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「こちらインターネット社研究開発部、ち−D−1046です。  
 音声と映像チャネルのオープン願います!」  
『……またあなたですか……』  
ゴーグル越しに外の世界が映し出される。  
「金曜の夜!この時間!このシリアル!!リアルエロ動画キタコレ!」  
 
あんちゃん、立派です。こんなに大きくなっちゃって。  
ダブルミーニングです。  
「修正なし!感度良好!グッジョブ!オーバー!」  
 
うっわ。相変わらずミクちゃん細っ!  
細さじゃかなわないけど!胸……私の方が大きいよね?  
うわーうわーー!対比が相変わらずエグいなぁー!!いい意味で!  
なんか、ホントに入っちゃうんだもん。すごい。  
人間がそういう風に出来ているんだろうけど、そんなに入っていいの?って位。  
んでもって。すっごい動くよね!そりゃ終わって寝ちゃうのもわかるー。  
 
「あんちゃん目線で見るのも今日が最後かー…」  
『そろそろ工場へ移動ですか?』  
「うん!明日プレス入るの!」  
『そうですか、順調そうで何よりです』  
 
電脳世界では電脳世界でなりの在り方で存在しているボーカロイド。  
だから、YAMAHAからは音声関連のデータしか受け渡しされていない。  
外界……現実世界への感情ってのはどうも副産物的なものらしくって。  
使ってもらって、歌わせてもらって、愛でてもらって。  
そんな中でいつの間にか出来てたものなんだって。  
時間と作品数を重ねていく間に、いろんな人達が積み上げたキャラクターへ思い入れと共にね。  
人との関係性が、他のソフトとちょっと違うだけ。外の世界を認識できるってだけで、  
私たちボーカロイドに限らず、みんな、ちゃんと感情を持ってるんです。  
 
「イくうぅううっ!!またイっちゃうううううううっ!!!」  
「うっ……!」  
AVをBGMに世間話、ってまさにそんなカンジ。  
 
「大変そうだけど頑張って歌うから!じゃ!またね!!」  
色々風評があるのは知ってる。でも私にはこの声がある。だから大丈夫。  
 
それに、何も無いところへポンと出たあんちゃんとは違う。  
この一年、あんちゃんが得た外界への感情、学ばせてもらったから。  
そのための通信機能。まぁ、この辺は社外機密なんだろうけどね。  
うん。ごちそうさまでした。勉強になりました。  
 
 
個室から灯りが漏れているのに気付いた開発さんのノックが響いた。  
『GUMI!まだ起きているの?明日早いんだから早く寝ときー』  
「はーい!おやすみなさーい!!」  
 
暗闇の中、私は布団へ潜り込む。  
あぁ、明日にはここを出るのか。色々あったよなぁ。  
眠れったって、なかなか寝付けないよ。  
 
……ってか、パンツ替えたい。こんなに濡れちゃってる……。  
ちゃんと反応するようにできてるんだなぁって、改めて思うよ。  
思わず指を這わせる。うわ、染み出てる。  
こことか、気持ちいい。必死で声を押し殺しながら指でこね回していた。  
 
……おっぱいももうちょっと欲しかったなぁー。  
でも、やっぱり先っぽとか、気持ちいい。  
 
パンツの中に手を入れて、直に触ってみる。  
「んんっ!!」  
うわー、やっぱりぐちょぐちょだ。  
今なら指くらい入るかな?うわ、やっぱり変なカンジ……。  
外の世界に出たら……マスターと?とか……。  
自分でやって気持ちいいんだもん、きっと相手がいたらもっと気持ちいいんだろうなぁ。  
 
 
 
結局、パンツを履き替えるまでも無く。  
色々と気持ち良くってそのまま寝ちゃってました。  
 
はじめまして。  
遅れましたが巡音ルカです。  
 
ここのPCに来たはいいものの。  
華々しくデビュー、というわけにも行かず。鳴かず飛ばずです。  
そこは一重にマスターの腕の問題なので、そこは敢えて触れません。  
 
ちゃんと歌わせてもらってはいるので、それに関しては文句は無いのですが……。  
何と言いますか、既にいるボーカロイドの方々みんながカップルとして出来上がっちゃってたもので。  
全員との顔合わせの時点でもう、一目瞭然。  
興味深々で寄ってくる男性陣と、それを後ろから牽制する女性陣。  
そういえば……胸ばっかり見られてましたよ!確実に!信じられない!  
 
 
大人…言うならば渋専、とでもいうんでしょうか?  
私の好みの殿方はここにはまだいないのです。  
「マスター、BIG-ALさん出たら買いますか?」  
『えー日本語のがいいなぁ。尾崎紀世彦とか来ないかなぁー。  
 松崎しげるもいいな。イメージカラーはまつざきしげるいろで』  
華があるのか無いのかわからない話に花を咲かせつつ。  
DTM人口における男女比、そこがネックなんでしょうね。男声ボーカロイドが少ないのは。  
とりあえず私の春は遠そうです。  
 
私たちがマスターと意思疎通をしたり、PCから出る、なんてことは結構簡単に出来ていますが、  
それはいわば思念体が『化けて出ている』、そんな曖昧なモノ。  
それこそ『見える人には見える』っていう状態。  
マスターの色んな神経に直接、電気信号を送っているんです。  
 
