※ヤンデレLily(相手視線に尽き注意)
まるで彼女は女郎蜘蛛だ。
躰に巻き付けられたコードに絡め捕らえられて、身動きが出来ない。
「ずっと逢いたかった…」
心底とても嬉しそうに微笑みを浮かべて、此方を覗き込んで来る表情に、背中からゾクリとした冷たい感覚が昇って来る。
「…ン…アァッ…」
心持ち低い、呻く様に絞り落とされた喘ぎ声が、時折洩れる吐息に混ざって吐き出され、
彼女がひとり、揺れ動いて居る様は。
快楽を追い求めるより、何処か苦痛を想わせる部分が大きくて、
不意に胸が締め付けられ、抵抗する気力が起きずに、ただ戸惑っているばかり。
「…泣いて、いる…の…か?」
零れ落ちる滴に、漸く言葉を紡げば。
呆気ない程に解かれてゆく…拘束を遂げている黒いコード達は、如何やら彼女の意思が通っているらしく。
元の位置へと収まってゆく、存外と素早い最初の勢いとは裏腹な…少なからずもたついた収束の素振りに、笑みが浮かぶ。
「…好き、だ…」
重ねた唇に、やっと安心した様に、崩れ落ちて来る姿は、
彼女の名が示す、花の如く。
此れでは、何方が華で、蜜を求むる者か分からぬでは無いか…と呟けば、
白々と明ける空に、今宵も眠りそびれた男は溜め息を吐くばかりだった。