる。  
「だって、傍にいてくれなきゃさみしいんだもん……」  
 身体の調子が悪いときというのは、かくも気まで弱ってしまうものなのだろうか。がく  
ぽには未だこの熱暴走の経験がないので分からない。  
 がくぽはリンの汗ばんだ額と髪をゆっくりと撫で、薄く開いた唇に軽いキスをした。リ  
ンの柔らかい唇に己の唇を触れさせたまま、囁くように告げる。  
「少しだけ待っていろ、リン。氷を取ってくるついでに、メイコどのに言って何か食べる  
ものを──」  
 言いかけた言葉は途中で途切れた。  
 リンががくぽの頬を両手で挟んで、自分から彼の唇を塞ぐように口づけたからだ。  
 
 がくぽが上半身を起こそうとすると、リンはしがみつくように腕ごと彼の首に回してき  
た。  
「ん……ぅ……」  
 唇の隙間から伸びてきたリンの舌は、いつもより熱かった。リンはいつになく大胆に舌  
と舌を絡めてくる。蜜のように柔らかい唇と、熱を持って絡んでくる舌。時折、苦しげに  
喘ぐ呼吸。がくぽは無意識のうちに、自らも舌を動かして応えていた。  
「はぁ、はぁっ……んっ……ぅ……」  
 口の周りがほっぺたまで唾液で濡れるほど濃厚で長いキスだった。熱で体力の落ちたリ  
ンの息はもう完全にあがっていて、しかしそれでも無我夢中でキスを続けている。がくぽ  
の首に腕を回し、時々首の角度を変えながらキスに夢中になっているリンはとてつもなく  
可愛い。唾液を嚥下する、コクンという音すら可愛い。リンがこんなに積極的なのは初め  
てかもしれない。熱に浮かされているせいか──そこまで考えて、がくぽははたと我に返  
った。  
 そういえば、リンは熱を出していたのだ。ディープキスで体力を消耗している場合では  
ない。  
「リン」  
「んぅ……?」  
 がくぽは放っておけばもっともっとと強請ってくる唇を無理矢理に引き離した。  
 リンは焦点の定まらない目でぼんやりとがくぽの顔を見ていた。  
「もういいであろう。今日くらい大人しくしておかねば、いつまでも直らぬぞ」  
 早々に立ち去った方がいいと判断し、がくぽは腰を上げた。それを見たリンの焦点が徐  
々に定まってくる。  
「がっくん、なんでそんないじわるするの?」  
 リンがベッドから起き上がった。また捕まってしまわないように、がくぽが一歩後ずさ  
る。リンはあからさまにショックを受けたような顔をした。  
「ひどい。がっくん、リンのこときらいになったの?」  
 じわ。  
 二つの瞳に涙が滲む。  
「そうは言っておらん。少し外すと言っただけだ」  
「だから、なんにもほしくないって、言ってるでしょ。リンはがっくんがいればいいの」  
「そういうわけにもいかぬ」  
「リンがいらないって言ってるのに」  
 とうとうリンの目から大粒の涙がこぼれ落ちた。  
「ううっ……がっくんの、ばか……ふえぇ」  
 いよいよ本格的に泣き出したリンに、何と言ってなだめればよいものかと思案していた  
がくぽは、ふとあるものに目をとめて思考停止した。  
 リンのパジャマの第一ボタンが外れて、肌蹴た胸元からぷくっと膨らんだ可愛らしい乳  
房と、ピンク色に色づいた突起がチラリと見えていたのだ。そういえば、さっきリンの汗  
を拭いてやったときにボタンを外して、そのままだったような気がする。  
 まずいものを見てしまった──それとなく目を逸らしながら、がくぽは己のうかつさを  
呪った。  
 リンは自分のしどけない姿に気づいていないようだ。ぽろぽろと零れる涙を手の甲で拭  
いながら、しゃくり上げている。少しサイズの大きいパジャマの胸元からは、やはり小さ  
な乳首がばっちり見えていて、どうぞしゃぶってくださいとばかりに誘いかけてくるよう  
だった。がくぽはあの乳首の、悪魔のような柔らかさと味を知っている。  
