「カイト君は、他の女の子とえっちしてる?」
メイコさんの爆弾発言に僕は飲みかけのお茶に噎せた。盛大に。
僕は新米ボーカロイドのカイトです。とある音楽事務所に所有され唄ってます。
ラブホの一室、デカいベッドで裸で寝そべるおねーさんが、嫉妬を全く含まない声で妙なコトを言い出しました……。
電話一本かけられなかったのが嘘のだったかのように、僕はメイコさんと頻繁に連絡を取り合えるようになった。
仕事帰りに会ってご飯食べたり、呑みに行ったり……セックスしたり。
今日も仕事が早く終わったので、ちょうどオフだったメイコさんを夕食に誘った。
ウチで夕食を一緒に食べ、「デザート食べたいなv 太くて硬くてちょっとしょっぱい系なアレ食べたい!」と言うメイコさんに圧し掛かられて、そのまま……。
で、事後に冒頭の台詞である。
ベッドに腰掛けたまま、咳き込む僕の背中を「だいじょーぶ?」と優しい手が擦ってくれるけど、苦しくってしょうがない! どこまで入ったんだ茶?
ようやく声を出せた僕は、涙目になりながらメイコさんへ顔を向ける。
「し、してませんよ!」
「なんで?」
心底不思議そうに見詰め返され、言葉に詰まった。なんでって……。
――僕はメイコさんを好きだからです。
とは言えず、僕は俯いてごにょごにょ別の言葉を考える。なるべく僕が彼女に対して好意を持っていることが分かるような言葉を。
「メ、メイコさんがいいから、です」
「私? ああ、相性イイもんね。私たち!」
笑顔のメイコさんに内心複雑だった。だって、言葉の意味欠片も伝わってない。
身体の相性云々は、僕はメイコさんしか知らないから比べることなんて不可能だけど、経験豊富なメイコさんが言うならそうなのだろう。実際、確かにイイ。
「メイコさんこそ……僕以外の誰かと、その……」
会話に乗じて実は気になってた事をもごもごと口にした。そーっとメイコさんを窺うと、あっさり答えてくれた。
「最近はカイト君とだけよ。一番連絡つきやすいし」
「そっ、そうですか!」
マメに連絡して良かった僕! メイコさんの見えない角度で、思わず小さくガッツポーズした。
こんな質問をするには理由がある。それは連絡し合うようになった頃に聞いた話に遡る。
『ご褒美』の後日、メイコさんと僕は飲み屋で大分呑んで駅前へ続く通りを歩いていた。
メイコさんはご機嫌に酔っていたけど、僕は酔っているのに緊張しているという良く分からん状態だった。
……メイコさんに告白しようと、緊張を解すために呑んだけど逆効果だったかも。
数歩前を歩くメイコさんの後姿を眺め、自分に溜息をついた。
恋愛の過程をかなり間違えてしまったが、僕はメイコさんが好きになってしまった。
自分の気持ちを伝えて受け入れてもらえるなら、ちゃんとしたお付き合いがしたかったが、僕はまだメイコさんに彼氏の有無を聞いていないことに気がついた。
メイコさんは異性関係の噂が多いのは知っている。
もし恋人がいるのなら、メイコさんとのコトは「良い思い出」にして諦めるし、成り行きとはいえ二回も……したんだから、相手の男に殴られてもいいとも思っていた。
「ねーねー、カイト君ちにこれから行っていい?」
頬を上気させてニコニコ笑うメイコさんは年上に見えないぐらい、可愛い。あーもー、男にそんなこと言っちゃダメですよ。
……こんなに綺麗で可愛い人が、フリーってないよなぁ。僕とのコトだって『その場の勢い』と『約束』があったからだし。
諦め半分の気持ちになっていたその時、メイコさんのカバンから着信音が聞こえた。
「あ、メールだ」
携帯を取り出し、さっと目を通したメイコさんは何やら操作してからカバンに携帯を戻す。
「……もしかして、彼氏さんですか?」
傷は浅い方がいい。勢いで訊くと、ううん。と返ってくる返事。
「二回ぐらい寝たヒト。カノジョが出来たからもう会わないって」
「はぃ?」
ぎょっとしてメイコさんに向くと、首を傾げて僕を見ていた。
