「ケンカしたい」
レンがまた、バカなこと言い出した
「しょっちゅうしてるじゃん」
真面目に取り合う気にもならず、流すミク
実際、さっきもリンと、キイキイやり合っていた
「そぉいうんじゃなくて……」
じれったそうに訴えるレン
「この前の、カイト兄とがくぽさんみたいなヤツ」
「アレを〜〜?」
ミクは、厭そうに眉をしかめた
何が原因か知らないが、家を揺るがすような響きとともに、大の大人が、殴り合っていた
カイトがパワーでぶちかまし、がくぽが技でぶん投げる
余りの迫力に怯える年少組を引率し、サッサと避難するメイコとルカ
心配する子供達を尻目に、馴染みのカラオケ屋に陣取り、大盤振る舞い
うろたえていた年少組も、そこはボーカロイド
タップリ歌を、堪能してしまった
三時間後、恐る恐る帰ってみると、二人とも居間にとぐろをまいていた
お互い顔を腫らしながら、ゲラゲラ笑いあって、酒を呑んでいる
「カイト」
「がくぽさん」
「「ビクッ」」
穏やかに声をかけ、各々の部屋に男どもを連行するメイコとルカ
翌朝、寝坊してきた大人組
ツヤツヤと輝くお肌と、明らかに傷の増えた顔
女組の充実感と男組の消耗感が、正比例していた
「……あの、しょうもない件の、いったいどこに感銘を受けたの?」
たいがいヒマなミクが、バカバカしいと思いながらも、レンの妄言に付き合う
「カッコイイじゃん
譲れないものの為、男同士、拳で語り合う。
後は、わだかまりなく酒を酌み交わす
俺もそういうのヤリタイ」
ブンブン腕を振り回しながら、主張するレン
『なんでそこで、妹にケンカ売って、尚且つ負けるかな』
偏頭痛にコメカミを抑えながら、アホウな後輩にジト目をおくるが、彼は全く気づかない
「……と、いうわけで、ミク姉。
俺と勝負し……」
ザクッ
「アッ、ゴメン。レンくん
手が滑っちゃった」
足元の床板を貫いたネギを引き抜きながら、愛らしく微笑むミク
「それで?
なんの話だっけ」
おだやかに問い掛けるミクの言葉を背に、転がるような勢いで逃げ出すレン
退屈な昼下がり
静かになった居間に寝転び、昼寝を決め込むミクであった
後日、後輩にケンカを売って、謎のハチの大群に、フルボッコされた少年が、いたとかいないとか……
とっぴんぱらりのぷう