 ただでさえ濃厚なキスによってエンジンがかかりかけていたところに、この光景はキツ  
イ。一度頭に上った血が一気に下半身に集まってくるような感覚だ。  
「がっくん……?」  
 遠慮がちに呼ぶ声にはっとした。リンはいつの間にか泣きやみ、固まってしまったがく  
ぽを不思議そうに、小首を傾げて眺めていた。  
「もしかして、怒ったの?」  
 リンが消え入りそうな声で言った。  
「リンが、わがままばっかり言うから?」  
「違う」  
 
 即答で否定した。  
 リンがどれだけ我が侭を言おうと、それでがくぽが怒ったりなどするはずがないのだ。  
「じゃあ、ここにいてくれる……?」  
 これ以上ここにいると何をするか分からない──とは口にせず、がくぽはベッドの縁に  
腰掛けてリンの髪を撫でてやった。  
「ここにいよう」  
 するとリンは安堵したように笑みを浮かべ、そっと目を閉じた。がくぽは親指の先でリ  
ンの濡れた頬を拭い、顎を上向かせてその唇に口づけた。普段からリンはがくぽより体温  
が高かったが、今はより一段と熱い。舌を滑り込ませた口の中も、いつもより熱く感じた。  
「ん、ん……がっく、ん」  
 長いキスの途中で、リンが突然辛抱しきれなくなったように抱きついてきた。半分体当  
たりでもするような勢いだった。  
「がっくん」  
 がくぽの身体にぎゅっとしがみつき、リンは甘えるように言った。  
「リン、なんだかえっちな気分になってきちゃった」  
 抱きついたリンの腕にきゅっと力がこもり、がくぽの耳に唇をくっつけてうわごとのよ  
うに囁く。  
「がっくんに、えっちなことたくさんしてもらいたい」  
 リンががくぽの耳たぶに軽く歯を立てた。そこを甘噛みしながら、覚束ない手つきで自  
分のパジャマのボタンを外す。耳にリンの熱い吐息が当たってくすぐったい。下半身が疼  
く。  
 ボタンを一番下まで外したリンはパジャマを脱ぎ捨て、上半身裸になった。さっきちら  
ちら見え隠れしていた膨らみが目の前に晒されている。ぷるっとした、消して大きくはな  
いものの、いかにも弾力のありそうな瑞々しい乳房。  
「さわって?」  
 リンが可愛らしく小首を傾げながら言った。  
 請われるがままに、がくぽはリンの乳房に手を伸ばした。  
 指先で軽く押すと、ふにっと指先が埋まる。  
「そんなんじゃやだ。もっとさわって。たくさんさわって」  
 リンがねだる。  
 がくぽは下から持ち上げるようにしてリンの両方の乳房を手のひらで包み込んだ。乳房  
全体をやわやわと揉みながら、人差し指と中指の間に乳首を挟んで、くりくりと刺激する。  
「あ、ん……それ、きもちい」  
 鼻にかかったような声でリンが呟いた。感じやすいリンの乳首はもうすでにピンと起ち  
あがっている。  
「はぁ……はっ……ん」  
 体力が落ちているせいか、呼吸が上がるのもいつもより随分早い。とろんとした目つき  
のまま、リンはパジャマのズボンと下着を自ら同時に脱ぎ去った。一糸まとわぬ姿でがく  
ぽの膝に跨り、彼の頭を抱きしめるように腕を回す。ぷにっとした乳房の感触が頬に当た  
って気持ちがいい。  
「がっくん、おっぱいちゅっちゅは?」  
 まるで赤ん坊に話しかけるような口調でリンが促した。すぐ目の前にあるピンク色の突  
起を、焦らすように舌先でチロチロと舐める。  
「あっ、あ……やぁん、いじわる、しないで……」  
 焦れたリンは自分で身体の位置を調節して、がくぽの唇に乳首を押しつけた。無意識な  
のかわざとなのか、がくぽの頭を抱きしめる腕に力が入って、ふわっとした膨らみで窒息  
しそうなほどだった。  
 それはそれで幸せなのだが、あんまり焦らすのも可哀想だ。がくぽはリンの乳首を咥え  
て、口の中でベロベロと舐め回した。  
