「いくよ。ハク姉」  
「うぅ?……」  
 
毎度、逆らえない私は、せめてもの抗議の気持ちを視線に込める。  
全裸で縛られた身の上には、これぐらいしか、すべがない。  
タオルを使って、両手を後ろ手にまとめられて……。  
ユルユルなのが悔しい。  
むしろ、解けないように注意しないといけないのだ。  
 
タラッ。  
「アンッ!」  
熱い雫が垂らされた。  
なまっ白い肌の上に、黒く熱い塊。  
ドロリと滴り、肌を焼く。  
温度的には、たいしたことは無いのだろう。  
しかし、意地悪なレンくんは、敏感な所を選んで、垂らしこんでくる。  
 
「熱くない?ハク姉」  
楽しそうに、感想を求めてきた。  
熱いに決まってる。  
プイッ。  
「………………」  
せめてもの反抗を示すため、目を逸らし、無言を通した。  
 
ボタッ。  
「アウッ!」  
「大丈夫なら、遠慮しないよ」  
ささやかな反抗は裏目に出る。  
まだ熱い、鍋底の方の粘塊が、容赦無く垂らされた。  
「ヒイッ!」  
身をよじり、せめて敏感な所を避ける。  
「ホラ、ここも欲しい」  
タラッ。  
「アアッ!」  
今度は剥き出しの背中に、タップリと……。  
「ヤメテェ、レンくぅん」  
ヒィヒィ喘ぎながら、床を這いつくばるように逃げるが、所詮狭い部屋の中。  
たった数歩で追い詰められた。  
脅える私を見下ろし、楽しげに非情な命令を出す。  
 
「じゃあ、股、開いて」  
 
ニコニコ。  
邪気も悪気もない、純粋な笑顔。  
レンくんには、楽しいお遊びでしか無いのだろう。  
躊躇う私に追い撃ちをかけた。  
 
「逆らうとコレ、お尻に入れちゃうよ。  
そして、出す所を撮影して、ネットでばらまく」  
「!?」  
 
悪魔の様なコトを言い出す。  
観念した私は、自ら脚を開き、股間をさらけ出した。  
 
おぞましい格好。  
仰向けに寝転がり、縛られた後ろ手で、腰を突き出すように支える。  
膝を開き、嫌らしいソコを見せつけた。  
不健康に白い皮膚が、突然裂け、オンナがグロテスクにぬめり光っている。  
普段は情けなく、綴じきっている癖に、レンくんを前にすると、途端に緩み、涎をたらす。  
隠すべきモノが無いのは、今回の事前準備では無い。  
常に剃っているから。  
主人に媚びる為、卑しい計算を働かし、言いなりになっている。  
代償として、イヤラシイ所を隠せなくなった。  
なんの障害も無いむき身のソコに、ドロドロに熔けた熱い雫が、今、襲い掛かる。  
「アアッ??……」  
 
「こんな感じかな。  
しばらく、動かないでね」  
「ヒッ、ヒグッ……」  
散々弄ばれた挙げ句、ようやく鍋の底が尽きた。  
情けなくベソをかく私を尻目に、満足そうなレンくん。  
自ら、作品の出来を確認していた。  
散々、身を焼いた物体は、今度は冷えて固まりつつある。  
恥ずかしく敏感な場所、胸や股間はタップリと垂らされ、厚く重なっていた。  
まるで、着けさせて貰えない、下着のように……。  
 
「型がとれるまで、そのままにしてな。  
そしたらソレ、配るなりなんなり、好きなようにして良いから」  
にこやかに、でも、どこか怒ったような口調。  
 
「あ、あのレンく……、ヒャン!」  
主人におもねる奴隷の境地で、真意を聞き糺そうとするが、レンくんの舌に邪魔された。  
 
「余分な所は、綺麗にしておこうね」  
局部のモノ以外を、レンくんが拭いはじめる。  
丹念に、執拗に、丁寧に……。  
舌で舐め取り、歯で削り、唇で啄む。  
 
カリカリ。  
ピチャピチャ。  
チュウチュウ……。  
他の所だって、十分感じやすい場所なのに。  
背中や肩。  
お腹や脇。  
太ももや肘の内側。  
指先や足の裏……。  
どこだって、ジンジン疼くほど感じてしまう。  
結局はレンくんだから……。  
 
「アンッ、ハゥン……」  
「ホラッ!動かないで。  
ちゃんと、固まらなくなっちゃうよ」  
私の気も知らないで、勝手なことばかり言うレンくん。  
口の周りをベトベトに汚した、子供っぽい表情で……。  
 
「レンくん。  
チョッとこっち」  
固まるまで動けない私。  
でも、呼び寄せると、素直に来てくれた。  
 
 
 
チュッ。  
汚れを拭う、甘い甘いキス。  
こんな格好で、こんな行為をしながら。  
まるで、恋人みたいな……。  
コレからも、イジメられるのだろう。  
泣かされて、鳴かされて……。  
でもいいの。  
今はこんなにも甘く、幸せなんだから……。  
 
 
 
「うう?、胸やけする??」  
「あんなに食べるから……」  
 
ひざ枕に、頭を預けたまま呻き続けていた。  
身体に垂らしたチョコ(と私)を、たらふく平らげたレンくんが、ウンウン苦しんでいる。  
結局、全部食べちゃうんだもん。  
体に垂らした分だけでは無い。  
キリキリと勃った乳首まで、ハッキリ取れてしまった、オッパイの型も、ナニかが混ざって  
ドロドロのまま固まらなかったアソコの型も、融けたまま、奥まで入っちゃった分もみんな……。  
悪戯小僧の自業自得とは言え、それでも心配。  
 
「十個分はあったんだよ。  
レンくん、太っちゃうよ」  
プクプクのレンくんも可愛いと思うが、体には良くないだろう。  
ここはマスターとして、ビッと言い聞かせなきゃ。  
我ながら弱々しい表情を、それでも頑張って引き締めて、キツ目に叱る。  
 
少しは効果があったか。  
レンくんの表情が、微妙に変化する。  
怒ってる様な、悲しんでる様な……。  
 
ゴロリ。  
「アッ?」  
表情が定まる前にレンくんは、寝返りを打ち俯せになる。  
ソノ……、事後だったので、私はそのままな訳で……。  
今更ながらの羞恥に、うろたえ腰を引く私。  
その腰を捕まえる様に、ギュとしがみつくレンくん。  
顔を伏せたまま、私自身に刻み付けるように告げた。  
 
「チョコもハクも、全部オレのもんだ」  
「………………」  
 
ヘナヘナ。  
腰が砕け、体が前に崩れる。  
縋り付く様に、レンくんの小さな頭を抱えた。  
寄せた頭から、微かな命令が聞こえる。  
 
「他の奴には渡すな」  
「………………ハイ」  
言い聞かされてしまいました。  
 
ps  
ヤキモチ焼きの主人持ちは、義理チョコを手作りしてはいけません。  
高くついても、買ってすませましょう。  
熱い夜を、過ごすはめになります。  
 
終  
 
 

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