「えっと、その、フラれた、ということですか?」
「ううん。メールのヒトとは酔った勢い……だったかな? 別に付き合ってないよ? っていうか、私今まで男の人と付き合ったコトないもん」
メイコさんは僕の想像を超えることを話してくれた。
男とは何人も寝たけど、大体1〜2回で関係が終わること。
恋愛はしたことがなく、気持ち良ければ細かいことは気にしないこと。
カノジョ有りや妻子持ちとはしない。
故に、恋人と呼べるような関係の男がいたことがない……等々。
――頭が痛くなったのは、呑みなれない酒のせいじゃないはずだ。
その夜、結局僕の家でメイコさんを抱いた。
ぴったりくっつくメイコさんの安らかな寝顔を眺めながら、寝物語に訊いた彼女が話しを反芻していた。
好きっていうのが良く分からないの。とメイコさんは言った。
握られた竿に、柔らかくて少し湿った感触。メイコさんが僕の陰茎に唇を押し当てている。
「うぁ……」
それだけで声が出てしまう自分が情けない。下腹部から聞こえる忍び笑いに、顔が熱くなった。
僕は見慣れた天井を仰ぐ。与えられる僅かな、でも確かに煽る刺激にシーツを握った。
ボトムと下着を引き下ろして割り開いた脚の間から、茶色の髪が揺れ面白そうに赤い目が覗いている。
「うふふ。もう硬くなった……素直だね」
根元から上へつぅっと舌先が走る。括れた部分を滑るそれで弾かれ、腰が浮いた。
「は、ぁっ」
「さっきの続きだけど……最初から身体だけ求められてきたせいかな? なんか、気持ち良ければそれでいっかなって」
肉棒全体を生温さが包む。口に含まれて股間の小さな頭が前後し、ちゅぱちゅぱイヤらしい音を耳が拾った。
声が止み、腰砕けになる舌使いに僕は奥歯を噛んで耐えた。しばらく口腔で嬲られ、解放されると今度は指が絡んでくる。
太腿の内側を撫でて反った肉棒を扱かれた。逃げられない快感に息が詰まってしまう。
「気持ちイイの好きだし……ヤりたい時に、ヤってもいいかなって人とえっちなコトして、楽しめればいいと思ってるよ」
上下に動く手が強弱と緩急を巧みに操って僕を高めていく。時折、先走りが出ている先端を舌で舐め取られて腰が疼いた。
「『好き』ってホント分かんない。分からないこと、何時までも考えてもしょうがないもん」
内腿に小さくキスした後、猛るソレに舌が這う感触がして背筋に悪寒が走った。唇が音を立てて何度も触れる。
「男の人だって、気持ちイイからセックスするんでしょ?」
カイト君もそうでしょ? 残酷なほど無邪気な声だった。
「ち、が……あっ……く……」
また口に中に誘われ、しゃぶられた。熱く滾る肉棒に絡まる舌に言葉が遮られる。
更に指が加わり上下に扱く感触と、緩急つけて吸い上げ食む唇に身体が慄いた。
違うって否定したかった。でも咥えられて、舐められて、吸われて。身体を支配してくる快楽に抵抗なんてできなかった。
メイコさんだから、キスしたり、触れたり……セックスしたい。……だって僕は、メイコさんを。
「……はっ、あぁ……うっ!」
握りしめたシーツに力が篭る。身体が震え、メイコさんの口の中に僕の浅ましい欲望が吐き出された。
思い返せばメイコさんの唄う歌には、恋や愛情を謳う楽曲って無い。唄う曲の殆どが性的なものとか背徳的なそれだ。PVも恋愛抜きの男女の絡みものばかり。
えっちなことも、ああいう仕事も好きでやっているとメイコさんは笑うけど、僕は何とも言えない気分になった。
「好き」っていう感情が分からない、かぁ……。
もし、僕が告白したらメイコさんはどうするんだろう? 僕と距離を置くのか、困るのか。うわ、全く予想つかないよ。むしろ悪い想像ばかりが浮かぶ。
メイコさんが僕と会うのって、純粋にセックスしたいから、だもんな。
もし、身体だけの関係を否定するためにセックスを拒否したら、メイコさんからしてみれば僕と会う理由が無くなるんじゃないか?
