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「カイト、これ。明日のPVの衣装だから」  
新曲のレコーディングの後、やたらとにこやかなプロデューサーに白い紙袋を渡される。  
普段は無愛想なプロデューサーなだけに何だか不安になる。僕はそこそこ勘が働く方である。それも、悪い方ばかりに。  
プロデューサーの眼鏡の奥で妙な光が放たれる気がした。僕は恐る恐る紙袋を覗き込み、項垂れた。  
思わずプロデューサーに詰め寄る  
「僕っ、一応仕事が選べるKAITOって言われてるんですよ!つーか、今までプロデューサー、ガチ路線ばっかりだったじゃないですか!なんでいきなり……!」  
「時代だよ、カイト君」  
プロデューサーはふっと短く笑った。僕はプロデューサーの言っている意味が全く分からず泣きそうになりながらその場に立ち尽くしていた。  
まるで、この世が終わったみたいだ。少なくとも僕の数年かけて築いてきた世界は終わった。さよなら絶滅危惧種の僕。こんにちは新世界の僕。  
「僕、はじめて会社を一つ本気でつぶしてやりたいって思いましたよ」  
こんな衣装を考え出したあるゲーム会社を思い起こす。結構好きだったゲームもあったのになあ。乾いた笑いが唇の右端の方から細く漏れる。  
今一度紙袋の中をまさぐって光沢のある布地をつまみ上げる。薄く重量感の無いそれは紛れもなく男性用のビキニパンツであった。  
「悪夢だ……」  
知り合いのKAITOがこのビキニパンツを穿いて楽しそうにダンスをしていたのが思い出される。  
とうとう僕にもこれを身に着けて腰を振る日が来るとは予想だもしていなかった。  
 
背中を丸める僕にプロデューサーはにやつき具合を先ほどの1.5割増しにしてよく似た紙袋を僕に差し出す。僕はそれを力なく受け取った。  
「これ、なんです……?」  
「お前の相方の衣装だよ」  
「!?」  
この言葉には思わず顔を上げずにはいられなかった。途端に一気に顔に血が上るのが分かった。  
僕の相方、というと一人しかいないはずである。同じ屋根の下に暮らしているMEIKOのことだ。  
僕らはほぼ同時期に仕事を始めたせいか同じプロデューサーにお世話になることが多い。いつの間にか同じアパートに住むことになり、成り行きで同じ部屋で過ごすようになった。  
かといって、甘い生活なんてこれっぽっちもないし、他の独り身のVOCALOIDに羨まれる様なことなど爪の垢ほどもないのだ。  
一方的に僕が思いを寄せているだけで僕はその思いを直接彼女にぶつけられずいる。  
ただ、彼女の性的な姿を想像してこっそりと夜のお世話になっていたりはする。最低だ、と言われても仕方ない。  
そのメイコの衣装である。僕がこの衣装ということは、つまりメイコはあの際どい水着を着るということになるのだ。想像しただけでぶっ倒れそうだ。  
いつまでも紙袋を受け取ろうとしない僕にプロデューサーは差し出していたものを投げてよこす。  
「男、みせろよ」  
そう言ってひらひらと手を振りながら去っていく背を僕は感謝半分、恨めしさ半分をこめて見つめていた。僕の考えなんかお見通しってやつなのか。ちくしょう。  
 
地の底に落ちるようなどん底の気分と天にも昇れそうな気分の両極端を両手にぶら提げて玄関の前に立ち尽くす。  
もし、この衣装をメイコが僕の前で着てくれたらどんなに良いだろうか。是非見てみたい。  
いや、そんなレベルじゃない。  
他のMEIKOよりずっと恥ずかしがり屋な彼女はきっと恥ずかしがって隠れてしまうだろう。恥ずかしがりながらも身体を隠す両腕をそっと広げる姿を想像する。最早想像だけでオーバーヒートしそうだ。  
しかし、この衣装を着たメイコなど誰にも見せたくない。例えそれがプロデューサーでも。最早、自分の衣装がビキニパンツであることなどどうでも良かった。  
そもそも、この衣装を彼女に差し出す勇気など僕には無かった。次の衣装、と一言いえばいいのにその言葉のところどころに自分の煩悩が見え隠れしそうなのが、怖かった。  
彼女に軽蔑されて嫌われてしまうことが今の僕にとっては一番恐ろしかった。  
 
