えっちなメイコお姉さんと新人カイト君のはなし 7後編 
 
「おい、鳴ってね? ケータイ」  
仕事が終わり、事務所の休憩所でダベっていたらテーブルの上で震動する僕の携帯にアカイトが気付く。  
着信の名前を確認して、僕は荷物を持って席を立った。  
「……悪いけど、先に帰るわ」  
「おー。お疲れサン」  
廊下へ出ようとドアノブを回す僕の背中に、何かを察したようなアカイトの声が引き止めた。  
「夜、飲みに来るか? 来るならアンさん誘っとくけど」  
「……あー、そだな。行くかもしんね」  
首だけ振り向きヘラっと笑うと、アカイトはまあ頑張れやと見送ってくれた。  
「あはは。華麗に撃沈してくるわ〜」  
僕がどこに行くかなんて、あいつはとっくに悟っているんだろう。そのことに触れず、送り出してくれる心遣いが今は有り難い。  
メールは言わずもがな、メイコさんから。あの夜から早二週間が経ってて、顔を見ないまま一カ月以上過ぎている。  
この間、僕はただ待つことに徹した。自分から連絡も取らず休暇を静かに過ごし、休みが明ければ自分の仕事に没頭していた。  
だから、会わなかった間にメイコさんがどんな仕事をして、誰と会っていたかなんか知るわけない。もしかしたら別な男に身体を開いているかもしれない。  
あれほどメイコさんが他の男と連絡を取ることを嫌がっていた僕だけど、今は胸を掻き乱されることもなかった。  
考えても仕方がないことだし、結果も薄々見えているから、もはや泰然自若といった感じだ。あ、もしかしてコレが開き直り状態ってヤツなのかな? ヤケクソかもね。  
メールは自宅に来てほしいということだったので、僕は何度も通った道順を辿る。頭のどこかで、もうこの道を歩くことないかもなんて思いながら。  
マンションのメイコさんの部屋の前で、深呼吸をひとつ。うん、大丈夫……。  
告白して、華麗に砕けるんだ!  
呼び鈴を押すと、直ぐにドアが開いた。癖のない茶色の艶やかな髪。見上げる赤い瞳が揺れ、僕の姿を確認するように二・三度瞬きする。  
……メイコさん、だ。  
「……お久しぶりです」  
「うん……入って」  
リビング通され、勧められるままソファーに座りこむ。あー……やっぱ緊張するな。最後はせめてカッコ悪いところ、見せたくないんだけど。  
「ゴメンね。連絡、遅くなって」  
差し出されるマグカップから立ち昇るコーヒーの香りが鼻先を擽った。一口口にすると、甘党の僕のための味になっていた。それでも独特の苦みはちゃんと残っていたけど、不快ではなかった。  
「いいんです。遅くなっても、ちゃんと連絡もらえたし……」  
僕こそ連絡してしてくれたのに返信しなかったことを合わせて隣に座るメイコさんに答えると、うん。て、曖昧な返事が返ってきた。  
「…………」  
「…………」  
何となく沈黙が生まれてしまう。メイコさんと二人でいる時にこんなこと、初めてだ。このヒトでも緊張するんだって、今知った。  
先に口火を切ったのは僕だった。  
「あの、荷物届けてくれてありがとうございます。それに洗濯まで……」  
「あ、ううん……いいのよそのくらい。でも、ゴメンね」  
頭を下げた僕は、礼を言ってなんで謝られるのか分かんなくって直ぐ様顔を上げる。メイコさんはマグカップから流れてくる湯気に視線を当てたまま、微笑んでいた。  
 
「その、邪魔しちゃったかなって」  
…………。あ。そっか。ちゃんと告白して玉砕に備えることに集中してたから、アンさんのことなんてすっかり忘れてた。  
そっちも誤解を解かなくちゃって思って口を開こうとした僕を、メイコさんの言葉が遮った。  
「あのね、私の話を聴いて欲しいの」  
うん。もう覚悟も何もかも出来てるからどんとこい! だよメイコさん。  
僕は今日までメイコさんが口にするだろう、ありとあらゆる衝撃的な言葉をシュミレートして準備は万端だ。  
せめて最後はみっともない姿を見せたくない。綺麗に終わるんだ。さぁこい!  
「私ね、ずっと不思議だったことがあるの。前にも話したけど、私は気持ちよくなれればセックスするのは誰とだってよかった。  
 一人の男とだけのセックスなんて、今まで考えられなかった。どんなに気持ち良くてもその内飽きてしまって、また男を探してたりとかもしてた。  
 そんな私が、カイトくんと知り合ってからは満足しちゃって、いつの間にかカイト君だけとしかしなくなって……。  
 それに気が付いた時は、本当にびっくりした」  
「……」  
がんばってましたから。メイコさんが目移りしないように研究じみたことしてみたり、マメに連絡して約束取り付けたり。  
だから、メイコさんが僕一本に絞ってるって自己申告してくれた時、やった! って思ったんだ。  
「カイト君とは全然飽きなかった。最初のうちは、相当身体の相性が良いんだって思って疑問すら持たなかったの。でも……」  
少し言い淀む気配。メイコさんはコーヒーを口にし、唇を湿らせる。小さく上唇を舐めた仕草が、こんな時でも色っぽい。  
「カイト君とセックスしてから、私変わっちゃった。いつの間にか他の男の人と連絡なんて取らなくなってたし、カイト君と気持ちよくなれればそれだけですごく満たされていた。自分の変わりようが、信じられなかった」  
話が想像していたいたのとは違う方向へ進みつつあって、僕は目を瞬かせる。え? なにどういうこと? メイコさんは、何が言いたいんだ?  
取り敢えず、僕の知らない間に男とやってたワケじゃないってのは、理解できたけど……。  
「その理由も、少し前にやっと分かった。……私ね」  
組んでいた脚を下ろし、メイコさんが僕に身体を向けた。赤い大きな瞳が真っ直ぐに僕に当てられ、その穏やかな表情に思わず見惚れた。  
 
「カイト君が、好きなの」  
 
…………………………………………え?  
 
