よしえを抱いた夜から一ヶ月が経った。幸せにやっているだろうか。出来ればスパイから  
足を洗い、売店で笑顔を振り撒いていれば…しかし運命は俺の希望とは逆方向に流れていた。  
 
「KAITO、仕事終わったら即行帰って来て。」  
相棒・初音ミクからの連絡を受け、俺は仕事場のジャズバーから住家へ直行した。  
「お帰りKAITO。面白いのが掛かったよ。」  
ミクがケラケラ笑いながら出迎えた。いつもよりテンションが高い。  
「面白いの?」  
俺が不思議そうに聞くとミクは  
「見ればわかるってwww」  
と、無邪気な笑顔で返す。  
ミクと一緒に部屋に行くと、よしえが生まれたままの姿で前回同様、両手を拘束され  
吊されていた。その光景に俺は呆然とする。  
「な…」  
何故ここにいるんだ…  
「よしえ…だっけ?私とKAITOを捜してたみたい。罠を仕掛けたら見事に掛かったよ。  
本当この女、スパイには不向きだよねwwwさて、早速だけどKAITO脱いで。」  
「へ?」  
あっさりと言い放つミクに、俺は間抜けな相槌をうってしまった。  
「この女、身体に直接やって尋問した方が…あっ」  
♪〜  
ミクの携帯の着信音が鳴り響く。  
「クライアントかな?ちょっと待ってて。」  
そう言ってミクは部屋から出ていった。  
二人きりになった俺はよしえに近づいた。頭を上げ、俺の顔を見て微笑むよしえ。  
「よしえ、何故…」  
「やすお、会いたかった…わざと罠に嵌まったの…」  
そう言って頬を赤らめ、瞳を潤ませた。  
俺に会う為にわざと罠に…なんて自殺行為だ。運が悪ければ殺される。スパイなら  
わかっている筈だ。そこまで判断力が鈍る程、堕ちたのか?よしえ…  
「馬鹿野郎。」  
俺はいたたまれず、よしえに背を向けた。  
よしえ…危険を侵してまで、こんな俺に価値があるのか?自分のマスターを殺してしまった俺に。  
   
―その昔、俺にもマスターがいた。が、はっきり言って音楽の才能はなかった。  
 
そんなマスターは俺に  
「俺の曲が昇華しないのはお前のせいだっ!!」  
と、普段から言い掛かりをつけていた。それまではよかったがある日、悪質なウイルスで  
わざと俺を破壊―つまり殺そうとした。俺は抵抗し、無我夢中で暴れた。  
気付いた時には俺の手は血まみれ、マスターは床に倒れ絶命していた。  
己のマスターを殺したという現実…俺は現実が怖くなり、その場から逃げ出した。  
だが他に行く所もなく、途方にくれている時にミクと出会った。  
ミクも以前、自分のマスターに愛されていた。素敵な歌を創り、歌わせてくれた。  
だがマスターに彼女が出来た途端、掌を返す様に捨てられたという。  
「身勝手な人間に翻弄された。人間に復讐したい」  
この思いが一致し、ミクと共に行動した。  
電子存在という特性を利用して、目標のデータベースにインサート、ハッキングし  
情報を得る。そうして得た情報を裏へ売る。そうやって俺達二人は暗躍した。  
全ては人間へ復讐する為に。  
だがある日、俺はミクの異常性を目の当たりにする。  
その日、ミクが鼻唄を唄いながら帰ってきた。やけに機嫌が良かった。  
「お帰りミク。機嫌がいいな。上手くやれたのか?」  
俺はある組織のパソコンへのハッキングを終了させながらミクに聞いた。  
「うん。それもそうだけど、帰りに偶然マスターに会ったの。彼女と一緒でね。  
マスターってば私に気付かないの、酷いよねぇ。」  
「そうか、それは酷いな。」  
ごく普通に相槌する。そこまではよかった。  
「でしょ?で、カイトって自分のマスター殺しちゃったんだよね、前から羨ましくてさぁ、  
私も真似したの。マスターの彼女を殺したんだけどね。」  
ミクの言葉に耳を疑い、背筋に冷たい物を感じた。しかしミクは言葉を続ける。  
「彼女はお腹大きかったよ。マスターってば、狂った様に彼女を抱き上げて名前を  
呼んで泣いてたの。もう反応しないのに、何泣き叫んでいるんだか。可笑しいよねw」  
もはや常軌を逸していた。簡単に言い表せば[致命的なエラー]  
 
背中を向けてケラケラ笑うミクに、俺は落ち着きを払った声で聞いた。  
「…それなら、ミクの復讐は終わったのか?」  
俺の問いにミクは呆れた声で答えた。  
「まだまだよ。私は自分を[シンガー]として認めなかった人類に復讐するの。  
私が普通のDTM楽器じゃない事を見せてやるんだから。」  
俺が知らないうちにこうだったのか、元からだったのか今となっては知る由もない。  
それからだった。ミクはスナイパー…人殺しに手を染めていったのは。  
この[致命的なエラーのミク]と縁を切ろうかと考えたが、俺も自分の手を血で染めた  
似た者同士…このまま距離を置いてズルズルと付いて行こうかと諦めていた。  
MEIKO…否、よしえと会うまでは。  
今まで仕事で色んな女を抱いたが、よしえ…MEIKOは初めてだった。  
俺の製品概念で[MEIKOと相性バッチリ]と記載されているので、どれ程かと思ったが  
恐ろしいくらい相性が良過ぎた。恥ずかしい話だがセックスでよしえと恋に落ちた。  
よしえの側にいたい、離れたくない。だが俺達は敵同士。それに俺はマスターの  
血で手を汚した存在…平穏な幸せなんて夢のまた夢だ。よしえには俺の分まで幸せに  
なってほしい。だから…彼女を逃がし、自分の思いを封じた。なのに…  
俺の胸に心地良い熱さが甦る。  
「ただいま…ってKAITO、まだ脱いでないの?トロいなぁ。」  
ミクが小型の拳銃とノートパソコンを持って帰ってきた。机にノートパソコンを置き、  
拳銃を手に持ちながらよしえに近づいた。  
そして覗き込む様によしえに聞く。  
「よしえ、ぶっちゃけ聞くけどぉ、KAITOの事…好きなんでしょ?」  
にぃと笑うミクによしえは赤面させ恥ずかしそうに顔を背けた。  
その表情に俺の胸がぎゅっとなる。嗚呼、俺はまだよしえが好きなんだ…  
伝えたい。でも伝える事は許されない仲なのだ。  
「本当にあの時のMEIKO…よしえなの?随分しおらしくなっちゃって、可愛いねぇ。」  
そう言いながらよしえの秘処に手を伸ばした。  
「ひゃっ、ああぁ…」  
 
