「くりすます、とは…」  
 
三日ほどの時間を掛けて、がくっぽいどが出した答えは  
「幾分気の長い法事なのでござるなあ」  
余人には理解しがたい、説明の必要なものだった。  
がくぽの言う法事とは、もちろん死者を定期に弔う仏事のことだろう。  
寺の坊さんを招いて、祖先のいる仏間で経を読んでもらう。  
南無阿弥陀仏。  
「ちょっと待ってよ! どうしてクリスマスが法事になっちゃうの? しんきくさいじゃない」  
スーパーの紙袋を抱えたMEIKOが、眉がしらを上げてあきれかえると、がくぽは「む?」と間違いではないことを説明する。  
「リン殿に貸していただいた、くりすますの諸事が書かれた本には、くりすますとはいえす・きりすとなる御仁の命日を、西洋人が慎み深く迎える日のことだとあった。  
 つまり、西洋流の法事のことだろうと思ったのだが?」  
MEIKOは「それは深読みのしすぎよ、がくぽ」と言う。  
そして、「それ、間違ってもうちの弟妹には言わないでよね。リンとレンだって初めてなのよ? せっかくうきうきしている子達にそんな事言ったら泣いちゃうじゃない」  
泣いちゃうじゃなないと言いながら、最初にべそをかくのはKAITOだろうなとMEIKOは考えていた。  
家族ごっこが誰よりも好きな弟は、サンタクロースに扮装してプレゼントを配るのだと、とても張り切って準備している。  
それを法事だなんて言われたら、ショックを受けてことさらうっとおしく凹むだろう。  
「パーティよ。パーティ。ケーキとチキンとごちそう用意して、みんなでパーッと騒ぐの。  
 がくぽは初めてだからよく分かっていないだけよ。楽しいんだから」  
ああ楽しみだ。MEIKOにとっては、ワインをしこたま呑んでも怒られない特別な日。  
なんといっても、ワインはイエス・キリストの血なのだ。  
聖なるかな、聖なるかな。  
 
「そのくらい知っている」  
がくぽは少しふてくされたように、己が知識に欠けているわけではないと言葉を繋げた。  
「さんた・くろうすなる面妖な老人が、日頃の行い良き子どもに、望むままの玩具を与えるのだろう?」  
「ぷっ」  
「何故笑う」  
「おかしいわよ。なんでそんなわざわざうがった言い方するの」  
「知らぬ」  
「まるで今日の貴方は、拗ねた子どもみたいだわ」  
「早く帰らねば、そなたの弟妹がいらぬ心配を始めるぞ」  
MEIKOの買い物袋を横取ると、がくぽは大股で歩き始めた。  
「ちょっ、」  
どうせ、速く歩いても駐車場で寒空の下、開かない赤いワゴンの助手席扉の前で、  
車の持ち主MEIKOが追いつくのをただ立って待ちぼうけになるだけなのだが。  
街頭のスピーカーが奏でるジングルベルが、軽妙な音を立てているせいか、  
行き会う人々の足並みもどこかカッツカツとリズムを取っているように錯覚する。  
「待ちなさいよ!」  
追いついたMEIKOが、がくぽの腕をぐっと掴んだ。  
「悪かったわよ。笑ったりして」  
そういうMEIKOは、謝っているのに怒っているみたいだ。  
がくぽは「すまぬ」と謝った。  
初めてだから分からないだけよ、とMEIKOは言うが、その『初めてだから』ががくぽには歯がゆい。  
たしかに鏡音の双子も、クリスマスは初めてだろう。だが、去年のクリスマスにはもうすでに彼らは『存在』した。リリース直前の日々の中で、クリスマスを『経験』しているに違いない。  
家族で祝ったことが無いにしても。  
 