思考が止まった。  
 
呆然とする僕から目を外したメイコさんは、小さく笑って今度は遠くをみるように視線を飛ばす。  
結構悩んだのよって微笑んで、メイコさんは静かに語った。  
メイコさんは、僕を、す、好きになっていただけじゃなく、僕の好意にも気がついていたこと。  
でも僕が何も言わなかったから、どうしたらいいのか分からなかったこと。  
メイコさんは男性経験が豊富でも、恋愛は初心者過ぎた。自分が僕とばかりセックスをする理由をやっと理解できたけど、告白しない僕の本心を推し量ることができなかったと話してくれた。  
へ? へ? メイコさんが話す内容が分かっているんだけど分かんない! スキって、鋤じゃなくて、隙じゃなくて、好き?   
……僕を? だってメイコさんは、恋愛とか理解不能の人で……。  
だけど、メイコさんの変化に心当たりがないわけじゃない。  
メイコさんちに初めて泊りに行った時の、嫉妬じみたあの態度……アレ、マジで妬いてたんだ!  
絶対ないと思い込んでいたから、逆に盲点だった……。  
大混乱の僕をよそに、メイコさんは淡々と話し続ける。予想外過ぎて気が遠くなりそうだ。  
 
「セックスは性的快感を得るための手段だと考えていたのに、まさか恋愛感情が芽生えるなんて。  
 ……でも、セックスってそれだけじゃなかったのよね。好きな人だからあんなに気持ちがいいんだし、肌に触れているだけで嬉しくなっちゃうんだわ。そんな簡単なこと、童貞だったカイト君に教えてもらったなんて。ホント、皮肉……」  
メイコさんはコーヒーで口を潤すと、淋しそうに笑う。  
「でも遅かったね」  
妙にしんみりした声が僕の鼓膜にじんわり沁み込んだ。心を落ち着かなくさせるそれに、不安が満ちる。  
「私がカイト君の気持ちに気付けなかったから、もう他に好きな人できちゃったんだね」  
「えっ?!」  
本日何度目かになるか数える気にもならない間抜けな声が、僕の口から漏れた。いや、違うよ!! やっぱりアンさんのこと誤解してる!  
速攻で否定したいが、さっきの衝撃発言の混乱も重なって、誤解を解くにもどう話せばいいのか思考は空回り、口も上手く回らない。  
「カイト君の他の人を好きになっちゃうのも分かるの。いくら好意を示しても、私はカイト君の気持ちに気付こうともしなくて、カイト君の優しさに甘えてばかりだった。  
 甘えるだけ甘えて、振り回して、そんな私に嫌気がさすのは当たり前だもん」  
「メイコさん、あの」  
「……だからね、もう会わない方がいいかなって考えたりしたけど……」  
「!! ちょ、僕も聴いてほし……」  
「私らしくないなって、止めた」  
言い切った力強い語尾に、何やら不穏な空気が漂う。……止めたって、なにを?  
メイコさんはいつの間にか僕に向き直り、艶然に微笑んでいる。綺麗なんだけど、色気ものすごいんだけど、ものすごい凄みがあって威圧感がパない。  
ヘビに睨まれたカエルってこんなカンジ? 思わず怯んで硬直する僕へ、メイコさんがずい、とにじり寄る。  
伸ばされた手。細い指が僕の顎から咽をなぞり、鎖骨へと滑るのに不埒な感覚が呼び覚まされた。  
思わず咽が鳴った。この指が卑猥な動きで男を翻弄するのを僕は知っている。  
服の上からでも分かる柔らかそうな身体のラインが前傾し、つられて僕は上半身を引いた。更に身を寄せたメイコさんは固まった僕の膝に乗り上げ、僕はとうとうソファーの上に押し倒された。  
あ、あれ? なんで?  
「カイト君は超真面目だから、同時に二人となんか付き合えないよね。今日は好きな人ができたから、私と関係を清算しに来たんでしょ」  
見下ろしてくるメイコさんに圧倒されて、言葉が出ない。それでも往生際悪く口を金魚みたいにぱくぱく動かす僕に向けられた笑顔は、一言で表すならば壮絶の一言に尽きた。  
「あ、あの、メ……」  
「でも私は、やっぱりカイト君と離れたくない。今までヤってる男に女の影があったらサヨナラするスタンスだったけど、カイト君に関してはイヤ。  
 だからね――――奪うことにした」  
「う、うばう?!」  
「そ。カイト君を、あの金髪の女の人から、カラダで略奪するの!」  
「――んぐ!」  
言うや否やメイコさんは僕に覆いかぶさり唇を塞ぎにかかった。  
きゃぁああぁあぁまってぇえええ――――!!!  
 
「んっ、ん! む――!」  
小さな舌先が閉じてしまった唇の表面を何度もなぞって口を開けと誘いかけてくる。顔は両頬を手で挟まれ、がっちり固定されて動かせない。  
急展開がすぎる! こっちの話しを聴いて欲しいのもあって抵抗していると、背筋を走る快感とも悪寒ともつかない感覚にあっけなく弛む唇を割って、舌が侵入を果たした。  
逃げる僕の舌を無暗にメイコさんは追わず、歯列や上顎の内側を丁寧に舐めてくる。  
神経を逆撫でするようなぞわぞわした落ち着かない感触が堪らなくて、舌でメイコさんのそれを押しやろうとしたら待ってましたとばかりに絡め取られた。  
「む……!」  
ちゅっちゅと舌を吸い込む唇。肉棒を扱くような動きに加え、舌先同士がちろちろ触れ合って、肩が震えた。  
久し振りの、メイコさんの本気のキスは、やっぱりすごい……。  
おまけに僕の上にぴったり重なる豊満な肢体の柔らかさ(特におっぱい)、匂いが神経を刺激する。  
下半身に跨るメイコさんの、アソコが押し付けられているかと思うと、もうなにもかもが悩ましくってしょうがなかった。  
全身を武器にするなんて、卑怯すぎるよ!  
「んっ……ふ……」  
ちゅうっと一際強く吸って、メイコさの顔が離れる。僕を味わい尽くした唇を赤い舌がぺろりと舐めて、鼻歌唄いそうな機嫌の良さで僕のベルトを弛めジーンズの前を外し始めた。  
ちょ、このままじゃ食われる!  
「まって、待ってよ!」  
「ん――? 大丈夫だいじょーぶ♪」  
「そうじゃなくって――――」  
「私じゃ勃たないから? あのヒト相手だったら勃つんでしょ? だったら心配しなくてもいいわ。前立腺弄ればイッパツよ任せといて!」  
「ちがう―――!」  
いかん、メイコさん張り切っちゃて話しになんない! シャツの下に潜り込む手を阻止しようとするもするりと逃げられ、小さな攻防を繰り返した後、やっと手首を掴むことに成功する。  
「ちょっと待ってって!」  
振り払われないように力を込めて両手首を握り締めた。僕を見下ろす赤い瞳が、驚きに瞠られる。メイコさんはきゅっと唇を噛んでから悔しそうに呟いた。  
「なによ……そんなにあの人がいいの……?」  
…………! なんでそんな、拗ねた顔で言うかなぁ。  
僕は勢いよく身体を起こし、その反動を使ってメイコさん抱きついた。もう思いっ切り。堪らなかった。  
身体に腕を巻き付けてぎゅうぎゅう抱きしめる。息もつけない猛攻撃を抑え込み、やっと実感できた。  
届いてたんだ。好きだって、メイコさんに……!  
告白して逃げられたくなくて、臆病な僕は「好き」をメイコさんの大好物のセックスでしか示すことができなかったけど、届いてたんだ。  
誠心誠意、「好き」を込めたのセックスが――メイコさんに。  
さっきまでの肉食っぷりはどこへやら、メイコさんは目をまん丸にしたまま僕の腕に抱かれていたが、我に返り抗議の声を上げ始めた。  
「ちょっ、カイトく、くるし……っ」  
「好きです!」  
身体を少し離し、メイコさんの顔を間近で見据えて叫ぶように告げた。  
だって、もう言っていいんだ。ずっと言いたくて仕方なかった。言えば全部終わると思って胸の中に閉じ込めていた言葉は、奔流のように口から流れ出る。  
「好きです。メイコさんが恋愛感情を理解できないから言わずにいたけど、ずっと……あの撮影の時から、好きでした!」  
「え……だって、カイト君は」  
僕の言葉を遮るメイコさんの顔には、戸惑いがありありと浮かんでいた。畳み掛けるように僕は続ける。  
「アンさんは、あの人は誤解ですよ! あの人彼氏いてベタ惚れだし僕なんか眼中にないんです。や、本当ですって!  
 あの時、ウチで飲み会してたんだけど、ビールを派手にぶちまけちゃってシャワー貸すしかなかったんです。  
 服もビールまみれだったから、サイズ的にメイコさん専用の部屋着しか着せるのなくて! アカイトも一緒だったんですよ、メイコさん会ったでしょ?」  
 
