俺の目の前には綺麗な女性がいる。といっても、恋人とかそういった訳じゃない。
世間で噂になっているボーカロイドというモノだ。
俺は雑誌でこれを見たとき、稲妻に打たれたような衝撃をうけた。
そう、一目ぼれというやつだ。
非常に高価だったが、バイトを増やして何とかお金を貯めた。
「ねんがんの めいこ をてにいれたぞ!」
嬉しさのあまり、届いた時は思わず叫んでしまった。
これでようやく目的を果たせるというものだ。
準備をすませた俺は、いそいそと起動のボタンを押した。
メイコは少しまばたきをすると辺りを確認し、俺を見ると話しかけてきた。
「貴方がマスター?初めまして。私はボーカル・アンドロイドCRV1MEIKO
ながったらしいと思ったらメイコでいいわよ。これからよろしくね」
凛とした声。店頭で流れていたデモのまま。
いや、目の前で聞く分、更に興奮する。
俺は興奮する気持ちを押さえきれずにメイコに話しかけた。
「ああいいからいいから。とりあえず脱いでくれる?」
「はぁ?」
俺の言葉に、メイコが呆れた顔をする。
「だから、脱いでくれる?って言ってるんです! というか、脱いで
これに履き替えて下さい!お願いします!」
おずおずと差し出した物を見て、メイコがさらに不審そうな顔つきになる。
「何この真っ赤な……ピンヒール?」
目を細めて、嫌そうな顔つきで俺を見るメイコ。
ああ、そうです。その目なんです!
「ああっ、それで思いっきりオレを、いえこの奴隷めを踏んで下さい女王様っ」
メイコは腰に手を当て、嫌悪を露にしている。
そんな事はお構い無しに俺は続けた。
「ボクをお好きなようにイジメて下さい。蝋燭や鞭もありまぐわぁっ」
喋っている俺の鳩尾に、強烈なボディブローが炸裂する。
屈み込んで悶える俺を見下ろしながら、メイコが言う。
「マス…あんたねえ、私が誰だかわかってるの?」
「は、はい…メイコ様です……」
「そーじゃなくて!」
メイコが呆れたように両手をあげる。
「私はボーカロイド!歌を歌うのが仕事なの!何?踏んでくださいって?
私を馬鹿にしてるの!?」
柳眉をあげてビッと指を向けるメイコ。
ああ、なんて凛々しい御方なんだ…。
「いえ馬鹿にしている訳ではありません!ただ踏んで欲しいだけなんです!」
「それが馬鹿にしてるって事なんじゃああああぁぁぁぁ!!!」
気合い一閃、メイコのつま先が俺の腹にえぐり込む。
銛が突き刺さるような衝撃を受け、俺は地に伏せた。
ああ……カ、イ、カン……。
数時間後、俺とメイコは向かい合いながら座っていた。
重苦しい沈黙。
メイコは呆れた顔で呟く。
「……ようするに、私を選んだのは作曲とかしたい訳じゃなくて、
私のような女性に苛められたかったから。そういう訳なのね?」
コクリ、と俺はうなずく。そんな俺を見てメイコは溜め息をついた。
「あっきれた、そりゃあ選んでくれた事は嬉しいけど、自慢じゃないけど
私ってそれなりに高価よ?もっと他に使い道があったんじゃない?」
「いえ…彼女とかいないですし…というか、できませんし……」
「アンタ!」
俺の顔面にメイコの指がつき向けられる。
「そんなうじうじしてるから駄目なのよ!もうちょっとシャンとしなさい!」
「え、いや、その、そういわれましても…」
しどろもどろに答える俺。
メイコはバネのように立ち上がり俺に向かって言い放つ。
「ああもう!うじうじうじうじと!いいわ、わかったわ!
