夏といえば?  
 
「海!」  
 
勢いよく答えた妹たちは既に浮き輪を抱えて行く気満々といった様子だった。カイトはやっぱりね、というように溜息を吐く。  
車が運転できるのはカイトとルカの二人のみ。出掛ける人数はお隣のインターネット家を含めて総勢8名。  
したがって自分が車を出すのは必然的なのだ。いい加減免許を取ってほしいと恨みがましく横目でメイコを見る。  
 
「な、なによ!その目はっ」  
「めーこ、いい加減受かってよ……仮免まではスムーズだったのになあ」  
「う、うるさい!あたしが本番弱いの知ってるでしょ……」  
それじゃあVOCALOIDなんかやってられませんよ、と言うとメイコはうっと口詰まった。後輩のルカのほうが先に取得してしまったことにはさすがに焦りを感じているらしい。  
 
「まあ、いいやめーちゃんの水着見れるしね」  
自分の海パンやらバスタオルやらを詰めながらぼそりと本音をこぼしてやる。するとメイコは顔を真っ赤にしてスケベ!とだけ叫んで隣接した自身の部屋へ消えた。  
普段は真っ先に準備を済ませて妹たちをせかしている彼女が今日に限って皆から「遅い!」と言われたのは言うまでもない。  
 
 
*  
「あれ」  
「なによ」  
「あ、いやー……あの水着じゃないんだなって思って」  
あの水着とは最近仕事で着たぱっくりと真ん中が空いているハイレグの水着である。  
また一昔前のものを用意したなとは思ったがそれですら彼女は着こなしていたというのに。  
「だって、あんな恥ずかしいじゃない!」  
「いやー似合ってたのに」  
 
「こっちよりも?」  
ツンと拗ねた様に唇を尖らせて上目遣いをしてくるメイコは……やばいくらいに可愛い。  
顔がにやけそうで直視できない位だ。思わず自分が羽織っていたパーカーを彼女の身体に羽織らせて隠す。  
こんなかわいいもんを他のやつなんかに見せてやるもんか。  
ホルターネックのビキニは細い腰を強調させ短いスカートから出る太ももは眩しい。きつすぎない赤は彼女のイメージカラーということもあり似合わないはずがなかった。  
……いや、どこにでもありそうな水着だしインパクトには欠けるだろう。  
けれど問題はそこではないのだ。”彼女”が着ているということが重要である。  
 
「かわいいよ。こっちのほうが、全然」  
なんだかドギマギしてしまって上手く言葉が出ない。というより正直に言おう。  
俺の息子が叫んでいる。  
 
「んなっ……やっぱ似合ってなかったんだあ……」  
「いやっそうじゃなくて!めちゃくちゃ似合ってるから、あの、その」  
ちらりと海ではしゃぐ妹たちを見る。青い海に映える美少女たち。ああ、かわいいなあ楽しそうだなあと脳が現実逃避を始める。  
メイコが徐々に詰め寄るおかげで身体が密着しそうだ。これ以上は限界です。  
するとその時運よくがくぽと目が合った。そして親指を立てる。  
 
行って来い☆  
 
この日ほどがくぽが男前に見えた日はなかった……  
 
 
*  
「ちょ、待ってよ、カイト!」  
あまりにもかわいすぎるメイコを無理やり乗ってきたワンボックスに引きずり込みフラットシートに押し倒す。  
一応VOCALOIDだからということもあり目隠しをつけておいてよかった。この現場を見られたら誓ってもいい。憤死する。  
まずむき出しになった腹部(これはいつもの事だが)を指でリズムをつけて叩いてやるとほんの少しだけピクリと震える。  
続いてうなじから胸元へと優しくキス。キスマークをつけなかったのはせめてもの優しさだと思ってほしい。  
 
