僕をご存じでしょうか。
青いマフラーが目印のカイトというボーカロイドです。
今から、僕が体験したことの一部始終をお話したいと思います。
もしかするとあれは僕の見た幻覚なのかもしれません。
しかし、幻覚であろうとなかろうと、僕自身には紛れも無い事実としか認識出来ないのです。
僕はこの体験を一人でかかえて過ごせるほど心臓が強くありません。
ですから、僕が抱いた恐怖のほんの一部でも知りたくない方は、この先をお聞きにならないほうが良いと思います。
僕の恐怖のカケラを分かち合ってくださる方は、どうか心してお聞きください……。
その日僕は彼女とドライブに興じていました。
彼女というのは同僚のボーカロイドであるメイコさんで、僕より一つか二つ年上の女性です。
仕事が終わってからだったので、待ち合わせた場所で落ち合った時点で、既に日が西に傾いていました。
実はその時が初めてのデートで、僕は少し緊張していました。
その頃僕はまだまだ知名度が無くて、女性とお付き合いなんてもってのほかだったのです。
女性に免疫の無い僕は、雑誌やなんかで仕入れた知識を引っ張りだして、
服屋に行こうか、とか、おいしいレストラン知ってるよ、とか、
彼女を楽しませるために無理やりべちゃべちゃ喋りました。
でも彼女は、雑誌に載ってるデートコースとは全然関係ないところへ行きたがったのです。
「服もレストランも今度にしよ。私、海が見たい」
雑誌の情報がはやくも波間に消えてしまいました。
僕には人の意見を曲げてまで連れ回す甲斐性はありませんから、ほどなく海を目指して走り出しました。
「ね、コンビニよっていこう」
彼女はコンビニで山程ビールやお酒を買ってきました。
おつまみも豊富です。
車で行くのにお酒なんかどうするのかな、と思っていると、酒以外にもジュース類が入っていました。
「君は禁酒だぞ、運転手くん」
同乗者も飲酒厳禁じゃなかったっけ、と思いながらも、彼女が喜々と笑うので、
僕はぽりぽりと頭を掻いて目を逸らすしか出来ませんでした。
街中を離れ、大きな橋を渡り、山沿いの道路を走って行くと、落ちかかった夕日が浮かぶ海が見えてきました。
「おー、絶景だねー」
彼女は助手席で、走る車窓にへばりついて海を眺めました。
彼女はジュースの缶を開けて僕に渡します。
彼女自身はムードもなにもないワンカップを開けて、くっくっくっ、と勢い良く呑みます。
「くはっ、おいしーっ」
本当に旨そうに呑むので、僕は自分が持っているジュースが恨めしくなりました。
潮風の香りと酒の香りが綯い交ぜになって、そのうえおつまみの匂いまで漂って、
なんだか車中が漁師町みたいな雰囲気です。
でも、“きっぷがいい”とでもいうべきなのか、彼女の飾らなさはとても気分の良いものでした。
他愛の無い話をしたり、二人で歌ったり、カーステレオにお互いのipodを繋いで鳴らしたりしていると、
あっという間に夜になってしまいました。
さすがに夜間に飲みながら走るのは気が引けて、僕は海近くの道路沿いに車を停めました。
車を停めてから、男女が夜まで遊び歩いて行き着く先に思い当たり、僕は口をつぐんでしまいました。
僕だって男ですから、是非とも彼女とそういうことをしたいのですが、いかんせん、
どう切り出してよいのかさっぱり分からなかったのです。
しばらく僕が言い出そうとしたり止めたりで口をパクパクさせていると、
彼女は僕の葛藤を察したのでしょう、にやにやと意地悪そうな笑みを僕に向けます。
「カイトくん、どうしたの。もう帰るの」
なんて白々しく聞いて来たりもします。
それで僕がしどろもどろしていると、彼女はくすくすと笑いはじめました。
「まったく、甲斐性なしだなぁ、きみは」
彼女はそういうと、助手席から僕の居る運転席に伸び上がって手をのばし、車のキーを抜きました。
そうして、ぽいっ、と後部座席に投げてしまいます。
「ここからは私が運転したげる」
彼女は僕の脚にすがるように体重を預け、猫の伸びのようなポーズのまま上目遣いで僕に微笑みました。
息のかかる距離、という奴でしょうか。
彼女の身体から香る甘い匂いは、僕の心臓を高鳴らせました。
