ヒドイ恰好だ。  
でんぐり返しを、途中で止めた姿。  
逆さになり、脚を広げて、股間を天に突き上げて……。  
まんぐり返しなんて、ゲスな呼び方を思い出した。  
ダンスで柔軟性を得た身体にも、辛い姿勢。  
でも、本当に辛いのは……。  
 
クチュクチュ……。  
「アッ、アアッ!」  
五人掛かりで、なぶられる。  
レンくん達の手がウネウネと、身体中を好き放題はい回った。  
背中やお腹、胸やお尻、頬に首筋、性器と排泄孔など……。  
 
「ア、アヒィ!」  
くじる。  
捩込む。  
広げる。  
くすぐる。  
内臓をえぐられるように、快楽を引き出ずりだされていった。  
十本の手と五つの視線が、私の雌に突き刺さる。  
それとは離れたところで、その不様な様子を写す、彼の虚ろな瞳。  
それこそ私の魂を、羞恥で焼きつくすく光だ。  
 
『違うの、レンくん。  
レンくんだから、こんなに……』  
レンくんになぶられ喘ぐ私を、ジッと見つめるレンくん。  
そんな葛藤を気にも留めず、レンくん達は執拗に弄り廻す。  
 
「うわっ!ドロドロだよ」  
「いくらでも拡がるのに、小指一本でも締め付けてくる」  
「コッチもすごいや  
それに、いつでもキレイにしてるみたい」  
「ソコ、好きだからな」  
「ハク姉は、ホントいやらしいよな……」  
楽しそうに、罵りの声をかけるレンくん。  
 
グチュグチュ。  
ツプツプ。  
サリサリ。  
ピチャピチャ……。  
 
もはや、何処をなぶられているのかも判らない。  
全身をまさぐる手と指と舌。  
逆さまに固定された身体は、自分でも、箇所の把握が出来なくなった。  
ただ、快楽の塊が、剥き出しの神経の上をはい回る……。  
 
高まり過ぎた快感は、すでに苦痛の域に達した。  
後は爆発を待つのみという所で、示し合わせたように、離れていくレンくん。  
 
「ど、どうして……」  
「一人で気持ち良くなってちゃダメだよ」  
「ほら、ハク姉。立って」  
「そのエロい身体、もっと見せてよ」  
「ほら、早く早く」  
熱く疼く身体を持て余す私をはぐらかすように、次の命令を下す。  
トロけそうな頭で従い、フラフラと立ち上がった。  
「足、もうチョッと開いて」  
従う。  
「両手を頭の上に組んで」  
従う。  
「動いちゃ駄目だよ」  
従う……。  
 
五人と一人のレンくんに、淫らな身体を晒した。  
 
「いやらしいなぁ。ハク姉は」  
「仕方ないよ。こんなことしている変態だもん」  
両手を上げ晒された、脇の下を凝視される。  
「……!イヤッ」  
私は、必死に隠そうとするが、レンくんによって阻止された。  
「ほら、下ろさない」  
「ウワッ!エロッ」  
「薄いから目立たないって言ってもねえ」  
「ちゃんと手入れしないと」  
「誘ってるんじゃない?」  
「ハク姉、エロいから……」  
「ヒドイ!レンくんがそうしろって……」  
先日、レンくんの気まぐれで、生やすことを命令された。  
泣いて許しを乞うたが、聴き入れて貰えず、みっともない姿に……。  
ノースリーブの服は着れなくなり、着替えでもシャワーでも苦労するようになった。  
 
「ウァアア……」  
涙ぐむ私に構わず、レンくんは私を辱める。  
「いやらしいよね。  
いっそ、晒して歩いたら」  
「なんか臭いも篭りそうだし」  
「ひきちぎってあげようか。  
もう、生えないように」  
「コッチも白いんだ。  
下とお揃いだね」  
私の恥ずかしい毛を、摘んだり、嗅いだり、引っ張ったり……。  
本当は、レンくんは私が嫌いなんだろうか。  
恐ろしい発想が、頭をよぎる。  
 
そんな私に構わず、レンくんは次の指令を出した。  
「棒立ちじゃつまらないよ」  
ちょっと踊って」  
「ほら、ウマウマとか」  
「ロイツマは?」  
「意味ネェじゃん」  
「いや、あれがいいよ」  
 
側に置いていたギターを、レンくんがかき鳴らした。  
歌の代わりにと、少し前から教えていたが……。  
 
「え、これ……」  
「♪もしも私の命、愛し愛されて、抱いて抱かれて……」  
この曲って……。  
昔のアニメの挿入歌。  
それの振り付けは……。  
「…………!?」  
気が付き、目で許しを乞うが、レンくん達はいつも通り、楽しそうな表情で促す。  
 