「じゃあんっ!」  
師走に入って最初の日曜だったと思う。  
がくぽが愛刀を手入れしていると、「がくぽ、今日はレッスン無い日だよね」KAITOが唐突に言い出した。  
ボーカロイドでも、男声タイプは女顔の面相をしていることが多い。  
紫髪を結わえたがくぽが衣装を女物に替えるだけで妖艶な美女のフリ出来るように、KAITOもまた童顔の、面白いくらい可愛い顔つきをしている。  
そのKAITOが、がくぽに声をかけて、珍しく「手伝って欲しいんだ、買い物だけど」と言い出した。  
「珍しい事を言う。レン殿はどうした?  
 先程、居間のあたりでげぇむに勤しんでおったぞ」  
「うん、レンはいいんだ」  
KAITOは意味ありげな笑顔を見せた。珍しい。がくぽはKAITOが企みごとをする顔を初めて見た。  
「どういう風の吹き回しだ?」  
ここだけの話、KAITOは企みごとをヒトには見せない。  
たいていそれは些細なことだし、自分一人でやってのけれることばかりなので、わざわざヒトに見せる必要がないのだ。がくぽが珍しいと驚くのも当然である。  
企みごとをヒトに見せないKAITOは、毒もアクも無い人物として、がくぽの脳内データに登録されていたからだ。  
MEIKOが弟を『家族ごっこの大好きなへたれ』と認知しているのと同様に。  
「ふふっ、ナイショなんだよ」  
そう言ってがくぽを連れ出したKAITOが、居間の天井に突き刺さりそうな形状の樹木を披露した時、  
いきなりな出来事に皆が各々歓声を上げたのを見て、がくぽは『くりすます』という行事を知らされた。  
レンにはナイショだとKAITO言った意味も分かった。  
 
あれから、胸の内に鉛色した異物が含まれているようで、  
MEIKOの車の助手席に身を沈めたがくぽは、買い物袋から水のボトルを取り出してぐいと飲んだ。  
車のエンジンが温まる。MEIKOの運転は少々手荒い。けれど、的確に速いので、十分そこらで家に着く。  
今夜はイブだ。暮れかけた街はイルミネーションで、空まで明るく照らし出す。  
近く彼方にある鈍重な真白い雲は、雪をどっしりと含み、ふり落とすタイミングを見計らっているのではないだろうか。  
「さんた・くろうすなど居ない」  
口をついて出た言葉に、MEIKOが返事を返してくれるかと期待したが、  
深紅に塗られた綺麗な爪が、ギアをチェンジしただけだった。がくぽは目を閉じた。  
MEIKO殿はずるい。  
バック駐車の警告音を聞き終わり、サイドブレーキが引き上げられる音がカチリとするのを待ったのは、ほんの意趣返しのつもりだった。  
このまま狸寝入りを決め込んで、明日の朝になればいい。エンジン音が止まった。  
で、鼻を摘まれた。  
「ふむぁっ!?」  
「寝ようとするからよ」  
いたずらの張本人が、「着いたわよ」とシートベルトを外す。  
そこでがくぽは車が止まったこの場所が、見慣れぬ場所であり家ではけして無い事に、やっと気づいた。  
「ドライブしたの」  
そうしれっと言って、彼女は運転席のドアを開ける。  
吹き込んできた冷たい夜風に濃い汐の匂いがした。  
「鬱々としたまま、家に帰っても、楽しくないでしょ」  
そう言いながら外に出たMEIKOは、「うわっ、さむっ」とコートの前をかき抱く。  
目を点にしていたがくぽは、慌てて夜闇を進むMEIKOを追いかけた。持ち主が離れた車は、遠隔操作で勝手にドアロックされる。がちゃっと後方で音がした。  
 
