「いてて…。参ったな」
私は一人呟く。
ウイルスの軍勢がパソコン内に侵入してきたのは数時間前。現在バスターさんたちが総力をあげて撃退をしているらしいが、力のないただのソフトの私たちはバスターさんたちがくる前に大分攻撃を食らってしまった。
「プログラム修正機能が動いてくれない、か。今回のウイルスはなかなか骨がある…あいたたた」
自分の怪我を確認する。
右腕に酷い裂き傷ができ、足は酷く腫れている。もしかしたら折れているかもしれない。あとは小さな傷が多数。
足が折れているなら動かない方が無難だろう。いや、動きたくても痛くて動けない。
「はあ…どうしようかな、この状況」
私はついため息をついてしまう。
逃げている内に散り散りになってしまった他のソフトたちは怪我していないだろうか。そちらも心配だが、プログラム修正機能が使えない今自分を救ってくれる相手は、他のソフトだけなのだ。
「…誰か見つけてくれないかしら」
あまり使われていないフォルダまで逃げ込んだため、自分を発見してもらえる可能性は低い。ウイルスを撃退してパソコン内が落ち着けばマスターが検索をかけて発見してくれるだろうが、それまで体力が持つか……。
「メイコさん!大丈夫!?」
右腕の傷を左手で押さえて困っていると、かん高い声が聞こえた。
振り向いてみると、そこには青いショートカットの見知らぬ女の子が立っていた。服装は同業のボーカロイド、カイト君と同じだが…。
「…誰?」
「僕です、カイトです!ウイルスの攻撃を受けたら女の子の姿になっちゃいまして…うわ、酷い傷!」
カイト君は止血代わりに、とマフラーを私の右腕に巻き付けながら言う。
「痛っ!カイト君痛いって!」
「ジッとしててくださいよー!応急処置なんだから痛いのは仕様ですから…よし、巻けた」
マフラーのせいでやたらと太くなった右腕を見ながら、カイト君は上手く巻けたことに対して満足気に頷く。
「足はこれ、折れてますかね」
「かもね」
「痛そ…動かさない方がいいですね。でも今の僕じゃメイコさん担いで連れていけないしなあ」
そう言ってカイト君はそっと私の手に触れてくる。ひんやりとしたカイト君の手が気持ち良かった。
続かない。ぶっちゃけKAITO(KAIKO)役は他のボカロでも良さげな気もした