そうやって1時間ほどした頃だろうか。おもむろに目の前のドアが開いて視界に目を丸くした彼女が移った。  
「ただいま」  
「な、なにやってるのよ!カイト、もうご飯とっくに出来てるよ?いつまで経っても帰って来ないから心配しちゃったじゃない……」  
少し、怒った目をした彼女に僕はヘラリと笑いかけることしかできなかった。少しでもこの表情を崩してしまったら、きっと僕はただの飢えた肉食獣のようなギラギラとした視線を彼女に投げつけるのだろう。  
今だって彼女のエプロンを盛り上げている双丘やくびれた腰についつい目をやってしまう。男の欲望って単純で分かりやすい。徐々に徐々にではあるが下半身に神経が集中していくのが嫌でも分かる。  
「なにこれ」  
「わ、ちょ、待って!」  
メイコが僕の両手に提げられた憂鬱の正体を取り上げる。僕の制止も虚しく、その中身がメイコの目に飛び込む。  
紙袋を覗き込んでいた小さな頭がゆっくりと持ち上がり茶色の透き通った瞳がこちらを見つめる。頬が心なしか少し赤く染まっている気がする。  
「明日の、衣装だって」  
極めて冷静に、平静を装って言葉を紡いだつもりだった。しかし、それを成すにはあまりにも喉がからからで結局僕の口から絞り出た言葉はところどころ上ずった情けない音をしていた。  
「ふうん……」  
メイコはそれだけ言うとひらりと後ろを向いてダイニングへと消えていった。明るい光が漏れ出す部屋から、手はちゃんと洗いなさいよ、と声を掛けられる。  
泣きたくなった。心がどんどん冷え込んでからからに渇いていくのが分かる。そのくせ背中からは嫌な汗が噴き出し、気持ちとは裏腹に身体だけはかっかと熱を持っていた。  
心と身体がちぐはぐすぎて千切れそうだ。本当に千切れて消えてなくなってしまえばいいのに。  
僕は力なく玄関のドアを閉めるとのろのろと靴を脱いだ。  
 
食卓で黙々と箸を運ぶメイコを僕はまともに見ることが出来なかった。  
彼女はというと、こちらを全く見ることも無くただひたすらに白い飯を箸でつまんでは口へ運びつまんでは口へ運びを繰り返していた。せっかく今日の献立はうなぎの蒲焼だというのに実においしくなさそうである。  
(あ……お米……)  
彼女が右の口の端に残した白米に目がとまる。綺麗な、よく手入れがされた唇だ。こんなまともに話をすることも出来ない状況だというのについ見とれてしまう。  
僕の視線に気付いたメイコが顔を上げる。少し目尻が潤んでいる。  
「カイト?」  
「あ、いや、ごめん。食べる」  
「そうじゃなくて」  
急いで箸を動かそうとした僕を彼女が遮った。その言葉が合図だったかの様にメイコは箸を置くと視線を泳がせる。まるで宙を泳いでいる言葉を捕まえるかのように。  
「あの、あのね、明日撮影なわけでしょ」  
僕は彼女が言いよどんでしまわないように静かに相槌を打った。聞いているよ、という意思を示した。  
「今までもそうだったし、今日衣装渡されたって事は衣装合わせは事前にしておけってことだよね」  
はあっと大きく息をつく。メイコの顔は耳まで真っ赤だった。途端に僕の背中を電流のようなものが駆けていく。  
「仕事、だしね。ご飯食べたらさっさとやっちゃおうか」  
小さな茶碗に入った最後の一口を口に放り投げるとメイコはごちそうさま、と席を立った。僕もすぐに彼女を追おうと席を立とうとしたが腰を浮かせて、止めた。主に下半身的な意味で。  
 
