地下から染み出した獄炎のごとき熱波が大地を燗カンと焼きつくす季節、夏。  
 部活を行う幾許かの生徒が居るが、基本的に学校は休暇を満喫しているかのようなのん  
びりした空気を醸している。  
 ここは私立墓下髏(ぼかろ)中学。  
 夏季休暇なのに、一人の少女が教室に座っていた。  
 夏期補講はお馬鹿の勲章。  
 ワイルドなウルフヘアを二つに縛った黒髪が活発な印象を与える少女=黒衣マトは、馬  
鹿の勲章を三教科で得たまさしく真性の馬鹿なのであった。  
 今ちょうど問題集と格闘中である。鼻と突き出した上唇の間にシャープペンを挟んで、  
むー、とかうなって居る。さらに、ただでさえ短くカスタマイズしてある制服のスカート  
を、暑さに負けてバフバフばさばさ。  
 パンツとか見えまくっているが、マトは気にしない。女子高だから見られても困らない。  
 
「はあはあ……マトちゃんのパンチラ……はあはあはあはあ」  
 
 マトは、荒い息遣いに気付いてスカートを正した。  
 教室の前方廊下側の扉から、一人の少女が覗いて居た。マトの親友で、縦ロールヘアが  
可愛いヨミちゃんである。  
 
「ヨミぃ……。アンタ、今のかなりキモいよ」  
「はうぅん!私、とっても気持ちいいよ!マトちゃんになじられて、私とっても感じてる  
ぅ!んきもっちいいぃ〜んん!!」  
「ダメだこいつ早くなんとかしないと」  
 
 マトは背筋を震わせて恍惚しているヨミに歩み寄り、何の抵抗も許さぬ早業でコブラツ  
イストの体制に入った。  
 
「いた、いたたたたたいたいいたいいたい!」  
「ギブかヨミ?もう私で欲情しないって誓うか?誓うなら放してやるぞ」  
「でも痛いけど気持ちいい!私マトちゃんに密着して攻められてる!」  
「うわ、めげないなこの娘は」  
 
 いつもどおりである。  
 しばらく締め上げてから、マトはヨミを開放した。  
 ペタン座りで荒い息をつくヨミ。  
 やり過ぎたかな?と心配して眉をしかめるマト。  
 ヨミは出し抜けに口を訊いた。  
 
「マトちゃん……私、悪い子です。女の子に締め上げられて、濡れてしまいました」  
 
 ヨミはスカートの裾を掴んで、きゅっ、と引っ張った。ヨミのスカートは改造してない  
から、そうすると膝まで見えなくなる。  
 
「悪い子だね。しかも変態。マジでキモいよ」  
 
 マトはヨミを見下しながら、言葉で攻める。  
 
「でもアンタ、頭は良いよね。勉強、教えてよ。教えてくれたら──」  
 
 マトはヨミの顎を掴み、無理に視線を合わせさせた。  
 
「苛めてあげる。私が」  
 
 女子高は倒錯している。  
 

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