………………なにこの状況。
恋愛感情を理解した上でフラれるのなら諦めもつくのに、このままメイコさんから離れたらきっと未練が残る。
そう考えたら、告白することは今の関係を壊してしまう気がした。
いっそ僕もメイコさんの身体だけが目的なら、話しは簡単なのに。
告白したいのにできないというジレンマに僕は陥っていた。
「カイト君、どうしたの?」
寄り添って僕を見上げるメイコさんに、僕は長い回想から覚めた。
「咳で咽痛めちゃった?」
咽の突起に細い指が触れる。
「あ、大丈夫です。スミマセンちょっとぼんやりしちゃって」
誤魔化すと、そう? とメイコさんが微笑んだ。基本的に優しい人なんだよな。
面倒見も良いし、ウチの音楽事務所にはいないタイプのボーカロイドだ。
ウチの事務所は先輩の指導なんて皆無。「習うより慣れろ」がモットーだ。
そんなことを考えていたら、僕の下腹に温かな手のひらを感じた。それは撫でながら段々下っていく。
僕にくっつくメイコさんを見れば、爛々とした瞳で僕を見上げている。あ、これは……。
「もっかいしようよ……ね?」
「……っ。メイコさ、んっ!」
口を塞がれ、ぬるりと舌が侵入してくる。遊ぶように口腔を舐め上げられ、上唇を吸ってから離れた。僕の陰毛に指先が埋まり、軽く引かれる。
「触る前から半分勃ってたよ?」
「あ、あの」
「うふふ」
艶やかな含み笑い。メイコさんのこと考えてたら余計なことまで思い出して、その、反応しちゃったみだいだ。
「……待って、下さ……」
「やだ」
指が袋を柔らかく揉む緩い刺激に完全に勃起してしまった。メイコさんは男の身体を煽るのが本当に上手い。
僕の上に乗ろうと傾けてくる身体を制し、僕はメイコさんを押し倒した。びっくりした瞳が数度瞬きをして僕を見上げてる。
「今度は僕が上になりたいです」
赤い唇が弧を描き、イヤらしく笑う。湧き上がる欲情のまま僕は唇をそこに寄せた。
舌を絡め唾液を交換しながら、ダメな自分をひたすら痛感する。
誘惑してくる舌や指先の動きと表情がなけなしの理性を粉々にして、結局毎回白い肢体に溺れた。ホント、ダメすぎるよ僕……。
おっぱいを揉みながら乳首を口に含む。ツンと尖る愛らしいそれに歯を立て、甘噛みすると漏れる甘い声が、僕の耳朶を擽った。
数度小さく乳首を吸い立ててから、手のひらに収まり切れない左右のおっぱいを中心に寄せ、擦り合わせ両の乳首を親指の腹で押しつぶす。
「んぁっ」
「乳首、硬くなって僕の指を押し返してる」
親指を動かして鎖骨にキスして首筋を舌が頤まで這い上り、首筋を吸い付きまた下る。
「あぁ……あ!」
「……気持ちイイ?」
「うん……」
「嬉しい」
乳首を押して軽く振動を与えながら耳の裏を舐め、耳朶を齧った。メイコさんがぴくりぴくりと反応している。
重なった身体から上がっていく互いの体温を感じ、鼻先をメイコさんの匂いが掠めた
。欲情を促す、くらくらする匂いだ。
赤く艶々した唇をぺろりと舐めて、手中のおっぱいに何度もキスを落とす。こそばゆいのか身を捩じるメイコさんが笑った。
「カイト君、慣れてきたね」
「へ?」
膨らみから顔を上げると、顔を上気させメイコさんが微笑んでいた。
「セックスに。っていうか、上手になった」
「そ、そうかな……?」
添い寝のように身体を横たえ、互いに向きあいながら顔を寄せた。なだらかな腰の曲線をゆっくりと撫でる。
「うん。余裕出てきたのかなー」
「センセイが良かったんですよ。あんなにいっぱい、えっちなコト教えてくれたじゃないですか」
腰を撫でていた手を、脚の間に忍ばせた。割れ目に合わせて指を動かすと華奢な肩が跳ねる。吐息が次第に乱れていき、逃げるように仰向けになるメイコさんを追って、僕は肢体に覆い被さった。
とっくに濡れていたソコは、スライドする指の動きを助けて卑猥な音を立てる。
「私……カイト君に、えっちなコト、されるの、好き……」
あぁ、と熱く喘ぎおっぱいを揺らしながら深く呼吸するメイコさんが言う。
「丁寧……なのかな? あっ、カイト君に触られると、感じちゃうの、すごく……んっ」
「……え?」
『好き』という言葉に思わず顔が熱くなった。
「アレのサイズとか、カイト君のが、一番気持ちイイの……っ」
指先の愛撫にメイコさんは身体を震わせながら、たどたどしく語った。僕はガクリと俯く。
えっと、メイコさんは僕が好きなワケじゃなく、僕の『パーツ』が好きってことー?