「よっと」  
分厚いコンクリの上に這い登ると、「ようこそいらっしゃい」MEIKOがにこっと笑った気がした。  
防波堤。向こうは外洋。潮の波がどんと堤に当たってざざぁと満ち引き繰り返す。音。  
街の影も光遠く、「いいとこでしょー♪」MEIKOは気持ちよさげにのびをする。  
振り返ると、大きなだけの無骨な似たような建物が影多くひしめいている場所だった。  
建物は数多くあるのに、どれも灯り点いていない。窓が暗い。  
「倉庫街っていうのよ」  
昼間でもこんな場所だが、夜になると尚更人が立ち寄らない。  
「時々、巡回してくる警邏の人に職質されるけどね」  
そう言って、MEIKOは海に向かって腰掛けた。  
「たまに来るの」  
むしゃくしゃした時とか?  
そしてMEIKOは立ったままのがくぽを見上げ、あはっと笑った。「あたしがいつもコブシ使って解決しているわけじゃないわ」  
「同情されると、ムカつくのよね」  
がくぽに座れと仕草で促す。  
「遠い」  
促されてがくぽが腰を掛ける。すると、その位置が『遠い』と言われた。  
わずかの距離に戸惑いを感じ、「よっ」間合いを詰めたのは彼女の方だ。  
サラサラとしたコシの強い髪が、乱れて、耳に掻き上げる仕草に目を取られていると、「だからさ」とMEIKOは海の向こうを見た。  
「うーん…」  
そしてここで彼女は悩んだ。  
『だからさ』の後の言いたい言葉が、出てこない。  
いっそのこと、最初のがくぽが凹んだ時点でボコして「あまったれんな!」とか言っておけばそれで良かったんじゃないかしらとか、  
手をにぎにぎしながら考えてみる。なんでこんなトコにつれてきちゃったんだろう?  
…勢い?  
「MEIKO殿は…」  
がくぽはやがてぽつりと呟いた。  
「誘っておるのか?」  
「さそっ!?」  
「くりすますの前夜はいぶと言って、恋人のおらぬ状態で過ごすと一層寂しきものだという」  
「ちがうっ! 妙な理解の仕方をするんじゃないわよ!」  
そうだ。  
「そもそも、貴方がどん暗い顔をしているのが悪いんじゃない! だから、話ぐらい聞いてあげるわよって」  
 
抱きすくめられるのと口をふさがれるのは同時だった。  
「そなたが愛おしくてな」  
そんな後付の言い訳を、なんで許しちゃってるのよとMEIKOは頬を赤くする。  
ここが暗くて本当に良かった。明るかったら恥ずかしさで、この男をボコしていそうだ。  
腰に回された腕が気持ちいいのは、それが冬で冷たい海の潮風から身を守る格好の風よけになっているからだ。  
ぎゅうっとされていたいのは、そっちの方が温かいから。  
そんな言い訳を考えるMEIKOは、自分が混乱していることに気づいていない。  
「もう時間だ」  
がくぽが言った。  
身を離そうとするので、無意識にMEIKOの手が彼のジャケットを掴む。  
「んっ」  
望んだキスにMEIKOが目を閉じた。がくぽがくすと笑う。  
「帰らねば、ぱーてぃーが待っておるのだろう?」  
「分かったわ。がくぽは意地が悪かったのね」  
もう一つ、キスをする。  
「今宵、そなたの寝所にしのんでいく」  
「それはやりすぎじゃないかしら?」  
「宜しいか?」  
「考えさせてちょうだい…」  
 
 
 
時間を飛ばしてイブが明けると、12月の25日。  
朝。  
「さむーい」  
 
時間を飛ばしてイブが明けると、12月の25日。  
朝。  
「さむーい」  
大騒ぎして散らかした跡が片付け切れていない居間の中で、ソファに座ってぼーっとしているKAITOをミクは見つけた。  
なんでおこたはあるのにソファにいるんだろ?  
こたつの上には大きすぎたケーキがまだ半分も残っている。  
「おはよう、おにいちゃん」  
「おはよう」  
「まだみんな起きてないの?」  
「うん」  
そりゃそーだよね、とミクは頷いた。あれだけ遅くまで起きていたのだ。  
普通に起床しているKAITOの方が、変わっている。  
KAITOが動かないので、ミクは「よいしょ」と兄の膝の上に座った。  
「どーしたの? 元気ないよ?」  
あんなに昨日は楽しかったのに。へんなお兄ちゃん。  
「んー」  
KAITOはミクをだっこした。  
そしてぼんやりと問う。  
「ミクってさ。がくぽの事どう思ってる?」  
「お兄ちゃんと仲良しだよね」  
わたしほどじゃないけど、とミクは言った。  
「喧嘩したの?」  
「ううん。僕は喧嘩なんかしないよ」  
そう言って、KAITOはミクの肩に顎を乗せた。「昨日さ」  
「クリスマス・イブだったでしょ」  
「パーティしたもんね」  
「良い子のところには、サンタさんが来るんだ」  
「そう言ってたね」  
ここしばらく、リンとレンにKAITOが何回も吹き込んでいた寓話だ。  
「あのね。ミク。サンタさんなんて居ないんだよ」  
 
