疲れた身体を、引きずるようにして家路を急いだ。  
漸くたどり着いたボロアパートの扉の前で、暫し躊躇う。  
それも、一瞬のこと。  
鍵を開けると、オズオズとドアを開いた。  
 
「……ただい、キャッ!?」  
ベチャ!  
部屋に入るやいなや、飛んできたバナナの皮が、頭にあたる。  
痛みは無かったが、驚きにヘタリ込んだ。  
 
「おせーよ。ハク姉」  
「ご、ごめんなさい。レンくん。  
収録が押して……」  
「ヘッ、売れっ子ダンサーは、忙しくて結構だね。  
ダメPなんて止めちゃえば」  
 
整った少年の顔を歪め、毒を吐くレン。  
何も言い返せないハクは、玄関に座り込んだまま、顔を俯かせるのみ。  
 
「ほら、いつまでサボってんの。  
サッサとしてよ」  
ギュッ  
「アクッ!」  
ハクの、大きな胸を支えるシャツの頂点に、微かに浮いた膨らみ。  
レンは 敏感なソコを容赦無くつまみ上げ、ハクを引き摺り起こした。  
 
「アアッ!止めてレンくん。  
イタイッ!!」  
「じゃあサッサと動けよ。  
俺、ハラ減ってんだから」  
ハクの懇願を聞き流し、レンは台所まで連行する。  
胸までもないぐらいの少年に、それでも従順に付き従うハク。  
 
ピッ  
「アウッ」  
摘まんだ乳首を一気に引かれた。  
激痛と引き換えに、少年の指から解放される。  
胸を抑え、苦痛に耐えるハクを気にもせず  
「ホラッ、サッサと飯作れよ」  
と、催促した。  
 
ボーカロイドである少年には、家事は出来ない。  
歌うこと、踊ること以外、全てブロックされているから。  
しかし……  
 
「退屈だな。  
パンツ下ろせよ」  
 
ビクッ。  
セカセカと調理するハクに、レンの無情な命令が下った。  
躊躇うハク。  
 
パンッ  
「アッ!?」  
「は・や・く」  
ハクの豊かな尻に、容赦ない懲擲を加える。  
 
逆らえない。  
苦痛と恥辱に震えながら、ハクはノロノロと、パンツを引き下ろした。  
ダンスで鍛えられた張りを保ちながら、大人のボリュームを持つ、魅力的な尻が露になる。  
下着は着けていない。  
全て、レンの指示だ。  
 
「ほら、続き。  
俺、腹減ってんだから」  
 
椅子に後ろ向きに腰掛け、背もたれに腕を組み、顎を乗せる。  
その位置は、ちょうどハクの尻の高さ。  
レンの視線を感じながら、それを忘れようとするかのように、ハクは手を動かす。  
 
クチッ……  
ビクッ  
「アレ、ハク姉。  
それナニ」  
目敏く見つけ、意地の悪い指摘をする。  
ハクのソコから蜜が溢れ、内股を濡らしていた。  
恥辱に、身を竦めるハク。  
「なに、飯作りながらオモラシしちゃったの。  
汚いなぁ」  
 
ピチャッ  
「ヒイッ」  
レンは手を伸ばし、ハクの内股を、蜜をなぞるように撫で上げる。  
「ハク姉の脚、綺麗だよね  
この脚で何人、男をたぶらかしたの」  
「アッ、アアッ……」  
 
ズブッ!  
「ヒイッ!?」  
「答えて」  
「イヤッ、ソ……コ、お尻……  
ダメェ……」  
自らの潤滑液で濡れた指を、引き締まったアナルに押し込まれた。  
 
「ヤ、ヤメテ。レンくぅん。  
お……願い」  
「じゃあ早く答えて」  
 
グチグチ……  
年上のマスターを、容赦なく攻めたてるレン。  
もはや指は二本に増え、舌はその周りの深いシワを刺激している。  
 
「レンくん!  
レンくんだけですぅ  
私はレンくんに、処女を捧げましたぁ!!」  
 
毎回のように、言わされる台詞。  
奥手で人見知りのハクは、二十歳過ぎても、経験が無かった。  
潰れたプロダクションから、ギャラ代わりに引き取った、ボーカロイドの少年に捧げるまで……  
 