「ウウッ……」  
零れそうな涙を堪え、私は軽くステップを踏み、腰を揺らし始めた。  
アラブ風のメロディーに合わせたベリーダンス。  
少し前、プロモーションビデオの仕事で踊ることになった。  
レンくんが知ったら、怒りそうだとは思っていたけど……。  
衣装を着けていてもセクシー過ぎるダンスを全裸で、しかもレンくんに見られながら踊る。  
羞恥に、気が狂いそうだ。  
 
しかし、一メロの後、間奏が終わり二メロに入ると……。  
「「「「「♪今日もまた夕暮れ。西の空を染めて……」」」」」  
レンくん達が、声を合わせる。  
奇麗な合唱になった。  
「レンくん……」  
歌えなかったレンくん。  
苦しんでいたレンくん。  
歌うために生まれたのに、歌うことが出来なくなっていたレンくんが……。  
皆、見事にメロディーを合わせ、パートを分け、素晴らしいアンサンブルを醸し出す。  
そのハーモニーに酔いしれた。  
自分がどのような姿をしているかも忘れ、リズムに合わせユルユルと踊る。  
焼け付く様なレンくん達の視線を浴びながら……。  
 
夢の様な時間が流れていった。  
レンくん達の美しい歌声に合わせ、ゆるやかに踊る。  
その姿を、レンくん達は熱く見守ってくれている。  
全てが一体化した空間に、私はただ陶酔した。  
 
「「「「「♪ラララ、ララララ、ラララ……」」」」」  
 
最後の調べに合わせてステップを踏み終えると、たまらず私は、レンくん達に飛びついた。  
みんな纏めて抱きしめ、胸元に押さえ込む。  
 
「歌えたね。レンくん。  
良かったね。良かったね……」  
ポロポロと涙が零れるが、私にしては珍しい、明るい涙だった。  
たくさんのレンくんに抱き着き、キスの雨を降らせる。  
凄まじくハイになっている自分を、完全に持て余していた。  
 
「大好きだよ、レンくん。  
私、レンくんのこと、大好きだよ」  
取り敢えず、目の前のレンくんを捕まえて、ディープなキスを捩込む。  
「……ムウッ、ムウッ!!」  
手をバタつかせて逃げようとするが、そうはいかない。  
私、結構、力があるんだ。  
……ていうか、レンくんがちっちゃいだけかも知れないけど。  
とにかく頭を押さえ付け、唇を吸い続ける。  
観念したか、ジタバタからピクピクに抵抗が弱まった。  
 
「ちょっ……、ハク姉!  
ソイツ、死んじゃう!!  
ブレイク、ブレイク!」  
慌てて引きはがそうとするレンくん。  
次の獲物は決まった。  
 
ムギュ。  
「ウワァ!?」  
「ゴメンね、ほっといて。  
レンくんもオッパイ欲しいよね」  
力一杯抱きしめる。  
胸の内に、スッポリ埋もれるレンくん。  
「ウ?ム、ウ?ム……」  
「「「ちょっと、ハク姉ったら!落ち着いて」」」  
「大丈夫、レンくんも気持ち良くしてあげる」  
 
パクっ。  
「ウヲッ!?」  
ギュムッ。  
「ヒャアッ!」  
お口と手の平に、レンくんを捕らえた。  
「いっぱいしてあげる」  
「「「「「ウワァ???…………」」」」」  
 
………………。  
…………。  
……。  
 
……ゼィゼィ。  
息の荒いレンくん達。  
悪戯好きな彼等に、捕まっちゃた。  
モウ、乱暴なんだから。  
押さえ付けられて、自分の髪で、後ろ手に縛られている。  
「ネッ、解いて、レンくん。  
そしたら、いっぱいご褒美あげるから」  
お願いするが、いぢわるなレンくん達は、遠巻きに見ているだけ。  
 
イイもん。  
ならば、行動あるのみ。  
少し離れたところで寝転んでいるレンくんに、狙いを定めた。  
誰も拘束を解いてくれないから、バランスをとるのが難しい。  
フラフラよろけながら、歩を進めた。  
熱い視線が集まるお尻を、サービスでちょっと振ってみる。  
それでも、レンくんは寄って来ない。  
ほんと、いぢわる。  
 
一人だけ逃げない、レンくんのもとにたどり着いた。  
何故か、服を着たままだから、剥ぎ取る作業に移る。  
お手々は使えないから、お口で……。  
寝転んだまま、協力してくれないレンくん。  
でも、何とかなるものだ。  
ボタンを外し、ファスナーを下ろす。  
可愛いブリーフを引き下げると、もっと可愛いレンくんが顔を出した。  
まだ、愛らしい姿だけと、毎日これで私をいぢめる。  
 
