炬燵の向かい側にはお姉ちゃんが、左右にはお兄ちゃんとリンがあたしを見ている。
炬燵の上には麻雀牌が散らばっており、その上に点棒がおいてある。
あたしの持ち点は今しがた振り込んで、箱下になったばかりだ。
「うー、やられちゃった。じゃあこれでおしまい?」
溜め息をついて牌をじゃらじゃらとかき鳴らすあたしに、お姉ちゃんがニッコリ笑って言った。
「何言ってんのミク、うちらの家族麻雀は正式、ちゃんと北入りまでやるわよ」
「え〜?だって点棒がもうないよ?」
あたしの疑問に、お姉ちゃんはフフンと鼻を鳴らして笑う。
「じゃあ『貸し』ね。この場は衣服一枚につき一万点、仮点として貸しましょう」
ええええええ〜〜〜〜!!!???
「ちょ、ちょっと、なにそれお姉ちゃん聞いてないよそれ」
「じゃあ足りない分現金で払う?差し馬清算で原点に戻してもいいわよ?」
「………脱ぎます」
あたしはもじもじと身体を震わせて自分の服に手をかけた。
「……何ででもいいの?」
「いいわよ。衣服だったらなんでも」
「じゃあ……」
私はネクタイをいそいそと緩める事にした。
「D・T・M!D・T・M!」
「D・T・M!D・T・M!」
左右から無責任な野次が飛ぶ。
うう…リン、後で覚えてなさいよ。
私はネクタイを外し、お姉ちゃんに渡した。
「ああ…妹の香り…若いっていいわねー」
…変態だよお姉ちゃん。
ネクタイを受け取ると、お姉ちゃんは私に黒く塗った千点棒を十枚渡してきた。
「じゃあ次の局いきましょうか」
じゃらじゃらと、皆で牌をかき混ぜる。
「ハハハ、お兄ちゃんダマでミク狙っちゃうぞー」
「あらカイト、アタシがミクに振り込ませるのよ」
「よかったねお姉ちゃん、人気者だね」
みんな口々に勝手な事をいう。
ううー、次は絶対に負けないんだから!
「リン、明日は雨かな?」
「さあねー、南の方では晴れるって言ってたよ」