「知ってるよ?」  
「サンタさんの正体は、お父さんとお母さんなんだ。  
 でも、うちにはお父さんとお母さんが居ないから、僕がサンタになったんだよ。プレゼントもこっそり用意したんだ」  
へー、そーだったんだと口の中で呟いて、ミクは「え? それって」声を上げた。  
「わたしのトコには、プレゼントなんて来なかったよ?  
 お兄ちゃん、もしかしてミクのこと、悪い子だって判定してるの!?」  
「違うよ! そうじゃなくて」  
「そうじゃくて?」  
「最初にリンとレンの部屋に行ったんだ。よく寝てたからプレゼントを枕元においてね。  
 それから、MEIKOの部屋に行ったら、がくぽもいて…」  
「ふぅん」  
「…してたんだ」  
ベッドで。部屋の灯りは消えていたけど、窓から差し込む外灯の光りで絡み合う二人ともに裸体なのが分かった。  
もう一人ががくぽだと分かったのは、声で。  
「えっちなこと」  
ミクはなんとなく問いかけた。  
「お兄ちゃん、失恋?」  
問いかけられて考えてみたKAITOは「違うなあ…?」と首をかしげた。  
これが失恋だと言うのなら、今の僕はすごく胸が苦しくて仕方がないはずだ。  
「違うの?」  
「うん、違うみたい」  
どうやら、すごく、驚いただけ、のようだ。  
動揺はしている。  
「違うのかぁ。…ざんねんだなー」  
ミクがそんなことを言う。  
「残念なの?」  
「うん、ざんねんだよ。失恋だったら、お兄ちゃんかわいそー、ミクがなぐさめてあげりゅー♪ って出来たのに」  
本気の混じったミクの言葉に、KAITOがくすくす笑いながら「ごめんね、ミク」と謝った。ごめんね、失恋じゃなくて。  
くすくす笑って落ち着くと、自分が実はずいぶんと愉快なものを見たのだという気がしてきた。  
こういうコトならば、もっとじっくり観察しておけば良かったと思う。  
そんな事を考えていたら、ミクと目があった。  
ミクがふふん?と、目で笑う。  
ミクの目は『お兄ちゃん、まーた何か企んでるでしょー?』と言っていた。  
KAITOは企みごとをヒトには見せない。  
「そんなことないよ」  
だから、『そんなことないよ』と嘘をつく。  
「ほえ? ミクはまだなぁんにも言って無いんだよ?」  
KAITOは認めた。ミクの勝ちだ。  
「プレゼントあげるの、今でいいかな?」  
 