「ふぁ……っ、にゃ、あんっ……! はっ、はぁっ、ん……!」  
 あどけないリンの声に不釣り合いな嬌声が、がくぽの鼓膜を刺激する。喘ぐ声がもっと  
聞きたくて、がくぽはリンの乳首を口内でこれでもかというほど蹂躙した。強く吸ったり  
、弱く吸ったり、軽く歯を立てて甘噛みしたり、たっぷりと唾液をなすり付けて舌先でコ  
ロコロと頃がしたり。刺激を与える度にリンは可愛く鳴いて、がくぽの欲情を煽った。リ  
ンの胸はもうがくぽの唾液でびしょびしょだ。  
 
「はぁ、はぁ……がっくん、これ、ぬいで」  
 リンががくぽの着物の襟を掴んで引っ張った。  
「はだかで、ぎゅってしてほしい」  
 やはり今日のリンはいつもより積極的だ。がくぽが着物を脱ぐ間にも、その短い時間す  
ら惜しいというように、頬や唇にキスしてくる。やがてがくぽが生まれたままの姿になる  
と、リンは待ちかねたようにまた抱きついてきた。  
「がっくんのからだ、冷たくてきもちいー……」  
「リンの身体が熱いのだろう。まだ熱も下がらぬ身で」  
「そんなの知らない。がっくんがだいすき」  
 リンはがくぽの肩口に頬ずりした。素肌のむき出しになった膝の上に跨っているせいで  
、リンの割れ目は直接がくぽの太ももにぴったりとくっついている。腕の中の少女を自分  
のものにしたい欲望がムラムラと身体中を駆け巡り、思わず力任せに裸の身体をぎゅっと  
抱きしめると、リンのアソコからじわりと溢れてきた熱い蜜が、がくぽの太ももを濡らし  
た。  
「ん……がっくん、ゆび、いれて?」  
 少し腰を浮かせて、リンが誘うように身体を開く。リンの割れ目とがくぽの太ももの間  
に、ねっとりと糸が引いた。  
 たっぷりと潤ったアソコに指を這わせ指先で愛液をすくい取ると、がくぽはそれをクリ  
トリスになすり付けた。  
「あ、あ……っ!」  
 そのまま、ぷっくりと勃起したクリトリスに愛液を塗りつけるように、指先でゆっくり  
と擦る。指先が乾けば、リンの奥からとぷとぷと溢れてくる蜜をまたすくい取って、執拗  
に小さな突起を弄った。  
「ん、ふぁ……やだ、はやくぅ……ゆび、いれて……がっくんの指がほしい」  
 こう可愛くお願いされてはその通りにするしかない。がくぽがたっぷりと水分を含んだ  
ソコにヌプっと指を挿れると、リンの眉根が切なげに寄せられた。  
「は、にゃ……ぅ、ん……!」  
 はぁはぁと息を荒げながら、リンがねだる。  
「ゆび、動かして……おねがい」  
 がくぽの中指を根本までズップリと咥え込んだ膣内は熱く、弛緩を繰り返しながら絡み  
ついてくる。指先をクイと動かすと、リンの肩がピクンと強ばった。  
「あ、はぁっん……!」  
 うっすらと目に生理的な涙を浮かべ、リンが虚ろにがくぽを見た。もっと、と顔に書い  
てある。  
 ……チュッ、クチュ、クチュ……クチュ、チュッ……  
 膣内をかき回すように指を動かすと、空気と液体の混ざる卑猥な音が響いた。  
「あ、あんっ……はぁっ、ああっ……! き、きもちい、よぅ……!」  
 リンの力なく緩んだ口元から、飲み下せなかった唾液がたらっと零れた。がくぽはそれ  
を舌で舐め上げ、うっすら開いた唇に己の唇を重ねた。リンの膣内に挿れた指の動きは休  
めない。激しく中をかき回しながら、互いに舌を絡め合う。強く吸うようにしながら唇を  
離すと、一緒に吸い出されてきたリンの小さな舌が唇からちろっと顔を覗かせた。この上  
なく淫猥で、扇情的な光景だ。  
「あ、あ、だめ、や、イキそうっ……! あぁっ……あ、あぁあん!」  
 短く荒い呼吸をしながらリンが快感を訴える。がくぽは指を一本増やし、リンの中の一  
番いいところをかき回し続けた。リンの中はもうグチョグチョで、後から後から溢れてく  
