クソ熱い夜だったのがいけない。
「気温より熱く燃えたい」
とかふざけた事言って汁まみれのべったべたに絡み合った後、ミクとがくぽは素っ裸のまま並んで寝た。
本っ当に熱い夜だった。
裸でも蒸して寝苦しくて、二人して何度も寝返りを打った。ごろごろした。
その結果がこれだ。
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爽やかな朝の目覚めを、恋しい方と迎えるのはどんなにか美しい事でしょう。
彼を起こす事も、彼に見詰められながら起きる事も。
今日という日が素晴らしくあるのは、この朝で始まるからなのです。
安らかな彼の面。そっと目を覚ます動作。唇で触れられる近さにある幸福に、自然と目が細まります。
「……初音」
「お早うございます、がくぽさん」
彼の肩が揺れます。きっと私に触れようと、手を伸ばすのでしょう。
「……」
あ、身動きが取れない事に気が付きました。
「初音、何だこれは」
「ミクと呼んでって言ってるじゃないですか」
「おい」
彼の首に顔を埋めます。汗の匂い。私と彼の汗です。それと、もさもさした私と彼の髪。
緑と紫が混ざり合った肩。
「おい初音。何だこれは」
「ミクですよ」
「これは、髪か」
髪です。
私と彼の髪に、私と彼が包まれています。
「私とがくぽさんが愛し合った結果です」
「マリモか蓑虫のような状態を子宝の如く例えるな」
私達の長い髪までも、私と彼のように絡み合います。毛の一本まで、離れる事が無いのです。
何て素敵。
「おい初音。これをどうするんだ」
「もう少しこのままでいたいです」
「言ってる場合か」
目の前の乾いた唇に、私の唇を重ねます。
動くのは、これで充分です。
「初音。まさか本気でこのままいるつもりでないだろうな」
重なった場所が揺れて、彼の声に肌が震えます。
「おい」
舌を伸ばしてみます。拒否されました。
「切るぞ」
身動き出来ないのにどうやって切るのでしょうか。無理ですね。
もし離れたくなっても離れられません。
こんなにしっかり絡み合ってるんですから。
本当、素敵ですね。髪が長くて良かったです。
「おい、初音ミク」
「初音が余計ですよ」