目をぱちくりさせていたメイコさんは、アカイトの名前を出すとああそういえば……と、納得したように頷いた。  
アカイトが初めて役に立った! ありがとうと心の中で僕はヤツを拝んだ。  
「でも、全然連絡くれなかったし……てっきり好きな人ができて、私じゃダメでもその人とはセックスしてるんだって……思って……わたし……」  
頬を染めてきまり悪そうにメイコさんが視線を逸らす。  
うわ、なに、その表情。男慣れしていない女の子みたいだ。いつもの肉食女子はどこやったの?! まるで僕のこと好きみたい。  
あ、好きって、言ってくれたんだっけ。恋愛感情が分からないと嘯いていた、このヒトがだよ?!  
…………嬉しくて言葉にならないよ!  
メイコさんの頬を両手で包む。手のひらにちょっと火照った熱を感じた。赤い目を潤ませはにかむその顔を引き寄せ、今度は僕の方からメイコさんにキスをした。  
さっきの性犯罪めいた凶暴なキスより、互いを感じ合うよう唇と舌を使う。  
鳴らしながら吸い合い、深く交わって舌を触れ合わせて。時間をかけて僕はメイコさんの、メイコさんは僕の唇を慰撫する。  
存分に互いを堪能してからメイコさんが顔を上げ、唾液の糸が途切れた。  
「メイコさん?」  
茶色い頭が僕の首筋に移動し、毛先が肌を刺激して擽ったい。ちくりと肌を刺す感覚がして、メイコさんが耳元で囁く。  
「ねぇ、しよ?」  
「え、あの、僕……」  
……………………………………勃つかな?  
僕は正直に、勃たなくなった理由を話すことに決めた。隠しようがないし、メイコさんの本心も分かった今では僕の不安を言うことにそれ程抵抗はない。情けないだけで。  
メイコさんは僕に圧し掛かりながら一時行為を止めて、静かに聴いてくれた。うあー、居たたまれない……。  
「カイト君と知り合ってからも、会えなかった時も、他の男となんてしてないよ?」  
「……! うんっ!」  
小首を傾げ、僕の胸でちょっと心外そうに唇と尖らせているメイコさん。今ならその言葉が心の底から信じられる。かわいい……!  
「当ってるおっぱいも気持ちいいし、メイコさんがくっついていると欲情を誘われるけど、でも致してみてダメだったらって思うと……。  
 メイコさんは、出来ないとやっぱダメ……かな?」  
「ううん。カイト君とならぎゅってしてもらえるだけで満足だよ。出来ないからって、嫌いになんかなれないもん」  
メイコさん………………!  
今まで悩んでいたのがアホみたいな展開に、マジで夢なんじゃと疑ってしまうよ。  
「だけど、治せるもんなら治してあげたい。他ならぬこの私がね」  
ちゅ、と僕の頬に音を立ててキスしてくれる。額に、鼻先に、顔中に小さなキスを幾つもくれて、優しい赤い目が僕に向けられた。  
「勃たなくてもいいよ。だってカイト君がそうなっちゃったのは、私が不安にさせちゃったからじゃない。  
 私のせいなんだから、時間がかかっても私が治したいの。だから試させて?」  
「メイコさん……ありがと」  
邪気のない笑顔を見せるメイコさんに、涙が出そうだ。出会った当初からは考えられない変化に感無量というか、そんなカンジ。  
だって、僕が変えたんだ。セックス大好きで一人の男に縛られたくないと公言していたメイコさんを、メイコさんしか女を知らないこの僕が。  
「……でも、前立腺は辞退させて下さい。前にお尻弄られた時、マジで世界が崩壊すると思ったんで……」  
あれはちょっと、カンベンだ。  
男の自尊心がぼろぼろになりそうだったし、なんか違うモノに目覚めてしまいそうになる怖ろしさがあった。  
メイコさんは苦笑して頷き一度身体を起こすと、僕の上で部屋着のワンピースをするりと脱いだ。  
 