チュッ。  
手加減してね。  
想いを込めて、奉仕を始めた。  
 
チュッ、クチュ……。  
レンくんの気持ち良いところはわかっている。  
余り責められるのを、好まない所だ。  
小さいときは被っている皮の先っちょ。  
唇で挟みながら、舌先で剥がしていく。  
キツイ男の子の臭い。  
でも、なぜか嗅ぎたくなる。  
鼻面を当て、グリグリ刺激。  
その間、舌は棒を味わった。  
ムクムク成長し、頭が衣を脱ぎ捨てる。  
感じてくれているようだ。  
私も……。  
 
身体の芯が、ジンジン疼いた。  
不安定な姿勢を支える胸を、床に擦りつける。  
グイグイと押し付けたり、先っぽだけ、床をなぞったり……。  
ちょっともどかしい。  
いつも飛び付いて来るレンくんが、今は離れて見てるだけ。  
濡れそぼって、スウスウするお尻を、誘うように振ってみる。  
 
クパァ。  
四つん這いのまま、思い切り股を開くと、ほてったアソコは受け入れを待ちかね、大きく口を開けた。  
トロトロと、オツユが内股を伝うのがわかる。  
 
ゴクリ……。  
鋭く視線が突き刺さるのを感じるが、いぢわるなレンくんは、私に触れてくれない。  
 
イイよ?だ。  
いぢわるなレンくんなんて、キライだよ。  
 
ヌチュ。  
「ハァン!」  
自分で育てたレンくんを、下の口でくわえ込む。  
『気持ちイイよぉ』  
寝転んだままのレンくんにまたがり、小刻みに身体を揺さぶった。  
「大好き!レンくん大好きぃ?」  
 
いっしょにいてくれるレンくん。  
私とご飯を食べてくれるレンくん。  
抱いてくれるレンくん。  
わがまま言ってくれるレンくん。  
私をいぢめてくれるレンくん。  
支配してくれるレンくん。  
 
カケラも自信がない私。  
レンくんがいるから、自分になれるのだ。  
 
「「「「「ハク姉っ!」」」」」  
「キャッ!?」  
組み敷いたレンくんに夢中になっていたら、いつの間にか、他のレンくんが集まって来てた。  
皆、アソコをビンビンにオッキさせて……。  
可愛いなぁ。  
 
パクッ。  
手近な一本をお口で愛でるけど、後が続かない。  
後ろ手に縛られてるから。  
「ネッ、レンくん、解いて。  
ハクお姉さんが、一杯愛してあげるから」  
丁寧にお願いするも、レンくん達は顔を見合わせるだけ。  
結局、誰も解いてくれない。  
 
「アアン!レンくん、レンくぅん!!」  
ヤッパリ責める方が、お好きなようだ。  
各自、オチンチンで攻撃を始める。  
お口では協力出来る。  
嘗めるだけなら、順番に。  
くわえるのは、二本が限界。  
頬が膨れて、不細工になっちゃう。  
ただでさえ、たいして綺麗じゃないのに……。  
悔しいから、二本をすり合わせるように刺激した。  
レンくんなんか、レンくんで気持ち良くなっちゃえ。  
 
オッパイを突くレンくんもいる。  
縦に突き立てても埋もれちゃってた。  
大きすぎるソコは、好きになれなかった。  
重いし、動きにくいし、ゆれると痛いし、ジロジロ見られるし……。  
でも、今は良かった。  
好きだって言ってもらえるから。  
レンくんになら、オッパイ犯されるのも、気持ち良い。  
 
おヘソやお腹を突いてるレンくん。  
そんなのもイイのかな?  
変な事してると言えば、脇に突っ込んでいるレンくん。  
ニュルニュルと滑り、少しくすぐったい。  
毛がサリサリいっているのは、聞かなかった事にしよう。  
 
ちゃんと、私の手を使うレンくんもいた。  
後ろ手で、自由が効かないから、主に指で奉仕する。  
見えなくても形は覚えていた。  
袋を優しくもみながら、竿を強めに握る。  
カリや頭は丁寧に……。  
先っぽの割れ目を擽るのも効果的。  
手の内を濡らすレンくんを、口に出来ないのが勿体ない。  
 
イロイロ楽しく遊んでいるけど、ヤッパリお尻だけは恥ずかしかった。  
無駄に大きなソコに、レンくんのアソコが擦りつけられる。  
お尻のホッペを割ひらかれた。  
視線と舌が、隠すべき場所を、無慈悲に襲う。  
 
