夏休みが始まる前の休日。  
本番に入る前だというのに、その暑さはもう真夏。  
まだ太陽が真上にも行かないというのに、30度は超えているだろう。  
 
ピンポーンピンポーン  
 
「がーくっぽさんっ、休みなんだしプール行こうっ、プール!」  
玄関で叫ぶミクに対し、屋敷の奥の方から姿を現した甚平姿のがくぽが答える。  
「…あー、これこれ、そんなにチャイムを連打するでない。小学生か!」  
「ひっどーい!今日はデートって言ってたじゃない!」  
 
夏休み、という概念は学生限定。  
いつもどおりの休日を過ごしていたがくぽであったが、  
やはりそこは律儀にあわせてしまう。  
 
「暑いのにわざわざ日に当たる必要も無かろう」  
「水は冷たいもん!」  
「プール上がりのあの塩素臭とか嫌ではないのか?」  
「もうー!何でそんなことばっかり言うのよー!」  
 
基本的に出不精。  
女のご機嫌を取るために意見を合わせる段階の付き合いでもない。  
程良く我侭を聞きつつ、自分の意見を通すがくぽ。  
 
「あーーーー、もう、部屋に上がれ。  
 公共のプールでも9時からではないか?まだ早かろう」  
「うー、そうだけどー」  
居間の戸を全て閉めると、現代っ子に合わせてエアコンをつける。  
「ほれ、家の中にいた方が涼しいであろう?」  
「ちゃんと準備してきたんだから!ほら!」  
そう言って、ミクはチェックのシャツワンピースの裾を捲り上げた。  
 
「…ってうおっ!?はしたない!何をしておるか!!」  
「水着!!せっかく家から着てきたんだから!絶対行くの!」  
白とミントブルーのストライプの布地がスカートの裾からチラリと覗く。  
「ちょっ、これ!布が小さすぎではないか?!」  
「そんなことないもん!私全然だよ!ルカさんとかビキニ凄いもん!!」  
 
さっきから、何かと反論されてしまっているミクは、思わずムキになる。  
エアコンがまだ効いていないせいか、はたまた浮き足立った気持ちの出鼻を挫かれたせいか。  
「大人と比べてはならぬであろう!未成年がこんな格好をしてはならぬ!!」  
「年齢とか、キャラとか、曲のイメージに合わせた水着だもん!  
 そんなコト言うがくぽさんの方がおかしいんだよ!!何子ども扱いしてんのよ!バカ!」  
 
この格好で何度も歌って踊って収録をしたときのことを思い出していた。  
確かに最初、水着姿でのPV撮りに恥じらいを感じたのはあった。  
しかし、そこはプロ。きちんと仕事はやり遂げたし、出来にはかなりの自信もある。  
それをろくに見もせずに、頭から否定されては堪らない。  
同業者に、いや、自分が大切だと思っている相手に……とまでは考えていなかったが、  
ミクが悲しい気分になったことには変わりは無い。  
 
そして、その空気を咄嗟に感じ取ったがくぽは「またやってしまった」と後悔した。  
「……すまぬ、言いすぎであったな……許してくれ……」  
そう言いながら、うつむいたミクの頭を大きな手で撫でる。  
掌の感触に、思わず涙がこぼれそうになったのを我慢しながら言葉を搾り出した。  
「……褒めてもらいたかったんです……ゲームで使った水着、似合ってるねって、可愛いねって……」  
「そうだったのか……では時間もあることだし、撮影の話を聞かせてくれぬか?」  
「……うん!」  
 
ちゃんとケンカをしてちゃんと仲直りが出来る、そんな当たり前のことが嬉しい。  
そして、いつもどおりの空気が流れ始めた。  
 
「これこれ!色んな衣装でそれぞれの曲を撮ったから、すっごい大変だったんだよ!」  
「沢山の種類があるのだな、どれもなかなか」  
ムービーファイルを展開し眺めている二人。  
「プレイヤーが作りこみ出来る、というのがまた凄いのう」  
「でしょー!やってみてないからよくわからないけど」  
 