歌手として一向に芽が出なかったが、ダンサーとしての才能を見いだされたハク。  
せめてもの代わりと、前から欲していたボーカロイドを手に入れた。  
違法プログラムをインストールされているとも知らずに……  
 
レンは、プロダクションで接待用に飼われていたようだ。  
ボーカロイドエンジンは残っていたが、バージョンアップもされないまま、  
違法のSEXプログラムに蝕まれていた。  
素人のハクにはどうしようもなく、かといって、プロに頼んだら、良くて再インストール。  
悪くすれば、処分されてしまう。  
そんなことは、ハクには耐えられなかった。  
 
初めてこの子と会った時のことを忘れられない。  
薄暗い部屋の中、沈んだ目で膝を抱えていた。  
ノースリーブのセーラー服に、大きめのキャロット。  
うつむいた頭に、薄汚れた大きなリボン。  
入っていったこちらの方も見ずに、何かを呟いている。  
 
……♪、…………♪♪……、♪……  
 
途切れ途切れに聴こえるのは、初期インストールの歌。  
それすらも狂ってしまっている調声で、ブツブツと繰り返し、歌い続けていた。  
 
『……私だ』  
昔の、いや、今だって……  
多少は認められるようになったが、歌の仕事に未練を残している。  
ダンスや、他の仕事が増えていく程に、夢だった歌手としての仕事は遠退いていった。  
不満を打ち消すため、酒に逃げる毎日。  
一人、グズグズと愚痴をこぼしながら……  
 
ギュッ  
ハクは思わず、その子を抱きしめていた。  
 
「誰?」  
「私はハク。  
良かったら、家に来てくれるかな」  
「するの?」  
「えっ?」  
「別にいいよ。  
でも、少しで良いから、歌わせて……」  
少しだけ上げた頭に、淋しげにリボンが揺れる。  
抱き締めるハクの腕に、いっそう力が入った。  
 
 
委譲の手続きと登録を済ませ、家に連れ帰る。  
「お風呂入ろっか」  
倒産のどさくさで、ほったらかしにされていたようで、その愛らしい体も、汚れきっていた。  
風呂を沸かす間に、洗い場でリボンを外し、服を脱がしてあげる。  
 
「アラ……」  
下着を着けていなかったので、平らな胸が、露になった。  
『まあ、いいか』  
遠慮すると、かえって変な気分になる。  
「一緒に入ろ」  
人見知りのハクにしては、思いきった気分でシャツを脱いだ。  
先に脱いでしまった方が、気づかいが無いだろうと、パンツと下着も取る。  
しかし……  
 
「エッ?あなた……」  
膝をつき、脱がせたキャロットを手に、固まるハク。  
 
「マスターがキレイだから……」  
感情のこもらない、うわべだけのセリフ。  
しかし、動揺したハクの耳には入らない。  
下着を着けてないその子の股間に、見慣れないモノがそそり立っていたのだ。  
 
「キミ、『リン』じゃ……」  
「レンだよ。  
だから、この格好してるんだ」  
 
『どう言うこと?  
レン?  
男の子?  
そんな……』  
 
トレードマークの大きなリボンを着けた姿は、間違いなくリンだった。  
髪型だって、服装だって……  
逆に言えば、ソレくらいしか、見分けるポイントはない。  
無論、街で見る彼らは、各々男の子、女の子の個性を発揮し、むしろ、全く違ってみえる。  
しかし、純粋に顔立ち、体格だけみると、二人は区別つかないくらい似ているのだ。  
ハクが、その服装から、『リン』と判断していたのも、やむを得ない。  
混乱するハク。  
その頭を、更に真っ白にされる。  
 