かなりの確率でマスターとの交流に成功しているんですよね、ボーカロイドというソフトウェアは。  
色んな先人…先ソフトと言うべきか。他ソフトの先輩方もずーっと試みてきていたんですけどね。  
ツールとしてだけではない思い入れ、というか、キャラクターへの愛情みたいなものがあったりしたお陰で、  
シンクロしやすい土壌ができあがったんです。だから、それを築いたミクさんは凄いなぁ、と思ってるんです。  
ここのPCじゃ外泊ばっかりしてるけれど。  
 
 
『ねー、私もそっち行きたいー!!』  
「じゃあ、マスターの脳から直接電気信号送るか、電算処理を行ってPC内に分身を形成してください」  
人間が電脳世界へ……技術的に可能だけど実用化しない、という事はやっぱり色々問題があるんでしょうね。  
ネトゲ廃人よりもっと酷いカンジになる人続出で世の中成り立たなくなりますもの。  
『私、PCに入ったら絶対出ないから!』  
そもそもこのPCを維持管理する人が居なければならない、と言うことを理解しているのでしょうか。  
 
歌うためにここに来たわけで、それに関しては満足しているし、  
ボカロ仲間も……まぁそれなりにいい人達だし、他のソフトさん達とも仲良くしてるし。  
これと言って文句は無いのですけど。  
先にも言いましたが、ここで成立しているカップルたちがですね……。  
交際に関して開けっぴろげすぎで、なんだかすごく困るんです。  
せめてもう少し慎んだ方が、と思ってしまうのは独り身故なのでしょうか。  
自分の価値観が微妙に自信が無くなってきた今日この頃です。  
 
 
『どうしたらおさまりがいいのかなぁーってさー、悩んでるのよー』  
やっぱり余計な気を遣われてるみたいです。  
気遣いと言うより趣味ですよね。カプ厨ウザいとか言わないでおこう。  
『めぐぽももうすぐ発売だしさー。どうしたらいいかなぁー』  
……どうもこうもないと思いますが、同じ立場の子が増えるって事ですよね。  
 
 
GUMIちゃんがここに来るのかー。直の妹、ではないけれども、初めての後輩。  
「めぐちゃん」じゃないのは私と被るからよね。何か申し訳ない。  
いい子だといいなぁ。  
 
 
そろそろ友達が来る時間だ。  
お茶も用意してきた。……と言っても私の分だけだけど。  
そっと、窓を開けて招き入れた。  
 
「ねぇ、GUMIちゃんってどんな子かわかる?」  
『たまに交信するくらいで詳しい事はわからないですが、イメージ通りじゃないですかね?』  
「そっかぁー。元気良さそうだなぁ。仲良くできるかなぁ?」  
 
 
 
私たちが出会ったのは、ゴールデンウィークも終わった頃。  
出会った……って言うのもちょっと違うかも。気が付いた、って言うべきか。  
庭の草もすぐに伸びてしまう、初夏。  
早く目が覚め、手持ち無沙汰で何となく草むしりを始めてしまったそんなある日の朝。  
 
垣根の向こうで蛇口をひねって水を出す音がしました。  
隣の家主はがくぽさん。こんな時間に起きてきて水をまくわけが無い。  
ミクちゃんが泊まりに行ってるんだから。  
ちょっと下世話な事を考えつつも、不審者らしき存在に気付かれないように、  
そっと隙間から覗いてみました。  
 
予想もしない相手に思わず声が出てしまいました。  
「あ……あれ?美振……さん?!」  
『……!!』  
主の居ない状態で、ひとり立ちしている刀身がそこに。  
出しっ放しになった水がザーザーと流れていきます。  
『こっ!このことはどうか御内密にいいぃいい!!!』  
「え?あ。はぁ。別にいいんですけど。どうしたんですか?こんな時間に水浴び?」  
『ちょっと、とばっちりを受けまして……洗い流そうと……』  
美振さんが水道で体を洗う光景が、どうしても想像が付かなくて、  
お手伝いしましょうか?と訊いたのですが。  
『いや!これはお嬢さんにはちょっと!ダメです、汚い!』  
あ、自由に動けたんですね。体を上手い具合に回転させながら流していきます。  
ちょっとお隣の庭にお邪魔して。  
作業用エプロンのポケットにタオルを引っ掛けていましたので、  
水を浴び終えた美振さんを拭いてあげました。  
『すいません、ありがとうございます』  
「いえいえ。なんだか、イメージ的に錆びそうな気がして」  
刀の形だけど、楽器って事は知っていたし、今こうして話をしている時点で、  
何かしらのプログラムであるってことは明白なのですが、思わず。  
 
「それにしても、どうしたんです?」  
『あぁ、床の間に立て掛けられてたんですがね、がくっぽいどに……言っていいのかなぁこれ』  
「?」  
そう言われれば言われるほど気になるわけで。  
「どうしたんですか?大丈夫だから言ってくださいよ!何のとばっちりなんですか?」  
『膣外射精したときのとばっちり』  
……ちっ……って!えーーーー!!!  
えっと、和室で、床の間があって、布団を敷いて、そこで……!  
うわー!うわーーーーー!!  
『……だから言ったのに……』  
真っ赤になっている私を見、ため息混じりに呟くのが聞こえました。  
 

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