「カイト殿、つかぬことを伺うが」
「うん?」
レコーディングの休憩中、アイスを頬張っていたカイトはモゴモゴと頷く。
「ふぇらや69とは、どのような意味だろうか」
「うぇっ!?」
手がもつれ、アイスを落としそうになる。が、どうにかこうにかアイスは死守した。
「…何で、そんなこと聞くの?」
「どうやらおなごに聞いてはいけない言葉のようなので、カイト殿に尋ねたのだが」
がくぽが少々困り顔で言う。
「リンが持っていた読み物が目に留まったので、読んでみたのだが。
中に男女交際の記事もあってな」
「…それで」
「リンはちゅ、やらハグやら、よく知らぬ言葉を使うので、その類かと思ったのだが」
へー。がくぽはリンとキスしたり抱きあったりはしてるんですね。そーですか。
「リンに尋ねたら、怒られてしまった」
相当恥ずかしかったんだろうね、リン。
「なるほどねぇ…」
そういうことなら教えてやらないこともないが。
カイトも成年男子、ある程度、古今東西のエロ用語の知識位はある。
がくぽが分かりそうな言葉というと…
「…フェラは尺八、69は四十八手の一種のようなもの、かな」
あ、がくぽが茶でむせた。
「…昨今のおなごは進んでいるでござるな」
がくぽはどこか遠い目をしながら言う。
「そーだねー」
まあ、おそらくは、リンがそんな記事に興味があったのはこの男と付き合っているからなのだろう。
だからって、それを教えてかわいい妹に手を出されるのも癪なので、カイトは適当に同意した。