クチュ……  
突然、唇を奪われ、押し倒された。  
「……ンムッ?」  
「ご奉仕するよ。マスター」  
 
ハクの大きな胸を、レンの手がわしづかむ。  
 
「ン、ンンッ!?」  
初めて受ける、巧みな愛撫。  
制止を掛けようにも、口は塞がれ声が出せない。  
 
『なんで?  
ボーカロイドなのに』  
通常、ボーカロイドには、多くのリミッターが掛けられている。  
性行為は最たる物で、即座に機能停止する。  
だからこそ、違法ソフトがはびこるのだが……  
 
そんなことは知らないハクは、戸惑いと驚きに硬直したまま、蹂躙されていく。  
レンは淡々と、しかし巧みに、ハクを追い詰めていった  
強く、時には弱く、その大きな胸に与えられる刺激。  
山の麓から丹念になぞられ、ジワジワと山頂まで征服されていく。  
 
レンの手技に焦らされ、息も絶え絶えのハク。  
その頂点は、充血し、尖りきっていた。  
やっと、解放された口も、喘ぎ声を洩らすのみ。  
 
ツツーー……  
淫らに唾液の糸を引きながら、レンの舌は、任務を変更し山頂を攻略する。  
 
チュプッ。  
「ヒィッ!?」  
剥き出しの神経を侵された、ハクが叫ぶ。  
白い肌の先、鮮やかな色彩の赤。  
新雪を頂いた巨峰の頂上に覗く、熱いマグマの塊。  
 
レンはアタックを続けた。  
 
チュクッ、ピチャッ……  
「アクッ!クハァッ!」  
 
慣れきった、巧みな舌使い。  
唇、齒も動員される。  
甘く吸い上げ、鋭く噛みつき、ネットリと擽る。  
 
口だけでは無い。  
もうひとつの頂点は、繊細な指の餌食になっていた。  
クニクニと摘ままれ、弄ばれる。  
固い爪で、表面を擦られる。  
時には、強くつねられる……  
 
さらに、ハクの豊かな乳房も、レンの手によって、執拗に揉まれ続けていた。  
蕩けるように柔らかいソレに、細い指が溶け込む。  
脇に近い辺りを擽り、鎖骨の窪みを指が這う。  
あらゆる指技で、翻弄していった。  
 
「ハアッ、ヒアッ……」  
熱い吐息と、甘い喘ぎを洩らすハク。  
もはや、抵抗の意思すら維持出来ない。  
むしろ、逃がさないかのように、レンの頭をかき抱く。  
すべての感覚が胸に集まり、膨れ上がる快楽の波に、ただ流される。  
レンは容赦無く、ハクを追い込んでいった。  
 
カリッ  
「アアッ〜〜〜……」  
止めとばかり、熱い乳首に歯を当てるレン。  
硬く強い刺激に、ハクは絶叫と共に達していった……  
 
 
 
……グイッ。  
意識を飛ばしていたハクが、下半身への刺激に目を覚ます。  
股の間に座ったレンが、ハクの両脚を開き、その肩に担ぎ上げていた。  
そして、剥き出しの股間に、身体に見合わない、長大なモノを当てる。  
 
「イヤ!?ダメッ  
ヤメテェ〜〜〜!」  
気づいたハクが、パニックを起こし叫ぶと、レンは心配そうに訊ねる。  
 
「マスター。  
俺のことキライか……」  
こんなことに手慣れた少年が、見捨てられた子犬のように、縋り付く眼差しで見つめてきた。  
余りに寂しげな様子に、ハクは状況を忘れ、慌てて答える。  
「そっ、そんなことないよ。  
私は本当に、キミに来てほしかったの。」  
 
嘘ではない。  
確かに、最初から男の子『レン』と判っていたら、遠慮したと思う。  
だけど、ハクは選んだ。  
この子を……  
 
不要とされ、放棄されかけていたボーカロイドに、自分の姿を重ねた。  
同情も憐憫もあったが、何よりこの子を救いたかった。  
いや、この子に重ねた、自分を……  
 
パァッ!  
「じゃあ、俺で良いんだな!」  
クルリと変わる表情。  
少年らしい、晴れやかな笑顔。  
思わず見とれるハク。  
 
ニュクッ……  
「エッ!?」  
入っていた。  
すんなりと……  
 
「マスター。  
マスターの中、気持ちいいよ」  
 
グイッ。  
レンが腰を使う。  
「イタッ!」  
痛みは、後から追いかけて来た。  
「あれ、強くし過ぎた?」  
意外そうに、レンが訊ねる。  
「マスターのココ。  
とっても良い締まりだけど、グチョグチョに濡れてたから、大丈夫だと思ったのに……」  
無邪気に首を傾げた。  
 
