「正面から切り裂く!!」  
「真ん前から打ち砕く!!」  
ピコとレンが何やら叫びながら拳を高速で交し合っている。殺陣なので互いに怪我はしていないが。  
「ねーねー…何してるの、あれ」  
席に着いたリンがポッキーを二刀流で食べつつその光景を眺める横で、グミは新曲の歌詞を口遊んでいる。  
「低音の発声練習だって。ただ声出すのも捻りがないから戦おうぜ!らしいよ」  
「えー…曲撮る前にばてちゃうじゃん」  
「そこまで二人も馬鹿じゃないって」  
苦笑する少女たちが座るソファーの向かい席にぐったりと項垂れる白と黄色が並んだのは、その三分後であった。  
肩を揺らしぜーぜーと息をする少年共。実に滑稽である。  
「それ見ろー。ばーかばーか」  
「…るせぇ…」  
「今お茶入れるね」  
「す…いませ…」  
グミが緑茶を入れ少年たちの前に置くと、二人はぐいっとそれを飲み干した。  
湯呑を下ろし天井を見上げた体勢のまま、レンが大きく息を吐く。  
「あーやっべ…ついついヒートアップしたし」  
「なんで白熱したし」  
ジト目で視線を送るリンの前で白いアホ毛がぴん、と揺れた。息が整ってきたピコも湯呑を机に置く。  
「リンはさ…こういうのくだらなく見える?」  
「すっごいバカに見える」  
ばっさり本音を切り込んだリンが残りのポッキーを二人に振る舞う。  
少年たちは互いに顔を見遣ると、にっと意味深に笑顔を浮かべた。  
「分かんねぇかなあ、熱く滾る漢の浪漫!まあ女だし無理か」  
「なにその言い方!?まるであたしがバカみたいに聞こえるし!」  
「あはは」  
「ピコもなんで笑うし!」  
やいのやいの騒ぐ三人をグミはにこにこと笑みを絶やさず眺めている。  
 
「それで、午後の紅茶はどっちがおいしいって事になったの?」  
「ミルクティー一択です」  
「レモンティーだろ常考」  
 
笑顔のまま再び火花を散らすピコとレンの前で「やっぱ意味わかんないし」とリンは大きく溜息を吐く。  
そういえばレモンティーに牛乳入れたら固まるっけ、とグミは独りごちながら緑茶を啜った。  
 
おわらない  
 
 

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