きっかけは些細な口論から。
かっとなって手が出たことなんて初めてだった。
彼女の軽い身体はあっけなくベッドに倒れこみ、
組み敷いた手足は、どんなに暴れても僕の身体を跳ねのけられやしなかった。
今まで知らなかったんだ。僕の方が力が強いんだってこと。
あんなに大きく見えた彼女は、僕の下で悔し涙を散らせながら、
圧し掛かる僕から必死で逃れようとしている。
胸がざわざわした。既に怒りは治まっているはずなのに、
彼女の肩を掴む手が勝手に、ぎりぎりと爪を立てていく。
――逃がすもんか。
初めて知った感情に、口の端を吊り上げて見せると、めーちゃんの顔から血の気が引いていく。
感じすぎて身体も頭もばかになってる。それでも腰が止まらないんだ。
彼女の中がぎゅんぎゅん締め付けてきて離してくれない。
どうしよう、壊しちゃうかもしれない。
荒い息と一緒にそう吐き出したら、さっきからずっと虚ろだった彼女の目に怯えの色がよみがえって
やだ、やだって言いながら弱弱しく涙を零して、僕から逃げようとする。
かないっこないよ。僕の方が優位にいるんだから。
その細い手首をぎゅっと掴んで、また奥深くまで打ち込んだ。
あぅあぁぁ、と絞り出すような悲鳴が耳を打つ。
嫌がってるのに身体はすごく気持ちいいみたいで、胎内と内股に力がこもるのが分かった。
無力な彼女をこんな風に力で奪い取るのはよくないことだって分かってるはずなのに、
支配欲が、嗜虐欲が勝ってしまう。
めーちゃん。
訳も分からず一方的に嬲られて可哀想。でもどうしようもなく可愛い。
このままじゃ本当に壊してしまう。だけど今離すなんて考えられない。
まずいことをしてる自覚だってあるけど、もう他の事なんてどうでもよくなってきた。
いっそ廃棄処分になってもかまわないとさえ思う。今さえよければ。
もう、このまま混じりあって溶けてしまえればいいのに。
快感に打ち震えるだけの人形になってしまった彼女の鎖骨の下にキスを一つ。
火照った肌に赤い痕がとても綺麗に咲いた。