「まじ重いし」  
「いやほんっと悪い、ホント迷惑だよね、ごめんねごめんねー」  
「一切申し訳なく思ってないしね、U字工事で言われてもさ」  
 
まぁいつものごとく打ち上げで、反省会で、居酒屋で飲んで、帰ってくるだけの日々である。  
たまたま今日は珍しく俺が潰れたので、立場が逆になったのだけど、彼女が怒るのをもうすっかり見なれてしまったので、今更情けなさもなんにも浮かんでこないし。  
近いし。徒歩3分だし。  
一緒に住んでもう長いし。  
これだけ熟年夫婦の要素が揃ってて、未だに乳もろくに揉ませてくれないんですよねー。  
あまつさえ本人に愚痴るくらいおっぱい星人の俺が、手を出さないのはひとえにタイミングを外し続けてるからだと信じている。  
ヘタレとかじゃ断じてない。そこは断固認めない。  
大体ね、毎日酒飲んでて、勢いもクソもないじゃんおい。  
お前らさぁ、あれだよね、画面越しにしか見てないからわかんないだろうけどね、あいつもなかなかズボラだからね。  
なんつーかな、全体的にアメリカンみたいな。  
ゴミの分別なにそれみたいな。  
とりあえず洗濯機に突っ込んどくわよみたいな。  
家事ができないわけじゃないのよ、なんかこう、ね、荒いの。全てが。メシも大味だし。  
だから家帰ってもさ、綺麗にしてんのね、一応。  
けどすごいよ、押入れとかマジで。わっさーってね。  
まぁ俺も片付けめんどい派だからあんま強く言えんけどもさ。  
必然的に、メシは俺が作る感じになってる。まぁ大概食って帰るけど。  
 
…いや話ズレた、そうじゃなくて、だからさ、ルカにね、手出すのとか、出さないのとか、もう良くない?ってこと、つまり。  
ぶっちゃけ言うと、したのよ。  
どこまで?  
聞きたいだろー、へっへっへ。  
…うん、キスだけ。  
後は?殴られたよね、普通に。  
でもよかったよ、なかなか。「んっ」とか言ってたし。耳たぶ弱かったのあれで判明したし。  
次の日とかも別に気まずくなかったし。  
なぁなぁでね、流してもらえればさ、お互い大人ですしねー。  
 
でだ。それが過去実は2回あったりするわけだけども、そこまでしといて最後まで行かないのはなぜか。  
まぁあれだ、俺のエロビの隠し場所まで知ってるオンナに、「しほりの絞りたてミルク☆Hカップにお注射して!」を掃除したら出てきたっつって平気でダイニングの上に置いとくようなオンナに、  
今更なーにを真面目くさった顔して「好きだ」とか「付き合おう」とか言うもんかねーと。  
お前らも思うだろ?「ねーよwwww」ってさ。知ってるわコラ。  
 
「ただいまんぐり返しー」  
「あー、クソ疲れた…」  
「うわっ、突っ込まれねえwwこれはアウトでしょさすがにww」  
「はいはい、自分のナスでも突っ込んどいて。風呂…いいか、シャワー浴びてくるよあたし」  
「巡音さんその発言もアウトだと思います!!」  
「ちょ、もうウザい、いいから水飲んどきなよ、置いとくからね」  
「あ、どもども」  
「んじゃ先入るわ」  
「いってらー」  
 
あいつ女のくせしてカラスの行水だから10分くらいで上がるからね、マジで。  
一回ね、ルカのブラね、盗もうとしたの。  
いや、あいつ下着だけは自室に干すのね、俺のパンツとか堂々と冬場は乾燥するからーとか言ってリビングに干すくせしてさー。  
やっぱさ、脱ぎたてが良いじゃない。温もりが。うるせえ分かれよ。  
したらさ!無えの!カゴに!!ブラとパンツが!!  
まさか俺の他に忍び込んでいた変態が先に!!ルカが危ない!!とか一瞬よぎったけどね、なんてことは無くて、型崩れしないように手で洗うんだって。  
大変ですよねー、女性の皆さんは。  
で、なんで知ってるかって言うと、当然鉢合わせだよねー。  
いいよ、好きに想像してくれて。どうせベタだから。  
まあでもこれを読んでる諸君にはToLoveるかっ!!と突っ込まれるより、桂正和かっ!!て突っ込まれたい。個人的には。そうさ俺たち電影少年。  
 