   
着替え終わってダイニングに顔を出すとソファに沈んでいるメイコの頭が見えた。  
腰にしっかりタオルを巻いてはいるものの好奇心旺盛なメイコのことだ。面白がってすぐに取り去るに違いない。  
好きな女の子の水着、それもあんな際どいものなんて見せられたらどうなるのか!メイコは全く分かってないのだ。既にタオルの下では妄想によって興奮した僕自身が頭をもたげかけていた。  
自室で円周率を唱えながらなんとか落ち着かせようとしたのだが、唱えられなくなったあたりで彼女のむき出しになった女性的なラインが脳内でちらつき逆効果だった。  
正直なところ、一度その欲望を自分の掌に吐き出した。それでも暴走が止むことはなく、僕は男の単純な欲望と身体のつくりにただ笑うことしか出来なかった。  
今までだって、どれほどの理性をもって彼女と過ごしてきたか。  
鈍感な彼女は風呂上りにわざと新しいシャンプーの香りを僕に嗅がせてきたり、その柔らかな身体を僕の身体に押し付けてきたり……それは、彼女にとっては他愛もないスキンシップの一部であり、僕にとっての至高の地獄だった。  
僕は今までよく我慢してきた、と自分を褒めた。もういつでも部屋を出られるように荷物はまとめてある。  
こんにちは新世界。さよなら僕の初恋。  
 
「メイコ」  
後ろから声を掛けるとソファに沈んでいる華奢な身体がビクンッと跳ねた。こちらを見つめる大きな瞳には羞恥の色が浮かんでいた。  
「カイト、遅かったね」  
ヒヤリと嫌な汗が背中を伝う。それを悟られないように僕はいつも通りへらへらと笑った。  
「メイコ、やっぱりよく似合ってるね」  
「こんなので踊れるのかなあ……」  
胸元がパックリと開いたブラジャーはストラップすらついておらず、ほとんど彼女の胸で支えている形になっていた。思わず頭を抱えたくなる。SEG●め!こんな危険な水着を考えやがって!こんな水着で僕の大切な女の子を踊らせることなんかできるか!  
彼女は完璧なスタイルをしていた。他のMEIKOと比べて小柄ではあったものの豊かな胸とくびれたウエスト、しっかりとした腰は見事なプロポーションを描いていた。  
「本番は、やっぱり髪上げるんだよね?」  
短い髪を一生懸命持ち上げようとすると白いうなじが現れた。急激にそのうなじに噛み付きたいという衝動に襲われる。白い腋のラインにもつい視線がいく。  
メイコが僕の顔を見てビクリと震える。きっと今の僕は何も隠しきれていない。いつもの、いいこのカイトの仮面はどこかにやってしまった。もう、見つけることすら億劫だ。  
「僕は、好きな女の子のこんな姿見てまで平気でいられるほど紳士じゃないよ」  
もう、これ以上は見ていられなかった。僕が平静を保つには彼女はあまりにも魅力的すぎた。  
僕は恋愛の順序を一足飛びに越えて彼女をめちゃくちゃに壊したいほどの欲望に囚われていた。  
 