「脱いだ方が、興奮しやすいかなって」  
普段からブラを付けないメイコさんはワンピースを脱ぎ棄てれば下着一枚だ。僕に跨りながら、その最後の一枚も器用に外していく。  
照明に下、白いおっぱいは、最後に見た時と変わらず豊満でぷるんと揺れている。双球の中心を彩る乳首は既にピンと勃って、彼女の興奮を現していた。  
程良く肉のついた、腰の艶めかしい括れ。なだらかな腹の下へ視線を滑らせると、割れ目が短い薄毛に透けている。  
開く股から割れた桃色のそこは、少し具も零れちっちゃなクリトリスが顔を覗かせていた。  
綺麗な女の人が色っぽく微笑みながら隠すべきところを全て曝け出し、僕の上に乗っているという扇情的な光景だが、下半身は未だ沈黙。  
もちろん欲情もそそられ性的な感情を色々煽られているのを実感しているけど、勃つかどうかメイコさんに応えることができるか、僕の意識はそっちに取られちゃってる。  
ソファーの肘かけに背を預ける僕の首筋にメイコさんが顔を埋め、唇が這う。手がシャツの中に潜り込んでしなやかな指が腹から登り、硬い胸をそっと撫でた。  
「…………っ、んっ」  
さわさわと肌を撫でる手は時間を置かず大胆になる。僕の胸を愛撫し、首筋に音を立てながらメイコさんは残した痕を舌でなぞった。  
シャツを胸の上まで捲り上げ、メイコさんの顔が近づく。  
「! ……っく」  
ちゅぅ。と、甘い痛みと快感が走った。僕の乳首が吸われ、もう片方も細い指が弄っている。  
乳輪を舌先がくるりと辿って、女の人よりずっとささやかな突起を濡れた柔らかいそれが何度も弾く。  
胸の下におっぱいが乗って、メイコさんが身を寄せるとむにっと形を変えた。  
指で押し潰される方も抓まれたり撫でられたりする度に生まれる刺激が、神経回路をぴりぴり灼いて小さく爆ぜていく。  
「カイト君は、覚えているかな……」  
胸に顔を伏せるメイコさんは、唇を肌から離すことなく呟く。  
「え……?」  
何をだろう? 口を動かす僅かな動きですら、性感に置き換わった。  
「咲音メイコ……忘れちゃった?」  
ああ、もしかしてあの子? 僕の知っている咲音メイコといえば……休憩時間に迫られた、あの子だけ。つか、メイコさんの知り合い?  
「んふ。その顔は覚えてるね。実は、あれ――私なの」  
「へっ?! ……ぅあ」  
乳首を甘咬みされて、驚きの声は封じられてしまった。メイコさんは僕を責める手を休めない。  
結局はあまりエロいPVにはならなかったけど、エロ系PVの触れ込みで舞い込んだ仕事は少女の姿でとの注文があったため、『咲音メイコ』になってあの仕事に行ったこと。  
そこで僕を驚かせようと正体を隠したまま迫ったことを、教えてくれた。  
「そうだったんだ……」  
そう思いつつ、どこか納得している自分もいた。言われてみれば思い当たるフシ、ありまくるもんな。  
あの咲音ちゃんがメイコさんなら、二人が似ていたことも頷ける。同一人物なんだもんね。  
胸の中心を舌がゆっくり這って、濡れた軌跡を作る。ぞわり。と、神経に触れたような感覚に身震いした。  
「カイト君に拒まれて、すごくショックだった。カイト君だってセックス好きなくせにって、理不尽にムキになってた。  
……拒まれて気づいたの、カイト君は『私』が好きだから、『咲音』じゃダメなんだって」  
メイコさんの頭が僕の身体を下っていく。肌に触れたまま引き摺られるおっぱいの感触。  
ぷにぷにした肉の中に、勃った乳首の硬さも感じることができる。腹筋を啄み臍を唾液をたっぷり乗せた舌で舐められた。  
「自分の気持にもやっと自覚できた。好きって分からなかった時、カイト君が合コン行くのイヤだった。戻ってきてくれて嬉しかったの。  
 女の子の匂い付けたままウチに来たのだって、腹が立って仕方なかった」  
 
メイコさんの語る内容がその時の情景を思い出させ、その都度感じた僕の疑問を溶かしてくれる。そうか、そうだったんだ……。気付いてあげたかったよ。  
「恋愛感情の理解できないメイコさん」って固定観念があったから、僕はずっと……。  
いつの間にか股間に手が忍び寄り、ジーンズ越しに軽く掴まれる。ああ、気持ちいいなあ。  
温い快感に身を任せていると、前を開こうとした手が止まった。どうしたんだろうと下を見ようとしたら、同じタイミングでメイコさんが四つん這いになり、狭い隙間に膝を進め僕の両脇の下あたりで止まった。  
「よいしょ」  
「…………?」  
なんだろ? 見上げる先で、メイコさんの身体が持ち上がる。膝で立ち、股間が僕の目線と同じ高さになった。  
「カイト君……」  
熱い声。おっぱいの向こう側から発情した瞳が僕を射抜く。むっちりした内股を滑った指が割れ目を撫で、それがおもむろに眼前で開かれた。  
熟れ切った性器だった。桃色に濡れたソコは襞が口を開いて、糸を引かないのが不思議なくらい。  
ぐっしょり恥毛が張り付いた大陰唇。肉棒を呑み込む小さな膣口はヒクっと震え、内股の浅い所まで粘液が汚していた。  
「カイト君とえっちなことしてると、こんなになっちゃうの」  
メイコさんの色気に圧倒されて咽が干上がる。とろっとろに滴る割れ目の小さな突起、クリトリスに赤い爪先がそっと触れて僅かに力が入る。  
「……んっ……」  
ぬめりに滑り、くにっとクリトリスを押し潰しイヤらしい声が洩れ零れた。メイコさんが自分の指でそこを弄る。頬は紅潮させ目をきゅっと瞑り、さする指の動きに全身をぴくぴく反応させていた。  
見られながら感じているメイコさんに呆然とするも、目が離せない。夏の積乱雲のように、欲望がどんどん膨れ上がって苦しくなる。ああもう、このヒトはどうして……!  
誘われるように両手を伸ばし腰を掴むと、僕は舌を伸ばして見せつけるソコを引き寄せようとした。が、メイコさんはぱっと股間から手を離し、代わりに僕のおでこを押し返してきた!  
「えっ? ダメなの!?」  
「ダ――メ――。その代わり……」  
身体を伸ばし僕の上にメイコさんが覆い被さって、視界が翳る。眼前にはおっぱいがゆらゆら揺れて、それが次第に下がってきて。  
「う……む……」  
脇を締めて僕の頭に手を添えるメイコさんの深い谷間に、顔が埋まり鼻先だけが肉から逃れた。鼻呼吸は確保されたけど、口を塞がれると少し息苦しい……けど!  
「おっぱい、大好きだもんね?」  
大好きです!  
豊満なおっぱいに埋もれて、至福! 甘い肌の香りが鼻孔を擽り、顔全体にふにふにした独特の感触。メイコさんは脇を微妙に締めて、頬をおっぱいが挟んでくるのが、気持ちいい。  
思わず肩肘ついて身を乗り出し、自分からも顔を押しつける。我慢できるはずもなく、谷間に添ってぺろりと舐めた。  
「あん!」  
前はここに、おちんちん挟んでくれたりしたんだよね。アレもいいけど、顔面いっぱいででおっぱいを感じるのはまた別格の心地よさだった。もちろん、性的に。  
唇で膨らみを食み、片手を伸ばし下から掬うよう触れる。確かな重量感に指が沈んだ。  
「……んっ」  
しばし手のひらでおっぱいの柔らかさを堪能し、つんと愛らしく勃ってる薄紅の乳首を指で撫でた。敏感に反応するメイコさんは身を竦め、谷間が深くなる。  
ぷくっとしこる乳首が指に抓まれくにくに動く。合わせて腰が蠢いて、そのままもう片方のそれを口に含んだ。  
谷間から顔を外してし、丁寧に舐めて、転がし、弾いて。大きく口を開けておっぱいを食わんばかりに吸い立てた。  
「あぁ……っ」  
白い背中が反るのも構わず思いっ切り吸い込み、それから唇を乳首まで滑らせた。そこでまた強く吸ってから離す。  
ちゅっぽん、大きく鳴る音が、名残惜しさを如実に現していた。何度か同じことを繰り返す。  
「あ、んんっ……も、お!」  
おっぱいに顔を寄せる僕のおでこをメイコさんが押し、腕を突っ張らせて引き離す。むぅっと赤い瞳を目を眇めているが、快感が色濃い顔では全く効果はない。  
「メイコさん、おっぱいもっと食べさせてよ」  
「私ばっかが気持ちよくなっちゃうから、やー!」  
「メイコさんが差し出してきたんでしょ?」  
苦笑して捕まえようとする僕の手から、メイコさんは難なく逃れて僕の腹にぺたんと座る。肌にぬちょっと熱い感覚がし、それが何かなんて直ぐに知れた。  
 