「ん、あ」  
「めーこがこんなにかわいいからいけないんだよ」  
自分でも砂吐いて死にたくなるような台詞を耳元で囁いてそのまま耳たぶを咥えてやる。  
くちゅくちゅと音をたてるとしがみつくようにメイコの細い指がカイトの二の腕に伸びる。  
そのまま唇へと舌を割り込ませて右手で柔らかい布地を捲り上げながら胸を揉むと頂にある突起は期待しているかのように既に尖っていた。  
それにしても水着のままでシたことはなかったので初めての発見であったが、女物の水着は意外に柔らかいものなのだ。こんなもの一枚で何が守れるのかと思うと腹ただしくさえ思えてくる。  
誰だ、こんなもの開発しやがったのは。メイコの肌なんぞ自分だけが見られれば良いのだ。  
その腹ただしさを行為にぶつけてやる。空いた左手でスカートの中をまさぐるとそこは少し湿っていた。  
指を当てて上下してやると唇が離れた瞬間に甘い吐息が漏れる。  
 
「ね、めーこ。ここ、いいの?」  
「あ、いい……のか、も」  
いいのかも、じゃ分からんよ。とビキニ脇から手を入れようとするとメイコが身動きをした。  
ワンボックスの中でしているため結構狭い。思い切り下敷きにしてしまわないようにカイトも動く。  
ゴチンと思い切り頭をぶつけたが気にしている場合ではない。息子が。  
 
「な、なに!めーこどうしたの!」  
「あ、いや……せっかくのアブノーマルプレイなんだからこっちからしてあげようかなとか、思ってみたり、して」  
そんなにアブノーマルとも思えない状況だが確かに普段ベッドでするのとはいろいろと違いすぎる。  
それに珍しくメイコが積極的であることに息子が反応しないわけがない。ご相伴にあずかることにしよう。  
仰向けにされたカイトの股間のそれは天を高くしめしていた。それを思い切り乱れたブラの間に挟まれる。柔らかい刺激がカイトを襲った。  
 
 
「ちょ、う、あ」  
「か、いと……きもちい?」  
舌足らずに聞いてくるメイコを見下ろすと潤んだ瞳でこちらを見上げている。ばちりと目が合うと恥ずかしそうに目を逸らした。  
「ん、めいこ、こっち向いて……」  
「ん……」  
恥ずかしそうに舌をちろりと出して先端を刺激される。いやいやいやいや、それはマジでやばいって。  
顔を真っ赤にさせて恥ずかしそうに自分のモノを舐める恋人を見て反応しない男はいないでしょう。  
 
また、この昼間にワンボックスの中でという普段とは全く違ったシチュエーションが燃えさせる。  
「う、あ、もういい!もういい!メイコ!限界がっ」  
さすがに恥ずかしすぎるので出すまではしないが、マジでそろそろ挿れたい。  
ビキニを脱いでスカート一枚になったメイコが上に跨る。これでは結合している部分は見えないが微妙なチラリズムも燃えるかもしれないと思い黙っておく。  
 
「んあ、あっあっ」  
「メイコ……動いて」  
「動いてっるっ」  
メイコの中はいつも同様に熱く、いやいつも以上に熱く、しかしこの熱さならばどんなに真夏でも構わないと思えるものだった。  
地球温暖化はショートの原因にもなるし懲り懲りだなと思っているがメイコの熱さならどんなにヒートアップしてもカイト的にはただひたすらに嬉しいだけだった。  
なんだか気持ちいいのは自分だけではないのだと実感している気になれるのだ。  
 
「ごめん、メイコ」  
そう一言だけ断って(実際は全くごめんだなんて思っていないけれど)メイコの腰を掴む。それを待ち構えていたようにメイコの動きも止む。  
こちらから突き上げてやるとメイコは高く啼いた。声にならない喘ぎを漏らしていやいやと首を振る。  
 
「はあっあんっ」  
「め、いこっ」  
「あ、やあああっ」  
耐えきれなくなったようにメイコがカイトに抱きついた瞬間にカイトの視界が一瞬だけ白くなった。  
達したようでメイコも全身の力が抜けくたりと抜けてカイトの身体に倒れ込む。  
 
「あ、ああー」  
「ん……メイコ、なんかいつもよりよかった……積極的で」  
「それは」  
頭を撫でられながらメイコは恥ずかしそうにうつむいた。かわいいがここで二回戦目は時間的にも体力的にもきついものがある。  
「なんか、カイトが水着見て欲情してくれてるの、分かったから」  
 
その言葉を聞いた瞬間、カイトは帰宅後の二回戦目と「妹たちのために」今度は車でプールに連れていくことを決意した。  
 
 

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