あれからもう一度。  
がくぽさんとその……、身体を合わせようと試みたことがありましたが。  
上手く行きませんでした。その、やっぱり、私の方がだめで。  
 
がくぽさんは、気にしないと言ってくれるのですが、  
そこはやっぱり気にしてしまいます。  
 
昔は、「身体の相性が合わなくて別れる」とか、そういう話が信じられませんでした。  
心がつながっていれば、そんなの関係ないでしょう?と。  
 
でも今ならなんとなく分かります。そういうことをきっかけに気まずくなったりして、  
心まで離れてしまうこともあるんじゃないか、って。  
 
間の悪いことに、最近は仕事の都合が合わず、がくぽさんとはなかなか会えていません。  
メールではやり取りするものの、直接顔をあわせることはできていなくて。  
 
だからより一層……。今度のときにはちゃんとできるのか。  
そもそも、またそういう場面になったらどう振る舞ったらいいのか。  
どうしても、悩んでしまうのです。  
 
 
 
そんな折。仕事の予定が急に空いたというメールが入り。  
またがくぽさん宅にお邪魔することになりました。  
 
例によって、縁側に、並んで腰掛けます。  
できるだけ、普通を装おうとしますが。そこはかとなく漂う緊張感。  
それは、がくぽさんも同じようで。  
 
しばらくはいつも通り、お互いの近況のことなど  
つらつら離していましたが、不意に会話が途切れ。  
 
「初音殿、その……。良いか?」  
 
そう言われ、す、と腰に手を回されました。  
久しぶりに体に触れられ、覚悟していたとはいえ、つい、体が強ばります。  
 
そのまま、この前のように抱きしめられるかと。そう思っていたのですが。  
がくぽさんは、腰に回した手を離し、私から距離を置きました。  
 
「がくぽさん……?」  
「すまん。」  
「はい……?」  
「乗り気ではないのであろう?」  
「え、いや……。」  
「最近、どうも、いかんせん……。そういう方向に走りすぎであるよな。申し訳ない。」  
「や、そんなことは……!」  
 
それはがくぽさんが謝ることじゃなくて。私が、こんなだから……。  
 
そう思って。そう言おうとしたのですが、言葉にならなくて。  
意図せず、涙があふれてしまいました。  
 
ああ、ダメだ。泣くんじゃない。ていうか、こういうときに泣くのは、卑怯だ。  
 
案の定、がくぽさんは困った様子です。  
 
「ど、どうしたのだ?」  
「ごめんなさい……。」  
「なにが?」  
「だって、私が……こんなだから。……できなくて。」  
「いや、それは!……気にしておったのか?」  
 
聞かれてこくんと頷きます。そうしたら、ふいにぎゅっと抱きしめられました。  
 
「いや、そこは初音殿が気にするところではないぞ。」  
「だって、でも……。」  
「前も言うたであろうが。無理にすることではないと。」  
「でもそれじゃあ。私はいいけど、それじゃ、がくぽさんが……。」  
「……まあ、その辺は。自分でなんとかするゆえ。」  
 
そう言われて。  
えっと?自分で何とか……、自分で何とかって。……えー?!  
 
”何とか”の内容に思い至り、思わずがくぽさんの背中をぽかぽか叩きます。  
 
「そういうことはっ……、言わなくていーです!」  
「しょうがなかろう。ゆってしまったものは取り返しがつかん。  
 ……こちらとて失言だったと思うておるわ。」  
 
言われて、さらにぎゅっと抱きしめられました。  
 
体勢のせいで、表情は見えませんが。  
たぶんまた、がくぽさんは困ったような表情をしているんでしょう。  
 
「というか、な。  
 こちらが性急に事を運びすぎたというか……。どうにも抑えがきかんでな。  
 だから、申し訳ないのはこちら側の方なのだ。  
 初音殿は、その点については気にせんでもよろしい。」  
「はあ……。」  
 