「えぇ〜……メイコさんの感じてる顔も勃起に不可欠なんですが。ていうかおっぱい下さいよー」  
「私がカイト君を可愛がりたいの! んー……どれどれ?」  
メイコさんは後ろ手に僕の股間に触れた。すっかり忘れてたけど……あ。  
メイコさんも気がついたようで、にんまりイタズラっ子みたいな表情で口角を上げた。  
「んふふ」  
そのまま膝へと尻をスライドさせて腰を浮かす。前をくつろげるメイコさんは手慣れた仕草で僕の陰茎を取りだした。  
「あ……!」  
「………………勃起してるね」  
メイコさんの手の中で、それは力強くそそり立っていた。  
自分でも久し振りに見た、勃起した肉棒。感慨深くて、思わず小さくガッツポーズ。  
「や……った……!」  
「カチカチだね。美味しそう」  
目を輝かせるメイコさんは、反り返って臍につくそれに、つー……っと指を這わせた。表面に血管を浮かせた肉棒は、辿る指にビクンと反応を示す。  
「嬉しい」  
柔らかい手のひらが肉棒を起こし、猛り切ったそれへ伸ばされる舌が下から上へ舐め上げてくる。  
「う……っわ!」  
嬉しそうに肉棒を握るメイコさんから、竿に括れに亀頭にちゅっちゅとキスの雨が降る。こそばゆい快感に身を竦めている間にもイタズラな舌先は竿と亀頭の間を擽り、万編なく表面に舌を這せた後はあーんと口の中へ誘われた。  
途端に、肉棒を中心に快感が広がっていく。ねっとりと舐め上げる舌に添って全身の毛穴が開くような強烈な刺激。  
「あ……メイ……っ」  
肉棒に食らいつくメイコさんを見下ろせば、目を細めうっとりしながらしゃぶっている。  
咽の奥まで引き込んでちゅぱちゅぱ音を鳴らし全体を吸う。亀頭を舌でくるくる撫でたと思ったら今度は唇でぐっと挟んで引き、顔を引くと鈴口を吸い立て孔をちろちろ舐められた。  
もー腰砕けですよ。傍若無人なメイコさんの振る舞いに、暴発堪えるの一苦労。や、分かるよ? 不能疑惑あったし、実際メイコさんに弄られている時に萎えちゃったこともあったから、メイコさんが勃起に悦んでいるのはすっごく分かる!  
「ちょ、ちょっとタンマっ」  
「やーぁ。ふふ。カイト君は可愛いケド、おちんちんは立派なんだよね♪」  
「う!」  
暴発しそうだってのに、親指と人差し指でを輪っかを作って扱くのダメだから――――!  
竿は手中で弄ばれ、鼻先を陰毛に突っ込んで袋に唇を感じる。  
「う、あ、それは……っ」  
小さなキスと、はむっと口に含まれて咀嚼するような唇の動きが貪欲ったらありゃしない。根元の竿と袋の隙間まで存分に舌先を使って舐め回し、肉棒伝いに上へ舌先は移動する。  
滲み出た先走りを丹念に舐め取るメイコさんに、つい恨みがましい目を向けてしまった。  
僕の視線に気がついた彼女は、そうだったと愛おしげに肉棒の先にリップ音を立て、今度はそこに腰を下ろす。じっとり潤う性器をおちんちんの上に乗せ、前後に腰を動かし始めた。  
「メイコ、さ……! あ、く……っ」  
「あ……っ、かたぁい……っ……クリに、当っ……」  
スライドする腰に合わせてねちょねちょ鳴る音と伝わる性器の熱が、メイコさんの興奮を教えてくれる。  
竿に浮き出た血管や括れの部分の僅かな凹凸にクリトリスを夢中で押しつけては喘ぐメイコさんは、快感を得ようと必死だ。  
「も……出ちゃうよ。僕、メイコさんの中で出したい」  
恥も外聞もなく、自然に懇願の言葉が出た。恍惚としながらもメイコさんは妖艶に微笑み、そっと膝を伸ばす。性器同士が粘膜の透明な糸を引きながら離れる様が、すごく卑猥だった。  
「そうね。私も……カイト君をおまんこで感じたい」  
性器を指で拓いて、再び僕に見せつけてくる。亀裂から零れる襞が伸びて、小さな膣口が涎を垂らしながら口を開けて肉棒を待っている。  
メイコさんの吐息は、甘くて熱くて。  
勃起した悦びと期待が僕の脳を熟ませ蝕んでいった。  
 