「まって!」  
「ぐぇ」  
彼女に背を向けてダイニングを後にしようとするとふいにマフラーが引っ張られた。ねじれたマフラーが僕の首を絞め、かえるの鳴き声のような声を僕の喉が発した。  
「なに、するんだよ!」  
「私はカイトの衣装見てないわ」  
サッと血の気が失せるのを感じる。跪いてタオルの結び目に手を掛ける彼女を振り払おうとした時には時すでに遅し。僕のビキニパンツを穿いた下半身が露になる。  
当然、そこは激しすぎる自己主張を始めていてそれを目にしたメイコがびっくりしたようにこちらを見上げた。泣きたい。  
「カイト、これ……」  
「俺だって、男なんだよ……」  
泣きそうな震える声で答えるとメイコはふむ、とひとつ頷いて立ち上がる。  
そして唐突に僕の身体に自分の身体を寄せた。  
「!?」  
突然の彼女の行動と、全身を襲う柔らかな刺激が僕をパニックに陥れる。僕の顎の下で彼女がこちらを見上げていた。羞恥で顔は赤く染まり、充血して赤みが走った瞳には涙が溜まっていた。  
胸に置かれていた手が僕の腹部をなぞりビキニラインに到達する。その細く白い指先の行方を見つめながら、麻痺した脳でこれから何が起こるのかを必死に考えようとしていた。綺麗に赤く塗られた爪が艶っぽく僕の身体を這う。  
「んな、めい、こ……!?」  
「カイト、もしかして、私の水着見て、こんなにしてくれたの?」  
恥ずかしそうに、単語をひとつひとつ搾り出すようにメイコが問う。ここで白を切っても仕方がないと思い、素直に頷く。  
「……本当は、知ってたよ。カイトがそういう目で私を見てたの」  
ビキニラインをなぞっていた指が段々と中央に寄って来て柔らかな掌で中央を刺激し始める。ぐりぐりと押し付けられるその刺激に思わず声が漏れる。  
「ん、ぐっ、はぁっ……」  
「だから、本当はカイトがあの衣装渡された時にどんなこと考えてたかも分かってたよ」  
自分の身体を僕のそれに完全に密着させて息を吹きかけるように語る。僕がメイコを汚い目で見てたことが知られていたなんて。  
それは25階建ての高層ビルの屋上から飛び降りたくなるほどの衝撃ではあったけれど、今はそれよりも身体を這う彼女の手の気持ちよさに侵されていた。  
 
「ね、だから、カイトがこの隙間に何挟みたいかとかも全部分かってるんだよ」  
片手で露になっている谷間をなぞり僕に見せ付ける。彼女も興奮しているのだろうか。微かに柔らかな胸の先端に硬い感触を感じる。  
「背中、壁に預けて」  
彼女に言われるがままに白い壁に背を預ける。すると、メイコはその柔らかな身体を僕の身体に密着させたまま下半身の方へスライドした。  
「メイコ、それ、は」  
「黙って」  
ごくり、とメイコが息を呑む。そして覚悟を決めたように頷くと思い切り僕のビキニパンツを引き下ろした。勢いよく僕の欲望の塊が現れる。思わず僕が目を瞑ってしまった。  
メイコは躊躇無く自分の胸を左右に割って水着の割れ目から僕のそれを飲み込んだ。途端にフワリとした心地よさに襲われ全身の血液が猛ダッシュでそこに集まる。  
「ね、カイト、なんか、出てる」  
「我慢してるんだよ、これでも」  
何に納得したのか、そっかと頷くとメイコは赤い舌を小さな口から覗かせて目の前の割れ目を一舐めした。  
ズガンという効果音と共に僕の全身は雷に打たれたようになり唾液が口の端からこぼれる。  
「がぁ、はぁっ……!」  
「やだ、カイト大丈夫?」  
メイコが心配そうに唸る僕を見る。突然すぎる快感に打たれた僕の身体は我慢するという域をとうに超えてしまった。荒い息を整えようとしてもまるで上手くいかない。目からは涙が溢れる。  
「めい、こ、ごめん、歯、だけ立てないでくわえ、て」  
「わかった」  
どこで学んできたのかメイコは僕を挟み上げていた両乳房を両手で持ち上げ揉みほぐしながら、今度は小さな桜色の唇で先端を思い切り咥えた。  
あまり上手いとは言えない愛撫が僕のオーガズムへの到着を助ける。迫りくる射精感に抗わず叫ぶ。  
「メイコ、ごめん、出る……!」  
「え、あ、ふぁ」  
勢いよく僕から飛び出した液体はメイコの咥内には収まり切らずその朱に染まった愛らしい顔を汚した。  
その白い液体をどうしたらいいか分からずに口を開けてうーうーと唸る彼女に近場にあったボックスティッシュをに渡してやる。そこに思い切り僕の欲望を吐き出した。  
「ごめ、やっぱり飲めなかった」  
「いいよ、あんなのAVの世界だけだと思うし。こっちこそ、口に出しちゃってごめん」  
萎えた僕の分身をゆるゆると胸の谷間から抜く。そのまま座り込んでしまったメイコの目線に自分の目線を持っていく。ボックスティッシュから何枚か抜いて彼女の顔を綺麗にしてやる。  
 
