今まで気付かなかったけど、あたしはあたしが思っているより無防備らしい。  
そしてカイトはこれでもかと言うくらい過保護で絶倫なんだと。  
 
 
 
がくぽさんがやって来て早数ヶ月。最初の頃は何度か脱走しようとしていたけど諦めた様で、このパソコン内で  
順応し生活している。  
今だ恋愛肉食系女子のミク達に「恋がしてぇ―っ!!恋させてーっ!!」と追いかけ回される日々だけど、カイトと  
三人で呑んでいるうちにあたし達三人は次第に打ち解けていった。がくぽさんは[良き仲間・呑み友達]…あたしは  
そう思っていた。  
だけどある日カイトが  
「メイコ、君は無防備過ぎるから、がくぽさんと二人きりで酒を呑まない様に。がくぽさんだって男なんだからな。」  
なんて忠告してきた。確かにがくぽさんは男性だけどそんなに危険視しなくていいのに。無防備?誰が?  
カイト、あなたはそこまで独占欲が強いの?正直あたしはカイトの独占欲に驚愕した。  
 
最近マスターは鏡音アペンドを購入してリンに夢中。更にカイトがコーラス担当の為、あたしの傍にいない。  
そしてあたしは相変わらず歌う機会がない…もう半年近く。  
「歌わせてよぉ、マスター…」  
あたしは自室でお酒を呑んで、歌えない寂しさを紛らわしているとドアをノックする音がした。  
(カイトかな?もうレコ終わったの?)  
時計を見るとまだレコ終了時間ではない。誰だろ?あたしは腰を上げた。  
「はい?」  
あたしが返事をしながらドアを少し開けて顔を出すと、そこにはがくぽさんが立っていた。  
「夜分すまぬメイコ殿…呑んでおられるか。よければ拙者も御一緒してよろしいか?酒も持ってきた。」  
がくぽさんの手にあるお酒にあたしは思わず微笑む。  
「わぁ、濁り酒…嬉しい。一緒に呑もっ!」  
歌えない寂しさ、独り呑みの寂しさにあたしはすんなりとがくぽさんを部屋に入れてしまった。カイトの  
忠告なんてすっかり忘れていた。これが自分の無防備さを思い知らされる幕開けだった。  
サイドテーブルを部屋の中央に置き、二人してお酒を呑み合う。  
「肴はメイコ殿の手料理か。とても旨くて酒が進む。」  
「ウフフ、ありがと。お世辞でも嬉しいわ。」  
「お世辞?とんでもない。本当に旨い。」  
やっぱり一人で呑むより全然楽しい。あたしも思わずお酒が進んでしまう。  
「しかしメイコ殿の呑みっぷりは、見ていて気持ちがいい。カイト殿と三人で呑んでいる時とは違うのだな。」  
 
