VOCALOIDって凄いな。バンド仲間の曲作ってる友達の家でなにやらピンクや緑の髪のアンドロイドが歌ってるのを見かけた俺は
純粋に作曲に使うボーカルシンセサイザーとしてそれが欲しかった。
しかしまあとりあえずバックコーラスとか曲の冒頭に喋らせたりといった使い方を考えていたのでそんなに金なんてかけたくなかったからとりあえず無料でUTAUとか言うのを手に入れた。
タダほど高い物はないって言うが…調整難しいんだなコレが。友人曰く割とボカロならすんなり歌える曲でも、こいつはなかなかしっかり歌わせるのに手間がかかるらしい。
それ以前に俺が扱いに慣れてないだけかもしれないが。
そんな感じで手に入れたこいつを愛してしまうなんて、俺は全く想像してなかった。
コーヒー納豆なんてモノが世の中にあるなんてコイツがいなけりゃ絶対知らなかったよ
最初はタダの喋るスピーカーか楽器ぐらいのつもりで家に置いておいてたんだが、いつしかどうしようもないくらいコイツが必要になってた。
俺が家にかえるたびにルコが嬉しそうに迎えてくれるうち、どうしようもなく愛おしくなってた。俺は今コイツと愛し合ってる…つもりでいる。はずが
ロボットと人間だからだろうか。なんかぎこちないんだよな。俺らの関係。サイボーグかアンドロイドみたいなコイツを愛するなんておかしいだろうか。
それでも今はお互いを必要としてて、俺達は仮住まいのアパートに一緒に暮らしてる。そんな感じ。
男であり女である。欲音ルコはそんじょそこらのふたなりとは違う。なんたって男9割女1割だ。しなやかな体つきのようで筋肉もそれなりに付いている。
肉体は胸と性器がまるまるついてる以外は男成分多いらしいが、かえってそれが中性的な魅力を放っていると思う。
個人的に元々ボーイッシュな女性は好みだしな。
それで、だ。どうもルコの様子がおかしい。ここ何日か忙しくてかまってやれなかったかもしれないが、数日前からは本当に見てて違和感がある。さっきから部屋のソファーで俺が煎れたコーヒー飲んでるんだが何度も組んだ足を入れ替えたり、
こっち向いて何か話そうとしては顔を真っ赤にして辞めたりとやはりどうも落ち着かない。
いつも一緒に過ごしてる俺には大体見当が付いて然るべきなんだが…
多分、というか確実に溜め込んでたな。色々と。
俺のせいだよな… 元々このVIPロイドは寂しさやら性欲を一人で解消するのが苦手なのである。公式サイト見る限り設定されている性格はデレデレのハズなんだがなかなかウチに来たルコは恥ずかしがり屋のようで。こっちから誘ってやらないとマスターに甘えられないらしい。
仕方ない。いつもなら家に帰ってきた後にそのままゆっくり相手をするのだが今週は朝帰りばかりで、今朝も疲れてそのままベッドにぶっ倒れたからなあ。
…もうどうせならダブルベッド買っちゃおうかな。黙ってても一緒に寝れるし。
とか考えながら俺は「なあ、ルコ。」と彼女(もしかしたら彼と呼ぶべきかもしれないが)の名前を呼んで隣に座る。赤と青のオッドアイが俺にゆっくり向けられる。
「あの、構ってやれてなくてごめん。やっと休みとれたんだからどっか一緒に行けばいいのかもしんねーけど疲れてて。」
こういうのって苦手だ。なんか上手く言いたいことが言えてない気がする。出かけるって何だよ。意味わかんねーよ。ロボットと俺では言葉がぎくしゃくして当然か。それでも俺の言葉には喜んでくれたようで。
ルコは「マスター…先週の日曜から全然話も出来てないし…寂しかったじゃんかコノヤロー。」
と顔を赤らめながら両手を俺の背中に回して引き寄せる。嫌われてはないよな。よかった。
コイツは俺より身長高いから抱きつかれると俺の顔は自然と胸に顔を埋めれる。幸せである。おっぱいやわらけえ。
「ごめんな。収録最近長引いてたもんな。でも今のバンドちょっとコラボでさ。あのメンバーの活動時期的にスタジオで集まれることあんまないから。仕方なくて。」
「ううん。いいよいいよ。マスターとこうしてられるだけでオレはいいの。だからオレとの時間はこれからも確保しといてよ。」
ああもうかわいい。オレっ娘萌えである。自分より背が高い、しかも男9割のコイツを愛してるだなんて、なかなか周りから理解は得られないけど、俺は決してホモじゃない。大体アンドロイドに性別なんて関係ないだろ。ルコの性別は男であり女である。中間なんだからさ。