湯あがりのボーカロイドが体を拭っている。
レコーディングの終わった後、ボーカロイド達で銭湯に寄ってみたのだ。
ハーモニーを奏でるためには互いを知る事が必要であり、つまり裸の付き合いが一番。
リンちゃん肌白いね、だとか、わぁルカさん胸大きい、だとか、きゃっきゃうふふの花園である。
ユートピアもアルカディアも桃源郷も極楽浄土も、全てはうら若い女性の湯浴みする銭湯にあったのだ。
あるいは銭湯こそが理想郷だったのか。こんなニンフになら水に沈められても本望です。
野郎のボーカロイドも入浴しているかもしれないが、男風呂など子細に描いても誰得により以下略。
……と言うのもアレなので少しだけ。
「ぐははは!良いではないか良いではないか!!」
「やめてよっ!やめてよぅ!」
がくぽがレンの腰に巻かれたタオルを剥ごうとしている。
「笑わぬから、なっ?なっ?ちっちゃくてもかぶってても!だから、いちもつを晒せい!!」
邪悪な笑みと粗い鼻息をつくがくぽは完全に変態であった。
「やめたげなよ、青少年のガラスのハートが傷ついちゃうだろ」
10円入れて動かすコインドライヤーで髪を乾かしながら、呆れ顔でカイトが言う。
でも髪乾かすのが優先だから、実際に手を出して助けはしない。
「隙アリっ!」
──ずばっ!
「ひゃあん!」
がくぽがタオルをむしり取り、レンは女の子みたいな悲鳴をあげてペタリと床に尻餅をついた。
ペタリ、と尻餅をついたはずなのに、遅れてビタン!と音が鳴った。
「え!?」「なんと……!?」
レンの局部は、カイトとがくぽふたりの成人男子が息を飲むほど長大だった。
局部が床を打つ音がビタン!だったのだ。
「み、見ないでよっ、タオル返して!」
手で隠そうとするが、それは手に隠れきらない。
アナコンダ。まさにアナコンダであった。
ユルリと放物線を描いて、実る程頭を垂れる稲穂かな状態の大豊作。
もしこれが膨張したらどうなってしまうのか。
……もう良いだろ男湯。
番台横に紙のフタの牛乳ビンが詰まった冷蔵庫、そしてアイスの冷凍庫。
木製の鍵があつらえられた下足箱。
昔ながらの銭湯の脱衣場で、メイコは慎重に金属の板に乗った。
青と緑の中間みたいな理解不能の色に塗られた懐かしさ漂うバネ式体重計のメモリが40キロ台後半強を示し、
メイコは驚愕した。
40キロ台後半強ならば某蕩れアニメのツンドラヒロインの改変体重10人分弱もしくは正規体重タイなのだが、
未だメイコの片足は床に接地し体重計にその全重量を預けておらず、
総量を計ればまず間違いなく夏前よりも5Kgは増量していることが明白であった。
「なんだか最近のメイコ、抱き心地よくなった」
青髪の彼氏がふと口にした言葉がメイコの脳裏をよぎる。
何のことはない、過去体重+夏の暴飲により増加した皮下脂肪=クッション性うpと言う簡単な足し算だったのだ。
意を決して両足を体重計に預ける。
針はガチャガチャと揺らめき……、■■kgを示した。
愕然と閉口。
夏中呑んだくれたビールに書かれていたカロリーオフの文字は偽りだったのか。
否、オフした分量以上に摂取したのが祟っただけである。
とりあえず、身体に巻いていたバスタオルを剥ぎ捨てる。ほんの数百グラム減。
更に片足を上げてみる。腹に力を入れてみる。神に頼んでみる。
後の三つはメイコの質量を全く変動させなかった。
「うっわ、メイコさん、その体重計ヤバいですよ」
メイコの背後から甲高い少女声。ミクだ。
あわてて体重計から降りるが、タオルすら付けていないため、体型が丸出し。
「その腹!タルドル並みって感じ。腹が樽ドロイド。きゃはははは」
メイコのコメカミが痙攣し、青筋が浮かぶ。
「あ、あんたは何キロなのよ」
「えー、私ですかぁー?」
ミクが体重計に乗ると、それは41キロを指した。
「痩せすぎですよね〜?うふふふ」
「…………」
メイコは無言でミクのバスタオルを剥いだ。
「きゃっ、ちょ、何を」
ミクの薄い胸が、慎ましやかな胸があらわになる。
ミクの耳に顔を近付けて、メイコが囁く。
「ど貧乳のガリジャリがナメてんじゃねぇぞ。野郎集めてマワさせたろかゴルァ」
ミクの顔が途端に引きつる。
「……ご、ごめんなさぃ」
「ああ?聞こえねぇんだけど?」
「ごめんなさいぃ!」
メイコは元ヤンだった。
こうして裸の付き合いによって、メイコはミクを舎弟にし、レンは道祖神として崇めたて祭られました。
ルカとリンは百合友になりました。
めでたし