「そうなの。カイトったら「呑み過ぎるな、程々にしろ」って五月蝿いの。本当はいっぱい呑みたいのに。」  
そう、カイトはあたしが呑み過ぎるとウエストを軽く抓ってくるし、酷いと強制的に呑み会を終了させるのだ。  
でも今はレコで不在だから、いっぱい呑めるのが嬉しい。鬼の居ぬ間に洗濯だ。空になったあたしのグラスに  
がくぽさんが苦笑しながら酌をする。  
「くっくっくっ…まことにカイト殿はメイコ殿に関して過保護なのだな。」  
「過保護過ぎて正直迷惑よ、全く。」  
なんて言いながらがくぽさんの顔を見た。酒で頬を紅く染めた端正な顔だち、やや憂いを感じる切れ長の瞳、  
絹糸の様な紫色の長髪はサイドから少しこぼれて憂いさを引き立たせている…正直女性より綺麗。  
あたし負けてるよなぁ、ちょっと悔しい。カイトとは違う格好よさ。何と言うか…簡単に言ってしまえば[雅]。  
「?いかがいたしたメイコ殿?」  
がくぽさんがあたしの視線に気付いた様だ。  
「あ、ごめんなさい。頬紅いから結構呑んでいるな、って。」  
でも本当にどれくらい呑んだだろうか…濁り酒も残り三分の一を切った。  
がくぽさんはグラスの酒を呑み干すと溜息と共に愚痴を零した。  
「しかし…あの猪突猛進な三人は肉食系女子過ぎて困る。メイコ殿を見習ってほしいものだ。」  
「そうよねー、あの子達は…え?」  
相槌をうちながらがくぽさんのグラスに酌をした直後、あたしの頭脳回路が停止した。あたしを見習う?何処を?  
あ、これは酔っ払っているながくぽさん。こんなに呑んでいるんだもん。あたしは思わず嘲笑う様に笑ってしまった。  
「ちょっと何言ってんのよぉがくぽさん、あたしの何処を見習うのよ?可笑しいw」  
あたしが井戸端会議のおばちゃんの様に手を振ると、がくぽさんは酒で少し頬を染めた真顔であたしを見詰めてきた。  
「何処を?大和撫子が持っている淑やかさだ。メイコ殿はまこと淑やかではないか。」  
あたしが…淑やか?あたしに[淑やか]なんて言葉は程遠い。何言ってんの?  
あたしが呆然としているとがくぽさんは話を続けた。  
「メイコ殿はまこと淑やかで気立てがよい。あの三人にメイコ殿の爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだ。」  
確かにあの肉食系女子と化した三人の暴走っぷりは目に余り過ぎるけど…  
そんな事より自分より綺麗な顔つきの男性にそんな事言われるなんて…嬉しいより恥ずかしかった。  
 
「そんな…あたし、淑やかじゃあないわよ。がさつだし…あの三人みたいに可憐さもないし…」  
あたしは両手でグラスを持って俯き、唇を尖らせているとがくぽさんが  
「メイコ殿のがさつさなぞ、あの三人と比べたら三人の足元にも及ばぬっ!!」  
と、声を張り上げてグラスの酒を一気に飲み干してグラスを叩き付ける様に置いた。  
ちょ、そこまで言いますか。あたしよりがさつって…あたしは俯いたまま笑いを噛み殺す。  
「それに…メイコ殿は十分可憐でござるよ。その様な仕草、謙虚さと気立てのよさ…あの三人は微塵もない…」  
てか…がくぽさん、呑み過ぎじゃないの?ああ、手酌なんかして…また一気に呑み干しちゃった。  
「こんなメイコ殿を…手込めにしたカイト殿が…羨ましくてならぬ…うぃ…」  
な、何言ってんのよこの人…そう言ってテーブルに突っ伏した。これはヤバい。そろそろお開きにして部屋に  
戻ってもらわないと。あたしはがくぽさんの傍へ座った。  
「がくぽさん、もうそろそろお開きに…」  
「ところでメイコ殿。」  
がくぽさんがいきなり顔をこちらへ向ける。こぼれ落ちた髪が手伝って、ちょっと恐い。  
「は、はい?」  
「拙者が来てから…一度も歌っておらぬな…」  
うぅ…痛いところを。もう半年近く歌わせてもらってないわよ。  
「し…仕方ないわよ。マスター、アペンドに夢中なんだもん…」  
そう、マスターはミクのアペンドに続きリンレンのアペンドを購入したのだ。  
こうしてあたしが歌える確率は更に低下した。  
あたしはまた俯いて唇を尖らせているとがくぽさんが  
「ならば拙者が発声練習を手伝おうぞ。」  
「へ?」  
一瞬、何が起きたかわからなかった。身体の重心と視界が回り、がくぽさんがあたしに覆いかぶさる。そして  
唇を唇で塞がれ…塞がれ?  
「!!」  
あたしはやっと判断した。がくぽさんに押し倒され無理矢理にキスされている事に。お酒の酔いが一瞬にして  
デリート。がくぽさんの唇から逃げる様にもがいた。  
「―はっ。がくぽさん…やめてっ…」  
ヤバい、本当にヤバいって。何とか唇を離し抵抗するが、がくぽさんの腕力でいとも簡単に抑えられてしまう。  
あたしはこの時初めて貞操の危機を知った。  
「ふふふふふ、よいではないかよいではないか!」  
がくぽさんが微笑を浮かべながら、時代劇によくあるお約束な台詞を出す。まさか本当にこんな台詞を聞くなんて。  
「嫌だぁっ、がくぽさん離してぇ…」  
 