それはPCの中と外の世界の問題で、ミクはゲーム自体は持っていない。  
そもそもゲームは操作する人間がいて成り立つ世界。  
記録を見ることは出来ても、電脳世界内でそのゲームをプレイすることは出来ない。  
「マスターが持ってれば、画面から出て出来るんじゃないかな?」との事。  
 
「……しっかし、それにしてもこう、カメラの角度とか…うぬぅ……」  
「ね!隙が無いでしょ!手先足先まで!」  
「いや、何と言うか、結構際どくないか?」  
「え、またそれ?」  
「この衣装でこの角度だと下着も見えてしまうし、こちらでは体の線がはっきり出てしまうし」  
「やらしい目で見てるからそんな事ばっかり気になるんじゃないですか?」  
 
しばしの沈黙が訪れた。  
無表情で遠くを見つめるがくぽに、その顔を覗き込むミク。  
「……か?」  
「な、なによぅ……」  
「……だがなにか?」  
ミクは身の危険を感じて身を引くが、時は既に遅し。  
 
「ああ!いかがわしい目で見てるからこそ気になるのだ!!」  
「開き直りですかぁあああああ!!!」  
「けしからん!実にけしからん!!特にこの水着っ!!」  
「水着ってアイドルの王道じゃない!」  
「否!不可!却下!!」  
「きゃあああああっ!!」  
 
この勢いでミクを押し倒すと、がくぽはこれ以上の反論を遮るかのように強引に唇を重ねた。  
んぐんぐもぐもぐ言っていたのはほんの一時。  
細い顎をこじ開け舌をねじ込むと、たどたどしくも自らの舌を絡ませ返してきた。  
上手く出来ない呼吸と、唾液の混ざる音が和室に響く。  
既に畳の上には、目を潤ませ、その行為の続きを待ちわびている少女の姿があった。  
そして、ミクの耳元で低い声で囁いた。  
「……水着、見せたかったのであろう?ほら、早く見せぬか?」  
 
促されるように、ミクはワンピースのボタンを自ら外していったが、  
最後の最後、肌蹴させる所で躊躇していた。  
「どうした?王道なのであろう?散々晒してきたから平気であろう?」  
「…あ……」  
がくぽは裾の方から襟に向かって、ゆっくりと衣を開いていくと、  
紺色がそこに横たわる肢体の白い素肌を強調していた。  
 
「……綺麗だ……」  
「ホントに?」  
「あぁ、ただこの姿を他の輩に見られるというのが気に食わないな。仕事とは言え」  
思っていた以上に自分は独占欲が強いのかもしれない。  
ユーザーの手によって、様々にその表現を変えることが出来るという身なのに、  
その仕様を恨めしく思う事があろうとは。  
「……じゃ、仕事以外じゃこの格好しません……」  
「そうしてもらえると有難い」  
 
 
「それにしても無防備だな、この姿。ローアングルからこうズームアップして……」  
片足を持ち上げて、くるぶしに唇を落としながら、小さな布が隠している下腹部に目を遣る。  
そして、脹脛、膝、内腿へと舌を這わせ上へと進んでいく。  
「やん…くすぐったいです……」  
「男どもに、『ひょっとしたら見えるんじゃないか』、って思われながら、  
 ここを凝視されたり体を操作されてしまうのだぞ?」  
「……やだっ!変態っ!!変な事言わないで……」  
「いや、わからんぞ?数多おるユーザーの中には…ん?」  
 
 
がくぽはミクの膝を曲げた状態のままで脚を開かせると、そこに身を滑り込ませ、  
既に熱を帯びているであろう箇所へと指を伸ばす。  
しかし、そこに到達する前に明らかな変化を確認してしまった。  
「……凄いな、もうこんなに濡れているとは……」  
「そ、それは素材のせいっ……」  
「ふーん、透ける素材と知って着ておったのか。変態はそちらであろう」  
「……え?す、透けてるの?」  
泣きそうな声でミクは尋ねる。それに対しがくぽはそれはもう楽しそうに、かつ意地悪く答えた。  
「白地なのだからそれなりに透けるであろう。  
 やらしい汁を散々吸って、貼り付いておるのだからなぁ。凹凸も一目瞭然だ」  
一度動きを止めた指が、再びそこへ向かう。  
「や、やだ、押しちゃダメぇ……」  
触れた指の圧力で、ぶじゅ、と音をさせながら液体が染み出してくる。  
布の下にある割れ目に沿って指を滑らせたり、少しだけ入り口から押し進めてみたり、  
指の動きも、愛液が生じさせる音も、次第に激しくなっていった。  
「やはり、硬くなってるココがいいかのう?」  
「あぁっ……やぁっ!」  
いや、などと言いながらも、恐らくそこを刺激して欲しかったのであろう。  
ミクは腰を浮かせてその刺激を受け入れる。もっと、もっとと言わんばかりに。  
 