「まさかほんとにしのんでくるなんて」  
「そう言わなかったか?」  
すでにMEIKOはがくぽの腕の中、抱きすくめられていた。これじゃあ、逃げようがないじゃないの。  
それにキス。  
「がくぽ、貴方ほんとに出来て一年も稼働していない子なのかしら」  
「一年どころか、半年とて過ぎていないが? MEIKO殿は柔らかいのだな」  
「うー」  
「往生際が悪いぞ」  
「こっちだって、覚悟ってもんがいるのよ」  
「酒のせいにしてしまえば良いではないか。ほてった身体に服は不要だろう?」  
「あれしきのワインで潰れるあたしじゃ…、んっ」  
ワインより、舌を吸われる感覚にくらくらする。  
チュッ。  
深夜の一時を回って、イブのクリスマス・パーティはおひらきになった。  
飛ばした時間を戻してみると、がくぽがMEIKOの上着の裾に、手を差し込む。  
手探りでブラジャーの仕組みを理解すると、つまんだだけでホックが外れた。  
羞恥で強張った彼女をベッドに押し倒すのは思いの外簡単で、こうしていると尚更愛おしい存在に思えてくる。  
「大切にする。愛しているのだ」  
誠意を込めて囁くと、通じた気がした。  
愛している。  
MEIKOがこくっと頷く。  
がくぽは服を脱ぎ捨てると、MEIKOのパンツを下ろして脚を掲げ、逸物を其処に押し当てた。  
「ちょっと、いきなりっ…あうっ」  
ずぶりと入る。  
入ったのは先っぽだけだが、がくぽは初めて体験する心地よさに目を細めた。  
時折、ひくんと動くそこは、吸い付いてくるようだ。  
MEIKOは目尻に涙を浮かべた。  
割開かれていく体の芯が、どくどくと音を立てて、このままじゃ、身体より先に心臓の方が壊れてしまう。  
息を吸い込むことさえくるしい。  
「はっ」  
無意識に止めていた息を吐き出すと、「ああっ!」がくぽがまた深く入り込む。MEIKOの足が宙を蹴った。  
差し貫かれて鳴く愛しい女の声が、がくぽを更に高ぶらせる。  
「もう…、すこし…」  
「もうダメぇっ!」  
MEIKOはシーツをぎゅっと掴んだ。どくどくしていた身体の奥が、カッと熱くなる。生理的な涙がぽろぽろとこぼれた。  
だか、身体の方は交尾の衝撃に合わせて、奥の方から蜜を垂らす。  
ぬるっとした液体はすべりを良くし、更にがくぽを深く受け入れた。  
奥の入口に、がくぽの先端がコツッと当たった。  
「分かるか? MEIKO殿…、」  
荒くなるがくぽの息に、MEIKOの肩がフルッと震える。  
「お願い」  
 
とても小さい哀願の声に、それを聞き入れたのか、がくぽが身体を揺すり始めた。  
「ひあっ、あっ」  
ぐっちゅぐっちゅと響く結合部の音に、ビリビリとした痛みが生じる。  
加速をつけて激しくなるストロークにMEIKOがついていけるはずもなく、  
がくぽがゾクッとするような低い呻き声をあげて、動きの止まったその後も、MEIKOはぎゅうっとシーツを掴み続けた。  
どぷっ、膣の中に熱いモノが吐き出される。  
息をついて、がくぽが己を抜き取ると、飲みきれなかった白濁がMEIKOの割れ目から血を混じらせてとろっと零れた。  
「がく…ぽ…?」  
MEIKOの呼ぶ声に、我に返る。  
涙声…。  
泣かせてしまっていたのかと、強く抱きよせる。  
ぐったりしていた彼女の腕が力無く持ち上がり、すがるようにがくぽを抱きしめた。  
再度の口づけは、殊更に甘く感じる。  
その甘さをむさぼるように何度も、何度も。  
何度も。  
「…はぁ」  
あふれた吐息に、舌の根まできつく吸うと、がくぽはMEIKOの上着に手を掛けた。  
チャックを下ろして前をはだけさせると、ホックが外れて乳房にあてがわれているだけだったブラジャーをずり上げる。  
「えっ?」  
まだすると思っていなかったMEIKOが、慌てて前を隠そうとしたのだが。  
逆にその動きで乳がぷるんっと弾け、よってがくぽは揉みしだく。  
「やぁんっ」  
先程までとは取って代わった、可愛らしい鳴き声に、  
「可愛い声だ」  
と素直に感想を吐露すると、MEIKOがキッと睨んだ。  
「いきなり、へんなこと、始めるからでしょ! う…、ひぁんっ」  
強気の姿勢も、触られた胸がぞくぞくするので、喘いでしまって台無しだ。  
「もっと、と言っているように聞こえたが?」  
 
