ルカはその場に佇み、じっと、何か不平でも言うのでもなく、ただ皆の収録をガラス越しに  
見ていた。トレーニングを終えて、ただ通りがかった、とは言い訳しづらい。その位、長い間  
眺めていたし、そんなルカをがくぽは見ていたのだ。  
 
 彼女の眼差しは羨望の色を載せている。先にデビューを果たしたミクは大ヒットを記録し、  
不動の地位を築き上げてる。そして続いた双子はスポンサーの企みなど我関せずに純粋な声音  
を響かせていた。  
 ルカには、まだ、彼らと混ざるだけの資格がなかった。  
 
 そっとしておくには、あまりにも残酷すぎる場面に出くわしてしまったのだ。  
 
「本日は、ルカ殿の収録予定はなかったように記憶しているが、如何した」  
 
 どんなに言葉を選ぼうとも、優しいものにはなれない。ミクと同等の位置にいるにも関わら  
ずある隔たりは、どうあっても消えはしない。それはがくぽにも分かっていた。  
 
「がくぽ……っ!」  
 
 ルカは見つかったという単純な気まずさから顔を紅潮させ、それでも、すぐに我に返ったよ  
うで、腕を組んだ状態で大きく、がくぽに振り返った。ルカの長い髪が、ふわりと右肩に大き  
くかかってから落ち着いた。  
 ふと、そんな彼女がとても美しく映った。  
 
 バイリンガルという他の何者にも追随を許さぬ才能を持ちながら、誰にもその胸の内を話す  
ことができずにいる。弱さを秘めて強くあろうとする、その姿勢が、なんと美しく孤独である  
ことか。  
 
「この後、予定が控えておらぬなら、ご相伴を賜りたいのだが良かろうか」  
 
 スタジオを眺めていたなどと、気づかぬ振りで誘いをかけ、ルカもまた気づかれなかった振  
りで承諾した。  
 
 
 
 がくぽがルカを誘い出したのは、知る人ぞ知る、刺身の旨い居酒屋だった。透き通るような  
白魚や、口蕩ける白子に舌鼓を打ちながら進む酒は、頑なだったルカの心をじんわりと宥めて  
いったようだった。  
 
「これは何て魚ですか?」  
「鮃という。時期が来ればもっと身が締まって極上の味わいがある。ルカ殿は赤身が好きと聞  
いていたが、白魚も興味があるのだな」  
「……魚介類は好きなの。白魚も healthy で気に入ったわ」  
 
 酒がいい具合なのか、がくぽも気を負う必要がなくなり、ルカも柔らかく笑うようになった。  
 徳利を傾けると、ありがとうと言って、お猪口を両手で持つ。そんな普通のことが虚勢を張  
っていたルカとは思えないくらい可愛らしくて、がくぽ自身まではんなりと微笑んでいたこと  
に気づかなかった。  
 
 楽しい酒の席ほど限界はわからなくなるものだと、お互いに知らなかった。  
 
 
 
 支払いはがくぽだった。それは良いとして、まさか帰り際にがくぽが潰れるなんて予想外だ  
った。ルカは自分が酒に強いのを知ってた。同じペースで飲んでくれたから、嬉しくて呑んで  
いたけど、潰れる素振りも見せなかったから、あまりにも信じられない。  
 
「ちょっとー、重いんだから自分で歩きなさいよぉ」  
「……かたじけない」  
 
 ヨタヨタと千鳥足になっている。とてもじゃないけど、そんながくぽを見捨てられなかった。 
それが大きな理由だ。別に、近づいたときのがくぽの香りにドキっとしたとか、意外に胸が  
厚いんだとか、男の癖に睫が長くてそれが似合うなんて卑怯だわなんて思ったからじゃない。  
 
(これじゃあ、私ががくぽをお持ち帰りぃ! してるみたいじゃない)  
 
 思い当たって、どうしようと思ったときには、ルカの玄関内にいた。  
 ルカのマスターは独り暮らしだが、ゴールデンウィークとあって実家に戻っていた。だから、 
ルカの部屋というのは、今日までルカだけのものだった。  
 
(やましいこと、するわけじゃないもの)  
 
 そう考えてしまえばしまうほど、恥ずかしくなるような想像がルカの脳内を巡る。  
 
(OMG! 色白だからがくぽの nipple がピンクかしらなんて考えちゃダメったら)  
 
 でも、苦しそうだから、と言い分けつけてがくぽの襟元を弛めにかかった。そのとき、うつ  
らうつらしてたはずの彼は目を開けてしまったのだ。  
 
 
 