欲望に正直なこのヒトらしいといえば、そうなのかも。メイコさんは嘘はつかない。
僕の身体目当てといったらその通りなんだけど、惚れた弱みかイヤな気分にも怒る気にもなれなかった。でも、ちょっとだけイジワルしたくなる。
「アレってなに?」
クリトリスを小刻みに擦りながら訊くと、過敏になった肢体が跳ねた。
「ひぁ……カイト君の、おちんちん……」
「えっちなぬるぬるが滴ってきたよ。すごいや」
溢れる入り口に指を潜らせると、二本がくちゅんと簡単に挿った。ゆっくり出し入れすれば、細い咽を反らせてあんあん鳴く。
「メイコさんは、僕のおちんちん好き?」
「す、き……カイト君のすき……」
うわ言みたいに繰り返し、快感に弛んだ股を開いて僕の指を招き入れようと膣が動いた。
貪欲な身体の仕草は僕の下腹部に人口血液を集中させた。痛いぐらい、猛ってる。
「あっ……あぁん! あっ?」
語尾が疑問形になったのは、僕が指を引き抜いたせいだ。粘膜にまみれた指を舐めていると、メイコさんが恨めし気に僕を見る。
「や……どうして……」
それに答えず、脚を割り開き腕に担ぐと濡れそぼった性器が露わになった。とめどもなく湧く粘膜の入り口に、質量と硬さを増した肉棒の先端を添え、そこをなぞる。
メイコさんの内腿が期待に震えた。
「は……っ」
「メイコさん。ひとつ約束して欲しいんですけど」
膣口にほんの少し肉棒を潜らせてメイコさんの顔を窺う。先端が熱く柔い感覚に包まれ心地よい。ぐいっと細い腰が持ち上がった。
「ん……?」
顔を近づけて額を合わせると、発情して潤んだ瞳がゆらゆら揺れて僕を捕える。
「えっちしたくなった時は、絶対僕を呼んでください」
「……カイト、君?」
いきなりそんなこと言われ、メイコさんは戸惑っている。しばらくその瞳を見詰めていると、うん、と首が縦に振られた。返事をもらった僕は紅潮した頬にキスをする。
「約束、ですよ……っ」
ぬかるんだ膣に思いっきり怒張した肉棒を突っ込む。ぐじゅんと音を立て根元まで突き立て、腰をぐりぐり押し付けた。
「ひゃぁん! あ、あぁ……! お、奥に、当たっ……」
僕の首筋にメイコさんの腕が絡みついて肌に爪を立てた。膣が肉棒を咥えこみ、抜き差しする度に吸いつき、背筋を貫く快感を求めて僕は腰を激しく振った。
僕(のパーツ)を好きだと、僕の愛撫を好きって言われて舞い上がっていた。
恋愛感情を理解できないメイコさん。
僕たちの関係はどー見てもセフレだし、その事実に凹むし、僕ばっかりが好きな一方通行のものでしかないけど。もう、今はそれでいいや。
こうして繋がることで、ちょっとでも僕の気持ちが伝わればいいなって思う。
僕がメイコさんとキスするのもセックスするのも丁寧に触れるのも、全部貴方が好きだからなんです。
だから気持ち良くなって欲しい。メイコさんが僕に溺れてしまえばいい。
僕無しではいられなくなるともっといい。ああ、ここまでくると危険思想だよ。ヤンデロイドはイヤだな。キャラじゃない。
身体を離し両肘を掴んで腰を激しく進めると、嬌声と一緒におっぱいもぷるぷる揺れて、中が僕をきゅうっと締めた。
