「カイト、やめっ……」  
「いいじゃないか。誰も居ないんだから」  
いくら拒絶しても、諦めないでキスを迫ってくる男に、デリカシーと言うものはないのか。  
そんな思いがふと頭をよぎる。  
そしてそれは少しずつではあるが怒りへと変わってゆく。  
「カイト、いい加減にやめなさい!!」  
こんな変態は、許せば許すほどつけあがって最終的には全てを持って行ってしまうから、早めに潰しておかなければいけない。  
未だにキスを求めてくるカイト改めバカイトに、大声で怒鳴りつける。  
「…………っ」  
慌てて退こうとするけれど、下に置いてあった段ボールにつまずき、派手にすっ転ぶ。  
それがおかしくてなんだか笑ってしまった。  
「カイト?」  
「……はい」  
その笑みをまだ残したまま名前を呼べば、従順に――まるで犬のように返事をする。  
そうだ、犬と同じで変態にも躾は必要なのだ。  
今まで好き勝手させてきた私が、飼い主が駄目だった。  
「今から、私がキスよりも良いこと教えてあげる」  
それだけ言うと、カイトのベルトに手を掛けた。  
 
 
 
 
終わり  
 

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