わたしとがくぽさんの関係は、何と言うんだろう。  
いわゆる、「茶飲み友達」?  
 
−−−−−−−−−−  
 
がくぽさんも私も土いじりが好きだったり、  
和好みだったり、  
芸能の世界の派手派手しい感じが実は得意でなかったり。  
 
そういうわけで、なんとなく意気投合して、  
一緒にお茶をするようになったりして、今に至ります。  
 
 
今ではたびたびがくぽさん宅にお邪魔して、  
縁側から庭を眺めつつ、お茶をご馳走になりつつ、  
世間話をしたりなんだり。  
 
そんな様子を見て、リンちゃんなんかは  
「もー!二人とも若さが足りないー!」なんて言うのだけれど。  
 
でも、私は楽しいし、……そして嬉しいです。  
 
私は、がくぽさんが好きです。  
 
がくぽさんが私のことをどう思ってるのかは、分かりません。  
 
 
こうしてたびたびお茶するくらいですから  
嫌われてはいない、とは思うのですけど。  
「そういう意味」で好かれてるかどうかは、ほんとに分からなくて。  
 
正直なところ。  
もっとお近づきになりたいな、なんて。ほんのり思ってるんですが。  
そんなこと言えるはずもなく。  
 
 
今日も縁側で日向ぼっこで茶飲み話です。  
 
日の良くあたる縁側で。  
お茶だのを置いたお盆を間に挟んで、隣り合って座って。  
がくぽさん謹製のお漬物をいただきつつ。  
 
「茄子のお漬物て、色を綺麗に残すの難しいんですよね?  
 コツとかあるんですか?」  
「ん、ミョウバンと塩の加減がポイントでな。」  
 
そんな会話を交わしつつ。  
 
 
 
私は、がくぽさんの口に  
お漬物が運ばれていくさまに、見惚れてました。  
 
「ひとが何かを食べるさまはいやらしい」  
と前に何かで聞いたことがあって。  
そのときはいまひとつピンと来なかったのですが。  
 
今なら……なんとなく分かる気がします。  
 
楊枝を持つ手。  
口の中のものを飲み込んだときの喉仏。  
そして、肩にかかった長い髪。  
 
あの手に触れてみたい。  
あの喉に触れてみたい。  
あの髪に触れてみたい。  
 
 
最近はつい、折に触れ、そんなことを考えてしまいます。  
 
これが色ボケ、というやつなんでしょうか。  
きっとそうなんでしょうね。  
 
なんかやんなっちゃうなあ、  
自分には、そんな浮わついたところは無いと思っていたのに。  
 
そんなことを考えていたら。  
 
 
「あの……、初音殿?」  
 
不意に、声をかけられました。  
 
「ぇえっ?……な、なんですか?」  
「いや、なんだか心ここにあらず、という感じだったので。」  
「あ、すいません、ちょっと、ぼーっとしてて。」  
 
なんだか不審に思われたもようです。  
というか、実際、不審に思われるようなことを考えていたわけで。  
 
ああもう、なんという、なんという。  
ダメだ、もう、最近本当にダメだ。  
 
ええと、なにか。  
当たり障りない話題、当たり障りない話題をしないと。  
 
 
「えっとあの、  
 がくぽさんて、髪、綺麗ですよね!」  
 
「……………………はあ。そうかの?」  
 
がくぽさんは、いぶかしそうにそう問い返しました。  
 
冷静に考えれば。  
脈略も無く髪を褒めるとか、当たり障り……ありまくりな気がします。  
 
けど、振ってしまった話題は引っ込めるわけには行かなくて。  
 
「や、あの、どーやってお手入れとかしてるのかなって!  
 私も、畑仕事とかしてると、結構痛んじゃって……。」  
 
 
しばしの沈黙。  
 
 
ああ、やっぱり、変なこと言っちゃった。  
どうしよう。どうしよう。  
 
そう思っていると。  
 
がくぽさんが口を開きました。  
 
「…………………も。」  
「え?な、なんですか?」  
「…………初音殿も。良い髪をしてると思うがの。」  
 
そうしてがくぽさんは  
 
私のツインテールの先端を手にとって。  
 
 
 
 
 
 
 
 
私の髪の毛に唇を落としました。  
 
「え?! あ、あの……。」  
 
何が起こったのか理解できずに固まる私に、  
がくぽさんは続けます。  
 
「一応、断っておくが。」  
 
がくぽさん、私の髪から手を離し、  
こちらに向かって居住まいを正しました。  
つられて私も、背筋を伸ばて体をそちらに向けます。  
 
 
「誰彼かまわずみだりに  
 ……こういうことはせん。  
 
 
 
 …………………………これで、察していただけんだろうか?」  
 
えっと。  
 
そのあのつまり。  
 
だとすると。だとすれば。  
 
「う、嬉しいです……。」  
 
なんか、後から考えると  
会話として噛み合ってないような気もしましたが、  
そのとき答えるのはそれが精一杯で。  
 
そして。  
 
「そうか、よかった……。」  
 
そう言ってがくぽさんは、  
私との間にあったお盆をすい、と後ろに寄せて。  
すす、と体を寄せて。  
自分の手を膝の上に置かれた私の手の上に置きました。  
 
そのまま、どうすることもできずに、固まる私たち。  
 
「ほんとに、よかった……。」  
「はい……。」  
 
とはいえ。  
時間は勤勉で。帰らねばならない時間にもなるわけで。  
 
「えっとあの、がくぽさん。」  
「なんだ?」  
「明日も、お邪魔していいですか?」  
「お邪魔も何も、今までだって来てたであろう。」  
「あ、そですねえ。」  
「むしろ、これでもう来なくなってしまうかと心配してたのだが……。」  
「あ、いえ、そんなことは……。」  
 
 
「ではあの、改めて、初音殿。宜しくお願いします。」  
「こちらこそ、宜しくお願いします。」  
 
そう言いあって、その日は別れました。  
 
 
 
ああ。触りたい、とか思ってたくせに。  
いざそういう時が来てみると、どうすることもできなくて……。  
 
というか、ほんとにそういう時が来たなんて、未だに信じられません。  
 
 
なんだか今日は、忘れられない日になりそうです。  
 

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