夜、ルカはメイコの晩酌に付き合っていた。
しかし、カイトが帰ってくるまでと始まったはいいけれどカイトはなかなか帰ってこず、
日付が変わる時間となった。
「あらら…、寝ちゃったのね」
普段よりずっと幼く見えるメイコの寝顔。
「こんな顔、カイトくん以外に見せちゃダメだぞ〜」
ふにふにと頬をつつくとわずかに眉を寄せた。
「ホントに可愛いな、めーちゃんは。いっそ、私が襲っちゃおうかな……」
ルカは自分が着てきたコートをメイコの肩にかけると
空いたワインのボトルとグラスを片付けた。
手際よく洗い物をしていると玄関から足音と静かにドアを閉める音。
「おかえり、カイトくん」
「あ、ただいま。ルカさん。めーちゃんは?」
「寝ちゃった。寝室に連れてってくれる?」
「はい。片付けもあとで俺やりますから…」
カイトはメイコの寝顔を見たら自然と口元が緩んだ。
「ん?もう終わったから大丈夫よ」
ルカが自分のコートを回収すると、
代わりにカイトが自分のコートをかけて抱きかかえた。
「あんまりメイコちゃんにさみしい思いさせちゃダメだよ?」
つん、とルカの白く細い指がカイトの額を押した。
「わかってはいるんだけどね…」
仕事の要領が悪くていつも時間がかかってしまう。
カイトは曖昧に笑って恥ずかしそうに頬をかいた。
「ん、うんん……」
腕の中でメイコが身じろぎした。
「めーちゃん?」
「カイト……。おかえり……って、なんで抱っこされてるのよ!?」
慌ててカイトの腕から下りたメイコはアルコールで足元をふらつかせ、
再びカイトの腕によって支えられた。
「ありがと…」
とお礼を言おうと顔をあげるといつのまにかカイトの腕に絡んでいるルカが目に入る。
「大丈夫?」
なんて明らかに楽しんでいるような声で心配までしてきた。
「は、離れなさいよっ」
酔いが抜けないまま威嚇されても迫力などないに等しい。
「ふふふ、メイコちゃんかわいいぞ〜」
ルカにむぎゅっと抱きしめられたメイコは口をパクパクさせた。
カイトはというとそんな2人を微笑ましく見ていた。
「じゃ、おやすみなさい。メイコちゃん、カイトくん」
「送っていきましょうか?」
ルカの家はこの家の近くだが、この時間に一人で帰宅させるのは危ない。
「大丈夫よ。すぐそこだから。
カイトくんは私じゃなくてメイコちゃんを寝室に送ること!」
ルカはびしっと指を突きつけた。
「でも……」
なかなか納得しないカイト。
彼のこういう優しいところにメイコは惹かれているのだろうとルカは感じた。
「家についたら電話するから、ね?」
「…わかりました。おやすみなさい、ルカさん」
「…ん?帰っちゃうの……?……おやすみ。ルカ」
カイトとすでに夢うつつなメイコ
にあいさつをするとルカはコートをふわりと翻しながら玄関へと消えて行った。
「俺たちも寝ようか」
「そだね……きゃっ」
カイトが横抱きにするとメイコは今度は抵抗せずに腕の中に収まった。
「なにすんのよ…」
「うん、ごめんね、めーちゃん。ただいま」
「……バカイト」
アルコール以外の原因で赤くなった顔を見られたくなくてカイトの胸に顔をうずめた。
そのまま子どものような寝息を立てるまでに時間はかからなかった。
fin