彼女は僕の股間のファスナーを囓り、チリチリと開けて行きます。
もう昂ぶってしまっている僕のそこは、ファスナーが開いて、少し苦しさから開放されます。
「待ち切れないのかな」
彼女が僕の下着ごしに、僕のそこをつついたりなぞったりします。
彼女の手は僕の腿を押さえていますから、多分、彼女は鼻か唇で僕のそこを弄んでいるのでしょう。
僕が目線をさげればその痴態を見れるのでしょうが、
彼女と違って運転席に普通に腰掛けている僕にはまわりが良く見えます。
誰か来るのではないか、車が通るのではないか、などと思うと、どうも落ち着かないのです。
そうして回りばかり見ているうちに、ついに下着まで下げられてしまいました。
熱さが僕のそこを這います。
目を向ければ、彼女が僕のそれを両手で支え、下から強くキスしていました。
赤い唇をそえ、強く吸い、舌を這わせ、唇をずらし、また吸う。
彼女の舌がぞろりと僕のそれをなぶった時、あやうく僕はどうにかなってしまいそうでした。
ふと、熱さが離れます。
「イきたいみたいだね。ここ、キュッてなってるよ」
言いながら、彼女は僕のそこの根元にある袋を、やわやわと揉みます。
「車、汚しちゃ悪いからね」
彼女は一旦僕から離れ、コンビニのチャリチャリ袋をがさがさとやります。
タバコの箱を二つ繋げたくらいの小箱を取りだし、包装のビニールを破いて、中から一つを摘み出します。
個包装も取って、彼女はピンク色の丸い何かを口に咥えました。
「口で付けたげる」
彼女が咥えて居るのは、いわゆる避妊具と言う奴でした。
彼女は口を窄めて避妊具を僕の先端にあてがい、ツルツルと飲み込むように被せていきます。
「んん」
僕のそこの先端が彼女の喉に行き当たり、彼女がくぐもった嗚咽をもらします。
ちゃぷ、ちゃぱ、と水音を立てながら、彼女は僕のそれから口を離しました。
彼女は口角の唾液を小指で拭いながら、僕に因美に笑いかけます。
「あ、そういえば、キスしてなかったね」
ふと思い出した彼女は僕にキスしようとして、寸前で止めてしまいます。
「ごめん。下、舐めた後だった。汚いよね」
僕は自分でも驚くくらい素早く、彼女の言葉に返事を返しました。
「僕、メイコさんとキスしたいです」
今日初めて、メイコさんのやる事に異を唱えました。
そして、間髪いれずに、唇を重ねました。
メイコさんはポカンと一瞬ほうけてから、やっぱり因美に微笑みました。
そこからまた、メイコさんのペースです。
メイコさんは運転席に座る僕のそのまた上に被さり、僕の唇に唇を重ね、乱暴に舌をいれて来ます。
僕のそこはメイコさんの下腹部に押しつけられ、ますます苦しくなってゆきます。
メイコさん僕の手を取って自らの服の中に導きました。
「胸、さわって。私おっぱい感じるの。男の人もおっぱいさわるの好きでしょ」
もちろんです。
僕は彼女の胸を揉みしだき、ときおり先端をキュッと摘みました。
「ああ、良い。きみうまいね」
メイコさんは余裕ぶって僕の動きを評したりしますが、僕はもういっぱいいっぱいでした。
彼女がついに下着をずらし、僕のそれを受け入れてくれました。
僕はあまりの快感に声を上げそうになったのですが、彼女の唇が僕の口に蓋をしてしまいました。
僕のそこを咥え込んだメイコさんの下腹部がぐいっと締まり、メイコさんが動くたび、
ずるっ、ずるっ、と熱いヒダが僕のそこを刺激しました。
僕が自分でも腰を動かすと、今までと違った位置に激しく擦れ、ついに僕の頭の中で白い閃光が弾けました。
腰の中が拍動し、僕の、メイコさんの中に埋まる先端が、熱いものに浸っていきました。
果てしない達成感とはげしい疲労感が僕を襲います。
僕が達したのを分かっていながら、メイコさんはあえて動きを止めてくれません。
狂いそうです。
スピードの向こう側が見えます。
と、その時です。
前方から黄色い車が走ってくるではありませんか。
夜間の道路工事に鉢合わせてしまったのかも知れません。
僕は内心慌てているのですが、達した直後からメイコさんに攻められ続けているので、言葉ひとつ発せません。
そして見てしまったのです。
ロードローラーのギアレバーに絡み付く“女の生首”を。
完