眉を顰めて出しそうになるのを堪える。結合部は互いの激しい抽挿に体液が白く泡立ち、陰毛をぐっしょり濡らした。
「あぁんっ、お、おかしく、なっちゃ、ひっ……」
「ココがいいの?」
何度も身体を重ねて覚えた性感帯をつつけば、メイコさんは悲鳴を上げた。ウチと違って、ホテルで甘い声を上げ存分に鳴くメイコさんの声に僕も興奮する。
もっとして、と懇願してくる喘ぎと身体が愛しくて、淫らだった。
膣が切なく動いて僕を誘い、こみ上げる吐精感に奥歯を噛みしめた。
「ぅ、あ……あん、イキそ……あっ」
「出して、いい……?」
「うんっ、ぎゅって、してっ」
肩と背中に手を回し、ぴったり肌と肌をくっつけた。僕の背中にもメイコさんの手の感触がして、抱きしめてくる。
「んっ、イクっ、あっ、あーーっ」
身体を反らし強張らせながら達したメイコさんを抱きしめ、強く腰を打ちつけ精を放つ。
腰の動きが緩慢になり完全に止まっても、僕はメイコさんを離せず腕の中に閉じ込めていた。
「なんで、あんなこと訊いてきたんですか?」
ラブホに一泊した帰り道、朝日の眩しい歩道を二人連立って歩いていた。
軽やかなメイコさんの足取りとは対照的に、僕の脚は鈍い。何故って頑張りすぎて脚が痛いから……。後、腰も痛い。
「あんなこと?」
メイコさんは首を傾げている。忘れちゃってるみたいだ。
「僕が他の女の子と〜って、アレ」
「ああ……カイト君、最近私の周りの女の子たちの話題に登ること多いから」
「は?!」
詳しく訊いてみると、メイコさんのPVに出演した僕のことを訊かれることが多いとかなんとか。主に女の子に。初耳だった。
「『彼女いるんですか〜』とか訊かれたから、カイト君モテるんだなって」
「だから、『他の女の子と〜』?」
こっくり頷くメイコさん。僕は複雑な気持ちになった。好意を持ってもらえるのは悪意や無関心より嬉しいんだけど……本命がいるから困る。
「確かにカイト君て優しいからモテそうだし、セックス上手くなったし、他のコともしてるからなのかな〜って思ったの」
どうしてそこで「他の女の子ともやってる」という着地点になるのか良く分からなかったけど、気を取り直した。
「……メイコさんとしか、したくないですから」
ふうん? とメイコさんはビミョーなお返事。その顔は分かってないんだろーなー。
今は本心を隠し、口を噤むほかないけど、僕と体温を交わすことでメイコさんの意識が変わればいい。少しずつでもいいから。
そのためには、もっと心をこめてセックスしないとなって思ってたら、それを見咎められ顔を覗きこまれた。
「なに笑ってるの?」
「なんでもないですよ」
「ヘンなの」
追及されるのも困るのではぐらかしているとメイコさんのお腹が小さく鳴った。
「お腹空いた」
正直なメイコさんとそのお腹に今度こそ吹き出してしまった。
「じゃあ、どっかでモーニング食べましょうか?」
「うん!」
欲望に忠実なお姉さんは食欲にもそうであったらしく、どこ行こう? と嬉しそうだ。
「がっつり食べたいな〜。○牛とか行かない?」
「うーわー……胃もたれしませんか。それ……」
無邪気で天真爛漫なメイコさんに意気揚々と引っ張られ、僕は疲労で縺れる脚を必死で追いかけた。
おしまい