だから。いちいちそんなことまで言わなくていいのに、  
つくづく律儀なひとだなあ、と。そう思って。  
 
照れ隠しと返事の代わりに、がくぽさんの背中をすう、となぞりました。  
 
「こら!人が真面目に話をしておるのに!」  
 
がくぽさんも負けじと、私の背中をすう、となぞります。  
 
「やっ……。」  
 
こうして攻防することしばし。  
抱き合ったまま、お互いぜいぜいと、息を切らします。  
 
「ふふ……。」  
「はは……。」  
 
いつの間にか、変な緊張感はなくなっていました。  
なんだか可笑しくなって、抱き合ったまま笑いあいます。  
 
もしかしたら。こんどは大丈夫かもしれない。  
大丈夫じゃなくても……。もっと、近くに行きたい。  
 
そう思って。思い切って私から、がくぽさんの唇に、キスをしました。  
 
「?!」  
 
背中に添えられた手に、力が込められたのが分かります。  
私は、この前されたのを真似して、  
がくぽさんの閉じられた唇に、舌を差し込んでみました。  
 
「んっ……!」  
 
深いキス。  
前のときと違うのは、今度は私がする側、ということで。  
 
唇を離すと、がくぽさんはすごく複雑そうな顔をしています。  
 
「……初音殿、だから、無理せんでもと。」  
「無理、じゃないです。私がしたかったから、したんです。」  
 
自分で言って、顔が真っ赤になるのが分かりました。  
でも、ここで、私が、ちゃんと言わないと。  
 
「だから……。お願いします。」  
 
言ってから、私は俯いて、ぎゅっと目を瞑りました。  
 
「……良いのか?」  
 
聞かれて私は、こく、とうなずきました。  
 
 
布団の上で向かい合って、お互いの衣装に手をかけます。  
こういう状況になると、その、気になってしまうのが。  
 
「あの、ごめんなさい。」  
「何が?」  
「あの、私その、胸とか、小さくて……。」  
「そんな、何を今更。」  
 
がくぽさんはそう言って、私の衣装を解いていきます。  
私の方は、がくぽさんの和装をいまひとつ上手く解くことがくできず、  
結局がくぽさん自身に脱ぐのを手伝ってもらいました。  
 
お互い、生まれたままの姿になり、布団の中に潜り込みます。  
 
体中を冷たい手で触れられて、私は心地よさに身を任せます。  
さっきの攻防戦の時のくすぐったさとは違う、変な感じです。  
 
胸を触られ、わき腹を触られ、太ももを触られ。  
がくぽさんの指が、私の大事な部分に触れました。そして。  
 
がくぽさんは何事か考えたような様子で、そこから指を一旦離し。  
さらにその指を、……自分の口に含みました。  
 
「!!」  
 
私が呆気に取られていると、  
その指が、また私の大事な部分に触れます。  
 
……あれ、その、なんだろう。この、変な感じ。  
擦れるとも痛いとも違う、今までに感じたことのない感覚。  
 
そうか、唾液で滑るから。痛くないんだ。  
一応、”感じると濡れる”というのは知識として知ってはいましたが。  
”濡れないと擦れて痛い”んだ……。  
そこまでは知らなくて。頭の片隅で、なるほどなあと妙に納得していました。  
 
次第に、指が、さっきよりも滑らかに動くようになります。  
たぶん、これは、私の側の……。私も、こんな風ちゃんとに反応するんだ……。  
思わず顔が熱くなりました。  
 
「これで、痛くはなかろう?」  
「ん……。」  
 
指が、次第に後ろの方に移動して。私の中に入ってきます。  
この前は、それだけですごく痛かったけれど。  
今回は、多少違和感はありますが、なんだか結構平気です。  
 
「……でも、まだかの。では失礼して。」  
 
がくぽさんはそう呟くと、私の胸に唇を落としました。  
そこからあばら、おへそと続き、さらに下に……。  
 
え、やだ、まさか。  
 
戸惑う私を後目に、がくぽさんの頭はどんどん下に移動します。そして。  
私の大事な部分に、今度はがくぽさんの口と舌が触れました。  
 
舌の感触は、指とは違って柔らかくてぬめぬめとしていて。  
吐息がかかって、暖かくて。  
下から、ぴちゃ、と水音が聞こえて、とても恥ずかしいです。  
 
でも、今日は何をされても、我慢しないと……。  
 
そう思って下のからの感触に必死に耐えていると、舌が離れ、  
再び、中に指が差し込まれます。  
唾液で濡れ方が増したせいか、さっきより違和感も無くなったように感じます。  
 
指が引き抜かれて。  
今度は熱くて固いものが押し当てられました。  
 
「ここ、か?」  
「はい。たぶん……。」  
 
そこにあてがわれて。強く押し当てられて。  
この前とは違う、熱く擦れるような感じがあるのが分かりました。  
 
「初音殿……。もっと足、開いて……。」  
 
この前は、入り口でつかえて入らなかったのだけど。その時とは明らかに違う感触で。  
 
「……す、こし、入った?」  
 
少しずつ、少しずつ。そのまま押し進められます。  
「めり込む」という感覚。熱くて、擦れて、痛くて、息が止まりそう。  
泣きたいわけではないのに、勝手に涙が出てきます。  
 