纏わり付く絹糸の様な紫色の長髪に嫌悪感すら感じた。早くこれから逃れたいと暴れる。  
「お願いがくぽさんっ…駄目っ…」  
いつの間にかあたしの両手はがくぽさんの片手によって抑えられてしまった。お酒の酔いも手伝い、力が入らない。  
がくぽさんは余裕の笑みを浮かべながらあたしに囁く。  
「メイコ殿、そなたは余りにも無防備過ぎる。その様な格好で男を部屋に入れるとは…あまりにもけしからんぞ。」  
そういやカイトにも言われたっけ…  
『メイコ、君は無防備過ぎるから、がくぽさんと二人きりで酒を呑まない様に。がくぽさんだって男なんだからな。』  
ああ、こうゆう事なんだ。貞操の危機ってこんなに恐いなんて…カイト助けて…あたしは泣きながら抵抗する。  
「だからってこんな事していい訳ない…やぁっ」  
あたしが言い切る前にがくぽさんが太腿を撫でてきた。思わず身体が撥ね、声をあげてしまう。  
「可愛く鳴きおる…今宵の件は一夜限りの夢だと思えばよい。拙者も口は堅い。」  
「やだぁっ、ひゃあぁっ…」  
相手ならミクだってリンだってルカだっているじゃないっ!あたしはカイトが好きだし二股なんてしたくない、  
絶対尻軽じゃあないんだからぁっ!  
再び抵抗を試みるが、今度は口づけをしてあたしの動きを弱らた。  
「そろそろ…観念せい…」  
「ふぁ…やだぁ、離して…よぉ…」  
がくぽさんの口づけは毒を盛られているみたいで、何度か口づけされているうちに力が入らなくなってゆく。  
「嫌よ嫌よも好きのうちと言うであろう…」  
「本当に嫌なのぉ…カイトぉ助けて…」  
そう言っている間、あたしはがくぽさんから逃げようともがき続けた。だけどそれより先にがくぽさんの魔の手が  
あたしの太腿を登っていく。  
「嫌だ…嫌だぁっ、ひぃんっ!」  
嫌がるあたしを余所にがくぽさんはあたしの秘裂を下着越しになぞった。  
「ほう…こんなに濡らしておる。さぞかしカイト殿に可愛がられt(ry」  
ガゴッ!!  
妙な音と共に、がくぽさんが力無くあたしに覆いかぶさってきた。そして頭上から零れる液体。背後にいたのは  
「な〜にやっとるんだ、この泥棒茄子がっ…!!」  
カイトが怒りオーラを纏い、割れた酒瓶を持ってがくぽさんを見下す様に仁王立ちしていた。  
(カイト、助かったぁ…)  
あたしは直ぐさまがくぽさんから離れ、ベッドの上に避難。  
カイトの表情は今まで見た事がない怒りの表情。部屋には割れた酒瓶から零れたお酒の匂いが充満している。  
 
「は…背後から…とは…卑怯…なり…」  
がくぽさんは背後から後頭部へのクリティカルヒットで、もはや体力一桁であろう。  
そんながくぽさんにカイトは冷たく言い放つ。  
「卑怯は褒め言葉だ、お前がメイコにした事は何かな?お前は〇ーネル〇ンダースでも誘拐してろ。」  
カイトは立ち上がる体力もないがくぽさんの髪の毛をむんずと掴んで部屋から外へと引きずり出すと、  
しばらくの間フルボッコ音が続いた。  
がくぽさん、天誅だと思ってください。こうしてあたしは何とか貞操を守れた。  
 
「メイコ大丈夫?俺が片付けるから座ってて。」  
カイトが乱れた髪を手櫛で整えながら、散らかった部屋を片付けていく。  
「うん…」  
「がくぽさんさぁ…以前二人で呑んだけど、ストレス溜まっているのか飲み過ぎると悪酔いするんだよ。」  
ああ、そういう事だったの。でもあんなふうになるなんて夢にも思わなかった。  
まだ酒臭い部屋をあらかた片付けたカイトがあたしの横に座る。  
「でも、メイコが無事でよかった。」  
そう言ってあたしの肩を抱き寄せて口づけをした。  
やっぱりカイトが一番落ち着くし安心する。あたしはカイトの胸に顔を埋めるとカイトが抱きしめた。  
「カイト、ありがとう…ごめんなさい…」  
優しい時間が流れる…あたしはカイトに甘えながら眠りにつく  
 