「ほれ、次いーよ」  
「……うー」  
「起きろってば」  
「…ぉきてるよ…」  
「明日知らないよー、あんた二日酔いひどいから今浴びないと絶対遅刻するよ?」  
「…るせ、はいるって…」  
「あっやっぱ水飲んでない。ほら、おきなー」  
 
あとこいつのムカつくとこ、夏でも冬でも年がら年中キャミだのタンクトップだのなんだよね。しかもノーブラで。  
そりゃ最初のうちはゴチです!とか思ってたんだけど、見飽きるとさぁ、触れないだけにムカついてくるんだよね。箱に入った未開封のオモチャ状態ってーか。  
しかもそれ理由で宅配便とか絶対出ないからね。百パー。  
 
「ねールカルカ、飲ませて、口移しで」  
「……あ、ごめん聞いてなかった」  
「もうー、仔猫ちゃんたらつーめーたーいー」  
「めんどくせぇー」  
「おねがい」  
「やだ」  
「大丈夫減らないから」  
「HPは削られる」  
「触るだけ」  
「氏ね」  
「じゃあ、手。握るだけでいいから」  
「…なんなの、もう…」  
 
なんなのってかー。おま、なんでっさぁー。  
いっかなもう、いくね?  
なんで今日俺こんなにやさぐれてんの?おかしくね?  
ほっせえ腕。知ってたけど。  
やっぱキスしたら黙った。  
本気で忘れてんだろ、お前さぁ。もうすぐ俺たち、一年じゃん。  
 
「…がくぽ、おもい…」  
「…それは俺の愛が、的な」  
「ちが、どけ、んっ、」  
「……」  
「……」  
「抵抗、しないじゃん」  
「だって、いまさら。気済んだ?どけようよ」  
「…まだ」  
 
ちがうんなら、受け止めてくれたって、いーじゃんなぁ、ルカ。  
シャンプーの匂いが自分のそれと同じなことに気づいて、一気に勃った。  
俺ら毎日おんなじ石鹸の香りさせてさ、お前のあとの風呂場で抜くの、すっげえ興奮すんの。  
すっげえ空しいけど。  
やめろよー。そんな顔すんなよー。  
付き合い長いから大体わかっちまうだろー。  
「どうしよっかな」みたいな流される寸前の顔さぁ、今まで絶対したことなかったじゃん。  
誤解すんなよ。俺だってね、ほんの数分前まではけじめがどうのとか、仕事の付き合いとか、いろんなしがらみに縛られるいちボーカロイドだったわけです!  
でもね、あれ、もうこれは触ったもん勝ちだよねと。  
なすびかじって自棄になって、それでも飲ませ続けたかいが、ここで本当に来たってのか。  
キタコレって叫べるほどKYじゃない。と信じたい。  
報告ですよ、皆さん。巡音ルカのおっぱいはデカいです!!  
おお、手ごたえっていうんですかね、こういうのね。ぐっと持ち上げたら、首の方まで隠れちゃうんですね。  
ちくび、たっちゃってんじゃねえか…  
あーダメダメだめ、ルカさんその表情と声はアウトー。  
顔真っ赤なのは言わずもがなとして、「あっ、ひう」はないわ。  
初めて聞いちゃったでしょーが。  
ねえ、やなの?やじゃないの?  
意味わかんないよ、裾まくり上げたらバンザイするんだから。  
ちょっと強く揉みすぎたのか、赤く指の跡が付いてた。  
それみた瞬間吹っ飛んだ。  
 