「あー、ほれ、こんな格好であんな激しい踊りを踊ったとはなぁー。  
 一寸足らずずらしただけで、見えてしまうではないか」  
そう言って、ブラを少しずらし、乳頭にひっかかったままになるようにした。  
「…あ…?」  
「そのまま立ってみろ?」  
横たわるミクを抱え身を起こさせると、姿見の前に立たせた。  
鏡を覆う布を捲ると、そこにあられもない姿が映し出された。  
「ほら目を逸らすでない。こんな風になるのを妄想されておるのだぞ?」  
「……や……やだぁ……」  
「いや、もっと酷い想像をされているかも知れぬのう…こんな風に」  
がくぽは後ろから回した手でビキニのパンツを上へと引っ張った。  
食い込んだビキニは、割れ目を、そしてクリトリスを容赦なく刺激する。  
「毛も具も丸見えではないか。しかもこんなに汁を垂れ流して」  
恐る恐る、そこに移りこむ自分の姿を見る。がくぽの言うとおりだ。  
いつの間にか、愛液は内腿を伝い落ちていた。そして。  
己の秘肉が、更なる刺激を求めるかのようにひく付いているのを感じた。  
もっと、もっと奥の方へと……。  
 
 
「この白い腹や、背中が好きだというのに。それなのに紫外線に当たろうというのか?」  
後ろからミクを抱きかかえながら、腹をなで上げ、肋骨に沿って指を滑らす。  
そして、同時に背中にキスをしながら、舐めあげた。  
「ふあぁああああっ!!」  
足が震えて体を支えることが出来ない。  
膝を付きそうになったミクを、後ろから抱きかかえて軽く持ち上げ、  
水着をずらしつつ、己自身を突き入れた。  
 
「あぁああああああっ!!」  
ミクが一際大きな声で鳴いた。  
「や…い…いきなりっ……」  
「と言う割にはあっさり入ったが?よいせっと」  
身長差のせいでなかなか不安定な体勢。このままでは双方共にキツイと思ったがくぽは、  
ミクを四つん這いにさせた。  
「やだぁあ……」  
繋がった腰は持ち上げたまま、額を畳に押し付け顔を隠すミク。  
視界を絶ったところで、自分の中の感覚を紛らわせることは出来ない。  
ゆっくり、ゆっくり、焦らすようにがくぽは腰を動かす。  
自分自身に絡み付いてくる秘肉の感触を楽しんでいるのだ。  
少し入れては押し返してくる膣内。  
『相変わらずキツイのぅ』  
そして、ゆっくりとそのまま奥まで突き進んでいく。  
「や…あ……あぁあああんっ!」  
「一番奥まで、届いたぞ?」  
緩い動きなのに、衝撃が背筋を通り、脳髄を直撃した。  
 
「ん?もう果ててしまったのか?」  
状況を見れば訊くまでもなく判る事を、敢えて口にするがくぽ。  
そして、訊いたところで聴こえてくるのは乱れた呼吸のみ。  
返事を待たず、再び後ろからミクを抱え、その身を起こさせる。  
「誰も目を逸らしていい等と言ってないであろうが」  
胡坐をかいて、丁度その膝の上にミクが収まる体勢に……無論繋がったままの状態で。  
 
