神威さんとリンがくっついてこのかた。
リンの片割れであるところの俺は、なんとなく暇を持て余している。
今まで何をするにも一緒だったし。
いつもやってたゲームだって、対戦相手がいないと張り合いがない。
「……つまんねえなあ。」
今日はオフ。例によってリンは神威さんのところ。
家にいてもつまんないし、用事言いつけられでもしたらうざいし。
「公園でも行くかな。」
行って、またゲームでもやろう。
もしかしたら、対戦相手も見つかるかもしれないし。
そう思って、出かけてみた。
公園に行ってみると、人があんまりいなかった。
「そっか、みんな宿題やってんだ。」
世間は夏休み終盤。
普段公園で顔を合わせる連中は、みんな慌てて宿題に取りかかってる頃なんだろう。
「つまんねーなー。」
そう思っていると。
ベンチに見知った顔を見つけた。
「えっと、……ぐみさん?」
見かけた彼女は、なんとなく、寄る辺もなくぼんやりとしている。
その様子が気になって、ちょっと声をかけてみることにした。
「ちわっす。」
「あ、レン君。」
ぐみさんの手には、俺と同じゲーム機があった。
「ぐみさんも、対戦相手探しに来たんすか?」
「あ、うん、それもあるけど。
何となく、うちには居ちゃいけないかな、って。」
「え?」
「ほら、お兄ちゃん達の邪魔しちゃ悪いってゆーか。」
あ、そうか。
ぐみさんは神威さんと一緒に住んでて。
リンが神威さんちにお邪魔してるということは。
「すんません。うちのバカ妹が。」
「あ、ううん!そんなんじゃないの!私が勝手にこうしてるだけで!」
ぐみさんは、慌ててそう答えるけど。
そうだよな。俺と同じく、居場所を無くした、みたいなもんだよな。
そう思いつつも。
その辺の話はあんまり突っ込んじゃいけないような気がして、別の話題を探す。
「えっと……、ぐみさんも、ゲームとかやるんすね。」
「うん、けっこう好きだよ。」
「じゃあさ、俺と対戦しないすか?」
「え……?」
「てか、ウチ来ません?他のみんなも居るし。」
「んー、じゃあ……。お邪魔させてもらおうかなあ。」
そのときは。
ぐみさんを誘ったことに、深い意味なんてなくて。
だから。
俺とぐみさんがそういう関係になるなんて、
そのときは全く想像していなかった。