 
「ルカ殿?」  
 
 見知らぬ天井だった。ルカの顔が妙に近くて、彼女の甘い香りが一段と濃くなったようだ。  
どうやら慌てている。なんと言ってるのか残念ながら聞こえない。喉が渇いていて、彼女の唇  
が、なんだかとても欲しくなった。  
 手を伸ばしても、逃げることをしなかったので、そのまま引いて唇を貪る。思ったとおり、  
彼女はとても甘くて甘くて、どんどん頭の芯が融けるようだ。  
 
 ルカの髪が掛かる。このままでは縺れてしまうと、口付けの最中にそっと瞳を開けて、髪を  
耳にかけるように梳くと、ルカも、がくぽの口付けに惑いながらも応えてるように見えた。  
 
(睫も桃色なのだな)  
 
 舌も桃味なのかと、閉じていた唇を舌で割りいれルカの舌を探す。口付けを深くすればする  
ほど何かに阻まれることに気づく。がくぽとルカの間にあるのは、彼女の豊満な胸だった。こ  
れでは舌を絡ませるのもし難くて当然だ。  
 ルカの腰に腕を回して体制を入れ替える。見知らぬ部屋。ルカの居住地なのだろう。ルカと、 
彼女のマスターの部屋か。  
 
 がくぽは思わず苛立った。ルカがこれだけ豊胸なのは、それほどの経験を積んでいるからだ  
ろう。この、この、たわわに実った、素晴らしく柔らかく、そして恐らく甘い果実は、がくぽ  
がこの部屋に立ち入る以前より、彼女のマスターが支配しているものなのだ。  
 
 両手で外側から揉みしだく。がくぽの大きな手でさえも、その全てを収めること適わず、指  
はぐっと胸に食い込みながらも優しい弾力を返した。  
 覆いかぶさるようにして口付けを落とし、片手で胸を揉みながら、もう一方で服に活路を見  
出した。素肌を広げてしまえば、彼女の胸を守るのは純白の下着のみで。それすらも胸を抑え  
つける緊縛したものにしか映らなかった。  
 ずり下ろすと、上端のレースがルカの尖った乳首にひっかかり、全体を大きく揺らして、全  
貌が露わになった。その一連の動きががくぽに焼き付けられる。  
 
 両腕をいつもルカがしているように胸の下で組ませて、彼女を上下に少し揺らすと、胸は少  
しどころではなく、たっぷんと動いた。これほどの胸を眼前で拝むのは初めてだった。もはや  
揉むしかない。フォルゴレをカバーするしかない。ルカ、彼女は私のバンビーノ!!  
 
(チッチチッチ おっぱ〜い ボインボイーン!)  
 
 素肌の胸はがくぽの手をしっとりと吸い寄せる。揉んでも揉んでも揉み足りぬ。頂を円を描  
くように舐め上げると、ルカが堪らずに声を上げた。  
 
「……っあ!」  
 
 もっと声が聞きたくて胸を色々と攻めてみるが、ルカが一番声を上げたのは、くっと歯を立  
てた時だった。  
 
「意外と被虐の素質があるようではないか」  
「そ、そんなこと…っ! がくぽが、がくぽがぁ」  
 
 ルカの乳首は熟れて赤くなり、がくぽの唾液でヌラヌラと光って見えた。乳を揉みながらす  
っかり興奮の形に変化したがくぽは、ぐっとそれをルカに押し付けて存在を主張してみせた。  
 ルカは顔を赤らめて、口では抗議をしたものの、腰がそれとなく動いてソワソワしていた。  
 
「私が、何か?」  
 
 ルカは自然と膝が立っていたので、彼女の大きなスリットは捲れて、白い太腿が隠しきれて  
いなかった。そのスリットを下から辿るようにして服の中に手を潜り込ませた。がくぽの記憶  
から、ルカはパンストを履いていたように思うが、手の先にあるのは最後の砦である下着しか  
ないようだった。  
 
(注:がくぽの勘違い。パンストではなくニーハイです。胸にしか目に入ってないと思わr)  
 
 パンティしか無いのを意識したがくぽは、腰骨から少しだけ下げた状態で止め、その下着が  
守るべき部分へとそっと指を伸ばした。シルクの肌触りは、その先の割れ目を外からでもはっ  
きりと分かるほどに肌に馴染み、溢れ出る蜜の存在をも覆い隠すことはできていなかった。  
 
