拙者、神威がくぽと申す。
拙者に妹が出来たと聞いて、主に許しを貰って帰郷した所である。
「やっぱさあ、弟妹出来ると嬉しいもんよ?」
先日の飲みでMEIKO殿が嬉しそうに語っていた。
「アタシにも外国に先輩がいたけど、国内ではアタシが初めてのボーカロイドで、ずっと不安だったわ。だからKAITOが出来た時、本当に嬉しかった。…ま、落ちこぼれだったけど」
MEIKO殿は笑い、ジョッキを一気に飲み干す。
「神威君もアタシと同じよね。会社が別の、初めてのボーカロイド。…独りが辛いのも多分知ってるだろうからさ、妹さんを大切にしてあげなね」
「…MEIKO殿も、KAITO殿に会う時このような気分だったのだろうな」
胸が高鳴るとはこの感覚を言うのだろう。
大切に、なぞ言われなくても。初めての妹分、この身を徹して守ろうぞ。
その想いを胸に、拙者は開発室の扉をくぐり抜けた──。
「…で、なんで神威君はそんなに凹んでるのかな」
「拙者、てっきり和服美人な慎ましい少女だと思っていたのだ…いや、十二分に美人ではあったし、性格はまだ定着していないが」
「グミちゃん?元気そうな子よね。でも神威君と並ぶと違和感ありそう。服装的な意味で」
「ぬおぉ、MEIKO殿言ってくれるなぁ!」
「うーん…なんでそんなとこまで同じなのかな。アタシもKAITOの服装見た時は参ったのよね、思いの外派手で。ま、アタシの服装が地味過ぎるってのもあるけど」
「今日は飲む!飲まずしてやってられぬわぁ!」
「はいはい、付き合うわよ」