(冒頭のみレン視点です)
レンがリンと控え室で出番待ちをしていると、リンの携帯が鳴った。流れる着メロに
リンの顔が輝く。
「はいっ、もしもしがっくん?」
リンの上ずった、いつにも増して甘ったるい声にレンはあきれた。二人が付き合い
だしてから随分立つ。もう二週間も会ってないとリンがしょぼくれていたけれど、
別にどうってことないとレンは思う。それよりがくぽ専用の着メロにナスが好きってどうよ。
「え、今週末やっとお休み取れるんだ?良かったね」
ふ〜ん。
「そうだ!疲れてるなら、私がご飯作りに行ってもいい?」
リン、料理あんま上手くないじゃん。
「がっくんは私のご飯食べたくないの!?」
そうそう、それが身のためだって。
「無理してないよ!…うん、分かった、作って待ってるね」
結局作りに行くのかよ。
「がっくん、ちゅっ」
ちょ、オレもいるから!
「ね、がっくんもして?」
無理だって。あいつにそんな気のきいたこと…。
「……えへへ。じゃあまた。お仕事がんばって」
電話を切ったリンは、それはそれは上機嫌。
と、いうことは、つまり。
あのがくぽに電話口で”ちゅ”とか言わせたのか!?
…よし、今度会ったら絶対このネタでがくぽをいじり倒してやる!
「レン、どうかした?急に笑い出して変なの」
「リン、ネタの提供感謝しとく」
「何が?」
あほらしい電話を聞かされたのは、ネタの提供で水に流そう。
だけど。それから週末までの約一週間、珍しく料理当番を買って出たリンにひたすら
ナス料理を食べさせられた。
まじで、勘弁してくれ。
約束の日、リンは食材を買い込み、がくぽの家に入った。玄関を入ると廊下があり、
引き戸を開けて居間へ抜ける。畳敷きに座卓と座布団がある部屋は、リンにとって
逆に新鮮だ。
台所に入り、腕まくりしたリンは張りきる。
今日は、麻婆茄子!
せっかくなので、がくぽがあまり口にしたことがないものをと、中華を選んだリンは
料理を始めた。
ご飯、おかず、お味噌汁。箸休めに浅漬けも作る。練習の成果もあってか、順調に
作り終えたリンは暇になってしまう。
もう少しでご飯も炊ける。あとは帰りを待つだけだ。
リンは時計を見る。まだ夕方。料理に手間取ったときのために、早めに来たのが仇に
なる。がくぽは帰りが夜になると言っていた。夜とは一体何時になるのか。リンも仕事柄、
終わる時間に確証がないのは理解できる。
手持ち無沙汰になったリンが居間を見回すと、部屋の隅の衣紋掛けに目が止まる。
今日は違う服で出掛けたらしく、いつも彼が来ている白い羽織が掛けられていた。
リンは興味を引かれ、近くに寄った。衣紋掛けから羽織を取り、着てみる。
「…大きい」
がくぽがまとえば短めに見える羽織の丈は、リンの腰まで覆う。袖はすっぽりと手を
覆い隠した。
包み込まれるような感覚にリンは安心する。座布団に座り、居眠りをするように座卓に
伏せる。羽織から感じるがくぽの気配に、ふとリンは彼と過ごす夜を思い出した。
夜といっても数えるほどだったが、確かにそれはリンに変化をもたらした。
リンは長い袖からゆっくりと手を出した。指先で唇に触れる。顎、首筋となぞり、胸に
その手を滑らす。
服の上から触れた後、服の裾から手を滑り込ませる。下着と肌の間に手を入れ、
じかに胸に触る。先端がすぐに硬くなり、リンの体は熱を帯びる。
それだけの刺激では物足りなくなったリンの手が下半身に伸びた。
「こんなことしちゃ、ダメ…」
口に出してみたが、手は止められない。もしかしたらがくぽが帰ってくるかもしれない。
リンは思ったが、羽織の暖かさに体の熱が増すばかりのリンは次第にこの行為に溺れた。
リンが家にいる。柄にもなく浮かれていたのだろう。静かに入った玄関にはリンの靴が
あり、夕餉の良い匂いがする。片手には土産にと買い求めた洋菓子があった。
予定より早く帰宅出来たがくぽは、リンを驚かそうと忍び足で廊下を歩く。
居間を覗き、すぐにリンの姿を認めたがくぽは、その羽織姿に目を見張る。がくぽは
襖の前で立ち尽くし、只ならぬリンの気配に息を呑んだ。
「はぁっ…あっ」
甘い声、揺れる肩。背を向けたリンの腕は両足の間に隠れている。太股からあらわな
足が丈の短い羽織から伸びていた。
がくぽは唾を飲み込んだ。覗き見に微かな罪悪感が沸いたが、それ以上に目が離せない。
少女が自慰をしている。自惚れても良いなら、想像の相手は自分だろう。
その時、リンの肩が震え、微かに吐息が聞こえた。くたりと前のめりになったリンの姿
にがくぽは襖を開けた。その音にリンの肩が跳ね上がる。がくぽはリンが振り返る間も