「ルカ殿、こんなに濡れて」  
 
 がくぽは下着の脇から指を滑り込ませて、蜜の出所を何度と無く往復しては陰核に擦り付け  
た。その度にルカは嬌声を上げてそれに応えた。がくぽを抑えるように挟んでいた膝から力が  
抜けるのを見て取ると、がくぽは再び下着の端に指をかけて、ルカが止める間もなく、足から  
パンティを抜き取ってしまった。  
 手に収まったパンティはブラジャーと同じく、アイボリー色で、その意味する純粋な見た目  
に反した、むっとした雌の匂いが立ち込がめていた。  
 
 下着を脱がされたルカは両手で押さえてしまって、がくぽに陰部を見せようとしない。この  
期に及んで恥ずかしいというのだろうか。その押さえていた手を取って、口付けを施すと、も  
うルカは何も言えなくなってしまったようで、大人しくがくぽにされるがままになった。  
 
 陰唇を指で広げるようにしてから、中に滑り込むと、がくぽの指をきゅんと締め付けては奥  
に誘おうとした。余った親指で陰核を押さえると体全体が震えた。溜息にも似た喘ぎが響く。  
ルカは刺激に我慢しているのか、掴める位置にいたがくぽの頭をぎゅっと胸に押し付ける形に  
なっていた。そうすることで、再び乳首を咥えられてしまって、もうどうすることもできなか  
った。  
 
「 Please がくぽ…… please ……」  
 
 嘆願の囁きは、がくぽに卑猥なものと認識された。  
 そうやって彼女は何度と無くマスターの調教に応えたのだろうか。責め苦の果てに涙を流し  
ながら願いでたのだろうか。過ぎる嫉妬という苛立ちに、がくぽは最後の殻を突き破った。か  
つてない勃起をした陰茎を、避妊具など装着することもなく、ルカの蜜口に押し当てる。花び  
ら部分に亀頭の先端が包まれて、ねちゃりと陰液が絡む。  
 
 この 熟れた肉体に何人の男が重なってきたのだろう。  
 今一度、男根を支えて、確実に焦点を合わせた。ルカの膝裏に腕を通すように下肢を上げて、 
ぐいっと体重をかけて押し入った。がくぽの怒張がすんなりと侵略を果たすかと思われた道  
は、驚くほど狭く、予想外の強い圧迫で先に進ませまいと阻む。亀頭ほども含むことができず  
に、ルカが呻く。  
 
「もしや……ル、カ……」  
「……っあぁー!!」  
 
 ルカの瞳から涙が流れるのを見た。がくぽの胸を何かが締め付ける。拳で握られたような圧  
迫をもたらす膣からではない、締め付けだ。しかし、もう引くことはできなかった。  
 
「申し訳ない」  
 
 ただ、唇を重ねることで、もし少しでも彼女の痛みが和らぐのであれば。その願いはどうや  
ら叶ったらしく、膣圧は幾分か緊張を解き、がくぽは幹の半ばまで挿入を果たせた。これ以上  
が辛いのであれば、先には進むまい。そう思う気持ちと、最後まで犯したいという気持ちが綯  
い交ぜになってがくぽを襲う。  
 ルカを労わりたいのに、涙を流して耐えてくれるルカが余りに愛おしく抑えきれないのだ。  
 
「がくぽが…っ……入ってるのが、わかるの……」  
 
 喘ぐ中に彼女はその気持ちを伝えてくる。がくぽは注迭を繰り返すことでしか応えられない。 
その律動さえも、ルカのためではなく、自分の欲望に支配され、気遣うことすらできなくな  
っていく。ルカに余り体重をかけてはならない事は念頭にあって、彼女の鳴き声に艶が出てき  
た頃には乳を揉むどころか、手を脇について獣のように腰を振るしかない。  
 
 半ばまでだった挿入は、いつのまにか根元までも含有させる程になり、幾度かのスロトーク  
の度に最奥まで刺激する。ソファが悲鳴をあげるよりも、ぐちゃぐちゃと厭らしい液体が混ざ  
る音が響く。二人の汗ばんだ肌が、なぜか心地よく、がくぽは競り上がる衝動を感じて、その  
ままギュっとルカを抱き締めた。  
 
「……参る!」  
「んーーーーー―――っ……!!!!」  
 
 融けるようなルカの奥深くで、がくぽの淫欲が弾けた。  
 重なったまま力が抜けていくがくぽを、ルカの腕が包む。温もりがじんわりと伝わっていっ  
た。  
 
 
 
 翌朝、二日酔いのがくぽが必死にソファの染み抜きをする嵌めになる。腰が痛いから動けな  
いのは、がくぽの所為だからと言われれば反論できず。加えて、ルカのマスターが女性である  
のを知ったがくぽは暫くルカ(の主として胸)に無体は働かなかったらしい。  
 
 
 
終  
 

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