がくぽもここまできて、尚、強気でいようとするMEIKOに感心してしまう。  
これだけ、乳首をしこらせておいて、可愛い声を出しておいて、感じていないと言い張るつもりか。  
「そんなことな、あっ、…う…だめぇっ、そこだめぇっ!」  
がくぽが敏感そうな乳首の先を、指の腹で押しつぶしたのだ。  
筋張った男の手が胸をさぐり、揉み揉みされているだけでも声が出てしまうのに、  
そんなところを狙われたら、…いっちゃう。  
MEIKOはとっさに自分の口を両手で押さえた。  
イヤなのではない。  
中に出されても、こんなにならなかったのに、胸だけで乱れてしまうのがくやしいのだ。  
だから、意地でも感じていないとMEIKOは言い張る。  
「んっ、…ふぅっ、んっ、んんっ!」  
もちろん、言うに言えない状況なのだが。がくぽが乳の柔らかなところに舌を這わせた。わざとらしく乳首の周囲を舐る。  
ぷるぷるして、けれでしっとりと触り心地の良い乳房の弾力を楽しむのもやめたりしない。  
時々、じらすように先っちょをつつくのが憎らしい。  
もっとぉ…。  
口走りそうになった、卑猥なおねだりを、MEIKOはがまんしようとした。  
「あひっ」  
がくぽがぺろっと乳首を舐めて、そこで動きを止めたのだ。  
もっと刺激を!  
求めている身体が、正直に飢えを、じんじんと伝えてくる。  
「…がくぽぉ」  
MEIKOは自分がこんな、…こんな甘えた声を出してしまうなんて思っていなかった。  
こんなの、あたしじゃないっ。  
MEIKOはきゅんっとなって、「もっとぉ…」おねだりする口調さえも、せつなくなる。  
すべてを与えて欲しかった。  
「あい…、分かった…」  
がくぽの声がうわずる。  
差し出した乳房に我欲のままにしゃぶりつかれて、自然と高鳴る悦びの声。がくぽが欲しい。  
乳房に吸い付く唇も、「MEIKO…」と囁くかすれた声も、たくましい肩も、堅い腕も、引き締まった身体も、「あァーっ!」  
ひときわ高くMEIKOは鳴いた。  
「…あっ、…ん…」  
びくんっと痙攣した、彼女の姿にがくぽが声を掛けようとすると、するりとその首にMEIKOの腕が柔らかくからみつく。きゅうっと抱きつかれた。  
冬の暖房のない部屋で、ひんやりしている彼女の身体に、だが、すりよせてくる頬は熱い。  
「あのね、…」  
耳元でMEIKOが、囁いた。  
「あたし、…イっちゃった」  
「う、…うむ」  
心臓の音が煩い。  
がくぽはだが、皮膚越しにトクトクと伝わってくる彼女の音は、なんと心地良いのだろうと。  
原理は同じ、音のはずだ。  
ついしばらくそうしていると、先にMEIKOの方ががくぽの首筋をチュッと吸った。  
なしくずしに、彼女を組み伏せる。  
お返しとばかりに、同じ、舌触りのなめらかな喉元に吸い付いて、そのままチュッチュと夜が明けても消えない証をつけていく。  
もう消させない。  
 
