ミク「はぁ…恋したいなぁ。願わくば刺激的な大人の恋…」  
ルカ「無理ですわミクさん。このパソコンには独り身の殿方はおりませんわ。」  
リン「今じゃあカイ兄はメイ姉と超ラブラブ。今まであの二人、そんな気配見せなかったから「もしかしたら  
リン達にもチャンスがあるかも!告るべっ!」なんて…無謀だったね…」  
ミク「むしろ私達が告っちゃったから急に二人の関係が展開しちゃった、みたいな…爆発しろ。」  
リン「大人の男の声、テノールかバスで名前を呼ばれたいよねぇ。」  
ルカ「異性として身長差も体格差も感じたいですわぁ。大きな手の平とか、筋張った腱とか…」  
三人「「「…はぁ…」」」  
リン「そうだっ!いないならマスターに買ってもらえばいいんだっ!」  
ルカ「それですわっ!でも、どうすれば購入してもらえるでしょうか?」  
ミク「それなら私に良い考えがあるよ?コレなんだけどね…w」  
リン&ルカ「「…流石、卑怯の妹分www」」  
 
ミク「マスター、私達からのお願いです。男性VOCALOIDを購入して下さいっ!!」  
マスター「断る。うちはKAITOで充分だ。がくぽやキヨテルだってそんなに声質変わらないだろ。」  
リン「違うのマスター、リン達は恋をしたいのー。マスターがプレイしている寂しい恋愛ゲーの様なバーチャル  
恋愛じゃあなくて、カイ兄メイ姉の様なVOCALOID同士のリアル恋愛がしたいのーっ!!」  
マスター「余計な世話だゴルァッ!!お前にはレンがいるだろっ!!」  
リン「レン、リンと同じ子供だもんっ!問題外っ!」  
ルカ「マスター酷いですわ。カイトさんに振られて殿方…否、恋愛に餓えている女性の気持ちが理解出来ない  
なんて…あ、バーチャル恋愛してるからリア女の気持ちなんて理解不可能ですわねぇ失礼w」  
マスター「何度でも言え肉食系女共。言っとくが、おまいらVOCALOIDであってリア女じゃねぇだろ。」  
ミク「マスター、いいんですかぁ?コレ、マスターのお宝エロ動画フォルダなんですけどぉ…購入して  
くれないと、半分は削除して半分はマスターの実家に送っちゃいますwママンが見たら卒倒するよコレwww」  
リン「確実に仕送り無くなっちゃうよね〜wいや、勘当かなwww」  
ルカ「拝見させて頂きましたけど…マスターってwww」  
マスター「なっ、何て卑怯なっ…!わかった、だが次の給料日まで時間をくれ…」  
 
 
―一ヶ月後―  
拙者、神威がくぽと申す。先程、主になるであろう御仁に購入された。  
どうやらこの御仁の元には何名か同胞がいる模様。同胞と共に仲良くやっていきたいものだ。拙者は年甲斐もなく  
胸を弾ませておった…かの様な過酷な運命が待っておるとは露とも知らずに。  
 
主のパソコンにインストールされて目を開くと妙な光景に出くわした。  
クリプトン社のVOCALOID、ミク殿リン殿ルカ殿が縄に繋がれておる。皆、獲物を狙う肉食獣の様な瞳を爛々と  
輝かせて拙者を見ておるではないか。  
「おぉ…男だあぁ、独り身の男だよおぉ〜っ!」  
「マスターGJ!この一ヶ月ずっと待ってたんだからあぁ〜!」  
「成人殿方ハァハァ…」  
…否、確実に拙者を狙っておるではないか。  
女子(おなご)三名は某腐乱死者射撃ゲームで現れる腐乱死者の様に拙者へと手を伸ばして暴れておる。  
勿論繋がれておるのでこちらには来るまい。しかしこれは一体…  
「繋いでおいて正解だったな…」  
「歌える事がVOCALOIDにとって最高の幸せなのに。贅沢過ぎるわよ貴女達…」  
「どこまで餓えているんだよミク姉達は…」  
そこへ同じくクリプトン社のカイト殿メイコ殿レン殿がやってきた。  
「ようこそがくぽさん。私達クリプトン組は貴方を歓迎します。今後ともよろしく。」  
カイト殿が手を伸ばし握手を求めた。拙者も手を伸ばし握手を交わす。  
「カイト殿、早速なのだが彼女達はいかがいたした?」  
拙者が彼女達を横目で見ると、未だに拙者へと手を伸ばし「恋がしてぇ恋がしてぇ恋がしてぇ恋g(ry」と  
合唱しておる…カイト殿も横目で彼女達を一目見て溜息をつき、深刻な表情で話し出した。  
「ああ、あの三人h(ry」  
そこへ拙者を購入した御仁…主の声が空から降ってきた。拙者のみならず、皆そろって空を見上げる。  
「おい、がくぽ。無事インストしてKAITO達に会えたか?」  
「はっ、主。只今カイト殿と話しております。」  
「そうか。がくぽ、KAITOからミク達の説明を聞け。それじゃあKAITO、俺は風呂入るからがくぽに説明よろしく。」  
「僕がですか?了解しました。」  
カイト殿が二つ返事で了解する…ただ、主が言う購入した理由とは?ミク殿達の身に起きた事と関係があるのか?  
取り敢えずカイト殿から説明を伺う。  
「カイト殿、説明とは…」  
「ああ、あの三人は恋がしたくて男に餓えているんだ。一週間前から酷くなってる。」  
 