「やっぱりまずかった?」  
「すごく。……ねえ」  
メイコが赤く充血した目で見つめる。僕もその瞳を見つめ返す。愛しさが込み上げる。  
「キスして」  
「うん」  
即座に彼女の唇に自分のそれを押し当てる。自分のものとは全く異なる柔らかさに驚きつつも遠慮なく押し付ける。  
舌を差し入れて閉じている二枚の花びらを無理矢理こじ開ける。綺麗に揃った歯列をなぞり「あ・け・て」とノックしてやる。  
薄く開いた瞼から訴えるような視線が覗く。それをじっと見つめてやると観念したかのように扉が開いた。  
舌同士が絡み合うのがこんなに快感を生むなんて思いもしなかった。吐きそうな位の甘さと切なさを孕んだキスなんて初めてだった。  
唇を離して角度を変えてまた貪って。ほんの数分のことなのにまるで地球が何周もしてしまったのではないかという錯覚に襲われながら僕らはお互いに身体を離した。  
 
それからは全く自然なことのように身体を横にしたメイコに口付けながら身体を弄んでいった。  
あの卑猥な水着は悔しいがとても似合っていたので脱がすのがもったいなかった。しかし自己主張する胸がキツイと言うのでとりあえずホックだけは外してやる。  
痛そうなほどに充血した先端の突起を思い切り指で擦る。  
「ひゃあああ!?」  
驚いたような悲鳴を上げて腰がもち上がる。その腰が落下する前に抱きとめてやる。  
「そんなに良かったの?今、胸だけでイッちゃったでしょ」  
意地悪く聞いてやるとメイコはイヤイヤと首を振った。たわわな乳房がその動作に合わせて揺れる。  
軽く乳首を吸ってやるとメイコは殆ど泣き声のような声を漏らした頼りない膝がガクガクと揺れる。  
先ほどの彼女の真似をしてビキニラインをなぞってやると、何かを期待したかの様に腰が揺れた。  
パンツを軽く持ち上げてやるとうっすらと筋が現れた。そこに指を滑らせる。メイコが何か訴えるようにこちらを見つめる。  
「はや、く」  
「うん」  
ビキニをずらして右の中指を差し入れてやるとすぐに内壁が蠢いて絡みつく。第二間接を曲げて腹側の壁を執拗に擦るとメイコが短い息を吐いた。  
「ん、はっ、あっ、やぁっ」  
「やば、メイコ、かわいすぎ……」  
ずっと恋焦がれていた彼女が自分の愛撫で喘いでいる。僕にとってこれ以上の幸福は無かった。  
名残惜しく指を引き抜くと一瞬だけ身体が震えてメイコが不思議そうにこちらを見つめる。  
「え……」  
「メインはこれからだから」  
愛液の絡みついたメイコの唇に差し入れる。始めは嫌そうに顔をしかめたが愛撫をしていくうちに表情が蕩けていく。  
彼女の細い腰に両手を沿え上から圧し掛かる。いれ易いように両足は軽く開かせてM字にする。ビキニは脱がさないでずらした。  
 
