「お兄ちゃん………」
揺すってくるのが誰か解ったから返事の代わりに抱き込んで寝返りを打つ。
「お兄ちゃん!」
もうとか言いながら怒ってないのがバレバレな感じて俺の腕の中でちょっとジタバタしてみせる可愛い妹。
あんまり調子に乗るとしばらくは起こしに来てくれないどころか、めーちゃんかリンのフライングボディーアタックになるのですぐに解放する。
体重的にはリンのダメージは大したことがないように思うかもしれないけど、高さと勢いと手加減なし加減とナチュラルにエルボーが付くから覚醒の代わりに昇天しそうになるよ、あれ。
「おはよう、ミク」
「おはよう、お兄ちゃん」
にこっと笑うとえへへと返すからふふふと応える。
朝から幸せ。
「ご飯できてるよ。めーちゃんが作っておいてくれたの。温めるだけ」
「すぐ行くから支度しておいて」
めーちゃん達は朝早くからテーマパークに行ってしまった。
鳥が鳴いている。カーテンを開けると夏の日差しが部屋を照らす。
良かった、晴れて。やっぱり遊びに行くなら晴れてる方が楽しいからね。
伸びをして着替える。
ミクは午前中から、俺は午後から仕事があるから、一緒には行けなかった。
まあ、この前行ったし。
朝食を食べて、ミクの髪を結んでやる。ちょっと幸せ。
櫛とブラシできれいに分けて、場所を決めてから根本をゴムで縛る。
ミクぐらい長くなった髪の根本を縛るときは輪にしないで
紐状のまま根本に少し引っ張り加減で何回か巻いて結ぶ方が綺麗にできるんだけど、
そんな場所に蝶結びはできないって言ってミクは輪になったゴムを使う。
だからもつれて苦労すると思うんだけどな。
最後に今日は暑くなりそうだから涼しげなパールの髪飾りを飾ってやって終了。
我ながらよくできたと思うよ。
やっぱりお兄ちゃんにしてもらうのが一番だねと嬉しそうに言われてちょっと胸張っちゃってもいいよね。
えへへと云うから、ふふふと返す。
「今日、仕事の帰りに待ち合わせないか?めーちゃん達、夕食も食べて来るみたいだから、どこかに食べに行こうか?」
「うーん……お家で食べちゃだめ?一緒にお買い物して、一緒に作るの」
「いいよ。じゃ、予定時間に終われるようにがんばるよ」
「お兄ちゃんの場合がんばりすぎだと思うの」
「そうかな?」
「そうだよ。って、そろそろ行かないと」
「駅まで送るよ」
嬉しいと抱きつかれてこっちも幸せになれる。
ミクはきっと幸せの魔法が使えるんだ。歌にだけじゃなくってね。
だって、俺達をこんなにも幸せにしてくれる。
鍵と財布だけジーンズに突っ込んで待ってると、すぐにバックを持ったミクがやってくる。
「どうしたの?」
やっぱり可愛いなって見つめていたら不審に思われてしまったらしい。
「今日も可愛いよ」
やだもうとか赤くなるのはもっと可愛い。
ミクのバックをもって歩きながら、遅刻しちゃうよと言うと、待ってよとすぐに追い付く。
えへへと云うから、ふふふと応える。
きっとこれも魔法の言葉。
終