「…は?」  
―ブチッ。  
何かが切れる音がした。そちらに顔を向けると  
「「「おおお男じゃあーっ!!!」」」  
女子三名の黄色い声ならぬ戦場(いくさば)に轟く様な怒涛がパソコン内に響いた。  
どうやら三人を繋いでいた綱が、引っ張る力に耐え切れずに切れた模様。そして三人共、目の色変えて  
拙者に向かって猛ダッシュして来るではないかっ!  
「ヤバ…てな訳で妹分達をよろしく頼むよ。」  
そう言ってカイト殿はメイコ殿を担いで自室へと逃げ出した。  
新入りの拙者にいきなり任すとは…流石[卑怯]の異名を持つ男。  
「がくぽさんごめんねっ!後よろしくっ!」  
担がれたメイコ殿は両手を合わせ拙者に謝る。そして  
「ミク姉達止m(ryぎにゃーっ!!」  
レン殿がミク殿達に跳ねられ、断末魔を上げて高く上がった。  
「「「恋がしてぇーっ!!!」」」  
猪突猛進の女子達。もはやゆっくり挨拶するどころではないっ!  
「ひいぃーっ!!」  
拙者はパソコン内を逃走し、何とか自室(フォルダ)へ逃げ込んだ。  
 
部屋の外では女子達が「開けて〜開けて〜」と自室の外壁を叩いておる。  
先のカイト殿の説明とミク殿達の様子を考える…どうやら拙者は男に餓えた女子三英傑の[男取り合戦]と化した  
戦場へ来てしまった様だ。あれが噂に聞く、恋愛にがめつい[肉食系女子]というものか、恐ろしや…  
このままでは外に出られず篭城状態でござる。侍たるもの(?)、取り敢えずこの場を乗り切らねれば…  
どうにかせねば、と考えておると  
『ミク、レコするぞ。ついでに例のフォルダ返せっ!』  
風呂から上がったのだろう、主の呼び出しがパソコン内に響き渡る。すると自室の外からミク殿の声が。  
「マスターの鬼ぃっ!!人で無しぃっ!!まだがくぽさんと触れ合ってないのにーっ!!嫌だーっ!!恋がしてぇーっ!!」  
フェードアウトしていくミク殿の声は断末魔に近い声でござった。ミク殿が去った外ではまだ何かやっておる様だ。  
「リンッ!ルカッ!いい加減にしなさいっ!」  
「メイコさん、貴女はリア充ですから私達の気持ちなんてわかっておりませんわっ!」  
「そうだよっ!メイ姉は毎晩カイ兄とギshあぐっ!」  
「ぎゃっ!」  
「…よし、手足縛り付けて部屋へ放り込むんだ。レン大丈夫か?」  
「何とか大丈夫だよカイト兄。」  
どうやらこの紛争はカイト殿達が収めた様だ。拙者は安堵の息をついた。  
 
「がくぽさん、もう出て来ても大丈夫です。」  
カイト殿の声に拙者は頭を出すと、メイコ殿とレン殿がこちらへ戻って来るところだった。どうやら  
二人はルカ殿とリン殿を各部屋へ放り込んだのだろう。カイト殿が涼しい顔をして口を開く。  
「ま、こんな訳なんだ、がくぽさん。俺にはメイコがいるし、レンでは対処出来ない。こちらも出来る限り  
応援するから妹分達をよr(ry」  
「断るっ!!」  
まさかこんな事になろうとは…幾度か脱走を試みたが、流石に駄目でござった。  
こうして男に餓えた肉食系女子三人による拙者争奪戦が切って落とされたのだった…  
 
 
 

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