「あ……、入っておるぞ……。」  
 
こんなことでは壊れはしないと、頭では分かっているのに。  
でも、壊れてしまいそうで、たまりません。  
 
「初音殿、ちょっと、力、抜いて。」  
「ち、から、入れてま、せん……。」  
 
力を入れるつもりは無いのに、勝手に身体が強ばります。  
 
痛いよう、痛いよう。  
 
「全部、入ったぞ……。」  
 
じんじんとした痛みに耐えるのに必死で、返事もできませんでした。  
すべての感覚が、そこに集中しているかのようです。  
しばらくそうしてじっとしてしていたのですが。  
 
「動いて、大丈夫か?」  
 
聞かれてうんと頷くと、今度はずず、と引き抜かれる感触や  
ぐっと押し戻される感触が。  
 
やっぱり擦れて痛いです。  
そして、そこも痛いですが、何気に足も痛いです。  
股関節が普段開かない角度まで大きく広げられて、足がつりそうです。  
 
お願い、早く終わって……!!そう思って、しばらく必死に耐えていると。  
 
「あ…、初音殿…………。」  
 
がくぽさんの声のトーンが変わったのが分かりました。  
そうして動きも少し早くなり、身体にぎゅっと力が込められ……。  
 
がくぽさんの動きが、止まりました。  
 
あ、これって……。いった、のかな?  
 
ぼんやり考えていると、ずる、とそれを引き抜かれました。  
引き抜かれるときにもまた痛みが走ります。  
 
「つ……っ!」  
「初音殿……、大丈夫か?」  
 
ぜいぜいと息を切らしながら、がくぽさんが尋ねます。  
正直、全然大丈夫じゃなかったですが、無理矢理、こく、と頷きました。  
 
「そうか……。」  
 
がくぽさんは、私から身を離して傍らの箱ティッシュを手にとり、  
私に手渡してくれました。一枚取って、箱をがくぽさんに返します。  
 
一応、私たちは、人間の身体構造を複製してますから、  
人間の「血」に相当するものが出る場合があると聞いていたのに。  
とくに私の身体から赤いものが出てる様子はなくて。  
 
「どうしたのだ?」  
「や、なんでもないです。」  
 
がくぽさんも自分の後始末を終えたらしく、布団を整えています。  
整った布団の中に、ふたりでもぐり、またぎゅっと抱き合いました。  
 
「初音殿……、ありがとう……。」  
「ん………。」  
 
すごく痛かったですし、まだ身体に違和感もありますし、  
正直、終わってほっともしてますが。なにより、ちゃんとできたことが嬉しくて。  
 
思わず背中にしがみつきます。照れ隠しで、背中にのの字を書きつつ。  
 
「こら、ひとの背中でのの字を書くではない!くすぐったいではないか。」  
「……がくぽさん、意外とくすぐったがりですよね。」  
 
またしばらく、くすぐりの攻防戦をして。  
そしてしばらく布団の中で過ごしました。お互い、なにも身につけないままで。  
 
でも、時間は勤勉です。そろそろ、帰らねばならない時間になりました。  
 
「あ、じゃあ、送ってゆくぞ。」  
 
服を着て外に出て。  
隣のフォルダに帰るだけとはいえ、なかなか離れがたくて、  
手を繋いで歩いていました。すると、  
 
「あ、がっくん、ミク姉ー!」  
 
後ろから、リンちゃんに声を掛けられました。思わずお互い、繋いでいた手をぱっと離します。  
 
「別に離れなくたっていいじゃん。なに?いま帰り?」  
「う、うん。」  
「まあの。」  
「ねー、がっくんもウチに寄ってかない?お茶でも出すよー?」  
「いや、わしはここで。」  
「えー?あ、そう?」  
「初音殿、鏡音殿。ではまた。」  
「あ、はい。」  
「うん、じゃーねー。」  
 
そう言って、がくぽさんとはそこで別れました。私はリンちゃんとうちの中へ。  
 
「なにー?送ってもらったのー?ラブラブじゃーん。」  
「まあ、ね。」  
 
曖昧に笑ってお茶を濁します。  
別に、さっきまでのことが分かってしまうわけはないのに、  
なんだか、見透かされたような気がしてこそばゆいです。  
 
「ねー、レンがマスターから新譜もらって来たんだってー。  
 今度は、キャラクタボーカル組、全員で歌うらしーよ?」  
「え、本当?楽しみだね。」  
 
そんなことを言い合いながら、リンちゃんとうちの中に入っていきました。  
 
ああ、たぶん、これから先。  
こうやってリンちゃんと話したことも含めて、今日のことを思い出すんだろうなあ、と。  
 
私はそんなことを考えていました。  
 

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