る愛液でがくぽの膝もびしょびしょだ。がくぽの指の動きに合わせてリンの中からクチュ  
クチュといやらしい水音が聞こえる。その眉間には切なげにしわができ、激しい快感に耐  
えているようだった。もうそろそろ達する頃合いだろう。がくぽは指の動きを早めた。  
「やっ……! がっ……くん、だめ、やだあっ……! やめ、て……やめてぇ!」  
 突然、リンがほとんど悲鳴に近い声でがくぽを制した。がくぽの手首を掴んで、必死に  
やめさせようとする。がくぽは手を止めずに短く訊ねた。  
「どうした」  
「あぁ、あ、お、おしっこ、でそうっ……あ、も、でちゃう、でちゃうっ!!」  
 
 言い終わるか終わらないかのうちに、リンのうっすら茂ったしげみの奥から、透明な液  
体がピュッと吹き出してきた。  
「あああぁっ! いやあぁんっ!!」  
 悲鳴をあげたリンの身体がガクガクと震えた。  
 吹き出してきた透明な液体は、ピュッ、ピュッと何度か勢いよく噴出を繰り返して、や  
がて止まった。  
「はぁ、はぁ……」  
 リンは恍惚とした表情で荒く息を吐いていたが、ふいに泣きそうに顔をゆがめた。  
「う、うぇっ……ふえぇ」  
 そうこうするうちに、リンは本当に泣き出してしまった。何故泣くのか、がくぽにはわ  
けがわからない。とりあえず濡れていない方の手でリンの頭を撫で、優しく問いかけた。  
「どうしたのだ、リン。何故泣く」  
「うぅっ……だって、がっくんの手、汚しちゃった……」  
 言われて見ると、確かにリンのアソコから吹き出してきた液体はがくぽの腕全体に降り  
かかり、じょうろで水でもかけたように濡れていた。ごめんなさい、と言いながら泣くリ  
ンが急に可愛らしく思えて、がくぽは膝の上に乗せた彼女の身体を抱きしめた。  
「リン、泣くな。これくらいどうということはない」  
「ふぇ……でも、リン、もう子どもじゃないのに、お漏らし、なんかして……うぅっ、ご  
めんなさい……」  
 お漏らし、とリンは言うが、がくぽの腕にかかった液体はサラッとしていて匂いもしな  
い。尿とは違うように思えるし、それにリンにお漏らしさせたのは他ならぬがくぽだ。  
「構わん。後で湯を浴びてくればよい」  
「うぇっ……ヒック……ほんとに? 怒ってない?」  
「怒ってなどおらぬ」  
 そう告げて、がくぽはリンを安心させるようにその額にちゅっと口づけた。あやすよう  
に背中を軽く叩いてやるとリンは少しずつ泣きやみ、甘えた声で懇願した。  
「じゃあ、リン、今度はがっくんがほしいな」  
 言われるまでもなく、二人の身体の間でがくぽのペニスも臨戦状態だった。可愛いリン  
が泣いて甘えて、裸で抱きついてきているのだから仕方がないだろう。がくぽがリンを膝  
から抱き上げてベッドの上に下ろすと、リンは素直に四つん這いになり、がくぽの股間に  
顔を寄せた。  
「がっくんの、すごくおっきい……」  
 エレクトしたがくぽのペニスをまじまじと見つめては知らずのうちにぽつりと呟き、自  
分のセリフのいやらしさに後から気づいてぽっと顔を赤らめる。  
 その先端の小さな割れ目から、ぷくっと透明な汁が球になって盛り上がっているのを見  
つけて、リンはそれを人差し指でちょん、と触った。そのまま指を離すと、ぬめりのある  
液がツッ……と糸を引く。まるで乳液でもすり込むような仕草でカウパーをがくぽの鈴口  
の周りになすりつけ、ヌルヌルとした感触を楽しむように擦る。痺れるような快感が陰茎  
からがくぽの身体の中を駆け上がり、それに呼応するようにまたぬるっとした先走りが漏  
れた。  
 リンは小さな指で丸い先端をヌルヌルと擦りながら、硬い幹をきゅっと握り込んだ。ほ  
どよい力加減で握りながら、ゆっくりと上下に扱く。刺激を与える度に反応して先走りの  