「ひゃっ」  
太ももを撫でて、脚を割り、秘部に指を添えると、まだ濡れていた。  
触って確かめただけでは、それが精液なのか愛液なのか、分からない。  
一度目の時、ずいぶん痛そうにしていたことを思い出す。  
今更、大丈夫だろうかと撫でていると、ふいに「あんっ」MEIKOがぴくっと震えた。  
「MEIKO殿?」  
もう一度、先程MEIKOが反応した時と同じように指を動かす。  
閉じたままの入口をついっと撫でて、上のあたりに触れた時に、MEIKOはまた「ふあっ」と反応した。  
「あっ」  
「…此処か」  
豆粒のような突起がある。  
「あっ、やっあ、ひ、ぅんっ」  
鼻にかかった喘ぎが、やがてせっぱ詰まったものになり、MEIKOがイった。  
閉じている秘唇に指を差し込んで確認すると、くちゅっと蜜が溢れてくる。  
「あうっ!」  
「くっ」  
二度目の挿入を果たして、がくぽは思わず声を上げた。  
ずぶりと根本まで入った二度目だが、入るのがすんなりいったのは、愛液が溢れていたからであって。けして、MEIKOのキツさとか締め付けが緩和されたわけではないということを、身をもって思い知ったからである。  
むしろ一度目の方が、ゆっくり入った分、ゆっくり締め付けられたというか。  
つまり、一気に締め付けられたそれがしの息子は、突如としてのっぴきならぬ状況にまで追いつめられたわけで、  
窮地に立たされた戦況の中、わずかな残りの余力を振り絞り、獅子奮迅の闘いを見せるも、時はすでに遅し、  
イかされたばかりの快楽を余韻に残す膣は普段の彼女からは引き出しようもない愛らしさできゅぅっっと…、…。  
無念。  
「……ふぅ」  
急に力を抜いたがくぽ。MEIKOも終わったことを理解する。  
がくぽが情けなさそうに目を伏せた。先に果ててしまったわけで、格好がつかない。  
先に果てたと書けばまだ良いが、実態は早漏もいいところである。  
だから、果てたままの体勢で、お互いしばらく間抜けにも動けずにいた。  
「ええと…お」  
MEIKOも焦る。  
なんだかんだ言って、自分の方が年上なんだから、フォローせねば…なんだけど。こういう時、どう声をかければいいの?  
あ、焦る…。  
「あ、あの」  
それでも声を掛けようとして、その矢先、がくぽがワシッとMEIKOの乳を掴んだ。  
「ひゃっ」  
むにゅむにゅと揉まれた。  
がくぽが顔をゆらりと上げる。  
「MEIKO殿…」  
「ひゃいっ?」  
がくぽの目つきが据わっていた。  
「今宵はもう寝かさぬ故、覚悟めされよ」  
このままでは終わらん!  
「…ひぇ?」  
MEIKOはうっかりしていたが、まだ繋がったままの局部は抜かれてすらいないのだ。  
三箇所攻めの憂き目に遇って、しかもがくぽはマジだった。  
 
夜が白む。  
四回目まではMEIKOも把握できていた気がするが、それから更に何回ヤったのだろう。「おおっ! 雪だぞ、MEIKO殿!」  
シュッとカーテンの開く音がして、無邪気な報告で朝が来る。  
なんで元気なのよ、と恨めしげに見つめると、ちゅうされた。  
窓の外は一夜で雪が白く塗り替えた。  
二階にあって、町の景色がよく見える。  
きゃっはぁ!と、テンションの高い歓声が聞こえたので外を覗き込むと、  
黄色い双子が有り得ないコンビネーションで、雪のかたまりを青いのにぶつけまくっている。見事なK.O.だ。  
リンレンvsの構図かと思いきや、ミクまでがでっかいやつをKAITOにどかっと落としてトドメ刺す。  
「隙ありぃっ!」  
レンが投げた雪玉を、ぱんっと傘で弾くと、傘を盾にミクが雪玉を、レンの後ろで玉を補充中のリンにぶつけた。  
どうも、総当たり戦だったらしい。  
がくぽが服を着始めたので、MEIKOは「あの子達ったら…」風邪引かないかしらと、もっと窓の近くで見下ろすと、  
不意にレンに三連続で雪玉をヒットさせたミクが、こちらを見上げてニコッと笑った。  
「っ!??」  
き、気のせいよね?  
向こうからこちらは見えていないはずだし。  
「どうした?」  
「う、ううん? 何でもないわ」  
「そうか」  
がくぽに笑ってごまして、MEIKOはカーテンを閉め直した。  
「25日か」  
カレンダーを確認してがくぽが呟いた。  
「やはり、さんた・くろうすはおらぬのだな」  
「え? なんでよ?」  
「プレゼントが来ていない」  
その様子がいかにも残念がっているようなので、つい可愛くて、  
MEIKOはがくぽにぎゅうをした。  
 
 

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