「ん、ふ、んぅ、」  
「ルカ…」  
 
吸いたい杯の悲願を果たしたに、待ち受けるのは次の頭パーンである。  
あんなにTKBTKB連呼してた割りには舌ばっかり吸って、なかなか離れられん。  
顔、見たら、なんか途切れそうで。  
目だけあわせないように必死にしてた。  
予想どおりのピンクの、溶けかけの舐めすぎたグミみたいな感触が、舌の上にダイレクトにクる。  
やべえ、よだれでる。強く吸ったら、頭抱え込まれて、つむじでハァハァ息上げて。  
髪、かきまわすの、やめてよルカさん…そんなにきもちーか。  
聞けるはずもないので谷間から臍まで一直線、舐めまわしたら、「ひぁ」って腰が浮いてた。  
 
「ごめ、けつ上げて」  
「……がくぽ、は」  
「ん?」  
「ぬがないの…?」  
「おお、忘れてた」  
「…よごしたら、洗濯すんの、あたし、ん、ゃあ…」  
 
かわいいっていう単語で合ってますかね。これ。  
なんかもっとこう、燃えたぎるこの小宇宙を表すには別の言い方がある気がする。  
腰骨にキスして、いっぺんにパンツ脱がしたら、気のせいじゃなく糸ひいてた。  
まじまじと眺めたい気持ちを精一杯抑えて、指いれて、どんなんだったかすら忘れかけてたそこの熱さにびっくりする。  
ほぐすまでもなく尖って、慣らすまでもなく受け入れる。  
こすりあげると、今まで漏れるようだった吐息が、吸い込むような悲鳴に変わった。  
こんなに、感じやすかったのか。おまえ。  
 
サイドボードの引き出しから取り出して、後ろ向いて被せてたら、ルカの細い指が添えられて、一瞬萎えた硬さが一気にMAXになった。反則だろそれ。  
俺らお互いに低血圧で、体温低くて、朝起きれないからって、ゴミ出しジャンケンとかしてたのに。  
いつも、手握ったら、冷たかったのに。  
なんで今日はそんなに、どこもかしこもあっちーんだよ、くそ!!  
 
「あ、くっ…」  
「…きつい?」  
「へいき…ん、あ、ぅああ」  
「…は、いっ、た…」  
「…っ、ぅ…あ、は…」  
「…やばいんだけど」  
「ぅっく…はぁ、やいよ、ちょっと」  
「ちがくて。イクんじゃなくて」  
「あ、あぅ、う、んーっ」  
 
手加減、が。  
いや、若い若いアピールしてたけど、猿のような腰つきでガツンガツン動く自分にものすごく驚いてる。  
だって、合いすぎるんだよ、これ。なんだこのフィット感。  
ルカはどうしようもなくなって、ひたすら首にしがみついてひんひん泣いている。  
時折、ギューって締められて、息詰まらせてたから、多分イってはいるんだろう。  
水音ハンパなくなってきたし。  
でも足ごと抱えこんじゃって、首の後ろ掴んでずーっと噛み付くみたいなキスしてるから、身動きとれないのをいい事に、乱暴に揺さぶり続けている。  
歯ァ、当たるよね。痛いね。ごめんね。  
耳たぶ、かじってもいーかな。  
ガッカリしたかなー、あんだけセクハラしまくっといて、こんなショボいセックスしかできなくて。  
もうしてくれないよなー。まさか。  
あぁ、足開いたらすごい奥まで入った。  
体位…は変えるのむりだろこれ。その前にイクぞ、情けないけど。  
あ、さっきそういえばこいつ「はやい」とか言ったよね。デリカシー欠片も無えな。  
やっぱりここで「好きだ」とか言うべきなのか。いやでも射精の瞬間とか、俺が女だったら絶対「好きなのはまんこだろ」って思うわ。  
くそう失敗したな、あれ、でもいっつもルカ大好きだーとか、マジでルカ愛してるわとか、地味に口にしてねえか。  
大体おっぱいについての件だけども。  
て事はこれクリアか。クリアか?  
あー、ごめんな、マジで、もう、限界だ…  
 
****  
 
 
 
 
 