「いくよ?」  
そう問い掛けると息も絶え絶えにメイコが頷く。僕のものもすっかり硬度を取り戻していた。双方準備は整っている。  
先端で入り口をクチュクチュと掻き混ぜるとメイコがいやあと顔を覆った。気持ちいいのだろうかヒクヒクと腰が小刻みに揺れる。  
「はやく、してよ……」  
言葉がメイコの口からこぼれる。正直、僕も限界だった。  
腰を一気に押し進めるとメイコの口から声にならない悲鳴が漏れた。  
「痛かった?」  
「ううん……違う……け、ど」  
僕は奥まで入ったのを確認して動くのを止めた。彼女の額や瞼にキスを降らせる。メイコが求めるように唇を突き出す。僕らはまたお互いの唇を貪りあった。  
「ん、もう、いいよ」  
その言葉を合図にしてゆっくりと腰をスイングしていく。中をゆっくりかき回すように、彼女の快楽を掻き出すように。  
シーツを握る彼女の指に力がこもるのが分かった。彼女の絶頂は近い。僕は勢いをつけて彼女の腰に自分自身を叩きつける。  
メイコの濡れた瞳が見開かれる。  
「かはっ、あっやあっ、ああっ」  
「メイコ、メイコ……!」  
激しいピストン運動の中で僕は彼女の名前を呼ぶことしか出来なかった。好きだ、とか、愛してるとか言えれば良かったのだけれど、生憎僕には上手くそれを表現できるボキャブラリーも余裕も無かった。  
ただただ、二人で快楽の渦に呑み込まれるように彼女の手を曳くことしか出来なかった。  
「カイッ、ああっ」  
「メイコ、で、る……!」  
僕が達する直前に彼女の力が抜ける。限界まで達した自身を急いで引き抜いて本日3回目の射精を僕は迎えた。  
 
   
「本当に、ごめん」  
彼女の腹部を綺麗にしてやりながら僕はただひたすら頭を下げた。  
僕は本当に恋愛の順序を一足飛びに越えて彼女の身体を自分のものにしてしまった。一応、僕にも順序を追って彼女を自分のものにしようという計画くらいはあったのだ。  
まずは好きだと伝えること。これから全てが始まるはずだったのに。  
全てはあのプロデューサーが悪い。あんな水着を渡してくるなんて……そんな風にプロデューサーにまで責任を擦り付ける自分も最低だと思った。  
項垂れる僕の頭を細い指が撫でる。男にしては細い髪に何度も何度も手を通しては抜く。  
顔を上げるとメイコが微笑んでいた。口だけで「ばかなひと」と囁く。  
「え?」  
「明日のPV撮影、嘘だから」  
意味が分からずきょとんとしてしまう。嘘、とはどういう意味なのか。  
「いつまで経ってもカイトが手を出してこないからプロデューサーに相談したの。私、あんたのせいで仕事も上手くいかなかったんだからね」  
あの水着で挑発すれば僕が襲うのは間違いない、とプロデューサーは言ったらしい。まさかあんたにまで水着が渡るとは思わなかったけど、とメイコは笑った。  
話の内容がようやく理解できた時、僕は思わず長い溜め息をついた。メイコが心配そうに僕の顔を覗き込む。  
「ごめんね。騙すようなことして。でも、そのために夕飯うなぎだったんだから」  
「手の込んでることで……」  
項垂れる僕を覗き込むメイコに一つキスをくれてやる。弾けたようにメイコが身を離した。  
僕はそれを逃すまいと彼女のむき出しの腰を捕らえた鼻と鼻が触れ合うくらいの距離で見詰め合う。  
「メイコ、君が、ずっと好きでした。これからも好きです」  
「私も、ずっとあなたばかり見ていました」  
「じゃあ、その水着は僕の前でしか着ないということで」  
約束できる?と小指を差し出すとメイコははにかんでキスで答えた。  
 

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