 
 
…はずだった。  
「がくぽさんの悪酔いも酷いけどさぁ…メイコも酷いよなぁ。無防備過ぎ。」  
カイトの言葉にあたしの頭に疑問フラグが上がった。  
…え?あたし何かした?カイトの顔を見ると仏頂面があたしを見下していた。怒ってる?  
「俺の忠告を聞かなかったし、何より俺以外の男を部屋に入れるってどういう事?」  
「うぅ…」  
これに関してはぐぅの音も出ない。あたしはただの[友達]としてがくぽさんを部屋に入れたけど、結果として  
貞操の危機だったのだ。心なしか先程の怒りオーラがちらほら出てる様な…  
「ご、ごめんなさい…」  
あたしはカイトの怒りオーラに圧倒され、カイトの胸の中で思わず小さくなると、更にカイトが畳み掛ける。  
「聞くけどさ、メイコが留守の時に俺がメイコ以外の女を部屋に入れたらどう思うんだ?」  
そんな恐い事…カイトの指摘に身体が震えた。  
「嫌だ…」  
「だろ?それくらい考えろっ!」  
そう言うとカイトはあたしを強く抱きしめ、強引に愛撫してきた。まるで焦っている様に。  
「ち、ちょっとカイトぉ…あんっ、どうしたのよぉ…」  
 
出来たら今夜は休ませてほしいんだけど…あ、脱がさないでよ…  
「夜が明けるまでお仕置きだっ。メイコだってあいつの感触が残っているの嫌だろ?それに俺っ…」  
カイトの顔が目の前に来て、苦しそうな表情であたしに囁いた。  
「自分でも恐いくらい…嫉妬している。」  
「あっ…」  
そう言うとカイトはあたしを押し倒した。  
 
やっと夜が明けた。  
「…もう俺以外の男を部屋に入れるなよ。」  
「…は、はひぃ…」  
嫉妬に胸を掻きむしられたカイトに朝まで淫らなお仕置きをされ、あたしの身体はカイトの欲望まみれで  
クタクタだった。快楽で麻痺した秘処からはカイトの欲望が溢れ出し、所々シーツを汚している。秘処だけでは  
なく、顔から胸にかけてカイトの欲望をぶっかけられていた。  
普段は一回戦だけでおしまいなのに…こんなに絶倫だったなんて…そんな事を考えているとカイトはあたしの  
頭を撫でながら忠告する。  
「メイコは素敵な声を持っていて、更に美人で可愛いんだからさ、俺以外の男に対して無防備だと目茶苦茶  
心配なんだよ。今度こんな事になったら本当に嫌うからな、わかった?(嫌う訳ないだろ)」  
あたしに忠告するカイトの表情は真剣だった。  
あたしが自分を妹分達より可愛くないと思っていても、カイトは美人で可愛いと思ってくれている。  
こんなにあたしを心配してたんだ。それが一番嬉しかった。  
あたしが小さく頷くとカイトが  
「じゃあ一緒にシャワー浴びようか。」  
と言ってあたしを姫抱っこしてバスルームへ運んでくれた。  
あたしをちゃんと見てくれているカイトなら過保護でもいいや、なんて疲れきった身体で幸せを感じていた。  
…まさかこの後、風呂場でもう一線交えるとは思わなかったけど。  
 
 
 
―同時刻。  
痛たたた…拙者、神威がくぽなり。  
昨晩メイコ殿と二人きりで呑んで悪酔いしてしまい、思わずメイコ殿を襲ってしまった。寸前のところで  
止めに入ったカイト殿に天誅を喰らい、髪の毛を掴まれ複数回地面に叩きつけられたまでは覚えているのだが…  
何故ルカ殿が隣に寝ておるのだ?ここはルカ殿の部屋か?しかもお互い裸で…  
(ミクリンルカのがくぽ争奪戦2と続く)  
 
 
 

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