無残にも肉塊と化した剣士を、弓曲衛策は息を飲んで見つめていた。
「この斬り口……まさか、あの――」
そう、確かに歌州に名を轟かせる人斬りが、今最も得意とする技だろう。
「――左片手平突きか……!」
あの新選組との乱闘で体得し、僅かな内に型を成したとは聞いていたが、これほどまでとは。
その神速の一撃を食らっては、生半可な剣士では成す術もなかろう。
衛策は苦虫を噛み潰した表情で、その場に立ち尽くしていた。
左右の下げに端整な顔立ちは、まるで女を思わせる。
だが、その本性は正しく修羅に等しき人斬り。
如何なる剣術も本の数瞬で忽ち自らの物にしてしまう、天賦の才能を持ち、
同田葱鈴正、同田葱国連の二本刀を腰に、これまで無数の剣士を斬り伏せてきた。
思わぬ難敵の登場に、衛策の拳は段々と固く握り締められてゆく。
「初音美久……この借りは何れ――!」