肉棒に手を添え、天を向けられた先端がぐぶぐぶ肉の孔に沈む。抵抗感はまるでなく、むしろ嬉々としてそこは僕を呑み込んでいった。  
「あ……っ」  
メイコさんの背がしなり、突き出されたおっぱいがぷるんと弾む。熱を持った濡れた肉壁が狭まり、膣ヒダがざわざわ竿に絡みついて僕をきゅうんと締め上げた。  
「は……っ、あ、メイ……っ」  
すごい。咄嗟に腹に力を入れて襲ってきた吐精感をやり過ごした。それ程メイコさんの膣は意地汚かった。  
思えばお互い一ヵ月以上のブランクがある上、散々嬲られた直後だからあんまり持たないなっていうのはある。  
だけどメイコさんをイカせないで、誘われるまま一人吐き出すのはカッコ悪くてイヤだった。一応、男の矜持? みたいなものが自動的に発動するのは自然なことだ。  
全てを胎内に納めたメイコさんは僕の腹に手をつき、肩を竦ませてぷるっと全身を一つ震わせた。眉を寄せて唇をちょっと噛みしめる表情は、困った顔にも少し似ている。  
小さな孔に迎え入れた肉棒を咀嚼するよう、中がヒクついていた。  
「う、んっ」  
鼻に抜けた声を切欠に、メイコさんが動き出す。あ――――……。  
「きもち……」  
その一言に尽きた。  
余計なこと考えてフェラの最中に萎えてしまってからこっち、メイコさんのお宝卑猥画像だろうが秘蔵のAVだろうが、怪しい滋養強壮ドリンクや果てはアカイトに借りたモノでもダメだった僕のちんこは、それまでがウソみたいに元気いっぱいだった。  
「あっ、あぁん……っ、すご、んひ……っ」  
僕の上でピストン運動をするメイコさんはたっぷんたっぷんおっぱいを揺らす。  
引き抜かれる寸前まで腰を上げまた落とす動きは緩慢だが、子宮に受ける強い衝撃に全身を震わせていた。  
自分が気持ちよくなりながらも責めも忘れることはなく、尻を下ろし性器同士をぴったりくっつけると腰を回し、僕を翻弄しにかかってくる。  
「んっ……あっ、あぁん、ふ、んんっ」  
僕の太ももに後ろ手をついて身体を支え、腰を前に突き出す格好になって、見上げる視線の先には重そうに揺れる迫力満点のおっぱい。  
貫かれた膣口がえっちな汁を溢れさせ肉棒が襞から見え隠れして、興奮を煽られる。  
「おちんちん……イイ……はぅん……」  
快感に蕩けその先を追って腰を使うのにメイコさんは夢中で、結果媚態を僕に披露することになる。彼女はまだ余裕を残し、余すところなく性感を求めるのに躍起だ。  
「うあ……っ、締めすぎ……」  
「だって、んんっ! ずっと、欲しくて……っ。余所の女なんかに、渡したくないって、ずっと……」  
可愛いことを言う口は快感に浮かされ、条件反射みたいに僕を求める膣の動きがその言葉にウソがないことを感じた。  
でも、悦ぶメイコさんにちょっとイジワルしたくなる。  
「おちんちんあれば、誰でもいいんじゃないの?」  
「ち、違うもん……っ、そのために、カイトくんにエロ画像、撮らせ……、あっちで、女遊びして欲しくなかったからぁ……!」  
……!  
まさか、出張前に猥雑画像撮らせてくれたの…………浮気防止(?)のためだったのか?!  
アヘ顔寸前の表情を浮かべ、夢中になって腰振ってるメイコさんから次々と明らかになる事実は、僕の視野がどれだけ狭まっていたのか思い知らされた。  
……ほんっと、なにも分かっていなかったんだ。メイコさんは恋を自覚する前から、いろんなサインを僕に示していてくれていたのに。  
好きって、言葉じゃなくて態度で教えてくれていたんだ。そう思うと、ぐっと胸に迫るモノがあった。  
自分どころか僕の陰毛までぐっしょり濡らしへこへこ動く腰に、そろりと手を伸ばした。  
「ひんっ!」  
緩やかな喘ぎから打って変わり、悲鳴じみた声が上がった。掴んだ腰を引きつけながら、僕が下から力強く突き上げたからだ。密着させ小刻みに振動させると、高い喘ぎと膣が甘く締まった。  
「あ、あ、あ! ソコ、奥、当って……うっ、くぅ……っ!」  
「メイコ、さんっ」  
僕は腹筋に力を入れ勢いよく起きあがった。だってさ、あんなにあんあん悶えているメイコさん見てたら、もっとくっつきたくもなる。  
反動つけてぶつかりながら抱きつく。対面座位の体位になって、柔らかな肢体は難なく僕の腕の中だ。  
メイコさんの身体はしっとり熱く、急に僕に抱き込まれて目を白黒させている。頬にちゅっとキスし、揺すり上げながら込み上げる言葉を耳元で囁いた。  
 
「好きだよ。ホント、ずっと前から好きだった」  
「……っ、カ……」  
びくっとした反応が僕に伝わる。もっと中を味わいたくて構わず突き上げていたら、きゅぅんと一際膣が吸い付き、メイコさんが上擦った声で僕を呼んだ。  
「やっ、あっ、まっ、て! ひぃっ、うぁ……あぁああっ」  
しがみ付いた指が僕の肌を刺し、身体が強張る。中の痙攣に驚きながらも、僕は必死に射精を堪えた。  
「っ……メイコさん?」  
答えは無く、ただ忙しない呼吸音が返ってきた。  
イっちゃったんだ……珍しい。  
息を乱してくったり身体を預けてくるメイコさんにそっと窺う。ややあってから、潤ませた赤い目が悔しそうに僕を睨んできた。  
「バカぁ……も、あんなこと言うから…………」  
「あんなことって、好きって?」  
「だって、い、言われたことないもん! 好き、とか……」  
「へ?」  
「私は今まで恋愛したことないんだってば! 向こうだって割り切ってヤるんだから、そんなの言うワケない……っきゃ」  
「そっかー! 好きです! 大好き!!」  
「やぁん! ちょ……あぁんっ」  
メイコさん、好きって言われたことないんだ。だから速攻でイっちゃうぐらい感じちゃったんだ。そんなこと聴かされたら、そりゃ言うでしょ!  
メイコさんの背中に腕を回し、ぴっとり身体を密着させて何度も「好きだよ」って囁く。  
僕自身はまだビンビンで、イったばっかでヒクヒクしてる胎内は面白いぐらい反応してくれる。いつにないメイコさんの余裕のなさがまたカワイイ。  
「言葉一つでこんなになっちゃうの? いつもは余裕なのにねー」  
「ひんっ、ダメぇ、イった、ばっか……!」  
ムチムチのお尻をがっしり掴んで抜き差ししたり、奥にぐりりと押し付けたり。もちろん『好き好き大好き』攻撃も緩めない。きゅんきゅん吸い付いて僕の射精を促してくる。  
同じ言葉を繰り返す自分が若干アホっぽいのは否めないけど、メイコさんは気にするゆとりの欠片もなく、膝の上で乱れまくっていた。  
「かわい……メイコさ……」  
過敏すぎる身体は緊張し、左右に頭を振って僕に縋り付いてくる。イヤ、ダメを何度も口にしながらも脚は僕の腰に絡んで、まんこは肉棒を離そうとはしないのだ。  
密着しながら抱き合って、腰を動かし貪って。汗ばむ肌も高い体温も気にならないほど、溺れていた。  
「よ……っと」  
「ふ……っ、あうぅ……ひっ!」  
メイコさんをソファーの上に押し倒し、ぐっと最奥を一気に貫いた。  
大股開きで僕を受け入れている性器が丸見えになって、襞がおちんちんの形に大口を開けているのを目の当たりにし、また高揚する。  
ダメだ。もう持たない。このまま一気に最後まで行くつもりだ。でも、その前に。  
「メイコさん、今更、だけど」  
「んっ、うあ……な、に……っ」  
貫く速度はトップスピード。激しく腰を打ち付け、肌の当る乾いた音と中を抉る湿った音が部屋中に鳴り響く。  
「僕、メイコさんしか、知らないし、まだまだセックスヘタだけど、がんばって、上手くなる、から」  
茶色い頭は激しい抽送にずり上がり、背凭れと肘かけの隅に追いつめられる中、僕はもがく手を握り締めた。  
「好き、です。僕と、付き合って、くださ、い……っ」  
メイコさんに先に言わせてしまったのだから、交際の申し込みは僕が言うべきだ。  
「僕は、メイコさんの……最後の男になりたい」  
果たしてこのタイミングでよかったのかは我ながら疑問だ。しかし勢いを逃したくはなく、喘ぐメイコさんを見下ろす。  
我ながら容赦ない抽送で、肉棒にまた絶頂の兆しを感じる。膣内はざわざわうねって、僕に欲しいとねだってくるのだ。  
互いに息を乱しながら、メイコさんを見つめる。快楽にうっとりと蕩け、濡れた唇をなんどか動かして。そして。  
 