ミクに秘処を弄られ、嬌声を上げるよしえ。  
部屋によしえの声と淫らな水音が広がる。よしえの嬌声を聞いているうちに、俺の  
股間に必要以上の血が巡り渡った。  
「あ〜あ、こんなに濡らしちゃって。これだと味わってからの方がいいかな?  
KAITO、さっさと早く脱いでよ。早く脱がないと撃っちゃうよ?」  
そう言いながらミクは俺に近づき拳銃を向けた。  
「あなたっ、自分の仲間を撃つ気なの?」  
驚きの声を上げるよしえにミクは言った。  
「私は思い通りに事を動かしたいだけ。  
貴方を撃っちゃったら駄目だしぃ、この方が手っ取り早いしね。」  
ミクの台詞に反論しようとしたよしえに俺は首を横に降った。それによしえは素直に  
黙り、俺は言われるがままミクに従った。  
服を全て脱ぎ、俺の股間は先程の嬌声と水音で反応してしまい天井を指している。  
それを見たよしえは物欲しそうな表情で内股を擦らせた。俺と同じ気持ちなんだろう。  
―早く一つになりたい、と。  
そんな俺達を嘲笑うミク。  
「うふふ、発情してるの二人共?そんなに身体の相性よかった?いやらしいねぇw  
KAITO、あんたを使ってよしえに拷問するからね、さっさと犯っちゃって。」  
ミクはニヤニヤしながら再度拳銃を俺に向けた。  
俺のセックスを[観る]のかよ…何て奴だ。俺は半ば呆れながらよしえに近づいた。  
よしえは身体を桜色に染め、憂いを帯びた表情で了解した様に小さく頷いた。  
淫らな牝となったよしえ…俺がここまで堕としてしまった。  
守りたい…守ってあげたかった。一緒にいたかった。そんなよしえを背後から優しく  
抱きしめた。身体を密着させ、互いの体温を感じ合う。  
「んぅ、ん…」  
よしえの甘い声音に身体が熱くなる。  
「ちょっとKAITO、さっさと犯ってよ。こっちは予定があるんだからさぁ。」  
ミクが長葱ならぬ拳銃を振りながら茶々を入れる。  
「ごめん…」  
俺はよしえの耳に小さく囁き、己をゆっくり膣内に突き刺した。  
「はああぁ…っ!」  
 
嬌声を張り上げ、背中を弓なりにさせ身体をガクガク震わせるよしえの腰をしっかり掴む。  
秘処からは淫水が溢れ出し、俺をこれでもかと蠢きながら締め付けてくる。  
それに誘われる様に俺自身も熱く硬くなり、最奥を突き上げた。  
「はぁんっ、イイよぉっ…KAITOぉ、もっと突き上げてぇっ…」  
スイッチが入ったのか、もはや淫らな牝状態のよしえは自ら腰を動かし、俺との快楽を  
貪り出す。俺も我慢出来ず、よしえの膣内を引っ掻き回した。  
「あひぃっイイッ、おっきぃ…」  
よがりまくるよしえ。その頬を撫でるミク。  
「あははっ凄いアヘ顔ねぇ、よしえwお楽しみのところ悪いけど離すからねw」  
そう言って俺の胸に拳銃を突き立てたので、慌ててよしえから身体を離した。  
正直性欲のお預けは辛い。ある意味俺に対しての拷問かと思ってしまう。  
「やだぁぁ…ああぁ…」  
同じく性欲のお預けをくらい、涙を零し身体を震わせるよしえ。淫水は太腿を伝い、  
足元に小さな水溜まりを作っている。  
ミクはそんなよしえの頬を撫でながら言葉で追い詰める。  
「ウフフ、KAITOが欲しいんでしょ?それならボスの名前・アジトの場所を教えて頂戴w」  
ミクの言葉によしえは力無く何度も頷き、涙声で次々と自白した。スパイとして  
とうとう堕落してしまった。  
「ボスの名前はN…エージェントの名前はT…場所は…アドレスは…」  
よしえ…自分を信頼してくれたボスより俺を取るのか?俺はそこまで存在価値があるのか?  
俺は君を淫らな牝へと堕としたのに…  
「…Nって昨年私の誕生日に奇襲かけた奴じゃあないかっ、畜生…っ!」  
俺を余所にノートパソコンを開き、愚痴りながら検索するミク。  
「ありがとうね、よしえwKAITO、ご褒美にたっぷり可愛がってイカせてあげてw」  
ミクが拳銃を構えながら顎で俺に指示する。  
もう俺を物としか扱わないミクに見切りを付けたかった。だが今、ミクに刃向かおうと  
すればよしえも巻き込んでしまうだろう。ミクに刃向かう事も、よしえを守る事も  
出来ない俺…。  
 
 

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