不毛だと、誰かが言った
人間とボーカロイドの恋など不毛だと
悲そうな顔で、そう言った
愛しているよと、マスターが囁く
私の非現実的な薄緑色の髪を、優しく撫でながら
愛しくなって私も囁く
愛していますと、マスターの頬へ手を添えて
マスターの手が、私の上着のボタンへとかかる
外気に晒される、私のささやかな膨らみ
マスターの指が、私の身体をなぞる
臍から胸へと、まるで指先でなめ回すかのように
嗚呼、このパターンは何回目だろうか
何十回、何百回と肌を重ねた内の、何%だろうか
マスターの囁きを間近で聞くだけで、肌が触れ合うだけで、私は濡れてしまう
淫媚な音と共に、私は淫らな汗をかく
肌を重ねる度に、私の身体は敏感さを増していく
不毛だと言うのならば、この変化はなんなのだろう
マスターが私を貫く。熱を帯びて、私を浸蝕する
響くのは、肉同士をたたき付ける音と、水音
それでも物足りなくて、唇を重ね合う
ねっとりと、舌を絡ませ合う
心と共に、身体も熱を帯びる。より激しく求め合う
不毛だと言うのならば、この気持ちはなんなのだろう
二人、同時に果てる
マスターの熱が弾ける。私の胎内に、浸透する
唇を離し、息を整える
マスターが………囁く
嗚呼、聞きたくない、忘れたい、最悪のビロートーク
不毛だと、マスターは言う
人間とボーカロイドの恋など実らないのだと
涙を流しながら、マスターは言う