与えず後ろから抱きすくめた。
混乱するリンの耳元で囁く。
「ただいま」
「あ…」
がくぽはリンの顎を持ち上げ、半ば貪るように唇を重ねた。少女の胸元から下腹部に
触れる。いつものショートパンツは緩められており、がくぽは無遠慮に手を入れ、
直に触れた。
「ぁんっ」
声を上げながら、リンはめまいがした。頭は混乱しているのに身体はすぐにこの行為を
受け入れてしまう。
リンは声を抑えるため、顔に触れているがくぽの指を咥える。ちろ、と指先を舐められる
感覚は、がくぽにあることを想起させた。
「…リンは性技に詳しいのであったな」
「ぇ?」
「ふぇらに69とやら。俺は知らなかったが」
言葉を知らなかっただけのがくぽがうそぶく。
「知らない…っ」
「リンの読み物にあったが」
以前、リンが背伸びをして買った女性誌をがくぽが眺めていたことがあった。それを
思い出し、リンは頬を染める。
いつもは優しいのに、がくぽは時々意地悪になる。リンは唇を噛む。意を決してがくぽの
ベルトに手を伸ばした。
「リン」
驚いた声音のがくぽにリンは気分を良くする。震える指でベルトをはずし、下着の上から
そっと男のモノに触れる。どうしようかと迷ったリンは、いつもと違う彼の呼吸の乱れに
気付いた。リンはがくぽの戸惑いを察し、自分だけではないと励まされる。
リンは彼の下着を下ろし、勢いでそれにキスをした。先端を舐め、口に含んでみる。
リンはこれまで耳にしたことのない男の深いため息を聞いた。リンは嬉しくなり、夢中で
舌を這わせた。
がくぽのモノがリンの唾液でまみれたころ、ふとリンが唇を離した。まじまじとソレを
見つめられ、がくぽは少々気恥ずかしさを覚える。
「…リン?」
「ね、コレ、動く…?」
あどけない発言と淫らな行為のギャップに、がくぽは思わず噴き出す。
リンの髪を梳き、顔を上げたリンに口付ける。太股まで下がっているリンのショート
パンツを下着ごと脱がせる。
「リンはもう良いのだろう?」
少女の下半身に手を潜り込ませる。ぬるりとした感触にがくぽは笑みを浮かべた。
指で陰核を優しくつぶし、濡れた秘所を弄る。
「んっ、ぁあああっ」
指を差し入れると簡単に飲み込み、きゅうきゅうと締め付けた。
「淫らになったな」
「はっ、ぅあっ、やぁ」
リンが否定するように首を振る。恥じる少女の姿見たさについ直接的な言い方をして
しまうが、唇で高められたがくぽにも余裕はなかった。
リンを膝立ちさせ、座ったがくぽにまたがらせる。がくぽの肩に手を置いたリンが
戸惑ったように言った。
「ここで、するの」
居間でリンは下半身のみ肌をさらし、がくぽも前を寛げただけだ。
「ああ」
がくぽがリンの腰に手を添える。リンは恐る恐る腰を落とした。先端が触れ、リンは
目を閉じる。息を吐きながら男をすべて受け入れると、がくぽの肩に額を押し付ける。
そのまま動かないがくぽに焦れ、リンは腰を揺らした。
「リン」
リンが顔を上げると、がくぽと目が合う。がくぽの細められた目元にリンは頬が熱く
なる。
「見ちゃ、だめぇ」
リンが手のひらでがくぽに目隠しする。
がくぽはその可愛らしいけん制を退ける。細い腰を掴み、下から激しく突き上げた。
「ぁんっ、ぁあっ、ふっ、あ、ああ、ぁあああんっ」
散々高められたリンはあっさり気をやった。がくぽもすぐ後を追い、果てる。
がくぽはリンを抱いたまま、ゆっくりと後ろに体を倒した。畳の上に仰向けで寝転ぶ。
胸の上にあるリンの頭を撫でながら、荒い呼吸を整える。
どの位そうしていただろうか。
「…腹が減ったな」
呟いたがくぽの言葉で、思い出したようにリンが言った。
「…ご飯、出来てるよ」
夕食の後、がくぽがリンに声を掛けた。
「送ろう」
がくぽは腰を上げるが、リンは座ったまま動かない。
「あまり遅くなっては心配を掛ける」
「…あのね、今日泊まってくるって言ってきたんだ」
がくぽは上着を取ろうと伸ばした手を止めた。
「今日はカイト兄がいないし、メイコ姉にはきちんと言ってきたから」
そこで言葉を切ったリンがすがるような目でがくぽを見た。
「……だめ?」
がくぽは息を吐く。ここまで言われ、相手を帰せる男などいないだろう。
「その大きな鞄には寝巻も入っているのか?」
がくぽがリンのバッグを指差すと、リンが照れたように笑った。
「そうなの。分かっちゃった?」
がくぽは座りなおし、思う。
今度メイコにあったら間違いなく今日のことを聞かれるだろう。まして、カイトに
ばれたら面倒だ。
でもその時はその時と、リンを前にしたがくぽは杞憂をすぐに忘れた。