がくぽさんのお父様が、生放送で楽師のみなさんに挑戦状を送ってからこのかた。
がくぽさんは練習にレコーディングにとより一層忙しい時間を過ごしています。
ここしばらくは、メールのやりとりも満足にできていなくて……、正直、ちょっと寂しいです。
でも、がくぽさんが注目を集めるのは嬉しいですし、活躍されるのは喜ばしいことですし。
こういうときに、寂しいとか言っちゃいけないんだろうなあ、と。
ですので、そのへんは、こう、努めて平気な風を装い、日々を過ごしています。
そんな中。
がくぽさんから、ようやくオフの日ができそうだとメールが入りました。
曰く、とにかく疲れているのでゆっくりしたい、とのこと。
ですので、私ががくぽさん宅におさんどんをしに行くことにしました。
上げ膳据え膳でゆっくりしてもらおうという算段です。
そしてようやく迎えたオフの日。
調達した食料を手に、がくぽさん宅の呼び鈴を鳴らします。
が、何度鳴らしてみても、全く返事がありません。
しょうがないので合い鍵で中に入ります。
「おじゃましま……す。」
上がり込んで居間に向かうと。
案の定、がくぽさんは寝てました。テーブルに楽譜を広げて、そこにつっぷしたままで。
頑張ってるなあ、と思いつつ。背中をつん、とつついて起こします。
「ん、あー……、初音殿。」
「お早うございます。」
「……お早う。すまん、寝ておったな。」
「いいですよ、疲れてるんでしょうし。」
「いやはや、面目ない。」
そう言って、頭をぼりぼりと掻くがくぽさん。
「あの、そんなんじゃかえって身体疲れちゃいますから、
ちゃんとお布団で寝た方がいいですよ?」
「ん、いやしかし。」
「私、その間ご飯作ってますし。」
「いや、でも。」
「ゆっくりしててください。」
「んー……、では、お言葉に甘えて、そうさせていただこうかの。」
そして。がくぽさんは寝室に向かい、私はお台所に向かいました。
小一時間後。とりあえず、ご飯の支度ができました。
やることも無くなって、一人で居るのも心許ないので。
がくぽさんが寝てる部屋に向かってみます。
起こさないようにそっと襖を開けたつもりだったのですが。
やっぱり起こしてしまったらしく、がくぽさんが寝返りを打ちました。
「ん?んー……。」
「あ、ごめんなさい。起こしちゃって。」
「あいや、大丈夫だ。それより、いま何時だ?」
「さっき6時になりました。」
「そうか。けっこう寝てたな。」
がくぽさんが、布団の中で伸びをします。
「ご飯の支度、一応できてますけど。すぐ食べられます?」
「や、今日は昼が遅かったでの。もう少し遅い方がありがたい。」
「そですか、じゃあ、もうちょっとゆっくりしますか。」
言いながら、私は傍らに座りました。
すると、がくぽさんは、布団をめくって、スペースを半分空けて。
「……初音殿。」
こちらにちょいちょいと手招きします。
「えと。おじゃましま……す。」
がくぽさんが空けてくれたスペースに収まるべく、もぞもぞと布団に入りました。
私が布団に入ると。
がくぽさんは、私の身体に腕を巻きつけてきました。
「……すまんの。せっかく来てもらったのに、ろくに構いもできず。」
「だからいいんですよ。がくぽさん、お疲れでしょうし。」
私も、がくぽさんの背中に腕を回します。
「こうするのも、久しぶりだの。」
「そですね。」
「というか、会うこと自体が久しぶりか。」
「ええ。」
「すまんな。」
「だから、いいんですってば。」
そう言い合って、ぎゅっと抱き合って。
どちらともなく、ひとつ、ふたつと唇を重ねました。
はじめは軽くだったのが、次第に深く。
「えっと。疲れてるんじゃなかったんですか?」
「まあ、疲れてはおるが。……だめか?」
「いやその……だめじゃないです。」
実を言うと。
お布団にお邪魔したときから、いや、その前から。
こういう展開を期待してなかったわけではなく。
たぶんそれは……がくぽさんも同じことで。
私の太ももに、がくぽさんの熱いものが、当たっています。
この感触は嫌いじゃないです。
というか、むしろ好きだし、私のせいでこうなってることが嬉しいんですが。
こういうことを言ったら、軽蔑されるでしょうか。
がくぽさんの手が、私の身体の至る所に触れます。
私も負けじと、がくぽさんの身体のあちこちに触れます。
がくぽさんの手が、ためらいがちに、私のスカートの中に入ってきました。
私もそろそろと、がくぽさんのその部分に手を伸ばします。
そうして、お互いがお互いの一番敏感な部分を刺激し合っていたのですが。
先に耐えられなくなったのは私の方で。
思わず、そこから手を離して、がくぽさんの身体にしがみつきます。
しがみついたまま……軽く気をやってしまいました。
「あの、私も……。」
多少気だるさが残る身体でがくぽさんの着物を解き、
インナーは……私には無理なので腰まで下ろしてもらって。
露わになったその部分に、口を付けます。
舌を這わせて、先端を口に含みます。
慣れないながらも何とか良くなってもらいたくて。
舌を動かしてみたり吸ってみたり。そうしていると。
「ちょっ……、待っ……!」
不意に、身体を引き剥がされました。
「え、と……?ダメでしたか?」
「いや、ダメという訳では……。
むしろその……、久しくそういう機会もなかったゆえ。いかんせん我慢が効きそうになく。」
「あの、いいですよ?」
「え?」
「その、我慢しなくても。」
「いやでも。」
「その方が、私も嬉しいです。」
「いやしかし。」
「だめですか?」
「…………え、と、良いのか?」
聞かれて私は、こく、と頷きます。
「ではその……、頼む。」
そう言われて、手を握られました。指を絡めて、ぎゅっと握り返します。
またそこに舌を這わせます。
きゅ、と吸い上げ、舌でちろちろと押すように刺激します。
空いてるほうの手で、口に収まりきらなかった付け根の辺りを、擦るようになぞります。
がくぽさん、いま、どういう顔してるのかなあ?
それが見てみたくて、上目で見上げてみたら、ぱち、と目が合いました。
「あ……、初音殿……!」
握られた手に、ぎゅっと力が込められて。
口の中に、生暖かい感触が広がったのが、分かりました。
なんとか飲み下そうとしましたが、できなくて、えずいてしまいます。
「ちょ……、初音殿、無理はなさらず。」
ティッシュを手渡されたので、その中に吐き出します。
「……有難う。」
がくぽさんは、痕跡を拭うように、口の中や周りを舐め取ってくれました。
そしてそのまま、またぎゅっとされます。
がくぽさんの息が整うまで、そうして抱き合っていました。
「……あの、どうします?」
「ん……、すまん、ちょっと……。」
「えと、じゃ、とりあえず、ご飯にします?私、暖めてきますから。」
もろもろ後始末をして、乱れた服を整えて。
もういちどがくぽさんと軽く唇を重ねて。
食事の支度を整えるべく、その場を離れ、台所に向かいました。
さっきまでの感触を、反芻しつつ。