ーーーおはよー、がくぽ  
ーーー……ぅす。  
ーーー低いよおま、いつにもましてテンションが。寝起き?  
ーーー…ぁー、サーセン。飲み過ぎました。  
ーーーあっそ。まぁ別にいーけど。今日さぁレコーディングしようと思ったけどパスね。HD壊れた。  
ーーーまたっスか。  
ーーーそう、また。  
ーーーオケは?  
ーーーなんとか、無事。前回分けといたのが役にたったわ。あ〜くそムカつく!!なんでこんなハズレばっか引くんだよもう!  
ーーーじゃあオフってことでいいんですかね  
ーーーおー、ゆっくり休んどけ。  
ーーーあざーす。  
 
 
「おはようございます」  
「おはよう」  
 
寝入り端に明日は絶対ルカより遅く起きよう、目が覚めても寝たふりして朝チュンのあの怒涛の勢いで襲ってくる恥ずかしさだけは回避しようと誓ってたのに、起こされた電話中にばっちり目が合うというこのザマだ。  
 
「マスター?」  
「うん」  
「……」  
「……」  
「……」  
「…あー、悪い。煙草取って」  
「…ん。」  
「……」  
「とりあえずしまえ、な。」  
 
はい。素直にうなづいてパンツを探す。ねえよ!なんで事後って魔法のごとくパンツだけ消えんだよ!!  
めんどくさくなって、そのままシャワーを浴びにいくことにした。  
フリチンの俺に対するルカの視線も心無しかどうでもよさそうだ。  
一風呂浴びて、一服して、やってくるのは空きっ腹と、罪悪感と、ほんの少しの達成感。  
入れ違いに入ったルカの白い背中を見ないようにして、ソファに足を投げ出す。  
コーヒー、入れといてやるか。  
二人とも朝はブラックを飲まないと頭が働かない。  
パンが切れていて、玉子もなくて、ハムもないので、朝飯がレンチンご飯の茶漬けになった。  
とてつもなくおかしな組み合わせだが、とりあえず腹に入ればいい。出てきたルカも納得したんだからいいのだ。それで。  
 
「オフになったんでしょ?」  
「あ、聞いてた」  
「うん」  
「お前は?」  
「午後からPV」  
「あー、そうだっけ…」  
「でも、どーなるんだろね。連絡きてないけど」  
 
話題そらしのために付けたテレビでは相変わらずオヅラさんが偏見たっぷりの切り口でスポーツ選手をさばいている。  
おざなりに添えられるアナのフォローも痛々しく、レースのカーテンから射し込む爽やかな朝の光が俺の目の下のクマを浮かび上がらせるのも痛々しい。  
なんだかんだいって、盗み見ている横顔はやっぱりかわいい。  
なんか心無しかエロいような気がしてるのは俺だけなのか。  
ヘタレでもビビりでもないから、あえて昨夜のことには触れないよ。  
どうせ触るなら紳士らしく乳揉んでから殴られたい。  
ヤバイほんと頭痛くなってきた。  
うるせーんだよまたオリンピックで空き巣入られろよハゲが。  
わざとらしくこめかみを押さえると、普通に心配そうな表情でこちらを見るのだ。  
優しいなぁ、お前。と思ったら口に出ていた。まぁ僕って正直者。  
 
「ルカノソウイウトコスキヨ」  
「はいはい、イブあったかな」  
「流すなよー」  
「知ってるって。あたしも好きですよ」  
「えっ」  
「えっ」  
「とりあえず昼までは寝るからさぁ」  
「うん」  
「起きたら、ルカのすきなもの食いに行こう」  
「またマグロ?w」  
「大トロ食おうぜw」  
「いぇーい」  
 
自然すぎてイヤになる。Perfumeの新曲よりもナチュラルだ俺たちは。  
でもきっと、明日にはまた下ネタかっとばして、勢いづいて殴られる日々が待っている。  
来年もこうやってグダグダしてたいなんて言ったって、お前はきっと華麗にスルーしかしないから、あえて口には出さないけど。  
好きな女と結ばれた日の朝くらい、そんな夢見るくらいには浮かれてたりしてるんだよ、俺だってね。  
とりあえず、挨拶がキスに代わるくらいには、頑張ってみようかな。  
ほら、「アダルティ」にさ。  
 

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