快感に咽ぶメイコさんの赤い爪が、僕の手をぎゅっと握り返してきた。  
「う……ん……っ」  
上気した頬。揺れる瞳が僕を真っ直ぐに見つめ、小さく頷いてくれた。  
「…………! メイコさん」  
「んく! んん――――!」  
嬉しくて、ぷっくりとした赤く濡れる唇を塞いだ。腰を忙しなく打ち込み、応える膣の蠕動にもう後がない。競り上がる吐精感が目の前に迫りくる。  
……あ……。  
唇を重ねたメイコさんの目尻に光る雫。欲望に膿んだ頭が認識したとき、組み敷いた身体が跳ねて膣が肉棒を搾り取るように動いた。  
「ん――――! んっ、んん――――っ!」  
「…………っ、うぅ……っ」  
僕を求める刺激に逆らえるはずもなく、強烈な快感に爆ぜる。今まで射精を我慢できたのがウソみたいに膣内に勢いよく欲望をぶちまけ、脳まで痺れさせるほどの久し振りの愉悦に心身ともに蕩けた。  
乱れた息を整えつつ身体を離し、膣から萎えかけた肉棒を引き抜く。粘膜と精液で出来た架け橋が亀頭の先と性器の間から伸びていて、最後の最後まで卑猥だった。  
息も絶え絶えのメイコさんはその感触にぷるっと反応し、薄く口を開く襞から吐き出したモノが溢れ出てソファーを汚した。  
ぐったりしソファーから片脚を落として、大股開きでアソコから精液を漏らすメイコさん。  
瞳は虚ろもいいところで、呼吸におっぱいが揺れて小さく開いた口から舌先が覗き、出したばっかだってのに、なんかこうムラムラさせられる。  
僕はそっとメイコさんに近づき、こつんと額を当てた。  
ぼんやりしていた目の焦点がゆっくり僕を結んだ所で、あのですね、と口にする。  
「……お風呂でココを洗ってから、今度はベッドでえっちなことしませんか?」  
どろどろの膣に指を差し入れると、メイコさんの眉が顰められた。肉壁を引っ掻くと、条件反射のように食んでくる反応が卑しくていじらしいよ。  
「う、あぅ……っ、ひぃん!」  
抵抗するように捩じる腰を押さえつけてたら、膣から精液に交じってダメ押しとばかりにぴゅっと少量の潮まで噴き出してきて驚いた。どんだけ敏感なんだろう。  
改めて思う。このままお終いなどもったいない。僕の指に絡みつくココだって、もっと可愛がりたいのが本音。  
でも、流石に今すぐ勃起はムリなんで、風呂でいちゃいちゃしながら勃起させてもう一回。  
メイコさんは首を傾げて、僕の髪に指を絡めそっと梳いた。  
「…………私も、もっとしたい」  
「はい」  
「会えなかった分を埋めて欲しいし、私にしか勃起しないようにカイト君をめちゃめちゃにしたい」  
陶然としていて柔らかい口調だけど、すごいことを言ってのけるメイコさんについ苦笑が漏れた。宣言通り、とことん本気なんだよなぁ。  
「……それでね、終わったら」  
「うん?」  
ちょっとだけ言いにくそうに躊躇し、彷徨った瞳が上目遣いに僕を覗き込む。  
 
「……寝るとき、ぎゅってしてくれる……?」   
 
うぁぁぁああ。なんで? なんでセックスの話ししてたのに、こんな可愛らしいこと言い出すんだこのひと――――!!!!  
「も、もちろん!」  
若干噛みつつ勢い込こむ僕の首に、しなやかな腕がするりと絡みつき引き寄せられる。  
「あとね、カイト君はヘタじゃないよ?」  
下半身が即時に臨戦態勢に突入するような犯罪級の声音が耳元を擽り悶絶した。撃沈してメイコさんの肩から顔を上げられない僕の耳に、「おフロ行かないの?」と暢気な声が聴こえた。  
 