蜜を漏らすペニスが面白いのか、リンはうっとりした表情でそれを見つめていた。  
 気持ちよくてたまらない。ハァッと大きく息を吐くと、リンが嬉しそうに「気持ちいい  
?」と訪ねてきた。がくぽは口を開くのも億劫で、リンに向かって一つ頷いてみせた。  
 おもむろに、リンが目の前のペニスをぱくっと咥えた。熱く湿った口の中は手で握られ  
るより数倍気持ちがいい。思わず眉を寄せると、それを見たリンが陰茎に舌を絡ませてき  
た。  
 唇をすぼめて扱くように頭を上下させながら、口の中では舌をれろれろと動かしてペニ  
スにねっとりと絡める。舌の中心をへこませて幹にあてがい、裏筋をさするように舐め回  
したり、雁首のくぼみに舌先を埋め込むようにしてぐるんとなぞったり。最初はおっかな  
びっくりだったものが、最近は随分上達してきたようだ。  
 リンは口に咥えたがくぽのペニスに唾液をたっぷりと馴染ませ、きゅっと唇をすぼませ  
て激しく扱いた。  
 
 じゅぽっ、じゅぷ、じゅる、じゅぼっ……  
 卑猥な音をたててバキュームフェラをしながら、口に入りきらない根本の部分を手で握  
って扱く。ペニスを手と柔らかい唇で扱かれ、更に口の中では熱い舌が様々な方向からヌ  
ルヌルと絡みついてきて、激しい射精感に襲われる。  
「リ、ン……ッ!」  
 リンの名前を呼ぶと彼女はぱっと手を離し、咥え込んでいたペニスを口から出した。ギ  
リギリまで追い詰められ、昂ぶった快感がフッと消え失せる。がくぽははぁはぁと荒々し  
く呼吸をしながら、じろりとリンを一瞥した。  
 とにかくこの昂ぶりを早くどうにかしたい。  
 その一心で、がくぽはベッドの上にリンの身体を組み敷いた。ぐっと乱暴に膝を割って  
、膣の入り口をさらけ出す。最後に潮を吹いてから少し時間がたっていたが、そこはまだ  
たっぷりと蜜を含んで、テラテラと光っていた。がくぽのペニスを唇で愛撫しながら、自  
分も感じていたらしい。がくぽはついさっきまでリンの口の中に収まっていたペニスの先  
端を、濡れた割れ筋に宛がった。  
 押し入る直前、リンと目が合った。  
「がっくんのそういう表情、すごいエッチでだいすき」  
 熱っぽい声に背中を押され、がくぽは猛り狂った欲棒をリンの膣内へ埋め込んだ。  
「ああぁっ……!」  
 リンが悦びの声を上げた。互いに欲望は限界まで高まっている。直後、がくぽは激しく  
腰を使い始めた。  
「あっ、あんっ、ああっ、はあんっ!!」  
 腰を打ち付ける度に、それと同じリズムでリンの唇から甘い嬌声が漏れる。質量のある  
肉棒は指の何倍、何十倍もの快楽をリンに与えた。何より大好きな男と一つに繋がってい  
るという事実が、リンの快感を更に高めた。  
「あ、はぁっ……が、がっくん、すきぃ……っ! だいすきっ……あ、あぁんっ!」  
 激しく腰を打ち付けると、リンの膣内ががくぽの肉茎を絞るようにぎゅうっと締め付け  
た。熱い肉襞と亀頭が直に擦れる快感には耐え難いものがある。押し入る度にリンの膣に  
ペニスを扱かれ、引き抜く度にまた扱かれる。リンが耐えかねたように自分の乳首を自分  
で弄っているのを見咎め、がくぽはその手をどかして彼女の柔らかい乳房を揉み捏ねた。  
 リンの愛液とがくぽのカウパーが混ざりあい、抽送の度に結合部からにちゃっ、にちゃ  
といやらしい音が鳴る。  
「あん、ひぁっ……き、もち、イイっ……! んん……も、だめ、リン、おかしくなっち  
ゃ……うぅっ……!」  
 あまりの快感にうまく回らなくなった舌で、リンが喘いだ。いつも無邪気であどけない  
リンが、こんなに乱れた姿を誰が想像できるだろうか。幼い声で嬌声を上げるリンはこの  
上もなく可愛らしく、そして卑猥だ。繋がった部分から聞こえるグチュッグチュッという  
水音と、二人分の荒い呼吸音と、肌がぶつかる音が混ざり合って、この妖艶なムードに拍  