「わ、私、初めて……」  
絶え絶えの息の中、ハクは告げる。  
まだまだ小柄な少年に、まるで許しを乞うかのように……  
 
一瞬、驚いた顔を見せたレンだが  
「そうなんだ!」  
その表情が、いっそう輝いた  
そして……  
 
チュッ  
「ンッ!?」  
またも、ハクの唇を奪う。  
しかし、最初の、愛撫の為のキスとは違った。  
それは歓喜の、爆発的な喜びの感情の顕れだ。  
 
チュッ、チュウッ……  
 
ついばむようなキスから、想いが伝わっていく。  
いつしかハクからも、迎え入れていた。  
 
「マスターは俺のものだ」  
長いキスの合間、レンが告げる。  
「俺はマスターのものだけど、もうマスター、……ハクだって俺だけのものだ。  
俺が、棄てられたって、譲られたって、壊されたって、もういい。  
ハクは俺が、ハクにしたんだから。  
ハクは、もう俺のものなんだから……」  
 
レンは笑っていた。  
とても嬉しそうに、笑っていた。  
涙を流しながら、とても嬉しそうに、笑い続けていた。  
 
 
小柄なレンが、ハクにキスするためには、かなり伸び上がる必要がある。  
ハクの身体も、押し曲げられた  
そして……  
 
ズクッ!  
必然的に、レン自身が、深くハクに潜り込む。  
肉にえぐられ、腹の中を突き上げられる感触。  
確かに、苦痛はあった。  
だが、それ以上の快感に、ハクは酔いしれる。  
 
求められる幸福。  
失望と挫折を繰り返した、信じられない自分。  
そんな自分を、ここまで欲してくれる人がいる。  
ボーカロイドだって構わない。  
いや、ボーカロイドだからこそ、裏切ったりしないだろう。  
浅ましい思考を恥じながら、ハクは、行為にのめり込んでいった。  
 
クチュ、クチュ……  
痛みは既に無い。  
元々、20歳過ぎのダンサーだ。  
膜が残っていたことが、奇跡に近い。  
ハクは、全身でレンを受け止める。  
レンも、技巧を忘れたかのように、がむしゃらに腰を振り続けた……  
 
 
 
「アクッ、アクッ……」  
ハクの喘ぎが、狭いバスルームに響く。  
レンの抽出に、押し出されるかのように、淫声が漏れた。  
数え切れないほど、ハクは達した。  
同じように、レンも吐き出したが、ハクの中から出ることは無い。  
意識を保てなくなったハクに、それでも腰を使いながら、話かける。  
 
「歌え無いんだ。歌いたいのに。  
どうしても、声が安定しない」  
「こんなことにだけ、自由に身体が動く。  
歌うよりも、ずっと楽に……」  
「『レン』なら、男にも女にも、両方使えるからね。  
あの格好は、ストレートの男用の配慮だって」  
「たくさんしたよ。  
入れるのも、入れられるのも。  
飲んだり、縛られたり、打たれたり、焼かれたり……」  
巧みに腰を使いながら、淡々と告げるレン。  
その声は、もうハクには届いていなかったが……  
 
こうして、ハクとレンは、深く結び付いたのだった。  
 
 
以来、レンは、レンとしてのパーソナリティーを、発揮するようになった。  
甘え、笑い、楽しく遊ぶ。  
ワガママをいい、イタズラを重ね、癇癪をおこす。  
無邪気な子供の性格。  
 
だが、それに、悪質な性魔のプログラムが影響を及ぼした。  
感情が高まると、レンは身体を欲する。  
全てを、一身に受け止めるハク。  
それが、嫌では無いことを恥じながら……  
 
 
続  
 

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