ミクはとっても可愛いんだよ。見れば解ると思うけど。  
もちろん見かけも可愛いけど、性格とかもさ、なんていうか、本当に素直でカワイイんだ。  
すぐにお兄ちゃんとか言ってくっついてくるし、解らないことがあれば聞いてくれるし、  
上目使いでお願いなんてされたらもう、何だってやっちゃうね。  
もちろん、ミクは無茶なことなんて一度だって言ったことないけど。  
 
アイテムだって、スゴいんだ。  
長ねぎって、中国とか中央アジアの方が原産なんだけど、  
日本書紀にも登場するくらい古くから親しまれていた野菜で緑の部分はちゃんと緑黄色野菜に分類されているんだよ。  
薬味として欠かせないどころか、鍋や味噌汁には主役クラスで入るし、風邪にもよく効くんだ。  
体を温める成分が入っているから、民間療法で、ねぎ湯はよく言われているしね。冷え性にも効果があるんだ。血液の流れをよくするから、肩こりとかにも効くらしいし。ともかく、アイテムからして、スゴいんだよ。  
 
もちろん、歌だってうまいしね。高音の伸びとかさ。毎回感動するもん、俺。素直で扱いやすいから、たくさんのマスターに愛されてるし。自慢の妹なんだ。そりゃ、欠点だってなくなはないけど、そんなのちょっとしたスパイスだと思わない?  
そういうところがあるからこそ、ミクのかわいさとか素直さとかが引き立つわけだし。メリハリって重要だと思うんだ。  
やっぱり素直が一番だよ。お兄ちゃんお兄ちゃんとか言われると、  
もう、炎天下のアイスよりも早く溶けるんじゃないかって気分になるし、  
何でも許せちゃうよね。  
 
明日、久し振りにミクと出かけるから、  
とっても楽しみで今からわくわくしてて、もう、俺どうしたらいいんだろう。  
ちゃんと明日来ると思う?  
心配だな。夢だったらどうしよう。ミクがいれば何とかなるけどね。  
 
 
 
 
あのね、あのね、あのね。明日お兄ちゃんとお出かけするの。  
内緒にしてね。変なところに行く訳じゃないのよ。  
お兄ちゃんと一緒ならどこにでも………………いっ…てもいいけど、  
変なところになんかお兄ちゃん絶対に連れていってなんてくれないし、  
ともかく、変なところじゃないんだけど、  
リンちゃんやレンちゃんに知られると、付いてくるって言うに決まってるし、  
そりゃ兄弟みんなで一緒に行くのも楽しいと思うけど、  
楽しいけど、ほんとぉに久し振りに二人のオフが重なったの、  
だから、たまには、お兄ちゃんと二人だけってしてみたいなとか。  
だって、お兄ちゃん、いつも他の人と一緒にいるんだもの。  
優しいし、何でもできるから、みんなもお兄ちゃんのこと大好きだし、  
一緒にいたいのもよくわかるけど、  
でも、でも、でも、たまにはね、お兄ちゃん、ほんとにすごいの。  
ほんとにほんとにすごいの。ガチ曲は当たり前として、  
ネタ曲の幅広いことといったら、  
ネタ曲に対してもきちんとやろうとするのってほんとにすごいなって思うの。  
優しいし、まじめだし…あのね、私の髪をきれいにセットしてくれるの、  
お兄ちゃんが一番うまいの。痛くもないし。  
毛先もくるくる丸めてくれるし。ミクの髪はきれいだねって言いながらブラッシングしてくれるの。  
だから、えっと、ともかく、明日のお出かけは、ちょっとだけ内緒なの。  
えへへ、今から心臓が跳ねてるの。どうしよう。  
 
えへへ、今から心臓が跳ねてるの。どうしよう。  
うれしくて死んじゃいそうなくらい。死んじゃ駄目だよね。  
明日がちゃんと来ないから。  
だから、しーに行くって内緒ね。  
 
 
 
ほぼ、一気に二人分の台詞  
(あえて台詞と言わせていただく)をしゃべり終わったルカが麦茶を飲む。  
中の氷が涼しげな音を立てる。  
ここにきてまだ日も浅いルカは他の兄弟たちと違って  
まじめに話を聞いてしまったらしかった。  
ちなみに、MEIKOを初めとして、鏡音姉弟は適当に聞き流す癖が付いている。  
「どこに行ったかのヒントは含まれていたでしょうか」  
「だから、seaよ」  
ヒントどころかストレートに言ってるし。  
「朝早くにKAITO………に…兄さんに会ったのですけど、聞きそびれてしまいましたわ」  
鏡音姉弟がじゃまをすることはあり得ない。  
一回で懲りた彼らは二度と近付くまいと心に刻んでいるからだ。  
ただでさえ、普段から結構べったりなのだ。食傷を通り越して不感症になりつつある。  
「その格好で暑くないですかと」  
三拍ほど沈黙してから、MEIKOは二人がseaに行ったと説明する。  
「OH、sea!私も行きたいです。日本の海はとても美しいのでしょう?」  
海じゃなくてテーマパークの方だけどね。  
梅雨の中休み、朝から快晴だったから、さぞかし、テンションも上がっただろう。  
四日前のオフは二人とも同じ姿勢でずっと窓から土砂降りの外を眺めていた。  
久しぶりの晴れ間だから朝から、洗濯機はフル回転。  
ルカにも手伝ってもらって、シーツまで洗い、  
やっとブレイクでそういえばあの二人はどこに行ったのと尋ねてしまったのが、間違いだったかもしれない。  
「OH!面白そうですね」  
「双子も誘って、今度行こうか」  
恋人同士でなければ楽しめないわけではないし、  
むしろ、みんなでの方が楽しいだろう。  
「がくぽさんもお誘いして、よろしいですか?」  
「いいけど、親しかったっけ?」  
「いえ…………会うと必ず、海は好きかと聞かれて、  
海に沈む夕日がどれほどすばらしいかを熱く語られるので、  
それほど海が好きなら、seaにお誘いすれば喜ばれるかなと」  
不憫。いろいろと。  
心の中で突っ込んで、MEIKOは麦茶を飲む。  
 
「お忙しいようですから、無理でしょうか」  
「大丈夫じゃない?誘うだけ誘えば?」  
万障繰り合わせ、万難を排してやってくるだろうとは口にしない。  
苦労しそうだなというのは所詮他人事だからだ。  
荷物持ちとお財布確保。  
第二段の洗濯をするために立ち上がりながら、MEIKOが考えていたのはとても不憫なことだった。  
 
終了  
 
 

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