車をかけていた。  
 がくぽは欲望の赴くままに、リンの小さな身体を揺さぶった。激しく腰を振れば振るほ  
ど、リンの肉壁はがくぽの陰茎をぎゅっと締め付けて離さない。がくぽの太い肉棒が、リ  
ンの淡い茂みの奥にある蜜壺へと消えていく様が扇情的に映った。  
「あ、あ、イク! イ、クぅっ……あああああっ!!」  
 一際高い悲鳴と共に、リンの膣内ががくぽのペニスに吸い付くように収縮した。波のよ  
うに膨れあがった射精感が尿道を一気に駆け抜け、目の前で白い火花が散る。  
 がくぽはリンの中を最奥まで貫き、その突き当たりに己の欲望の全てを吐き出した。  
 熱いリンの中で肉茎がビクビクと収縮を繰り返し、びゅるっ、びゅるっと精液をブチま  
ける。  
「はぁ、はぁ……ん……がっくんの、リンの中で出てる」  
 やがて収縮が収まり、吐精が終わった。心地よい倦怠感の中で、がくぽがすっかり縮ん  
でしまったペニスを引き抜こうとすると、リンの中がきゅっと名残を惜しむように締まっ  
た。  
「やだ……もうちょっとだけ、このままでいたい。がっくんと繋がっていたい」  
 恥ずかしそうに告げた唇に軽くキスを落とし、がくぽはリンの中に自身を残したまま、  
彼女の上に上半身を投げ出した。  
 
 
 
 
「はい、がっくん、あーんして」  
 そう言ってリンががくぽの目の前に差し出したのは、いびつな形をしたリンゴだった。  
もちろん、リンががくぽのために自分で剥いてきたものだ。ところどころに赤い皮の残っ  
たそれを咀嚼しながら、がくぽは昨日の出来事を思い起こした。  
 リンに誘われて──とがくぽ本人は今でも思っている── 一戦交えた後、二人して全  
裸のまま、布団も被らずにベッドの上で力尽きて眠ってしまった。呆れたことに、目が覚  
めてもがくぽの一物はリンの中に収まったままだった。汗をかいた後そんな格好で寝てい  
れば、身体の調子がおかしくなっても不思議ではない。リンはがくぽと繋がったまま眠れ  
たことにご満悦の様子だったが、がくぽの方はお約束のように体調をくずしてしまった。  
 そして、今のこの状態だ。  
 寒気はするし頭痛はするし、身体はだるいし食欲もないし、いいことが一つもない。リ  
ンが熱に苦しんでいた時は代わってやれるものなら代わってやりたいと思っていたが、ま  
さか本当に代わってやることになるとは。  
「がっくん、喉乾いてない? ジュース持ってきてあげよっか?」  
「遠慮しておこう」  
「じゃあ、お熱計ろうか?」  
「さっき計ったばかりだろう」  
「じゃあ、ご本読んであげよっか?」  
「それも要らん」  
 リンはというと、驚異的な回復力で今はもうピンピンしている。二人の様子を見たレン  
が「熱暴走って伝染るわけ」と冷めた調子で言い捨てたほどだ。彼女はがくぽの看病がで  
きるのが嬉しいらしく、さっきからあれやこれやと世話を焼いてくる。  
「もう。じゃあ、がっくんは何がほしいの?」  
「少し眠らせてはくれぬか」  
「わかった、添い寝してほしいんだね!」  
 勝手に解釈したリンが、いそいそとがくぽの布団の中に潜り込んできた。  
「直るまで、リンがずっと一緒にいてあげるね」  
 まんまとがくぽの腕の中に収まったリンが、彼の頭をよしよしと撫でた。これではゆっ  
くり休むどころではない。  
 寝付きのいいリンはがくぽの腕の中で彼の身体にぴったりと寄り添って、もう寝息を立  
て始めていた。そんなリンにため息を一つ零し、がくぽは苦笑した。  
 
 
 可愛いリンがずっと一緒にいてくれるのならば、熱を出すのも悪くない──か。  
 
 
-了-  
 

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