恥ずかしい。  
こんな汚い場所を……。  
違う。  
綺麗にしているのが、恥ずかしい。  
おトイレの後、念入りに洗っているのが、恥ずかしい。  
万が一にも生えないように、剃刀をあてているのが、恥ずかしい。  
指で、ほぐしているのが、恥ずかしい。  
クリームを塗り込んでいるのが、恥ずかしい。  
本当は、待ちわびているのが……。  
 
「アアッ!!」  
ソウシてタクサンのレンクンをウケイレタ……。  
 
-朝日に起こされる。  
裸のまま、レンくんを抱きしめていた。  
まだ、組み敷いたレンくんが中にいたが、割りとよくある朝。  
だけど……  
 
「オハヨ、ハク姉」  
「あ、おはよう、レンくん」  
「………………」  
「………………」  
取りあえず、挨拶を交わした後、奇妙な沈黙が続いた。  
 
昨日のこと……。  
あれは現実だったのだろうか。  
あんなコトや、あんなコトまで……。  
 
「……ハク姉、ゴメン」  
牽制しあうような沈黙の中、口火を切ったのはレンくん。  
「昨日は、調子にのりすぎた」  
「ウウン、そんなコトないよ  
私こそ……」  
慌てて謝る私。  
「エッと、昨日のレンくんは、みんなレンくんでいいんだよね?」  
大事な所を確認する。  
「ウン、今ちょっと混乱してるけど、平行した記憶が残っている  
多分、合唱用ソフトが干渉したんじゃないかと……」  
「よかったぁ」  
ヤッパリ、あれはレンくんだったんだ。  
……浮気じゃ、ないんだよね。  
 
「……で、他の奴らは?」  
「そういえば……」  
辺りを見渡しても、狭い部屋に、レンくんと二人きり。  
この子は、いろんなモノでベタベタになっている服を着ているから、ウチのレンくんに違いない。  
でも、他のレンくんは……。  
 
「ア、待って。  
メールが残ってる」  
パソコンにリンクしていたレンくんが、読み上げてくれた。  
 
「スタッフから連絡が来たので、おいとまします。  
また、お会いしたいです。  
レンくんともハク姉とも……。  
 
一同より」  
 
「………………」  
「………………」  
エッと……。  
昨日のレンくん達は、レンくんだったわけで、とは言え、他のレンくんでもあったわけ?  
少なくとも、事後の惨状は見られてしまったわけで、自分の身体が使われた事ぐらい、  
気づくわけで……。  
 
「イヤ???!!  
レンくんのバカ、バカ、バカァ!!」  
取りあえず、責任を転嫁し、レンくんに押し付ける私がいた。  
「何だよ。ハク姉だってノリノリだったクセに」  
「違うモン!  
レンくんが、レンくんだから、レンくんを……」  
我ながら、意味不明な言い訳を連呼する。  
 
「ウヮ?ン、ア???ン……」  
ショックの余り、子供のような泣きかた。  
レンくんは呆れつつも、落ち着くまでダッコし続けてくれていた。  
 
 
 
「落ち着いた」  
「……ウン、ゴメンね。レンくん」  
一通り喚くと、いつもの自己嫌悪が襲い掛かる。  
結局、悪いのは私だ。  
レンくんは一人。  
他のレンくんは、レンくんだって、レンくんではない。  
私は、レンくんと言い訳をして、他のレンくんを、沢山のレンくんを楽しみたかっただけでは……。  
 
ズンッ!  
「アンッ!?」  
急にレンくんが、突き上げてきた。  
そういえば、まだ入ったままだった。  
この状態に慣れているから……。  
「つまんないこと考えてるでしょ」  
「……!」  
図星をつかれ、絶句する。  
だって、だって私は……。  
「俺の子供、産んでくれるんだよね」  
「……!?」  
声も出せない程の驚き。  
イヤ、確かに昨日、レンくんに……。  
「身体的には、俺にしかさせなかったし、気持ち的には、皆、俺だったし、浮気じゃないよ」  
「レンく……、ウクッ!」  
それ以上、話せないように、レンくんは責めるたててきた。  
馬鹿な女の戯れ言に付き合ってくれる。  
 
人とボーカロイド。  
結ばれるはず無いのに……。  
「アンッ、レンくん。  
レンくぅん!!」  
「ハク姉!俺のハク姉!!」  
 
ビクビク……。  
 
熱い塊が、胎内に拡がる。  
多分、イヤ絶対に届かない。  
でも、いつか。  
いつか、二人の……。  
 
 
 
終  
 

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