「今日も駄目かぁ……」
暗い夜道をトボトボと歩く一人の女性がいた。
彼女の名前は弱音ハク、さっきいつものように彼(マスター)にアピール(性的に近い意味で)をして失敗した。
最近毎日のようにアピールしているのだが、疲れて帰ってくるためすぐに寝てしまうのだ。よって未だに全く成果が無いのである。このままじゃやってらんねーよ!コノヤロウ!って感じなのでマスターが寝ついた後、酒を飲む為にいつもの居酒屋に向かっているところなのだ。
「あれ?」
いつもの店がある場所へ来ると何故か居酒屋ではなく、どっかで見たことがある感じのバーになっていた。「なにがあったんだろ……」
とりあえず今は酒が飲めればよかったためその店に入ることにした。
「こんばんは」
「あら、いらっしゃい」
ドアを開けて中に入ると、そこには新宿二丁目あたりに居そうなオカマっぽいKAITOが居た。
「KAITO……さん?」
一応VOCALOIDの端くれなのでたまたまもらえた仕事でKAITOと会ったことはあるのだが雰囲気が全然違った。
「違うわアタイの名前はカマイト、この店のママをやっているの。」
色々聞きたいことがあったが名乗られたので自分も名乗る。
「わ、私の名前は弱音ハクです」
やっぱり別人なのだとわかり何故かホッとしている自分が居た。
「そんな立ちっぱなしじゃ疲わよ、そこにお座りなさい」
「あ、はい」
しゃべり方はオカマっぽいが優しくて良い人そうだった。
「あの、カマイトさん」
「アタイのことはママって呼んでちょうだい」
「あ、すいませんママ」
「なにかしら?」
「前にここで店主をやっていた人は何処へ行ったんですか?」
「ああ、それならウチで働いているわよ、店子ちゃんちょっと来てちょうだい!」
カマイトはパンパンと手を叩き、奥に居るらしい元店主を読んだ。
「あらぁ、ハクちゃんじゃないのん元気してた〜ん?」
奥から見るに耐えないおやじなオカマが出てきた。
ハクは吐いた。
〜しばらくお待ちください〜
「店子ちゃん」
「なんですかママぁん」
カマイトは絶対零度の微笑みで言った。
「今日はもう帰っていいわ、あと明日から来なくていいわよ」
店主だった物体はクビになった。帰り際の店主(元)は泣いていてまた吐きそうなくらい気持悪かった。
「見苦しい物見せちゃってごめんなさいね」
「いえ、いいんです呑んでもないのに吐いちゃった自分が悪いんです」
ハクは吐いてしまったことにより少し精神的ダメージをうけていた。
カマイトは少し考えたあと「じゃあ、お詫びに今日は全部アタイの奢りにするわ、好きに呑んでいってちょうだい」
それを聞きハクが少し驚いた表情になる。
「いいんですか?」
「ママに二言はないわよ?」
イタズラっぽくウインクしながらウイスキーのグラスを出した。
人はちょっと酔ってくると自然に素の部分が出てくるものである。VOCALOIDも歌うために人に近い機能をつけられているためハクも例外無く素が出た。
「最近ましゅたーが相手してくれなくてごぶしゃたなんれすよ」
「あら、勿体無いわねこんなに可愛くて良い身体している娘になにもしないなんて」
「どんらけアピールしてもすぐ寝ちゃうしもうアソコにくものすはっちゃいそうれす、てかもうはってんじゃないれすかね、あははは」
ママは少し考えたあとこう言った。
「じゃあ寝込みを襲っちゃいなさいよw」
「寝込みれすか?」
「そうよ!それだけやって駄目ならもう襲うしかないわ!」
「その発想は無かった」(CV・子安武人)
一瞬ハクが別の人になった。
「……今の誰なの?」
「なんのことでしゅか?」
ハクに今の記憶が無いらしい。
「それより名案ですよそれためしてみまふ」
(ま、いっか)「頑張ってね!ママ応援してるわ」
「じゃあごちそうさまれした、またきまふ」
もう遅いのでとハクは店から出ていった。
「うまくいくといいわね……」