久々にメイコと一緒に歌うことになった。
メイコと歌えることでもう俺のテンションゲージはMAXだ。
スタジオに入り、音の調整をする。
マイクテストを行って本番だ。
…気持ちがいいな。
メイコと一緒に歌うときだけまるで音の層が流れるように空間を包み、心地よい。
やっぱ俺ってメイコのためにいるんだなぁとか自らゲージが振り切れる事を思いながらメイコの声に併せる。
サビの部分に差し掛かるとBGMに比例して声が大きくなる。
その時だった、突然マイクとギターが凄まじい音を立てて、バチリとハウリングを起こす。
瞬間、電流が口に入り、鮮やかなイメージが脳にフラッシュし、舌に鉄の味を伝えた。
「!?カイト!」
メイコがマイクスタンドを落として駆け寄ってきた。
「ん、大丈夫。ハウって少し口の中切れただけ、」
メイコと目が合う。メイコは真面目に心配そうな顔を近づけてきた。
たいした事じゃないよ、ミキサーの出力がおかしくなったんだよ。と続けようとしたその時
「、んっ!?」
メイコの柔らかな唇が重なっていて、出そうとした声は舌の裏へ消えてしまった。
俺の手持ち無沙汰な手は少し宙を彷徨い、メイコの手に絡めとられる。
ぬるり、と他人の熱が唇の隙間に通り、歯列をなぞる。
傷口はどこかと探る舌の速度に、脳髄が痺れるような甘さを感じて思わず舌を絡めた。
「む…っ」
絡まった手がきつく握り返される。
メイコは邪魔だと言わんばかりに俺の舌を押しのけて、やっと傷口にありついた。
ぬるりとした感触とちりちりとした火傷に似た痛み
俺は脳の奥がジンジンとして、何も考えられなくって、なされるがままにされていた。
…何で、メイコがいきなりこんな、やらしいキスしてくるんだろう…
前指先を怪我したとき、メイコに「傷口は舐めてれば治る。」って言ったのをずっと本気にしていたのだろうか?
いや、単に俺とちゅーしたかっただけかもしれないという可能性もある…よね。
ぼぉっとそんな事を考えていたら、やっと舌に銀糸をひいて、唇が離れた。
「メイコ…」
「…ん?」
けだるげな、色っぽい声。
「傷を舐めるからってベロチューしてくるとは思わなかったよ…」
「っ!?」
自分の行為の意味にメイコの瞳が見開く。羞恥で頬が桃に染まった。
「メイk
ゴッ…
鈍い音がした瞬間に俺の意識はブラックアウトした。
…
目を開けたら何故か俺はスタジオの外に干されていた。
「メイコ…まさか天然じゃなくて…」
さっきのキスは、
その後俺はミクとリンレンが助けに来てくれるまで寒い寒い紺碧の下、にやけながら干されたまんまだった。