項垂れたままのミクの顎に手を添えると、くいっと顔を上に向かせた。  
「まー、これだけ猥らな表情をしてるのはそう想像出来ないであろうがな」  
目の前の鏡に映った顔は、半泣きで、涎を垂らし、目も口も半開きで。  
当の本人だって目の当たりにすることはそう無い。  
「……だぁ……」  
耐え切れずにミクは視界を瞼で遮断した。  
「ん?拙者はもっと見ていたいのだが?」  
がくぽの指が涎の跡を辿り、唇を一撫でするとそのまま咥内を侵してく。  
目を閉じ視覚を遮ってしまったせいか、触覚が冴え渡る。  
指先で舌を弄ばれ、もう片方の手の指先で乳首を捏ね回され、男根で子宮口を突き上げられ。  
外から内から刺激を与えられ続け、正気を保つことすら限界で。  
 
「……ぷはっ……?!」  
開放された口から、一気に空気を吸い込む。  
「ぬ……三点と言えば、こちらかのう?」  
「あ…ダメ……待って、待ってって!!」  
待てと言われて聞く耳など持ち合わせていない。  
無遠慮に包皮を捲りあげた指が、紅く膨れ上がった陰核に触れる。  
「ふぁああっ……!!」  
「わかりやすいのう、こんなに締め付けて。そろそろ動い……動かしてもいいか?」  
「やぁ……っ!これ以上無理ィ……変に……なっちゃうよォ」  
「……なればよいではないか」  
 
ボソッと耳元で呟いた次の瞬間、ミクを膝から掬い上げ、身体を持ち上げた。  
「ほれ、繋がっている所が丸見えだ」  
抜ける直前まで持ち上げられると、鏡は更に明瞭にうつし出した。  
大量に愛液を垂れ流しながら、ミクの秘所ががくぽのモノを咥えこんでいる光景が。  
『いつもこんなのがはいってたんだー、からだってすごいなー』  
恐らく、これが最後の思考だった。  
激しく上下に揺さぶられる体。膣壁を擦り上げる陰茎。  
自分の意思と関係無く漏れる悲鳴と性器の擦れ合う音。汗と体液の立ち込めるにおい。  
感覚の全てが更なる快楽を呼び寄せる。  
ミクが何度達した頃だろうか。  
「もう……限界だ……」  
がくぽはミクの奥へと精を放った。  
 
「おまいも出してもらえればよかったのにねぁー。男連中も出てるんだし」  
「褌でネタ要員にしたかったのであろう?」  
「ん、当り。つかコンボ出ない。無理。がくぽ、コンプしておいてー」  
「……それでよいのか?ゲームとして」  
「あー、いいのいいのー」  
エディットが目当てでゲーム購入したものの、普段音ゲーをしないマスターは、  
あっさりと諦めて、攻略をがくぽに押し付けた。  
 
確かに。画面から出た身でならゲームをプレイすることが出来た。  
音楽なら専門分野。300bpm、64/1拍を認識して違うことなく歌える身なのだから、  
曲を覚えるまでもなく、画面を見ただけであっさりとクリアしてしまった。  
「うっは、テラチートwww」  
次の日の夜、仕事から帰ってきたマスターは、モジュール、アイテム、  
全てを揃えたセーブデータを受け取った。  
 
「あ、主。エディットのデータ、決して消すでないぞ?」  
「はぁ。別にいいけど。そこまでいじってたの?」  
「やっぱり本物の方が良いな。では」  
そう言い残して、がくぽはPCへと戻った。  
 
「別に興味無さそうだったのに。ま、見るなとは言ってないよなwww」  
数分経過。  
「なんじゃあこりゃああああ!!ミクの乳とケツのアップばっかりじゃんか!」  
しかも、アングルが変わるのみで、モーションもろくに使わず。  
「……あいつ、いつの間にこんなヤツになったんだろう……頭悪い男子中学生か……」  
 
 
 
 
後日談。  
 
「スクール水着なら露出も少ないから構わぬぞ」  
「ちゃんと持ってきたから行こう!」  
「しっかりと全身に耐水タイプの日焼け止めを塗ってだな…」  
 
……結局、ローションプレイ的な方向に走り、その日もプールへは行けず終い。  
「家で行水で十分ではないか?ん?」  
「なんか、この夏プール行けないような気がする……」  
布団に突っ伏したミクは、枕に顔を埋めたまま呟くとそのまま眠ってしまった。  
 
『せめて……せめて25mは泳げるようにならねばっ……!!』  
拳を握り締め、がくぽは心の中で叫んだ。  
まだまだ夏は始まったばかり。  
 
 

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