クソ熱い夜だったのがいけない。  
「気温より熱く燃えたい」  
 とかふざけた事言って汁まみれのべったべたに絡み合った後、ミクとがくぽは素っ裸のまま並んで寝た。  
 本っ当に熱い夜だった。  
 裸でも蒸して寝苦しくて、二人して何度も寝返りを打った。ごろごろした。  
 その結果がこれだ。  
 
  **  
 
 爽やかな朝の目覚めを、恋しい方と迎えるのはどんなにか美しい事でしょう。  
 彼を起こす事も、彼に見詰められながら起きる事も。  
 今日という日が素晴らしくあるのは、この朝で始まるからなのです。  
 安らかな彼の面。そっと目を覚ます動作。唇で触れられる近さにある幸福に、自然と目が細まります。  
「……初音」  
「お早うございます、がくぽさん」  
 彼の肩が揺れます。きっと私に触れようと、手を伸ばすのでしょう。  
「……」  
 あ、身動きが取れない事に気が付きました。  
「初音、何だこれは」  
「ミクと呼んでって言ってるじゃないですか」  
「おい」  
 彼の首に顔を埋めます。汗の匂い。私と彼の汗です。それと、もさもさした私と彼の髪。  
 緑と紫が混ざり合った肩。  
「おい初音。何だこれは」  
「ミクですよ」  
「これは、髪か」  
 髪です。  
 私と彼の髪に、私と彼が包まれています。  
「私とがくぽさんが愛し合った結果です」  
「マリモか蓑虫のような状態を子宝の如く例えるな」  
 私達の長い髪までも、私と彼のように絡み合います。毛の一本まで、離れる事が無いのです。  
 何て素敵。  
「おい初音。これをどうするんだ」  
「もう少しこのままでいたいです」  
「言ってる場合か」  
 目の前の乾いた唇に、私の唇を重ねます。  
 動くのは、これで充分です。  
「初音。まさか本気でこのままいるつもりでないだろうな」  
 重なった場所が揺れて、彼の声に肌が震えます。  
「おい」  
 舌を伸ばしてみます。拒否されました。  
「切るぞ」  
 身動き出来ないのにどうやって切るのでしょうか。無理ですね。  
 もし離れたくなっても離れられません。  
 こんなにしっかり絡み合ってるんですから。  
 本当、素敵ですね。髪が長くて良かったです。  
「おい、初音ミク」  
「初音が余計ですよ」  
 

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