「マスター、ポケットを叩くとビスケットが二つ――ってどういう意味ですか?」
「そういえば、もうおやつの時間だね」
「叩くだけで、ビスケットが増えるんですか? そんな不思議ポケットがこの世には存在するのですか?」
「あったら猫型ロボットもびっくりだよ。ちょっと間違えば栗饅頭式に増えていくんだから」
「じゅる…」
「今日のおやつはビスケット。ちょうど良いから、一枚使って教えてあげる」
「え、ポケットは何処ですか? 私も欲しいです!」
「落ち着いて。はい、僕の手の甲に一枚のビスケット。これを――」
「もぐもぐ…おいし〜」
「ミク」
「――はっ! あ、ご…ごめんなさい。つい」
「じゃ、もう一枚。これを軽く叩いてみて」
「こう、ですか?」
「割れて二枚になりました。じゃ、片方をもう一度」
「はい」
「更に割れて、欠片が三枚になりました。これでも数としては増えたよね?」
「……」
「つまりそういうこと。板チョコを毎日半分に割って食べ続けたら、板チョコは永遠に無くならない――っていうのと似たような話」
「……はわ〜」
「難しいよね。まぁ、良いか。さ、ビスケットを食べよう」
「はーいっ!」
「マスター、最近お姉ちゃんに変なこと教えているよね…」
「そうだよな。今日もビスケットが増えるのは板チョコが無くならないから、とか訳の分からないこと言ってたし…」