「メイコさん! こっちです!」  
繁華街のある街の駅前で改札を凝視していた僕は、待ち合わせ時間五分前に現れたメイコさんに大きく手を振った。  
「早いねカイト君。待たせちゃった?」  
「僕が早く来ただけですから! 早く行きましょう」  
逸る気持ちを抑えきれない僕の様子に、メイコさんは困ったように笑う。  
「そんなに急がなくても、お店は逃げたりしないよ?」  
「そうですけど! でも選ぶ時間とかあるし!」  
しょうがないなあと肩を竦め、走り出しそうな僕をいなすように笑う。僕らは肩を並べて街中へ歩き出した。  
あの後、アパートに帰った僕を心配そうな顔で出迎えたアカイトにことの成り行きを報告すると、爆発しろ! と、叫びながら頭をぶっ叩かれた。  
てっきり玉砕しに行ったと思いきや帰ってこないし、もしかして帰り道でヘンな気を起こしていないかとやきもきしながら待っていれば、本人はまさかの一発逆転で戻ってきたのだ。  
しかもにたにた笑いながらの朝帰り。アカイトにしてみれば殴りたくもなるだろう。  
しかしその後、おめでとサン。と吐き捨てるように呟き、夜はアンさんも呼んでアカイトが祝宴を開いてくれた。  
そして今日、晴れて彼氏彼女になってから初めてのデート。昼間っから待ち合わせをした目的はただ一つ。  
「メイコさんはどんなデザインがいいですか? 色白だから石とかあった方がやっぱ映えるかなー……」  
指輪を買いたいのだ。主に僕が。付き合うことになって最初に考えたことだった。  
早速指輪とか、ちょっと重たいかなと思ったけど、メイコさんが僕だけとセックスするようになってからも、ちょっかいだしてくる輩がいるということを聴いて、指輪買いましょう! と鼻息荒く懇願したのだ。  
メイコさん自身は、男にそういう目で見られるのは自分の今までの行いのせい。仕方ないよって笑うけど、僕は面白くない。男の影がチラつけば、少しぐらい抑止力になると思うのだ。  
なにより、メイコさんに彼氏っぽいことしたいというのもある。……まあ、あれだ。指輪なんて結局のところ独占欲なんだよなー。あるいは猫の鈴的ななにか。  
それにしても女の人が好む指輪ってどんなのだろ? 綺麗な石とかついてたら値段もお高いんだろうしね。最近は仕事が増えたし、多少お高くてもがんばれば届く……かな?  
厳しかったら生活を切り詰めればいいし、なんて頭の中でそろばんを弾く。  
「別に石とかいらないよ。シンプルな方がカイト君も普段使いがしやすいでしょ?」  
「え?」  
「だって、指輪は二人でお揃いにするから意味があるんだよ。一緒につけてくれるんだよね? だから買う時は折半だよ」  
ふふ。と穏やかにメイコさんが笑う。そ、そっか。同じデザインのをお互いに持つモンなんだ……。  
僕らが付き合うようになって、何か変わったかといえば表立ってはなんにも変化はない。元々アカイトに誤解されるほどしょっちゅうデートしたり、互いの家に泊っていたのだ。  
しかし、充実度は格段に違う。メイコさんを繋ぎとめるため、焦って次の約束を取り付ける必要はなくなったし、男の気配にアンテナを張り巡らせることもなく、何より気持ちに余裕ができた。  
仕事の方は……僕はともかく、メイコさんは歌もPVも実質エロ系専門だ。それを今更エロなし通常モードに変更するわけにはいかない。  
恋愛ひとつで路線変更とか、周りに迷惑がかかりすぎる。エロ系は特に歌い手が少ないし、メイコさんの仕事に僕が口出しするのはお門違いというもの。  
正直、肌の露出過多な仕事に思うところがないワケじゃないけど、そもそも知り合ったのもエロ仕事なのだ。  
メイコさんに好かれているっていう実感があるから、浮気の心配とかはしてない。それだけで、もの凄い安心感。  
むしろあのナイスバディなエロいお姉さんを独占して満足させているのは僕だよっていう優越感に、鷹揚に構えていられた。  
それはセックスにも影響し、やっていることは前と同じでもメイコさんの「相手を気持ちよくさせたい」っていう気持ちの質が違っている。  
愉しむ中にも、「気持ちよくなるための、挿げ替えの利く男」じゃなく「彼氏との愛情交歓」として認識してるっていうか。上手く言えないけど。  
 
「私も付き合って欲しい所あるんだけど」  
「あ、はい。いいですよー。どこです?」  
「ランジェリーショップ」  
人の悪い笑みを浮かべるメイコさんは、息を飲んでうっかり黙ってしまった僕に尚も挑むように言葉を重ねた。  
「新しいの買いたいんだけど、せっかくだからカイト君が悦ぶのがいいかなーって思って。一緒に選んでくれる?」  
「……ちょっと僕にはハードル高すぎやしませんかね……」  
ていうか、羞恥プレイなの? ああいうお店は女性の聖域じゃないのかなー?  
だがしかし。僕の好きになったメイコさんは、規格外にいやらしくてセックスが好きなヒトなのだ。共に愉しむためなら他人の「しっ、見てはいけません」的な視線もヒソヒソ話も意に介さないってカンジなんだろう。  
カイト君が選ぶのならどんなのでも着るよ? って甘え声でダメ押し。  
「――わっかりましたよ! 行きます! 指輪の次は下着ですね!」  
赤くなった顔を隠したくて、メイコさんの手を取って前を歩く。恥ずかしいけど、何でも着てくれるってことは今日の夜遅くなっても大丈夫ってことだよね?  
だったら徹底的に吟味して、スケスケとか穴が空いてるのとか、とびっきりヤらしいの着てもらおうじゃないか!  
あーでも、そういうのって女性の行くショップで売ってるもんなのかな?  
「下着って、普通のショップで買うんですか? アダルトショップとかも回ってみます? …………メイコさん?」  
返事がない。訝んだ僕は顔だけ振り向いた。  
…………メイコさん、俯いてる。髪から覗く耳の先が赤い。  
「どうかしました……?」  
足を止め、屈んでそーっと顔を覗き込むと、白い頬を紅潮させて視線をメイコさんは視線を泳がせていた。  
「だ……って、いきなり、手とか……」  
「へ?」  
「手、繋ぐから……」  
消え入りそうな声で、つっかえながらもごもご口を動かす。  
エロいおねえさんがデレた…………!  
メイコさん、ひょっとして手を繋ぐのも初めて?  
そういえば、二人で遊びに行っていた時も手は繋がなかったか。いやそんなことより、なんだこの破壊的な可愛らしさは! 目眩にふらつきそうな足に慌てて力を入れた。  
男性経験が人並み外れて多くても、好きって言われることは皆無だったんだよね。  
異性を好きになって、「恋愛」することは僕が初めてだから。  
こんなメイコさんの姿、付き合うようになって度々見せてくれるようになった。  
ベッドの上では妖艶に僕を誘って腰を振るのに。今だってエロ下着の話ししてたのに。  
それなのにだよ! ヤってる時は「好き」の一言で何度も登り詰めて、道端で手を握っただけで動揺するとか。淫乱さと純情さのギャップがとんでもなく激し過ぎて堪らない。  
「このまんまで歩きましょうか」  
眉を下げて赤い顔のまま困った顔で僕を見上げ、メイコさんがこくんと頷く。  
好きになったのは、僕の方が先。  
セックスはまだまだメイコさんに敵わないけど、恋愛なら僕の方に分があるかな?  
 
未だ顔を上げられないメイコさんを眺めながら、僕はこっそり微笑んだ。  
 
 
おしまい  
 

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