アンタの性根、私が叩き直してあげるわ!」
「と、いいますと……」
座ってる俺の股間に、メイコの足が覆いかぶさってくる。
「アンタのフニャチン根性、叩き直してあげるって言ってるの!」
おお……。
最初の予定は失敗だったが、これはチャンスかもしれない。
とりあえずメイコにその気というか、その方向に持っていけそうだ。
「あの、と言う事は、履いて頂けるんですね」
「はぁ?私が履くとアンタの性根が直るっていうの?」
「はい、おそらく。視覚効果でかなりやる気が出ます」
「よーし、だったら何でもはいてやろうじゃないの!」
俺の言葉に、メイコはいきり立つ。
おそらく激昂して自分が何を言ってるのかもわからないのだろう。
さっき渡したピンヒールに、ブーツを脱いで両足を入れるメイコ。
カッ、と乾いた音がフローリングの床に刺さる。
スラリとしたスタイルが、ピンヒールによってさらに映える。
俺の息子はすでに、我慢が出来なくなっていた。
「さあ履いたわよ!これでいいの!?」
「おおお………」
紅い上下の服に、真紅のピンヒール。
俺が求めていたメイコがそこにはあった。
腰に手をあて、軽蔑の視線を送るメイコ。
俺が求めていたメイコ、女王様がそこにあった。
陶然と見とれている俺にむかって、その足が伸びる。
その白い足は、俺の顔を過ぎ、胸、腹へと過ぎて行き……
「何とか言ったらどうなの?」
俺の股間をつま先で踏みつける。
「おぉ…う、すいません、見とれていました」
自分の息子を踏まれ、情けない声をあげる俺。
メイコ様はぐりぐりとつま先を動かしながら俺を罵る。
「アンタねえ、恥ずかしくないの?こうやって女の子に踏まれて情けない声出して。
何考えてんの、この変態!」
「ああ…すいません、俺は変態で駄目な人間なんです…どうか…メイコ様のおみ足で…
卑しい豚の根性を叩き直してやって下さい……」
「はっ、豚の方がマシね。少なくともこうやっておっ立てたりはしないもの」
メイコ様がつま先に力を込めてくださる。
その感覚に俺はたまらず力が抜け、背中から倒れる形となる。
口から荒い息を吐き、ヒキガエルのような格好になった俺は、
メイコ様の足からくる感覚に身を悶えさせていた。
股間から快感の渦が全身を回って俺の脳へと直撃する。
俺が出す声はすでに言葉になっておらず、牛と豚をあわせたような
呻き声をあげるだけだった。
快感にこらえ切れずに首を左右に振る俺。
そんな俺のこめかみに冷たい感覚が走る。
メイコ様が片足で俺の顔を踏んだのだ。
いつのまにか側面へと移動したメイコ様は、顔を踏みつけながら言い放った。
「何勝手にさかってんのよ、豚。そんなんだから彼女も出来ないのよ」
こめかみにピンヒールを突き立てられ、顔を横にされた俺は、
頭上からくるメイコ様の顔を拝む事は出来なかったが、おそらくその口調からは
俺を蔑んだ目で見下ろしている事が想像できた。
「……あら」
メイコ様が顔から足を離し、下半身へと目を向ける。
俺も自分の股間を見た。
ズボン越しにわかるくらい、はっきりと盛り上がってるのがわかる。
「弄られて、踏まれて、ここをこんなにしちゃったの?本当にどうしようも無い人ね」
踵の部分で股間を蹴り上げられる。
俺はたまらずに声をあげた。
「おうっ!」
びくびくと身体を震わせ、力が抜ける。
俺のパンツがじんわりとするのがわかる。
蹴られた瞬間、俺は耐え切れずにイッてしまったのだ。
弛緩する俺を見て、メイコ様が鼻で笑う。
「あら、いっちゃったの?足だけで?あっきれた……」
侮蔑をあらわに、俺の腹を踏みつける。
「これじゃあ性根を直すのも苦労しそうね……私が責任もって叩き直してあげるわ」
快楽の余韻に浸りながら、俺は呟いた。
「はい……これから…よろしくお願いします…マスター………」
・・・つづく?